Changes since Python 3.0 (turtle)

2025-06-06

以下に主な変更点を説明します。

Python 3.0 全体の変更と turtle への影響

Python 3.0では、Python 2.xから多くの根本的な変更がありました。turtle モジュールもその影響を受けています。

  1. Unicodeと文字列の扱い
    • Python 3では、全ての文字列がデフォルトでUnicodeになりました。Python 2.xでは strunicode が混在しており、エンコーディングの問題でエラーが発生しやすかったのですが、Python 3ではこの問題が大幅に改善されました。turtle でテキストを描画する際も、この変更の恩恵を受けます。
  2. print 文から print() 関数へ
    • Python 2.xでは print "Hello" のように文として print を使用していましたが、Python 3.0からは print("Hello") のように関数として使用するようになりました。turtle プログラム内でメッセージを出力する際にも、この新しい構文を使用する必要があります。
  3. raw_input() から input() へ
    • Python 2.xの raw_input() が、Python 3.0では input() に名称変更されました。これはユーザーからの入力を受け取る関数で、turtle でインタラクティブなプログラムを作成する際に影響します。

Python 3.0以降の turtle モジュールは、より現代的なプログラミングスタイルに沿うように改善されています。

  1. オブジェクト指向の強化
    • turtle モジュールは、もともとLispのLogo言語に触発されており、関数的なアプローチで利用することもできました(例: forward(100))。しかし、Python 3以降では、複数のタートルを扱うためにオブジェクト指向的なアプローチが推奨されています。
    • 具体的には、turtle.Turtle() を使ってタートルオブジェクトを作成し、そのオブジェクトのメソッドとして描画コマンドを実行する形が一般的になりました。
      import turtle
      
      # Python 3での推奨されるスタイル
      my_turtle = turtle.Turtle()
      my_turtle.forward(100)
      my_turtle.right(90)
      
      # Python 2.xの名残または簡易的な利用(現在も可能)
      # import turtle
      # turtle.forward(100)
      
    • これにより、複数のタートルを同時に画面上で動かしたり、それぞれのタートルに異なる設定(色、形、速度など)を持たせたりすることが容易になりました。
  2. Screen オブジェクトの明確化
    • 描画が行われるキャンバス(ウィンドウ)を表す Screen オブジェクトの役割がより明確になりました。背景色の設定、イベントハンドリング(クリックやキー入力)、アニメーションの制御などは Screen オブジェクトのメソッドとして提供されます。
    • 以前のバージョンでも同様の機能はありましたが、Python 3以降では turtle.Screen() を明示的に作成し、そのオブジェクトを介して画面設定を行うことが推奨されます。
  3. エラーメッセージの改善
    • Python全体の変更として、エラーメッセージがより分かりやすくなりました。これにより、turtle プログラムでエラーが発生した場合でも、問題の原因を特定しやすくなっています。


print文に関するエラー (SyntaxError)

問題
Python 2.xの構文であるprint "Hello"を使っていると、Python 3でSyntaxErrorが発生します。


# Python 2.x のコード
import turtle
print "Hello Turtle!" # Python 3 ではエラーになる
turtle.forward(100)

エラーメッセージの例

SyntaxError: Missing parentheses in call to 'print'. Did you mean print("Hello Turtle!")?

トラブルシューティング
printは関数になったため、必ずカッコ () を付けて呼び出す必要があります。

修正例

# Python 3 の正しいコード
import turtle
print("Hello Turtle!")
turtle.forward(100)

raw_input()に関するエラー (NameError)

問題
Python 2.xのユーザー入力関数であるraw_input()を使っていると、Python 3でNameErrorが発生します。


# Python 2.x のコード
import turtle
name = raw_input("名前を入力してください: ") # Python 3 ではエラーになる
print("こんにちは、" + name)

エラーメッセージの例

NameError: name 'raw_input' is not defined

トラブルシューティング
Python 3ではraw_input()input()に名称変更されました。

修正例

# Python 3 の正しいコード
import turtle
name = input("名前を入力してください: ")
print("こんにちは、" + name)

オブジェクト指向の理解不足によるAttributeError

Python 3ではturtleモジュールをオブジェクト指向的に使うことが推奨されます。これに関するエラーがよく発生します。

a. turtle.Turtle()の呼び出し忘れ

問題
turtleの機能を使おうとしているのに、turtle.Turtle()でタートルオブジェクトを生成していない、またはそのオブジェクトのメソッドを呼び出していない。


import turtle

# 間違い:タートルオブジェクトを作成していない
turtle.forward(100) # AttributeError: module 'turtle' has no attribute 'forward'

エラーメッセージの例

AttributeError: module 'turtle' has no attribute 'forward'

トラブルシューティング
まず、turtle.Turtle()を呼び出してタートルオブジェクトを作成し、そのオブジェクトに対して描画コマンドを呼び出します。

修正例

import turtle

my_turtle = turtle.Turtle() # タートルオブジェクトを作成
my_turtle.forward(100)
my_turtle.left(90)

b. turtle.Screen()の呼び出し忘れ、または誤った利用

問題
画面の設定(背景色など)を行いたいのに、turtle.Screen()を呼び出していない、またはScreenオブジェクトのメソッドを間違ってturtleモジュールのメソッドとして呼び出そうとしている。


import turtle

# 間違い:画面オブジェクトを作成していないか、直接モジュール関数として呼び出そうとしている
turtle.bgcolor("lightgreen") # AttributeError: module 'turtle' has no attribute 'bgcolor'

エラーメッセージの例

AttributeError: module 'turtle' has no attribute 'bgcolor'

トラブルシューティング
画面の設定はturtle.Screen()で作成したScreenオブジェクトに対して行います。

修正例

import turtle

wn = turtle.Screen() # 画面オブジェクトを作成
wn.bgcolor("lightgreen") # 画面オブジェクトのメソッドを呼び出す
my_turtle = turtle.Turtle()
my_turtle.forward(100)

turtleウィンドウがすぐに閉じてしまう

問題
プログラムを実行すると、turtleの描画ウィンドウが一瞬表示されてすぐに閉じてしまう。

原因
プログラムが最後まで実行されると、Pythonは通常、全てのウィンドウを閉じます。turtleの描画が終わった後にプログラムを一時停止させる命令がないためです。

トラブルシューティング
プログラムの最後にturtle.done()またはturtle.mainloop()(もしくはwn.mainloop() if using wn = turtle.Screen()) を追加して、ウィンドウが開いたままになるようにします。ユーザーが手動でウィンドウを閉じるまで待機します。

修正例

import turtle

my_turtle = turtle.Turtle()
my_turtle.shape("turtle")
my_turtle.color("blue")
my_turtle.forward(50)
my_turtle.left(90)
my_turtle.forward(50)

# ウィンドウが閉じないようにする
turtle.done()
# または wn = turtle.Screen() を使っている場合:
# wn.mainloop()

turtleという名前のファイルを作成してしまった場合 (AttributeError or ImportError)

問題
自分で書いたPythonファイルの名前をturtle.pyにしてしまった場合、Pythonは標準ライブラリのturtleモジュールではなく、そのファイルをインポートしようとします。これにより、予期しないエラーが発生します。


turtle.pyという名前のファイルに以下のコードを書いた場合:

# turtle.py
import turtle # これは自分自身をインポートしようとする
turtle.forward(100)

エラーメッセージの例

AttributeError: module 'turtle' has no attribute 'forward'

または、循環参照エラーが発生する場合があります。

トラブルシューティング
自分で作成するPythonファイルのファイル名をturtle.pyにしないでください。例えば、my_drawing.pyのように、他の名前に変更してください。

turtleモジュールは、グラフィック描画のためにtkinterというPythonのGUIライブラリを使用しています。tkinterが正しくインストールされていない環境では、turtleが動作しません。

問題
turtleを使用しようとすると、ModuleNotFoundError: No module named '_tkinter'や、TclError: no display name and no $DISPLAY environment variableのようなエラーが出ることがあります。

  • 仮想環境
    仮想環境を使用している場合、ベースのPython環境にtkinterがインストールされていても、仮想環境には含まれていないことがあります。仮想環境を再作成するか、仮想環境内でtkinterをインストールする方法を確認してください(ただし、多くの場合、仮想環境はベースのPythonのtkinterを利用します)。
  • Linux
    多くのLinuxディストリビューションでは、tkinterはPythonとは別にインストールする必要があります。例えばDebian/Ubuntu系では以下のようにインストールできます。
    sudo apt-get update
    sudo apt-get install python3-tk
    
    CentOS/Fedora系では:
    sudo yum install python3-tkinter
    # または dnf install python3-tkinter
    
  • Windows / macOS
    通常、Pythonを公式サイトからインストールすればtkinterも一緒にインストールされます。もし問題が発生する場合は、Pythonのインストールを「修復」するか、再インストールする際にtkinterがオプションで選択されていることを確認してください。


ここでは、これらの変更を反映した具体的なコード例を、Python 2.xのコードと比較しながら説明します。

print文からprint()関数への変更

Python 2.xではprintは文でしたが、Python 3.xでは関数になりました。

Python 2.x の例

# Python 2.x
import turtle
print "Hello from Python 2.x Turtle!"
turtle.forward(50)
turtle.done()

Python 3.x の例

# Python 3.x
import turtle
print("Hello from Python 3.x Turtle!") # print は関数になったため、カッコが必要
turtle.forward(50)
turtle.done() # ウィンドウがすぐに閉じないようにする

解説
最も目立つ変更点です。Python 3.xでは、printの後に表示したい内容をカッコで囲む必要があります。

オブジェクト指向的なアプローチの強化

Python 3.xでは、turtleモジュールはデフォルトのタートル(自動的に作成される)を直接操作するよりも、turtle.Turtle()で明示的にタートルオブジェクトを作成し、それを操作することが推奨されます。これにより、複数のタートルを扱うのが容易になります。

a. デフォルトのタートルを使う場合 (Python 2.x でも 3.x でも機能するが、3.x では非推奨)

Python 2.x / Python 3.x 両方で動作

import turtle

# デフォルトのタートルを直接操作
turtle.forward(100)
turtle.right(90)
turtle.forward(100)

turtle.done()

解説
この書き方はPython 3.xでも動きますが、複数のタートルを扱う場合に問題が生じる可能性があります。また、より「Pythonらしい」オブジェクト指向的な書き方ではありません。

b. 明示的にタートルオブジェクトを作成して操作する (Python 3.x 推奨)

Python 3.x の推奨される書き方

import turtle

# 画面 (Screen) オブジェクトを作成
wn = turtle.Screen()
wn.bgcolor("lightblue") # 背景色を設定

# タートルオブジェクトを作成
my_turtle = turtle.Turtle()
my_turtle.shape("turtle") # タートルの形を「亀」にする
my_turtle.color("blue")   # タートルの色を青にする
my_turtle.pensize(3)      # ペンの太さを3にする

# タートルを動かす
my_turtle.forward(100)
my_turtle.right(90)
my_turtle.forward(100)
my_turtle.left(90)
my_turtle.forward(50)

# 別のタートルも作成できる
another_turtle = turtle.Turtle()
another_turtle.shape("circle")
another_turtle.color("red")
another_turtle.penup() # ペンを上げて移動
another_turtle.goto(-150, 50)
another_turtle.pendown() # ペンを下ろして描画開始
another_turtle.circle(40)

# ウィンドウが閉じないようにする
wn.exitonclick() # ウィンドウをクリックすると閉じる
# または wn.mainloop() も可能

解説

  • wn.exitonclick(): Screenオブジェクトのメソッドで、ウィンドウがクリックされるまでプログラムの実行を停止します。これにより、描画結果をユーザーが見る時間を確保できます。turtle.done()も同様の役割を果たしますが、exitonclick()はクリックで終了できるため、より便利です。
  • my_turtle.forward(100): 作成したタートルオブジェクトのメソッドを呼び出して描画します。
  • my_turtle = turtle.Turtle(): タートル(描画するペン)を表すTurtleオブジェクトを明示的に作成します。これにより、複数のタートルを個別に制御できます。
  • wn = turtle.Screen(): 描画するキャンバス(ウィンドウ)を表すScreenオブジェクトを明示的に作成します。背景色の設定やイベント処理(クリックなど)はこのオブジェクトを通して行います。

done() / mainloop() の利用

Python 2.xではプログラムの最後にturtle.done()がしばしば使われましたが、Python 3.xではScreenオブジェクトのmainloop()exitonclick()がより推奨されます。

Python 2.x の例

# Python 2.x
import turtle
turtle.circle(50)
turtle.done() # ウィンドウが開いたままになる

Python 3.x の例

# Python 3.x (オブジェクト指向スタイル)
import turtle

wn = turtle.Screen()
my_turtle = turtle.Turtle()
my_turtle.circle(50)

wn.mainloop() # ウィンドウが開いたままになり、イベントループを開始する
# または wn.exitonclick()

解説
mainloop()は、GUIアプリケーションにおけるイベントループを開始し、ユーザーの操作(マウスイベント、キーボードイベントなど)を待ち受けます。これにより、turtleウィンドウがすぐに閉じず、インタラクティブなプログラムを作成できます。

Python 2.xでユーザーからの入力を受け取るraw_input()関数は、Python 3.xではinput()に名称変更されました。

Python 2.x の例

# Python 2.x
import turtle
name = raw_input("名前を入力してください: ")
turtle.write("こんにちは、" + name, font=("Arial", 16, "normal"))
turtle.done()

Python 3.x の例

# Python 3.x
import turtle

wn = turtle.Screen()
my_turtle = turtle.Turtle()
my_turtle.hideturtle() # タートルを非表示にする
my_turtle.penup()
my_turtle.goto(0, 50)

name = input("名前を入力してください: ") # Python 3.x では input()
my_turtle.write("こんにちは、" + name, align="center", font=("Arial", 16, "normal"))

wn.exitonclick()

解説
input()関数は、Python 3.xでは常に文字列として入力を返します。Python 2.xのinput()とは異なり、評価は行いません(Python 2.xのinput()eval(raw_input())に相当)。



ここでは、Python 3.0以降でグラフィックプログラミングを行う際の主な代替方法とその特徴について説明します。

Tkinter (標準ライブラリ)

turtleモジュールは内部的にTkinterを使用しています。TkinterはPythonに標準でバンドルされているGUIライブラリであり、シンプルで軽量なデスクトップアプリケーションを開発するのに適しています。

特徴

  • 描画機能
    キャンバスウィジェットを使用することで、基本的な2Dグラフィック描画も可能。
  • デスクトップアプリ
    小規模なデスクトップアプリケーションやツールを素早く作成できる。
  • 学習しやすい
    他のGUIライブラリと比較してシンプルで、基本的なGUIの概念を学ぶのに適している。
  • 標準ライブラリ
    Pythonをインストールすれば追加でインストールする必要がない。

turtleとの関連性
turtleで描画されるウィンドウやイベント処理は、Tkinterの機能によって実現されています。より低レベルでグラフィックを制御したい場合や、ボタンやテキスト入力などのGUI要素を追加したい場合は、Tkinterを直接使用するのが自然な流れです。

簡単なコード例 (Tkinter)

import tkinter as tk

def draw_square(canvas):
    canvas.create_rectangle(50, 50, 150, 150, outline="blue", fill="lightblue")

root = tk.Tk()
root.title("Tkinter Drawing Example")

canvas = tk.Canvas(root, width=300, height=200, bg="white")
canvas.pack()

draw_square(canvas)

# ボタンを追加して、ボタンクリックで何かをする例
def on_button_click():
    print("ボタンがクリックされました!")
    canvas.create_oval(100, 100, 200, 200, outline="red", fill="pink")

button = tk.Button(root, text="円を描く", command=on_button_click)
button.pack()

root.mainloop() # Tkinterアプリケーションのイベントループを開始

解説
turtleの代わりにtkinter.Canvasを使って直接図形を描画しています。ボタンなどのGUI要素も追加できます。

PyQt / PySide (より高度なGUI)

QtはC++で書かれた非常に強力なクロスプラットフォームGUIフレームワークであり、そのPythonバインディングがPyQt(商用ライセンスあり、GPLv3ライセンスの無料版あり)とPySide(LGPLライセンスで商用利用も可能)です。

特徴

  • Qt Designer
    GUIを視覚的にデザインできるツールも提供されている。
  • 大規模アプリケーション向け
    複雑で大規模なデスクトップアプリケーション開発に適している。
  • 強力なグラフィック機能
    高度な2D/3Dグラフィック、データ可視化、マルチメディア機能もサポート。
  • クロスプラットフォーム
    Windows, macOS, Linuxなど、様々なOSでネイティブに近い外観のアプリケーションを作成できる。
  • 豊富なウィジェット
    高機能で見た目の良いUIコンポーネントが多数提供されている。

turtleとの関連性
turtleとは用途が大きく異なります。簡単な描画だけでなく、本格的なデスクトップアプリケーションを開発したい場合に選択肢となります。学習コストはTkinterより高いですが、その分できることも多くなります。

簡単なコード例 (PyQt5)

# PyQt5 (インストールが必要: pip install PyQt5)
import sys
from PyQt5.QtWidgets import QApplication, QWidget, QLabel
from PyQt5.QtGui import QPainter, QColor, QPen
from PyQt5.QtCore import Qt

class DrawingApp(QWidget):
    def __init__(self):
        super().__init__()
        self.setWindowTitle("PyQt5 Drawing Example")
        self.setGeometry(100, 100, 400, 300)

    def paintEvent(self, event):
        painter = QPainter(self)
        painter.setRenderHint(QPainter.Antialiasing) # アンチエイリアス

        # 青い四角形を描画
        painter.setPen(QPen(QColor(0, 0, 255), 3)) # ペンの色と太さ
        painter.drawRect(50, 50, 100, 100)

        # 赤い円を描画
        painter.setPen(QPen(QColor(255, 0, 0), 2))
        painter.drawEllipse(150, 150, 80, 80)

        # テキストを描画
        painter.setPen(QPen(QColor(0, 0, 0)))
        painter.drawText(20, 20, "Hello PyQt5!")

if __name__ == '__main__':
    app = QApplication(sys.argv)
    ex = DrawingApp()
    ex.show()
    sys.exit(app.exec_())

Pygame (ゲーム開発・インタラクティブグラフィック)

Pygameは2Dゲーム開発に特化したライブラリですが、シンプルなグラフィック描画やアニメーションにも非常に適しています。

特徴

  • マルチメディア
    サウンドや音楽の再生もサポート。
  • インタラクティブ
    キーボードやマウスからの入力を簡単に扱える。
  • 高速な描画
    グラフィック処理が最適化されており、比較的スムーズなアニメーションが可能。
  • ゲーム開発向け
    スプライト、イベント処理、衝突判定など、ゲーム開発に必要な機能が豊富。

turtleとの関連性
turtleが静的な描画や教育目的であるのに対し、Pygameは動的なグラフィックやインタラクティブな体験を重視します。基本的な幾何学的図形の描画も可能ですが、より「描画」よりも「ゲームオブジェクトの操作」に焦点を当てています。

簡単なコード例 (Pygame)

# Pygame (インストールが必要: pip install pygame)
import pygame

# Pygameの初期化
pygame.init()

# 画面設定
screen_width = 600
screen_height = 400
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("Pygame Drawing Example")

# 色の定義
BLUE = (0, 0, 255)
RED = (255, 0, 0)
WHITE = (255, 255, 255)

running = True
while running:
    for event in pygame.event.get():
        if event.type == pygame.QUIT:
            running = False

    # 画面を白で塗りつぶす
    screen.fill(WHITE)

    # 青い四角形を描画
    pygame.draw.rect(screen, BLUE, (50, 50, 100, 100), 2) # (表面, 色, (x, y, 幅, 高さ), 線幅)

    # 赤い円を描画
    pygame.draw.circle(screen, RED, (300, 200), 70, 0) # (表面, 色, (中心x, 中心y), 半径, 線幅(0は塗りつぶし))

    # 画面を更新
    pygame.display.flip()

pygame.quit()

Kivy (マルチタッチ・モバイルアプリ)

Kivyは、マルチタッチアプリケーションに特化したクロスプラットフォームのGUIライブラリです。モバイル(Android, iOS)アプリ開発も視野に入れている場合に非常に強力です。

特徴

  • Kv言語
    UIのレイアウトを宣言的に記述できるカスタム言語を持つ。
  • 独自の描画エンジン
    OpenGL ES 2を利用した高速な描画。
  • クロスプラットフォーム
    Windows, macOS, Linuxだけでなく、Android, iOS, Raspberry Piもサポート。
  • NUI (Natural User Interface)
    マルチタッチジェスチャーを簡単に実装できる。

turtleとの関連性
turtleとは全く異なるアプローチで、より現代的でインタラクティブなUI/UXを目指す場合に選択されます。学習コストは高めですが、モバイルアプリ開発をPythonで行いたい場合には有力な選択肢です。

turtleのようなインタラクティブな描画とは異なりますが、データ可視化の文脈では、Pythonで静的な2Dプロットを作成するためのデファクトスタンダードです。

特徴

  • Pandas/NumPyとの連携
    データ分析ライブラリとシームレスに連携。
  • 出版品質
    高品質な図を作成でき、論文やレポートに利用されることも多い。
  • 多様なプロット
    線グラフ、散布図、棒グラフ、ヒストグラム、3Dプロットなど、あらゆる種類のプロットを作成可能。
  • 科学技術計算
    科学技術計算のデータをグラフや図で可視化するのに非常に強力。

turtleとの関連性
turtleが「線で絵を描く」ツールであるのに対し、Matplotlibは「数値データをグラフ化する」ツールです。目的が異なるため、直接の代替ではありませんが、もし「図形を描いて何かを表現したい」という場合に、データに基づいた図形であればMatplotlibがより適していることがあります。

簡単なコード例 (Matplotlib)

# Matplotlib (インストールが必要: pip install matplotlib)
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

# データの作成
x = np.linspace(0, 2 * np.pi, 100)
y = np.sin(x)

# プロットの作成
plt.figure(figsize=(8, 6))
plt.plot(x, y, label='sin(x)')
plt.title("Sine Wave with Matplotlib")
plt.xlabel("X-axis")
plt.ylabel("Y-axis")
plt.grid(True)
plt.legend()

# グラフの表示
plt.show()

turtleはPythonプログラミングとグラフィックの入門には最適ですが、プロジェクトの要件がより複雑になるにつれて、上記のような専用のライブラリが優れた代替手段となります。

  • データ可視化
    Matplotlib
  • マルチタッチ・モバイルアプリ
    Kivy
  • ゲーム開発・動的グラフィック
    Pygame
  • GUIアプリケーション開発
    Tkinter (シンプル), PyQt/PySide (高機能)