Python Turtleグラフィック完全ガイド:メソッドと関数の使い方

2025-06-06

Pythonのturtleモジュールは、グラフィック描画を簡単に行うための機能を提供します。このモジュールには、基本的な描画オブジェクトである「タートル」を制御するための様々なメソッドや関数が用意されています。

大きく分けて、タートルを制御する方法には以下の2種類があります。

  1. RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドを使う方法: これは、特定のタートルインスタンスに対して操作を行う、オブジェクト指向的なアプローチです。
  2. モジュールレベルの関数を使う方法: これは、デフォルトのタートルインスタンスに対して操作を行う、よりシンプルな(手続き的な)アプローチです。

以下に、それぞれの方法と、対応するメソッド・関数を説明します。

RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッド

RawTurtleクラスは、Screenオブジェクト上に描画するタートルオブジェクトの基本的な機能を提供します。TurtleクラスはRawTurtleを継承しており、より使いやすいようにデフォルトのタートルオブジェクト(および対応するモジュールレベルの関数)を扱う機能が追加されています。

RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドは、以下のように特定のタートルインスタンスに対して呼び出されます。

import turtle

# RawTurtleの例
screen = turtle.Screen()
my_raw_turtle = turtle.RawTurtle(screen)
my_raw_turtle.forward(100) # my_raw_turtleを前進させる

# Turtleの例
my_turtle = turtle.Turtle()
my_turtle.left(90) # my_turtleを左に90度回転させる

主なメソッドの種類と例を挙げます。

  • タートルの見た目に関するメソッド:

    • shape(name): タートルの形を設定します(例: "arrow", "turtle", "circle", "square", "triangle", "classic")。
    • speed(speed): タートルの描画速度を設定します(0から10までの整数、または文字列"fastest", "fast", "normal", "slow", "slowest")。
    • hideturtle() / ht(): タートルを非表示にします。
    • showturtle() / st(): タートルを表示します。
  • ペンの制御に関するメソッド:

    • pendown() / pd() / down(): ペンを下ろし、移動すると線を描きます。
    • penup() / pu() / up(): ペンを上げ、移動しても線を描きません。
    • pensize(width) / width(width): ペンの太さを設定します。
    • pencolor(color): ペンの色を設定します。
    • fillcolor(color): 塗りつぶしの色を設定します。
    • begin_fill(): 塗りつぶしの開始を宣言します。
    • end_fill(): 塗りつぶしの終了を宣言し、begin_fill()以降の描画を塗りつぶします。
  • 移動に関するメソッド:

    • forward(distance) / fd(distance): タートルを現在向いている方向にdistanceだけ前進させます。
    • backward(distance) / bk(distance) / back(distance): タートルを現在向いている方向と逆方向にdistanceだけ後退させます。
    • right(angle) / rt(angle): タートルを右にangle度回転させます。
    • left(angle) / lt(angle): タートルを左にangle度回転させます。
    • goto(x, y) / setpos(x, y) / setposition(x, y): タートルを絶対座標(x,y)に移動させます。
    • setx(x): タートルのx座標をxに設定します。
    • sety(y): タートルのy座標をyに設定します。
    • setheading(angle) / seth(angle): タートルの向きを絶対角度angleに設定します(0度が東、90度が北)。
    • home(): タートルを原点(0,0)に戻し、向きを0度(東)にします。
    • circle(radius, extent=None, steps=None): 円を描きます。

モジュールレベルの関数

turtleモジュールは、内部でデフォルトのTurtleオブジェクトを管理しており、このオブジェクトに対して操作を行うためのグローバルな関数を提供します。これらの関数は、turtle.forward(100)のように、モジュール名を通して直接呼び出されます。これは、単一のタートルを扱う場合に非常に便利で、コードを簡潔に保つことができます。

import turtle

turtle.forward(100) # デフォルトのタートルを前進させる
turtle.left(90)     # デフォルトのタートルを左に90度回転させる

モジュールレベルの関数は、前述のRawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドと1対1で対応しています。つまり、my_turtle.forward(100)turtle.forward(100)は、それぞれmy_turtleという特定のインスタンスと、モジュールが管理するデフォルトのタートルインスタンスに対して、同じ「前進する」という操作を行います。

対応の例:

RawTurtle/Turtle メソッド対応するモジュールレベル関数説明
my_turtle.forward(100)turtle.forward(100)前進する
my_turtle.left(90)turtle.left(90)左に回転する
my_turtle.penup()turtle.penup()ペンを上げる
my_turtle.pencolor("blue")turtle.pencolor("blue")ペンの色を設定する
my_turtle.shape("turtle")turtle.shape("turtle")タートルの形を設定する
my_turtle.hideturtle()turtle.hideturtle()タートルを非表示にする

どちらを使うべきか?

  • RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッド:

    • 利点: 複数のタートルを同時に作成し、それぞれを独立して制御することができます。オブジェクト指向的な設計により、大規模なプログラムや複雑な描画に適しています。
    • 欠点: モジュールレベルの関数に比べて、初期設定(Screenの作成など)が必要になる場合があります。
    • 用途: 複数のタートルが協調して動作するシミュレーション、ゲーム、より複雑なグラフィックアートなどを描く場合に適しています。
  • モジュールレベルの関数:

    • 利点: コードがシンプルになり、手軽に描画を始められます。
    • 欠点: 複数のタートルを同時に制御する場合には不向きです。常にデフォルトのタートルを操作することになります。
    • 用途: 単一のタートルで簡単な図形を描いたり、turtleモジュールの基本的な使い方を学ぶのに適しています。


turtleモジュールは視覚的に結果がわかるため、プログラミング初心者にも親しみやすいですが、同時にいくつかの一般的な落とし穴があります。

ウィンドウがすぐに閉じてしまう(画面が表示されない/一瞬だけ表示される)

これが最もよくある問題かもしれません。タートルが描画を終えた後、プログラムが終了すると、描画されたウィンドウもすぐに閉じてしまいます。

エラーメッセージ
特になし。単にウィンドウが閉じるだけ。

原因
プログラムの実行が終了すると、Pythonインタープリターはすべてのリソースを解放するため、タートルグラフィックスウィンドウも閉じられます。

解決策
プログラムの最後に、ウィンドウが開いたままになるように、以下のいずれかのコードを追加します。

  • RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドを使用する場合

    import turtle
    
    screen = turtle.Screen()
    my_turtle = turtle.Turtle()
    
    # 描画コード...
    my_turtle.forward(100)
    my_turtle.left(90)
    
    screen.mainloop() # または screen.exitonclick()
    # screen.exitonclick() は画面クリックで終了
    

    Screenオブジェクトのmainloop()(またはdone())は、イベントループを開始し、ウィンドウを閉じずに待機させます。exitonclick()は画面がクリックされると終了します。

  • モジュールレベルの関数を使用する場合

    import turtle
    
    # 描画コード...
    turtle.forward(100)
    turtle.left(90)
    
    turtle.done() # ウィンドウを閉じずに待機する
    

    または、

    import turtle
    
    # 描画コード...
    turtle.forward(100)
    turtle.left(90)
    
    # ユーザーがキーを押すまで待つ(任意)
    input("Press Enter to close the window...")
    

    turtle.done() は、タートルグラフィックスイベントループを開始し、ウィンドウが閉じられるまでプログラムをブロックします。input() は、コンソールでユーザーからの入力を待つため、ウィンドウが開いたままになります。

NameError: name 'turtle' is not defined

turtleモジュールが正しくインポートされていないか、使おうとしているオブジェクト名が間違っている場合に発生します。

エラーメッセージの例

NameError: name 'turtle' is not defined

原因

  • Turtle()クラスをインスタンス化する際にturtle.Turtle()と書くべきところを、turtle()と間違えている(大文字小文字の区別)。
  • from turtle import *を使ったのに、turtle.forward()のようにモジュール名を付けて関数を呼び出そうとしている(この場合、forward()と書くべき)。
  • import turtleを忘れているか、スペルミスがある。

解決策

  • 適切な呼び出し方をする
    • import turtleを使っている場合: turtle.forward(100)my_turtle = turtle.Turtle() のように、モジュール名(または変数名)をプレフィックスとして付けます。
    • from turtle import *を使っている場合: forward(100)my_turtle = Turtle() のように、直接関数やクラス名を呼び出します。ただし、名前空間が汚染される可能性があるため、import turtleの方が推奨されます。
    • Turtleクラスのインスタンスを作成する際は、必ず大文字のTで始めます: my_turtle = turtle.Turtle()
  • モジュールをインポートする
    コードの冒頭にimport turtleを追加します。

AttributeError: 'Turtle' object has no attribute 'some_method'

存在しないメソッドや属性をタートルオブジェクトに対して呼び出そうとした場合に発生します。多くの場合、スペルミスや大文字小文字の間違いが原因です。

エラーメッセージの例

AttributeError: 'Turtle' object has no attribute 'forword'

原因

  • ScreenオブジェクトのメソッドをTurtleオブジェクトに呼び出そうとしている、またはその逆(例: my_turtle.mainloop()はエラー、screen.mainloop()が正しい)。
  • メソッドの大文字小文字の間違い(Pythonは厳密に大文字小文字を区別します。例: forward()は存在するがForward()は存在しない)。
  • メソッド名のスペルミス(例: forwardforwordと書く)。

解決策

  • 適切なオブジェクトの確認
    呼び出しているメソッドが、そのオブジェクト(TurtleインスタンスかScreenインスタンスか)に属していることを確認します。
  • メソッド名の確認
    Pythonのドキュメントや、以前に正しく動作したコードと見比べて、メソッドのスペルや大文字小文字が正しいことを確認します。

TypeError: method_name() missing 1 required positional argument

関数やメソッドが必要な引数を受け取っていない場合に発生します。

エラーメッセージの例

TypeError: forward() missing 1 required positional argument: 'distance'

原因

  • 数値であるべき引数に文字列を渡している(例: turtle.forward("100"))。これはTypeErrorではなく別のエラーになることもありますが、意図しない挙動につながります。
  • メソッド呼び出し時に、必須の引数を渡し忘れている(例: turtle.forward() とだけ書いて、移動距離を指定していない)。

解決策

  • 正しい型の引数を渡す
    数値が必要な場合は数値を、文字列が必要な場合は文字列を渡します。
  • 引数の確認
    ドキュメントを参照し、呼び出しているメソッドが必要とする引数の数と型を確認します。

図形が描画されない/思った通りに描画されない

コードにエラーはないものの、期待する描画結果が得られない場合に発生します。これは論理的な問題や、タートルの状態(ペンアップ/ダウン、速度など)の誤解が原因であることがあります。

原因

  • 画面の自動更新が無効
    screen.tracer(0)を使っている場合、手動でscreen.update()を呼び出さないと描画が反映されません。
  • 無限ループ
    whileループなどで終了条件が設定されていない場合、プログラムがフリーズしたように見えたり、描画が止まったりします。
  • 座標の誤解
    タートルはデフォルトで中央((0,0))から東(0度)を向いて始まります。意図しない場所に移動している可能性があります。
  • タートルが速すぎる/遅すぎる
    speed()の設定が極端な場合、描画が見えにくいことがあります。speed(0)は最速ですが、画面が更新されずに一瞬で描画が終わってしまうことがあります。
  • ペンが上がっている
    penup()が呼び出された後、pendown()を呼び出すのを忘れている。

解決策

  • ループの終了条件
    whileループを使用する場合は、ループがいつ終了するか(またはbreakで抜け出すか)を明確にします。
  • イベントループの確認
    screen.tracer(0)を使っている場合は、描画コードの後にscreen.update()を追加し、最後にscreen.mainloop()(またはturtle.done())があることを確認します。
  • 座標の視覚化
    短い移動コマンドをいくつか実行して、タートルがどこにいるか、どの方向を向いているかを確認します。turtle.pos()turtle.heading()で現在の位置と向きを取得することもできます。
  • home()でリセット
    描画の前にturtle.home()を呼び出して、タートルを初期状態に戻すとデバッグしやすくなります。
  • 速度の調整
    turtle.speed('normal')turtle.speed(1)などのように、速度を調整して描画の様子を確認します。
  • ペンの状態を確認
    pendown()が適切に呼び出されているか確認します。

ファイル名の競合

自分のPythonスクリプトファイルにturtle.pyという名前を付けてしまうと、Pythonが標準ライブラリのturtleモジュールではなく、自分で作ったファイルの方をインポートしようとしてしまい、エラーになります。

エラーメッセージ
インポートしようとしているモジュール(この場合は自分のファイル)に、必要な属性がないというAttributeErrorや、モジュールがそもそもインポートできないといったエラーが出ることがあります。

原因
スクリプトファイル名がturtle.pyになっている。

解決策
スクリプトファイルの名前をmy_drawing.pyなど、turtle.py以外の名前に変更します。



turtleモジュールには、大きく分けて2つのプログラミングスタイルがあります。

  1. モジュールレベルの関数を使用する方法(手続き型): これは、turtleモジュールが提供する関数を直接呼び出して、デフォルトのタートルを制御する方法です。単一のタートルで簡単な図形を描くのに適しており、コードが簡潔になります。

  2. RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドを使用する方法(オブジェクト指向型): これは、Turtleクラス(またはRawTurtleクラス)のインスタンスを作成し、そのインスタンスのメソッドを呼び出して特定のタートルを制御する方法です。複数のタートルを扱いたい場合や、より複雑なプログラムを作成する場合に適しています。

それぞれのスタイルで具体的な例を見ていきましょう。

モジュールレベルの関数を使用する例(手続き型)

このスタイルでは、import turtleの後に、turtle.forward()turtle.left()などの関数を直接呼び出します。

例1: 正方形を描く

import turtle

# 描画ウィンドウのタイトルを設定
turtle.title("正方形を描く")

# タートルの速度を設定(0は最速)
turtle.speed(1)

# ペンの色と太さを設定
turtle.pencolor("red")
turtle.pensize(3)

# 正方形を描くループ
for _ in range(4): # 4回繰り返す
    turtle.forward(100) # 100ピクセル前進
    turtle.right(90)    # 右に90度回転

# 描画が終わった後、ウィンドウを閉じずに待機
# turtle.done() はイベントループを開始し、ウィンドウが閉じられるまでプログラムをブロックします
turtle.done()

解説

  • turtle.done(): これがないと、描画が完了した瞬間にウィンドウが閉じてしまいます。ユーザーがウィンドウを閉じるまで開いたままにします。
  • turtle.right(90): デフォルトのタートルを右に90度回転させます。
  • turtle.forward(100): デフォルトのタートルを100ピクセル前進させます。
  • for _ in range(4): 4回繰り返すループです。_はループ変数を使わない場合に慣習的に使われます。
  • turtle.pensize(3): ペンの太さを3ピクセルに設定します。
  • turtle.pencolor("red"): ペンの色を赤に設定します。
  • turtle.speed(1): タートルの描画速度を設定します。0は最速、1が最も遅く、1から10の間で設定できます。
  • turtle.title("..."): 描画ウィンドウのタイトルを設定します。
  • import turtle: turtleモジュールをインポートします。

RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドを使用する例(オブジェクト指向型)

このスタイルでは、まずScreenオブジェクトとTurtleオブジェクト(またはRawTurtleオブジェクト)を作成し、そのオブジェクトのメソッドを呼び出します。これにより、複数のタートルを制御したり、画面の設定を細かく行ったりすることができます。

例2: 複数のタートルで異なる図形を描く

import turtle

# 描画スクリーン(ウィンドウ)の設定
screen = turtle.Screen()
screen.setup(width=600, height=400) # ウィンドウサイズを設定
screen.bgcolor("lightblue")       # 背景色を設定
screen.title("複数のタートル")

# 最初のタートルを作成し、設定
red_turtle = turtle.Turtle()
red_turtle.shape("turtle") # タートルの形をカメにする
red_turtle.color("red")    # カメの色を赤にする
red_turtle.pensize(2)
red_turtle.penup()         # ペンを上げて移動
red_turtle.goto(-150, 0)   # 開始位置へ移動
red_turtle.pendown()       # ペンを下ろす

# 赤いタートルで三角形を描く
for _ in range(3):
    red_turtle.forward(100)
    red_turtle.left(120)

# 2番目のタートルを作成し、設定
blue_turtle = turtle.Turtle()
blue_turtle.shape("arrow") # タートルの形を矢印にする
blue_turtle.color("blue")  # 矢印の色を青にする
blue_turtle.pensize(4)
blue_turtle.penup()        # ペンを上げて移動
blue_turtle.goto(150, 0)   # 開始位置へ移動
blue_turtle.pendown()      # ペンを下ろす

# 青いタートルで円を描く
blue_turtle.circle(50) # 半径50の円を描く

# 画面がクリックされるまで待機して終了
screen.exitonclick()

解説

  • screen.exitonclick(): ウィンドウがクリックされるまでプログラムの実行を一時停止します。クリックされるとウィンドウが閉じ、プログラムが終了します。screen.mainloop()も同様にイベントループを開始しますが、クリックでは終了しません。
  • blue_turtle.circle(50): blue_turtleを使って半径50の円を描きます。
  • blue_turtle = turtle.Turtle(): 2つ目のタートルオブジェクトを作成します。
  • red_turtle.forward(100) / red_turtle.left(120): red_turtleを前進させ、左に回転させます。これらのメソッドは、モジュールレベルの関数に対応しています。
  • red_turtle.goto(-150, 0): red_turtleを絶対座標(-150, 0)に移動させます。
  • red_turtle.penup() / red_turtle.pendown(): ペンを上げ下げします。ペンが上がっている間は線が描かれません。
  • red_turtle.color("red"): red_turtleの色を赤に設定します(ペンと塗りつぶしの両方のデフォルト色)。
  • red_turtle.shape("turtle"): red_turtleの形を"turtle"に変更します。他にも"arrow", "circle", "square", "triangle", "classic"などがあります。
  • red_turtle = turtle.Turtle(): Turtleクラスのインスタンス(タートルオブジェクト)を新しく作成し、red_turtleという変数に代入します。これで、このタートルは独立して制御できます。
  • screen.bgcolor("lightblue"): 描画ウィンドウの背景色を設定します。
  • screen.setup(width=600, height=400): 描画ウィンドウの幅と高さを設定します。
  • screen = turtle.Screen(): 描画を行うためのScreenオブジェクトを作成します。

例3: 塗りつぶし(オブジェクト指向型)

塗りつぶし機能を使って、星のような図形を描きます。

import turtle

screen = turtle.Screen()
screen.setup(width=500, height=500)
screen.bgcolor("black")
screen.title("塗りつぶされた星")

star_turtle = turtle.Turtle()
star_turtle.speed(1)
star_turtle.color("yellow", "orange") # ペンの色、塗りつぶしの色

star_turtle.penup()
star_turtle.goto(0, 150) # 上の方から描画開始
star_turtle.pendown()

star_turtle.begin_fill() # 塗りつぶしを開始
for _ in range(5): # 5角形(星)を描くループ
    star_turtle.forward(200)
    star_turtle.right(144) # 星の角の角度

star_turtle.end_fill() # 塗りつぶしを終了し、描画された部分を塗りつぶす

# タートルを非表示にする
star_turtle.hideturtle()

screen.exitonclick()

解説

  • star_turtle.hideturtle(): タートルアイコン自体を非表示にします。
  • star_turtle.end_fill(): 塗りつぶし領域の定義を終了し、begin_fill()からend_fill()までに描かれたパスが、fillcolorで指定された色で塗りつぶされます。
  • star_turtle.begin_fill(): 塗りつぶし領域の定義を開始します。これ以降の描画パスが塗りつぶしの対象となります。
  • star_turtle.color("yellow", "orange"): 最初の引数がペンの色、2番目の引数が塗りつぶしの色になります。

turtleモジュールを使うには、まずimport turtleでモジュールをインポートする必要があります。

モジュールレベルの関数を使った簡単な描画

これは最もシンプルで、初心者向けの基本的な使い方です。デフォルトのタートル(一つだけ存在すると仮定)を操作します。

例1: 四角形を描く

import turtle

# ウィンドウのセットアップ(任意だが推奨)
turtle.setup(width=600, height=400) # ウィンドウのサイズを設定
turtle.bgcolor("lightblue")       # 背景色を設定
turtle.title("四角形を描く")     # ウィンドウのタイトルを設定

# 描画速度の設定 (0: 最速, 1-10: 1が最も遅く10が最も速い)
turtle.speed(3)

# 四角形を描く
for _ in range(4): # 4回繰り返す
    turtle.forward(100) # 100ピクセル前進
    turtle.right(90)    # 右に90度回転

# 描画が終了したらウィンドウが閉じないようにする
turtle.done()

解説

  • turtle.done(): これがないと、描画が完了した瞬間にウィンドウが閉じてしまいます。この関数は、ユーザーがウィンドウを閉じるまでプログラムを待機させます。
  • for _ in range(4): 四角形は4つの辺と4つの角を持つため、この処理を4回繰り返します。_はループ変数を使用しない場合に慣習的に使われます。
  • turtle.right(90): タートルを現在の位置で右に90度回転させます。
  • turtle.forward(100): タートルが向いている方向に100ピクセル進みます。
  • turtle.speed(3): タートルの移動速度を設定します。アニメーションをゆっくり見たい場合に便利です。0にするとアニメーションをスキップして即座に描画を完了します。
  • turtle.setup(), turtle.bgcolor(), turtle.title(): 描画するキャンバス(画面)の設定をします。これらはScreenオブジェクトの機能ですが、モジュールレベル関数としても提供されています。
  • import turtle: turtleモジュールをインポートします。

例2: 星形を描き、色を付ける

import turtle

turtle.setup(width=600, height=600)
turtle.bgcolor("black")
turtle.title("カラフルな星")
turtle.speed(0) # 最速

colors = ["red", "orange", "yellow", "green", "blue", "purple"]

for i in range(100): # 100個の星のラインを描く
    turtle.pencolor(colors[i % 6]) # 色を順番に切り替える
    turtle.forward(i * 2)          # 少しずつ長く線を引く
    turtle.right(145)              # 星形になるように回転

turtle.done()

解説

  • turtle.right(145): この角度が星形を描くための鍵です。いろいろな角度を試して、面白いパターンを見つけることができます。
  • turtle.forward(i * 2): ループが進むにつれて線が長くなるようにします。
  • turtle.pencolor(colors[i % 6]): colorsリストから色を順番に選びます。i % 6は、iを6で割った余りなので、0,1,2,3,4,5,0,1,...と繰り返し色を選びます。

RawTurtle/Turtleオブジェクトのメソッドを使った描画

複数のタートルを制御したい場合や、よりオブジェクト指向的なアプローチを取りたい場合にこの方法を使います。ScreenオブジェクトとTurtleオブジェクトを明示的に作成します。

例3: 複数のタートルで異なる図形を描く

import turtle

# 画面(Screen)オブジェクトの作成
screen = turtle.Screen()
screen.setup(width=700, height=500)
screen.bgcolor("gray")
screen.title("複数のタートル")

# 最初のタートル(青い四角形)
tina = turtle.Turtle()
tina.shape("turtle") # タートルの形をカメにする
tina.color("blue")   # 色を青にする
tina.pensize(3)      # ペンの太さを3にする
tina.penup()         # ペンを上げる(移動時に線を引かない)
tina.goto(-200, 50)  # 左上の位置に移動
tina.pendown()       # ペンを下ろす

for _ in range(4):
    tina.forward(100)
    tina.right(90)

# 二番目のタートル(赤い三角形)
tim = turtle.Turtle()
tim.shape("arrow")   # タートルの形を矢印にする
tim.color("red")     # 色を赤にする
tim.pensize(2)       # ペンの太さを2にする
tim.penup()
tim.goto(100, -50)   # 右下の位置に移動
tim.pendown()

tim.begin_fill() # 塗りつぶしを開始
tim.fillcolor("orange") # 塗りつぶしの色を設定
for _ in range(3):
    tim.forward(120)
    tim.left(120)
tim.end_fill() # 塗りつぶしを終了

# 描画が終了したらウィンドウが閉じないようにする
screen.mainloop() # Screenオブジェクトのmainloop()を使う

解説

  • screen.mainloop(): screen.done()と同じ機能ですが、オブジェクト指向的な文脈ではscreen.mainloop()を使うのがより適切です。
  • tim.begin_fill(), tim.fillcolor("orange"), tim.end_fill(): 図形を塗りつぶすための手順です。begin_fill()end_fill()の間で描画された経路が塗りつぶされます。
  • tina.penup(), tina.goto(-200, 50), tina.pendown(): ペンを上げてから移動することで、線を引かずにタートルを目的の場所へ移動させることができます。移動後、pendown()で再びペンを下ろします。
  • tina.shape("turtle"), tina.color("blue"), tina.pensize(3): tinaという特定のタートルの見た目やペンの設定をメソッドで変更します。
  • tina = turtle.Turtle(): 新しいTurtleオブジェクトを作成し、tinaという変数に格納します。
  • screen = turtle.Screen(): 描画を行う画面(キャンバス)を作成します。

例4: RawTurtle を使って異なるキャンバスに描画

RawTurtleは、既存のTkinterのCanvasウィジェットにタートルを関連付けたい場合など、より低レベルな制御が必要な場合に使用されます。通常、turtle.Turtle()を使うのが一般的ですが、RawTurtleの例も示します。

import turtle
import tkinter as tk # tkinter をインポート

# Tkinterのルートウィンドウを作成
root = tk.Tk()
root.title("RawTurtleの例")

# Tkinterのキャンバスを作成
canvas = tk.Canvas(root, width=400, height=300, bg="lightgreen")
canvas.pack()

# TurtleScreenをTkinterのキャンバスに関連付ける
screen = turtle.TurtleScreen(canvas)
screen.bgcolor("lightyellow")

# RawTurtleオブジェクトを作成(画面ではなくキャンバスに直接関連付け)
my_raw_turtle = turtle.RawTurtle(screen)
my_raw_turtle.color("darkblue")
my_raw_turtle.pensize(5)
my_raw_turtle.speed(1)

my_raw_turtle.forward(100)
my_raw_turtle.left(90)
my_raw_turtle.forward(100)
my_raw_turtle.circle(50) # 円を描く

# イベントループを開始
# Tkinterのメインループを使用することで、ウィンドウが開いたままになります。
root.mainloop()

解説

  • root.mainloop(): Tkinterアプリケーションのイベントループを開始します。これにより、ウィンドウが閉じずにイベント(描画など)に応答し続けます。
  • my_raw_turtle = turtle.RawTurtle(screen): RawTurtleオブジェクトを特定のscreenに関連付けて作成します。これにより、このタートルは指定されたキャンバス上で描画を行います。
  • screen = turtle.TurtleScreen(canvas): turtleモジュールの画面を、Tkinterのキャンバスに関連付けます。
  • canvas = tk.Canvas(...): 描画領域となるTkinterのキャンバスウィジェットを作成します。
  • root = tk.Tk(): Tkinterの最上位ウィンドウを作成します。
  • import tkinter as tk: TkinterはPythonの標準GUIライブラリで、turtleモジュールは内部的にこれを使用しています。


turtleモジュールは、プログラミングやグラフィック描画の基本的な概念を学ぶのに非常に適した素晴らしいツールですが、より高度なグラフィック、ゲーム開発、データ可視化などを行う際には、他のライブラリがより強力で柔軟な機能を提供します。

以下に、turtleモジュールに代わる主要なグラフィック描画ライブラリと、それぞれの特徴、およびどのような場合に適しているかを説明します。

Tkinter (標準ライブラリ)

turtleモジュールが内部で使用しているPython標準のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ライブラリです。基本的なウィジェット(ボタン、テキストボックスなど)の作成から、Canvasウィジェットを使ったカスタム描画まで可能です。

  • turtleとの比較
    turtleはTkinterのCanvas上に描画されるカメのアニメーションに特化していますが、Tkinterは汎用的なGUIと描画機能を提供します。
  • 用途
    • 簡単なデスクトップアプリケーションの作成。
    • カスタムの2Dグラフィック描画(turtleでできることのより低レベルな制御版)。
    • turtleモジュールの動作原理をより深く理解したい場合。
  • 特徴
    • Pythonの標準ライブラリなので、追加インストールが不要。
    • シンプルなGUIアプリケーションや、turtleよりも少しだけ複雑なカスタム描画に適している。
    • Canvasウィジェットは、線、円、四角形、テキスト、画像などを直接描画するメソッドを提供します。

簡単な描画例 (Tkinter Canvas)

import tkinter as tk

root = tk.Tk()
root.title("Tkinter描画の例")

# Canvasウィジェットを作成
canvas = tk.Canvas(root, width=400, height=300, bg="white")
canvas.pack()

# 線を描画
canvas.create_line(50, 50, 150, 50, fill="blue", width=3)
canvas.create_line(150, 50, 100, 150, fill="blue", width=3)
canvas.create_line(100, 150, 50, 50, fill="blue", width=3) # 三角形

# 四角形を描画
canvas.create_rectangle(200, 100, 350, 200, fill="red", outline="purple", width=2)

# 円を描画 (楕円として指定)
canvas.create_oval(50, 200, 150, 280, fill="green", outline="darkgreen", width=2)

root.mainloop()

Pygame

ゲーム開発に特化した非常に人気のあるライブラリです。2Dゲームやインタラクティブなアプリケーションの作成に適しています。

  • turtleとの比較
    turtleが教育目的の簡単な描画に主眼を置いているのに対し、Pygameは実際のゲーム開発を視野に入れた、より本格的で高性能なライブラリです。描画の抽象度が低く、ピクセル単位での制御が可能です。
  • 用途
    • 2Dゲーム(パズルゲーム、アクションゲーム、レトロゲームなど)。
    • インタラクティブなシミュレーション。
    • アニメーションの作成。
  • 特徴
    • ゲームループ、イベント処理、スプライト、サウンド、画像読み込みなど、ゲーム開発に必要な機能が豊富。
    • 高速なグラフィック描画が可能。
    • クロスプラットフォーム対応。

簡単な描画例 (Pygame)

import pygame

# Pygameの初期化
pygame.init()

# スクリーン設定
screen_width = 800
screen_height = 600
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("Pygame描画の例")

# 色の定義
WHITE = (255, 255, 255)
RED = (255, 0, 0)
BLUE = (0, 0, 255)
GREEN = (0, 255, 0)

# ゲームループ
running = True
while running:
    for event in pygame.event.get():
        if event.type == pygame.QUIT:
            running = False

    # 画面を白で塗りつぶす
    screen.fill(WHITE)

    # 図形を描画
    pygame.draw.rect(screen, RED, (50, 50, 100, 80)) # 四角形 (x, y, width, height)
    pygame.draw.circle(screen, BLUE, (300, 100), 50) # 円 (中心x, 中心y, 半径)
    pygame.draw.line(screen, GREEN, (500, 50), (700, 150), 5) # 線 (始点, 終点, 太さ)

    # 画面を更新
    pygame.display.flip()

# Pygameの終了
pygame.quit()

Matplotlib

主に科学技術計算におけるデータ可視化に特化したライブラリです。様々な種類のグラフやプロットを作成できます。

  • turtleとの比較
    turtleは幾何学的な描画を行うのに対し、Matplotlibは数値データの関係性を視覚的に表現することに特化しています。描画されるのは図形そのものというよりは、データが作り出すパターンやトレンドです。
  • 用途
    • データ分析、科学計算、機械学習の結果の可視化。
    • 研究論文やレポート用のグラフ作成。
  • 特徴
    • 折れ線グラフ、棒グラフ、散布図、ヒストグラム、3Dプロットなど、多様なグラフ描画機能。
    • Jupyter Notebookなどの対話型環境との相性が良い。
    • 出版品質のグラフを生成できる。

簡単な描画例 (Matplotlib)

import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

# データを生成
x = np.linspace(0, 10, 100)
y1 = np.sin(x)
y2 = np.cos(x)

# プロットを作成
plt.figure(figsize=(8, 6)) # グラフのサイズ
plt.plot(x, y1, label='sin(x)', color='blue', linestyle='-')
plt.plot(x, y2, label='cos(x)', color='red', linestyle='--')

# ラベルとタイトル
plt.xlabel("X軸")
plt.ylabel("Y軸")
plt.title("正弦波と余弦波")
plt.legend() # 凡例を表示
plt.grid(True) # グリッドを表示

# グラフを表示
plt.show()

Arcade

Pygameに似ていますが、より現代的なPythonゲーム開発のベストプラクティスを取り入れた、より高レベルな2Dゲームライブラリです。初心者にも比較的扱いやすいように設計されています。

  • turtleとの比較
    turtleが描画命令を順次実行して「軌跡」を重視するのに対し、Arcadeは描画されるべき「状態」を管理し、毎フレームそれをレンダリングする方式です。
  • 用途
    • Pygameと同様に2Dゲーム開発。
    • よりモダンで高機能なゲームを作りたい場合。
  • 特徴
    • 描画コマンドがより直感的。
    • スプライト、物理エンジン、タイルマップなどのゲーム開発に必要な機能が充実。
    • OpenGLを利用して高速な描画が可能。

Kivy

マルチタッチアプリケーション開発に特化したオープンソースのPythonライブラリです。デスクトップだけでなく、iOSやAndroidアプリも開発できます。

  • turtleとの比較
    turtleが簡単な図形描画を主とするのに対し、KivyはUIコンポーネントの構築と、タッチイベントを考慮したリッチなインタラクションに焦点を当てています。
  • 用途
    • スマートフォンやタブレット向けのアプリ開発。
    • タッチ操作を前提としたインタラクティブなアプリケーション。
  • 特徴
    • モバイル向けGUI開発に強い。
    • 独自のグラフィックエンジンを持ち、描画が高速。
    • MD(Material Design)などのUIフレームワークも利用可能。

PyQT / PySide (Qt For Python)

C++で書かれた強力なGUIフレームワークであるQtのPythonバインディングです。非常に高機能で、プロフェッショナルなデスクトップアプリケーション開発によく用いられます。

  • turtleとの比較
    PyQT/PySideは大規模で複雑なアプリケーション開発に適しており、学習曲線は急ですが、その分非常に強力な描画とUI機能を提供します。
  • 用途
    • 複雑なデスクトップアプリケーション。
    • 高機能なツールやユーティリティ。
    • カスタム描画を多用するソフトウェア。
  • 特徴
    • 豊富なウィジェットと強力なレイアウト管理。
    • 信号/スロット機構による柔軟なイベント処理。
    • カスタムグラフィックビュー(QGraphicsView/Scene)による高度な2Dグラフィック描画。
    • クロスプラットフォーム対応で、商用アプリケーションにも利用可能。

turtleモジュールはプログラミングの学習初期段階で視覚的なフィードバックを得るのに最適ですが、要件に応じて上記の代替ライブラリを検討することで、より高度なグラフィック描画やアプリケーション開発が可能になります。

  • プロフェッショナルなデスクトップアプリ開発
    PyQT / PySide
  • モバイルアプリ開発
    Kivy
  • データ可視化やグラフ作成
    Matplotlib
  • ゲーム開発やインタラクティブなアニメーション
    Pygame, Arcade
  • 簡単なGUIや基本的なカスタム描画
    Tkinter