Qt GUIプログラミングの必須テクニック: QClipboard::selectionChanged()でクリップボードを自在に操る

QClipboard::selectionChanged()シグナルは、Qt GUIアプリケーションにおいて、テキストや画像など、ユーザーが選択した内容がクリップボードにコピーされた際に、その変更を検知するために使用されます。このシグナルは、X11などの選択をサポートするウィンドウシステムでのみ利用可能です。

仕組み

スロット内では、クリップボードに格納された内容にアクセスしたり、その内容に基づいて処理を実行することができます。
この時点で、QClipboard::selectionChanged()シグナルが接続されているスロットが呼び出されます。
ユーザーがテキストや画像を選択し、コピー操作を実行すると、選択内容がクリップボードに格納されます。

利点

例えば、テキストエディタにおいて、選択されたテキストを自動的にフォーマットしたり、画像編集ソフトにおいて、選択された画像をプレビュー表示したりするような機能が実現できます。
アプリケーションが常に最新のクリップボード内容を把握できるため、ダイナミックなUIや機能を実現できます。

コード例

#include <QApplication>
#include <QClipboard>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QLabel label;
  label.setText("クリップボードに何もありません");

  // selectionChangedシグナルをスロットに接続
  QClipboard *clipboard = QApplication::clipboard();
  QObject::connect(clipboard, &QClipboard::selectionChanged, &label, &QLabel::setText);

  label.show();

  return app.exec();
}

このコード例では、QLabelラベルに、クリップボードに格納された最新のテキストを表示する機能を実装しています。

また、このシグナルは、クリップボードの内容がどのように変更されたかについての詳細な情報を提供しません。詳細な情報は、QClipboard::mimeData()などの関数を使用して取得する必要があります。
QClipboard::selectionChanged()シグナルは、クリップボードの内容が変更されたすべてのタイミングでemitされます。そのため、パフォーマンス上の問題を避けるために、処理内容を軽量化することが重要です。

上記以外にも、Qt GUIにおけるクリップボード操作に関する様々な機能が提供されています。詳細は、Qtドキュメントを参照してください。

選択されたテキストを大文字に変換する

このコード例では、ユーザーが選択したテキストを大文字に変換し、クリップボードに格納します。

#include <QApplication>
#include <QClipboard>
#include <QRegularExpression>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // selectionChangedシグナルをスロットに接続
  QClipboard *clipboard = QApplication::clipboard();
  QObject::connect(clipboard, &QClipboard::selectionChanged, [&]() {
    // クリップボードからテキストを取得
    const QString text = clipboard->text();

    // テキストを大文字に変換
    const QString upperCaseText = text.toUpper();

    // 変換結果をクリップボードに格納
    clipboard->setText(upperCaseText);
  });

  return app.exec();
}

選択された画像をプレビュー表示する

このコード例では、ユーザーが選択した画像をプレビュー表示するウィンドウを作成します。

#include <QApplication>
#include <QClipboard>
#include <QLabel>
#include <QPixmap>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // プレビューウィンドウを作成
  QLabel previewLabel;
  previewLabel.setAlignment(Qt::AlignCenter);

  // selectionChangedシグナルをスロットに接続
  QClipboard *clipboard = QApplication::clipboard();
  QObject::connect(clipboard, &QClipboard::selectionChanged, [&]() {
    // クリップボードから画像データを取得
    const QMimeData *mimeData = clipboard->mimeData();

    // 画像データが存在する場合
    if (mimeData->hasFormat("image/png")) {
      // 画像データからQPixmapを作成
      const QPixmap *pixmap = new QPixmap(mimeData->data("image/png"));

      // 画像をプレビューウィンドウに表示
      if (!pixmap->isNull()) {
        previewLabel.setPixmap(*pixmap);
        previewLabel.show();
      } else {
        // 画像データが破損している場合
        previewLabel.setText("画像データが破損しています。");
        previewLabel.show();
      }

      delete pixmap;
    } else {
      // 画像データが存在しない場合
      previewLabel.setText("クリップボードに画像がありません。");
      previewLabel.show();
    }
  });

  return app.exec();
}

選択されたテキストをHTML形式で保存する

このコード例では、ユーザーが選択したテキストをHTML形式で保存します。

#include <QApplication>
#include <QClipboard>
#include <QFile>
#include <QTextStream>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  // selectionChangedシグナルをスロットに接続
  QClipboard *clipboard = QApplication::clipboard();
  QObject::connect(clipboard, &QClipboard::selectionChanged, [&]() {
    // クリップボードからテキストを取得
    const QString text = clipboard->text();

    // HTML形式のファイル名を作成
    const QString fileName = QDateTime::currentDateTime().toString("yyyyMMdd_HHmmss") + ".html";

    // ファイルを開く
    QFile file(fileName);
    if (file.open(QIODevice::WriteOnly)) {
      // テキストをHTML形式に変換
      const QString htmlText = "<html><head><title>" + fileName + "</title></head><body>" + text + "</body></html>";

      // HTML形式のテキストをファイルに出力
      QTextStream out(&file);
      out << htmlText;

      file.close();

      // ファイルをデフォルトのテキストエディタで開く
      QDesktopServices::openUrl(QUrl::fromLocalFile(fileName));
    } else {
      // ファイルを開くことに失敗した場合
      QMessageBox::warning(nullptr, "エラー", "ファイルを保存できません。");
    }
  });

  return app.exec();
}

代替方法の例

QTimer::singleShot()を使用する

QClipboard::selectionChanged()シグナルと比較して処理頻度が高くなりますが、クリップボードの内容が頻繁に変更されない場合は有効な方法です。
一定時間ごとにQClipboard::text()などの関数を使用してクリップボードの内容をポーリングし、変更があった場合は処理を実行します。

#include <QApplication>
#include <QClipboard>
#include <QTimer>

int main(int argc, char *argv[]) {
  QApplication app(argc, argv);

  QLabel label;
  label.setText("クリップボードに何もありません");

  // 一定時間ごとにクリップボードの内容をポーリング
  QTimer timer;
  timer.setInterval(1000); // 1秒ごとにポーリング
  QObject::connect(&timer, &QTimer::timeout, [&]() {
    const QString text = clipboard->text();

    if (text != lastText) {
      // クリップボードの内容が変更された場合
      lastText = text;
      label.setText(text);
    }
  });
  timer.start();

  label.show();

  return app.exec();
}

Platform APIを使用する

この方法は、OSによって実装が異なるため、移植性が低くなります。
WindowsやmacOSなどのOSが提供するAPIを使用して、クリップボードの内容変更を検知します。

カスタムイベントを使用する

この方法は、複数のコンポーネント間でクリップボード変更を通知する際に有効な方法です。
アプリケーション内で独自のカスタムイベントを定義し、クリップボードの内容が変更された際にそのイベントを発行します。

移植性を重視する場合や、複数のコンポーネント間でクリップボード変更を通知する必要がある場合は、カスタムイベントを使用する方法が適しています。
クリップボードの内容が頻繁に変更されない場合は、QTimer::singleShot()などのポーリング方法の方がCPU負荷を軽減できます。
クリップボードの内容が頻繁に変更される場合は、QClipboard::selectionChanged()シグナルが最も効率的な方法です。

状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。
上記以外にも、様々な代替方法が存在します。

【保存版】Qt GUIで画像をクリップボードへコピーする方法：QClipboard::setPixmap()の使い方から代替方法まで

Qt GUIのQClipboard::setPixmap()関数を使用して、画像をシステムのクリップボードにコピーする方法について説明します。機能QClipboard::setPixmap()関数は、QPixmapオブジェクトをクリップボードにコピーします。QPixmapは、画像データを保持するQtクラスです。この関数は、画像をアプリケーション間で共有したり、画像編集ソフトウェアに貼り付けたりするために使用できます。

【決定版】Qt GUIにおけるクリップボード操作のすべて：QClipboard::supportsSelection()を使いこなして開発を成功に導く

QClipboard::supportsSelection()は、Qt GUIアプリケーションにおいて、マウス選択されたテキストや画像がクリップボードに格納可能かどうかを確認するための関数です。この関数は、bool型の値を返します。機能falseを返す場合：マウス選択されたテキストや画像がクリップボードに格納できません。

QColor::darker()関数の活用例

Qt プログラミングにおける QColor::darker() 関数は、指定された色をより暗い色に変換する機能を提供します。この関数は、主に UI デザインやグラフィック処理において、色調の調整やコントラストの強化などに利用されます。基本的な使い方

QColor::getHsl() の使い方と注意点

QColor::getHsl() は、Qt の QColor クラスのメソッドで、指定された色を HSL (色相、彩度、明度) カラーモデルに変換します。HSL カラーモデルは、色の色相 (色調)、彩度 (色の鮮やかさ)、明度 (色の明るさ) を表すカラーモデルです。

QColor::hslSaturationF() の使い方と注意点

QColor::hslSaturationF() は、Qt フレームワークにおける色操作関数の一つです。この関数は、指定された色の彩度 (saturation) を 0.0 から 1.0 の範囲の浮動小数点数として返します。彩度とは彩度とは、色の鮮やかさや純粋さの度合いを表します。0.0 は無彩色（灰色）を表し、1.0 は最も鮮やかな色を表します。

QColor::isValidColor() を活用した色情報の正確な処理

QColor::isValidColor() は、Qt で色を表す QColor オブジェクトが有効な色を表しているかどうかを判定する関数です。有効な色とは、RGB または HSV 色空間で定義された、表示可能な色範囲内にある色を指します。

QColor::lightness() 関数のエラーとトラブルシューティング

QColor::lightness() は、Qt で色を表す QColor クラスのメンバ関数です。この関数は、指定された色の明度（明るさ）を 0 から 255 の整数値で返します。明度とは明度とは、色の明るさの度合いを表す指標です。低い明度を持つ色は暗く、高い明度を持つ色は明るくなります。

【Qt GUIチュートリアル】QColor::name()で色名を簡単操作！〜サンプルコードで理解を深める〜

メソッドの戻り値カラー名が有効でない場合: 空文字列カラー名が有効な場合: 色名の QString 型文字列メソッドの例QColor オブジェクトに色名を設定するには、setNamedColor() メソッドを使用します。QColor オブジェクトの色名が有効かどうかを確認するには、isValid() メソッドを使用します。

QColor::operator=() の使用と注意点

Qt プログラミングにおける QColor::operator=() は、QColor オブジェクトの値を別の QColor オブジェクトから代入するための演算子です。これにより、既存の色の値を別の色に簡単にコピーすることができます。基本的な使い方

Qtで色を扱うためのqRed()関数の使い方

**qRed()**は、Qtフレームワークで使用される関数で、RGBカラーモデルにおける赤色成分の値を取得します。通常、QColorクラスのオブジェクトからこの関数を呼び出します。具体例解説QColorクラス Qtで色を扱うためのクラスです。