Pygame でイベントを意図的に無視する:set_blocked() 以外の方法
Pygame のイベント処理において、event.set_blocked()
は、特定のイベントタイプがイベントキューに追加されるのを一時的にブロック(阻止)するために使用される関数です。
基本的な考え方
Pygame は、ユーザーのキーボード入力、マウスの動き、ウィンドウの操作など、さまざまな種類のイベントを検知し、それらをイベントキューと呼ばれる場所に格納します。ゲームのメインループでは、このイベントキューからイベントを順番に取得し、それに応じてゲームの状態を更新したり、処理を行ったりします。
event.set_blocked()
は、このイベントキューへの特定のイベントタイプの追加を制御します。この関数を使用することで、特定のイベントが発生しても、それがイベントキューに格納されなくなるため、ゲームのメインループでそのイベントを処理することがなくなります。
具体的な使い方と引数
event.set_blocked()
は、Pygame の event
モジュールに含まれる関数です。以下のように使用します。
import pygame
pygame.init()
# 画面サイズの指定
screen_width = 800
screen_height = 600
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("イベントのブロック")
running = True
# 特定のイベントタイプをブロックする
pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN) # キーが押されたイベントをブロック
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
# ここには到達しない(pygame.KEYDOWN がブロックされているため)
print("キーが押されました!")
# 画面の更新など
screen.fill((0, 0, 0)) # 画面を黒で塗りつぶす
pygame.display.flip()
pygame.quit()
上記の例では、pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
を使用して、pygame.KEYDOWN
イベント(キーが押されたイベント)をブロックしています。このため、ユーザーがキーを押しても、for event in pygame.event.get():
のループ内で event.type == pygame.KEYDOWN
の条件は真にならず、print("キーが押されました!")
は実行されません。
event.set_blocked()
の引数
event.set_blocked()
は、ブロックしたいイベントタイプを引数として受け取ります。Pygame にはさまざまなイベントタイプが定義されており、それらは pygame.event
モジュール内で定数として定義されています。主なものとしては以下のようなものがあります。
pygame.VIDEORESIZE
: ウィンドウのサイズが変更されたイベントpygame.QUIT
: ウィンドウが閉じられるイベントpygame.MOUSEMOTION
: マウスが動いたイベントpygame.MOUSEBUTTONUP
: マウスボタンが離されたイベントpygame.MOUSEBUTTONDOWN
: マウスボタンが押されたイベントpygame.KEYUP
: キーが離されたイベントpygame.KEYDOWN
: キーが押されたイベント
複数のイベントタイプのブロック
# 複数のイベントタイプを個別にブロック
pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
pygame.event.set_blocked(pygame.MOUSEBUTTONDOWN)
# イベントタイプのリストまたはタプルを渡す
pygame.event.set_blocked([pygame.KEYUP, pygame.MOUSEBUTTONUP])
特定のイベントタイプのブロック解除
ブロックされたイベントタイプを再び有効にする(イベントキューに追加できるようにする)には、event.set_allowed()
関数を使用します。
pygame.event.set_allowed(pygame.KEYDOWN) # pygame.KEYDOWN のブロックを解除
event.set_blocked()
の使用場面
event.set_blocked()
は、以下のような場合に役立ちます。
- ユーザーインターフェース(UI)の特定の要素が表示されている間、背景のゲーム操作を一時的に無効にしたい場合。
- 特定のゲーム状態において、特定のイベントを無視したい場合。
- ゲームの一時停止中に、キー入力やマウス操作を無効にしたい場合。
注意点
event.set_blocked()
は、あくまでイベントキューへの追加を制御するものであり、イベントの発生自体を止めるわけではありません。例えば、キーボードが押されると、ハードウェアレベルではキーダウンイベントが発生しますが、pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
を実行している場合、そのイベントは Pygame のイベントキューには追加されません。
Pygame の event.set_blocked()
は、特定のイベントタイプがイベントキューに追加されるのを制御するための便利な機能ですが、使い方によっては以下のような一般的なエラーや問題が発生することがあります。
イベントが全く処理されない
エラー
event.set_blocked()
を誤って使用し、意図しないイベントタイプをブロックしてしまい、そのイベントがゲーム内で全く処理されなくなってしまうことがあります。
例
import pygame
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((800, 600))
pygame.display.set_caption("ブロックされたイベント")
running = True
pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN) # キー入力をブロック
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
print("キーが押されました!") # ここは実行されない
pygame.display.flip()
pygame.quit()
トラブルシューティング
- イベントループのロジックを確認する
イベント処理の他の部分で、イベントが意図せず無視されている可能性も考慮します。例えば、event.type
の比較が間違っている、またはイベント処理の条件分岐が正しくないなど。 - ブロックを一時的に解除してテストする
問題のイベントが本当にブロックされているのかどうかを確認するために、一時的にpygame.event.set_blocked()
の呼び出しをコメントアウトするか、pygame.event.set_allowed()
を使用してブロックを解除してテストします。 - ブロックしているイベントタイプを確認する
pygame.event.set_blocked()
でどのイベントタイプがブロックされているかを確認します。コードの該当箇所をチェックし、意図したイベントタイプがブロックされているかを確認します。
必要なイベントがブロックされてしまう
エラー
特定のゲーム状態において、意図せず重要なイベント(例えば、ゲーム終了のための pygame.QUIT
イベントなど)までブロックしてしまうことがあります。
例
import pygame
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((800, 600))
pygame.display.set_caption("意図しないブロック")
running = True
pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
pygame.event.set_blocked(pygame.QUIT) # 終了イベントもブロック
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False # ここは実行されない
pygame.display.flip()
pygame.quit()
トラブルシューティング
- 状態管理を正しく行う
特定のゲーム状態でのみイベントをブロックしたい場合は、適切なフラグや条件を使用してevent.set_blocked()
を呼び出すタイミングを制御します。 - pygame.QUIT イベントは通常ブロックしない
ゲームを正しく終了させるためには、pygame.QUIT
イベントは通常ブロックしないように注意します。 - ブロックするイベントタイプを慎重に選択する
ブロックするイベントタイプを明確に理解し、本当にブロックしたいイベントだけを指定するようにします。
ブロックと許可の管理が複雑になる
エラー
複数の場所で event.set_blocked()
と event.set_allowed()
を呼び出していると、どのイベントが現在ブロックされているのか、または許可されているのかを追跡するのが困難になることがあります。
トラブルシューティング
- コメントで状態を明記する
コード内で、特定のブロック状態がなぜ設定されているのか、いつ解除されるのかなどをコメントで明記すると、理解が深まります。 - 状態管理を明確にする
特定のゲーム状態に応じてイベントのブロック状態を管理するための変数や関数を用意すると、コードが整理されやすくなります。
予期しない動作
エラー
event.set_blocked()
の使用が原因で、ゲームの挙動が意図した通りにならない場合があります。例えば、特定の操作が反応しない、または予期しないタイミングで反応するなど。
トラブルシューティング
- 段階的にテストする
event.set_blocked()
の影響を切り分けるために、関連する部分のコードを一時的にコメントアウトして、問題が解消されるかどうかを確認します。 - コード全体を見直す
event.set_blocked()
の使用箇所だけでなく、イベント処理全体、および関連するロジックを注意深く確認します。
event.set_blocked() の呼び出し忘れ
エラー
特定のゲーム状態に入った際にイベントをブロックする処理を実装したが、その状態から抜けた際にブロックを解除する処理を忘れてしまうことがあります。
トラブルシューティング
- finally ブロックの使用
特定の処理が終わった後に必ずブロックを解除したい場合は、try...finally
ブロックを使用することを検討します。 - 状態遷移を意識したコード設計
ゲームの状態が変わる際に、必ずイベントのブロック状態も適切に切り替わるようにコードを設計します。
- 問題の特定
どのようなイベントが期待通りに処理されないのかを具体的に特定します。 - コードの確認
event.set_blocked()
がどこでどのように使用されているかを確認します。 - 一時的な変更
event.set_blocked()
の呼び出しを一時的にコメントアウトして、問題が解決するかどうかを確認します。 - イベントログの出力
発生しているイベントのタイプをログに出力して、実際にどのようなイベントが来ているのかを確認します。 - 段階的なテスト
問題の原因となりそうなコードの範囲を絞り込み、少しずつテストを行います。
event.set_blocked()
は、特定のイベントタイプがイベントキューに追加されるのを制御するために使用されます。以下に、いくつかの具体的な使用例と解説を示します。
例1:ゲーム一時停止中のキー入力を無効にする
ゲームが一時停止している間、プレイヤーのキー入力を受け付けないようにする場合です。
import pygame
pygame.init()
screen_width = 800
screen_height = 600
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("一時停止")
running = True
paused = False
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key == pygame.K_p: # 'p'キーで一時停止を切り替える
paused = not paused
if paused:
pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN) # 一時停止中はキー入力をブロック
print("ゲーム一時停止")
else:
pygame.event.set_allowed(pygame.KEYDOWN) # 一時停止解除時はキー入力を許可
print("ゲーム再開")
else:
if not paused:
print(f"キー '{pygame.key.name(event.key)}' が押されました")
screen.fill((50, 50, 50)) # 背景色
if paused:
font = pygame.font.Font(None, 74)
text = font.render("一時停止", True, (255, 255, 255))
text_rect = text.get_rect(center=(screen_width // 2, screen_height // 2))
screen.blit(text, text_rect)
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
- paused 変数
ゲームの一時停止状態を管理するブール変数です。 - 一時停止の切り替え
pygame.KEYDOWN
イベントを検知し、'p'
キーが押された場合にpaused
の値を反転させます。 - pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
paused
がTrue
の場合(一時停止中)、すべてのpygame.KEYDOWN
イベントをブロックします。これにより、キーが押されてもイベントキューに追加されず、ゲーム内の他のキー入力処理が実行されなくなります。 - pygame.event.set_allowed(pygame.KEYDOWN)
paused
がFalse
の場合(一時停止解除)、pygame.KEYDOWN
イベントのブロックを解除します。これにより、キー入力が再び処理されるようになります。 - 一時停止中の表示
画面に「一時停止」の文字を表示することで、現在の状態をプレイヤーに示します。
例2:特定の UI 要素が表示されている間、マウス入力を無効にする
ゲーム中にメニューやインベントリなどの UI 要素が表示されている間、背景のゲーム操作(キャラクターの移動など)を無効にしたい場合です。
import pygame
pygame.init()
screen_width = 800
screen_height = 600
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("UI表示中のマウス無効化")
running = True
show_ui = False
# UI要素の矩形
ui_rect = pygame.Rect(200, 150, 400, 300)
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key == pygame.K_i: # 'i'キーでUI表示を切り替える
show_ui = not show_ui
if show_ui:
pygame.event.set_blocked(pygame.MOUSEBUTTONDOWN) # UI表示中はマウスボタンをブロック
pygame.event.set_blocked(pygame.MOUSEMOTION) # UI表示中はマウスの動きをブロック
print("UI表示中")
else:
pygame.event.set_allowed(pygame.MOUSEBUTTONDOWN) # UI非表示時はマウスボタンを許可
pygame.event.set_allowed(pygame.MOUSEMOTION) # UI非表示時はマウスの動きを許可
print("UI非表示")
elif event.type == pygame.MOUSEBUTTONDOWN:
if not show_ui:
print("マウスボタンが押されました (背景)")
else:
print("マウスボタンが押されました (UI表示中)")
elif event.type == pygame.MOUSEMOTION:
if not show_ui:
# 背景でのマウス移動処理(例)
pass
else:
# UI上でのマウス移動処理(例)
pass
screen.fill((100, 100, 100)) # 背景色
if show_ui:
pygame.draw.rect(screen, (200, 200, 200), ui_rect)
font = pygame.font.Font(None, 36)
text = font.render("メニュー", True, (0, 0, 0))
text_rect = text.get_rect(center=ui_rect.center)
screen.blit(text, text_rect)
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
- show_ui 変数
UI の表示状態を管理するブール変数です。 - UI表示の切り替え
'i'
キーが押されるとshow_ui
の値が切り替わります。 - pygame.event.set_blocked(pygame.MOUSEBUTTONDOWN) と pygame.event.set_blocked(pygame.MOUSEMOTION)
show_ui
がTrue
の場合、マウスボタンが押されたイベント (pygame.MOUSEBUTTONDOWN
) とマウスの動きのイベント (pygame.MOUSEMOTION
) をブロックします。これにより、UI が表示されている間、背景のゲームに対するマウス操作が無視されます。 - pygame.event.set_allowed(...)
show_ui
がFalse
の場合、マウス関連のイベントのブロックを解除し、通常のマウス操作を有効にします。 - UI の描画
show_ui
がTrue
の場合、簡単な UI 要素(矩形とテキスト)を描画します。 - イベント処理の分岐
マウスイベントを処理する際に、show_ui
の状態に応じて異なるメッセージを出力しています。
例3:特定のキー入力のみを許可する
ゲーム内で特定の操作(例:上下左右の移動)のみを許可し、他のキー入力を無視する場合です。
import pygame
pygame.init()
screen_width = 800
screen_height = 600
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("特定のキーのみ許可")
running = True
allowed_keys = [pygame.K_LEFT, pygame.K_RIGHT, pygame.K_UP, pygame.K_DOWN]
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key in allowed_keys:
print(f"移動キー '{pygame.key.name(event.key)}' が押されました")
else:
print(f"キー '{pygame.key.name(event.key)}' は無視されました")
screen.fill((200, 200, 200))
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
この例では event.set_blocked()
を直接使用していませんが、特定のキー入力のみを許可するという目的を達成するために、event.KEYDOWN
イベントを処理する際に、許可されたキーのリスト (allowed_keys
) に含まれるかどうかをチェックしています。
もし、他のすべてのキー入力を明示的にブロックしたい場合は、以下のように event.set_blocked()
を使用できます。
import pygame
pygame.init()
screen_width = 800
screen_height = 600
screen = pygame.display.set_mode((screen_width, screen_height))
pygame.display.set_caption("特定のキーのみ許可 (ブロック方式)")
running = True
allowed_keys = [pygame.K_LEFT, pygame.K_RIGHT, pygame.K_UP, pygame.K_DOWN]
# すべてのキー入力を一旦ブロック
pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key in allowed_keys:
print(f"移動キー '{pygame.key.name(event.key)}' が押されました")
# 許可されたキー以外はブロックされているため、ここでは処理されない
screen.fill((200, 200, 200))
pygame.display.flip()
pygame.quit()
- pygame.event.set_blocked(pygame.KEYDOWN)
最初にすべてのpygame.KEYDOWN
イベントをブロックします。 - 許可されたキーのチェック
イベントループ内でpygame.KEYDOWN
イベントが発生した場合、allowed_keys
に含まれるかどうかをチェックします。 - pygame.event.set_allowed() を使用しない点
この例では、許可されたキーが押された場合でも、他のキーのブロックは解除されません。これは、特定の状況下でのみ許可されたキーを受け付けたい場合に有効です。
イベントループ内での条件分岐による無視
最も基本的な代替手段は、イベントループ内で特定のイベントを検出した際に、そのイベントに対する処理を行わないように条件分岐で制御することです。
例
ゲームが一時停止中の場合、キー入力を処理しない。
import pygame
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((800, 600))
pygame.display.set_caption("条件分岐による無視")
running = True
paused = False
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key == pygame.K_p:
paused = not paused
print(f"ゲーム {'一時停止' if paused else '再開'}")
elif not paused: # 一時停止中でない場合のみキー入力を処理
print(f"キー '{pygame.key.name(event.key)}' が押されました")
# 描画処理など
screen.fill((100, 100, 100))
if paused:
font = pygame.font.Font(None, 74)
text = font.render("一時停止", True, (255, 255, 255))
text_rect = text.get_rect(center=screen.get_rect().center)
screen.blit(text, text_rect)
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
event.set_blocked()
を使用せずに、イベントループ内での条件判断で同様の効果を実現しています。if not paused:
という条件文によって、一時停止中でない場合にのみキー入力の処理が行われます。paused
フラグを用いて、ゲームの一時停止状態を管理します。
メリット
- 特定のイベントだけを無視する柔軟な制御が可能。
- シンプルで理解しやすい。
デメリット
- イベントループ内に多くの条件分岐が増えると、コードが複雑になる可能性がある。
イベントハンドラーの選択的な登録
特定のゲーム状態に応じて、異なるイベントハンドラーを登録する方法です。Pygame 自体に直接的な機能はありませんが、自分でイベント処理の仕組みを工夫することで実現できます。
例
特定の UI が表示されている間は、UI のイベントハンドラーのみを呼び出す。
import pygame
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((800, 600))
pygame.display.set_caption("イベントハンドラーの切り替え")
running = True
show_ui = False
def handle_game_event(event):
if event.type == pygame.KEYDOWN:
print(f"ゲームイベント: キー '{pygame.key.name(event.key)}'")
elif event.type == pygame.MOUSEBUTTONDOWN:
print("ゲームイベント: マウスボタン")
def handle_ui_event(event):
if event.type == pygame.KEYDOWN:
print("UIイベント: キー") # UI操作用のキー処理
elif event.type == pygame.MOUSEBUTTONDOWN:
print("UIイベント: マウスボタン (UI)")
current_handler = handle_game_event
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key == pygame.K_u:
show_ui = not show_ui
current_handler = handle_ui_event if show_ui else handle_game_event
print(f"UI {'表示' if show_ui else '非表示'}")
current_handler(event) # 選択されたハンドラーを呼び出す
# 描画処理など
screen.fill((150, 150, 150))
if show_ui:
pygame.draw.rect(screen, (200, 200, 200), (200, 150, 400, 300))
font = pygame.font.Font(None, 36)
text = font.render("UI", True, (0, 0, 0))
text_rect = text.get_rect(center=(400, 300))
screen.blit(text, text_rect)
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
- イベントループ内で、
current_handler(event)
を呼び出すことで、現在の状態に応じたイベント処理を行います。 - UI の表示状態 (
show_ui
) に応じて、current_handler
を切り替えます。 current_handler
変数で、現在有効なイベントハンドラーを保持します。handle_game_event
とhandle_ui_event
という異なるイベントハンドラーを定義します。
メリット
- 特定のイベントのみを特定の状態下で処理するのに適している。
- 状態に応じたより複雑なイベント処理を整理できる。
デメリット
- イベントハンドラーの管理が必要になるため、やや複雑になる。
イベントキューの操作(高度な方法)
Pygame のイベントキューを直接操作することで、特定のイベントを削除したり、追加したりすることも可能です。ただし、これはより高度なテクニックであり、注意が必要です。
例
特定のイベントをキューから削除する(例として、マウスイベントをUI表示中に削除する)。
import pygame
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((800, 600))
pygame.display.set_caption("イベントキュー操作")
running = True
show_ui = False
ui_rect = pygame.Rect(200, 150, 400, 300)
while running:
events = pygame.event.get()
new_events = []
for event in events:
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
new_events.append(event)
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if event.key == pygame.K_u:
show_ui = not show_ui
print(f"UI {'表示' if show_ui else '非表示'}")
new_events.append(event) # UI切り替えイベントは処理
elif not show_ui:
print(f"ゲーム: キー '{pygame.key.name(event.key)}'")
new_events.append(event)
elif event.type == pygame.MOUSEBUTTONDOWN:
if not show_ui:
print("ゲーム: マウスボタン")
new_events.append(event)
else:
print("UI表示中")
elif event.type == pygame.MOUSEMOTION:
if not show_ui:
pass # 背景でのマウス移動
else:
pass # UI上でのマウス移動
pygame.event.post(new_events) # 処理後のイベントをキューに戻す
# 描画処理など
screen.fill((180, 180, 180))
if show_ui:
pygame.draw.rect(screen, (220, 220, 220), ui_rect)
font = pygame.font.Font(None, 36)
text = font.render("UI", True, (0, 0, 0))
text_rect = text.get_rect(center=ui_rect.center)
screen.blit(text, text_rect)
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
- 最後に
pygame.event.post(new_events)
を使用して、処理後のイベントをイベントキューに戻します。 - 取得したイベントを一つずつチェックし、UI 表示中(
show_ui
がTrue
)でマウスボタンイベント (pygame.MOUSEBUTTONDOWN
) が発生した場合、そのイベントをnew_events
に追加しません。 pygame.event.get()
で全てのイベントを取得します。
メリット
- イベントキューを直接操作することで、より細やかな制御が可能。
デメリット
- イベント処理の順序やタイミングに注意が必要。
- イベントキューの管理が複雑になり、バグの原因になりやすい。
状態変数とフラグによる制御の徹底
イベントをブロックするのではなく、ゲームの状態を表す変数を活用し、その状態に応じてイベントの処理内容を決定する方法です。
例
ゲームの状態が「移動中」でなければ、移動キー入力を無視する。
import pygame
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((800, 600))
pygame.display.set_caption("状態変数による制御")
running = True
game_state = "playing" # "playing", "paused", "menu" など
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == pygame.QUIT:
running = False
elif event.type == pygame.KEYDOWN:
if game_state == "playing":
if event.key == pygame.K_LEFT:
print("左へ移動")
elif event.key == pygame.K_p:
game_state = "paused" if game_state == "playing" else "playing"
print(f"ゲーム状態: {game_state}")
elif game_state == "paused":
if event.key == pygame.K_p:
game_state = "playing"
print(f"ゲーム状態: {game_state}")
elif game_state == "menu":
# メニュー操作のキー処理
pass
# 描画処理など
screen.fill((255, 255, 255))
if game_state == "paused":
font = pygame.font.Font(None, 74)
text = font.render("一時停止", True, (0, 0, 0))
text_rect = text.get_rect(center=screen.get_rect().center)
screen.blit(text, text_rect)
elif game_state == "menu":
font = pygame.font.Font(None, 48)
text = font.render("メニュー", True, (0, 0, 0))
text_rect = text.get_rect(center=screen.get_rect().center)
screen.blit(text, text_rect)
pygame.display.flip()
pygame.quit()
解説
event.set_blocked()
を使用せずに、ゲームの状態に基づいてイベントの処理を制御しています。- イベント処理の際に、
game_state
の値を確認し、現在の状態に応じてキー入力などの処理を行います。 game_state
変数で現在のゲームの状態を管理します。
メリット
- コードの可読性が高まる。
- ゲームの状態を明確に管理できる。
デメリット
- 状態管理が複雑になると、コード量が増える可能性がある。
event.set_blocked()
は特定のイベントを簡単にブロックできる便利な機能ですが、上記のような代替手段も存在します。どの方法を選択するかは、ゲームの要件や複雑さ、そして開発者の好みによって異なります。
一般的には、シンプルな一時停止や UI 表示などの状況では、イベントループ内での条件分岐が最も手軽で分かりやすい方法です。
より複雑なイベント処理や、特定のイベントのみを特定の状況下で処理したい場合は、イベントハンドラーの選択的な登録や、状態変数とフラグによる制御の徹底が有効です。
イベントキューを直接操作する方法は、より高度な制御が必要な場合に検討するべきですが、その分複雑さも増すため、注意が必要です。