Pygame event.set_allowed()とは?初心者向け日本語解説と活用方法
event.set_allowed() とは
pygame.event.set_allowed()
は、Pygameのイベントキューに許可するイベントの種類を設定するための関数です。通常、Pygameは様々な種類のイベント(キーボード入力、マウスの動き、ウィンドウの操作など)を常に監視し、イベントキューに追加しています。event.set_allowed()
を使うことで、特定の種類のイベントだけを受け取るようにフィルタリングすることができます。
役割と目的
この関数の主な役割と目的は以下の通りです。
- 特定のイベントに集中
特定の状況下で、特定の種類のイベントのみに反応させたい場合に便利です。例えば、ゲームの一時停止中はキー入力以外のイベントを無視するといった制御が可能です。 - イベント処理の簡略化
処理したいイベントの種類を限定することで、イベントループ内のコードをよりシンプルにすることができます。不要なイベントをチェックする手間が省けます。 - パフォーマンスの向上
不要なイベントの処理を避けることで、プログラムのパフォーマンスを向上させることができます。例えば、キーボード入力しか必要ないゲームであれば、マウス関連のイベントを無視することで、わずかながら処理負荷を軽減できます。
使い方
event.set_allowed()
は、許可したいイベントの種類(または許可したくないイベントの種類)を引数に取ります。
特定のイベントを許可する
許可したいイベントの種類をタプルまたはリストで指定します。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
# キーボードのKEYDOWNとQUITイベントのみを許可する
pygame.event.set_allowed((KEYDOWN, QUIT))
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
print("キーが押されました")
pygame.quit()
この例では、pygame.event.set_allowed((KEYDOWN, QUIT))
によって、キーが押された (KEYDOWN
) イベントと、ウィンドウが閉じられた (QUIT
) イベントのみがイベントキューに格納されるようになります。マウスの動きやボタンクリックなどの他のイベントは無視されます。
すべてのイベントを許可する
引数に None
を渡すと、すべての種類のイベントが許可されます(デフォルトの状態)。
pygame.event.set_allowed(None)
特定のイベントを禁止する
許可したくないイベントの種類をタプルまたはリストで指定し、その前に None
を渡します。これは「すべてのイベントを許可するが、これらのイベントは除く」という意味になります。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
# MOUSEMOTIONイベントを除くすべてのイベントを許可する
pygame.event.set_allowed(None)
pygame.event.set_blocked(MOUSEMOTION) # 非推奨 (set_allowed(event_type) で False を指定する方が推奨)
# 推奨される方法
pygame.event.set_allowed(MOUSEMOTION, False)
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
print("キーが押されました")
elif event.type == MOUSEMOTION:
print("マウスが動きました") # この処理は実際には実行されません
pygame.quit()
- ゲームの状況に応じて、許可するイベントの種類を動的に変更することも可能です。
event.get()
は、許可されたイベントのみを返します。禁止されたイベントはイベントキューから取得されません。pygame.event.set_blocked()
という関数も存在しましたが、現在では非推奨となっています。event.set_allowed(event_type, False)
を使う方が推奨されます。
一般的なエラーとトラブルシューティング
event.set_allowed()
自体は比較的シンプルな関数ですが、その使い方や関連するイベント処理において、いくつかの一般的なエラーや予期しない動作が発生することがあります。
意図しないイベントの無視
- 症状
キーボード入力、マウス操作、ウィンドウ操作など、本来反応させたいはずのイベントがプログラムで全く検出されない。 - 原因
必要なイベントの種類をevent.set_allowed()
で許可していない。
イベント処理ループが機能しないように見える
- トラブルシューティング
- プログラム終了の基本的なイベントである
pygame.QUIT
は、通常必ず許可する必要があります。event.set_allowed()
の引数にpygame.QUIT
が含まれていることを確認してください。
- プログラム終了の基本的なイベントである
- 症状
ウィンドウの閉じるボタンを押しても、プログラムがハングアップしたように見える。 - 原因
pygame.QUIT
イベントを許可していないため、ウィンドウを閉じてもプログラムが終了しない。
event.set_blocked() の誤用 (非推奨)
- トラブルシューティング
pygame.event.set_blocked()
は現在非推奨です。代わりにpygame.event.set_allowed(event_type, False)
を使用してください。例えば、pygame.MOUSEMOTION
イベントをブロックしたい場合は、pygame.event.set_allowed(pygame.MOUSEMOTION, False)
と記述します。
- 症状
特定のイベントをブロックしようとしたが、期待通りに動作しない。 - 原因
古いコードなどで非推奨のpygame.event.set_blocked()
を使用している。
イベントタイプの指定ミス
- トラブルシューティング
- Pygameのイベント定数(例:
pygame.KEYDOWN
、pygame.MOUSEBUTTONDOWN
など)を正しく使用しているか確認してください。スペルミスや大文字・小文字の間違いがないか注意しましょう。 - どのイベントタイプが存在するかわからない場合は、Pygameのドキュメントを参照するか、実際に発生したイベントの
event.type
をprint文などで確認してみるのも有効です。
- Pygameのイベント定数(例:
- 症状
event.set_allowed()
を呼び出しても、意図したイベントが許可または禁止されない。 - 原因
イベントの種類を間違った名前で指定している。
許可設定のタイミングの問題
- トラブルシューティング
- 通常、
event.set_allowed()
はゲームの初期化時など、イベントループが始まる前に一度だけ設定することが推奨されます。 - イベントの許可状態を動的に変更する必要がある場合は、その意図とタイミングを慎重に検討し、コードを整理してください。
- 通常、
- 症状
プログラムの実行中にイベントの許可状態が予期せず変化する。 - 原因
event.set_allowed()
をイベントループの内部など、不適切なタイミングで呼び出している。
他のライブラリとの干渉
- トラブルシューティング
- 可能な限り、イベント処理はPygameの機能に統一することを検討してください。
- もし他のライブラリとの連携が不可欠な場合は、それぞれのライブラリのイベント処理の仕組みを理解し、適切に連携させる必要があります。
- 症状
イベントが断続的にしか検出されない、または全く検出されない。 - 原因
Pygameと他のイベント処理を行うライブラリを同時に使用している場合、イベントの処理が競合する可能性がある。
- 簡単なテストコードの作成
問題が発生している箇所を切り出した最小限のコードを作成し、動作を確認することで、原因を特定しやすくなります。 - Pygameのドキュメント参照
Pygameの公式ドキュメントには、各関数の詳細な説明や使用例が記載されています。困ったときは必ず参照しましょう。 - print文の活用
どのイベントが実際に発生しているのか、event.type
をprint文で出力して確認してみることは非常に有効なデバッグ手法です。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
pygame.display.set_caption("event.set_allowed() の例 1")
# 許可するイベントの種類を指定
allowed_events = (KEYDOWN, QUIT)
pygame.event.set_allowed(allowed_events)
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
if event.key == K_a:
print("「a」キーが押されました")
else:
print("許可されていないキーが押されました (無視されます)")
pygame.quit()
解説
pygame.init()
: Pygameを初期化します。screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
: 400x300ピクセルのウィンドウを作成します。pygame.display.set_caption("event.set_allowed() の例 1")
: ウィンドウのタイトルを設定します。allowed_events = (KEYDOWN, QUIT)
: 許可したいイベントの種類をタプルで定義します。ここではキーが押された (KEYDOWN
) イベントと、ウィンドウを閉じる (QUIT
) イベントを指定しています。pygame.event.set_allowed(allowed_events)
: 定義した許可するイベントの種類を設定します。- イベントループ (
while running:
):for event in pygame.event.get():
: イベントキューからイベントを一つずつ取得します。event.set_allowed()
で許可されていないイベントは、この時点で取得されません。if event.type == QUIT:
: イベントの種類がQUIT
であれば、プログラムを終了します。elif event.type == KEYDOWN:
: イベントの種類がKEYDOWN
であれば、さらにどのキーが押されたか (event.key
) をチェックします。ここでは「a」キー (K_a
) が押された場合にメッセージを表示し、それ以外のキーは無視されます。
pygame.quit()
: Pygameを終了します。
この例では、マウスの動き (MOUSEMOTION
) イベントを除く、すべての種類のイベントを許可します。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
pygame.display.set_caption("event.set_allowed() の例 2")
# すべてのイベントを許可する
pygame.event.set_allowed(None)
# MOUSEMOTION イベントを禁止する
pygame.event.set_allowed(MOUSEMOTION, False)
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
print("キーが押されました")
elif event.type == MOUSEBUTTONDOWN:
print("マウスボタンが押されました")
elif event.type == MOUSEMOTION:
print("マウスが動きました (このメッセージは表示されません)")
pygame.quit()
解説
pygame.event.set_allowed(None)
: まず、引数にNone
を渡すことで、すべての種類のイベントを許可します。pygame.event.set_allowed(MOUSEMOTION, False)
: 次に、MOUSEMOTION
イベントに対してFalse
を指定することで、この種類のイベントを禁止します。- イベントループ内では、
MOUSEMOTION
イベントが発生してもpygame.event.get()
で取得されることはないため、「マウスが動きました」というメッセージは表示されません。他の許可されたイベント(QUIT
、KEYDOWN
、MOUSEBUTTONDOWN
など)は正常に処理されます。
この例では、特定のキーが押されたときに、許可するイベントの種類を動的に変更します。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
pygame.display.set_caption("event.set_allowed() の例 3")
# 初期状態ではキー入力と終了イベントのみ許可
allowed_events = (KEYDOWN, QUIT)
pygame.event.set_allowed(allowed_events)
mouse_events_allowed = False
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
if event.key == K_SPACE:
mouse_events_allowed = not mouse_events_allowed
if mouse_events_allowed:
pygame.event.set_allowed((KEYDOWN, QUIT, MOUSEBUTTONDOWN, MOUSEBUTTONUP, MOUSEMOTION))
print("マウスイベントを許可しました")
else:
pygame.event.set_allowed((KEYDOWN, QUIT))
print("マウスイベントを禁止しました")
elif event.key == K_a:
print("「a」キーが押されました")
elif event.type == MOUSEBUTTONDOWN:
if mouse_events_allowed:
print("マウスボタンが押されました")
elif event.type == MOUSEMOTION:
if mouse_events_allowed:
print("マウスが動きました")
pygame.display.flip()
pygame.quit()
- 初期状態では、キー入力 (
KEYDOWN
) と終了 (QUIT
) イベントのみが許可されています。mouse_events_allowed
変数はFalse
に設定されています。 - スペースキー (
K_SPACE
) が押されると、mouse_events_allowed
の状態が反転します。 mouse_events_allowed
がTrue
になると、pygame.event.set_allowed()
を再度呼び出し、マウスボタンの押下 (MOUSEBUTTONDOWN
,MOUSEBUTTONUP
) とマウスの動き (MOUSEMOTION
) イベントを許可するよう設定を変更します。mouse_events_allowed
がFalse
になると、pygame.event.set_allowed()
を再度呼び出し、マウス関連のイベントを許可しない元の状態に戻します。- マウスボタンの押下イベント (
MOUSEBUTTONDOWN
) とマウスの動きイベント (MOUSEMOTION
) の処理は、mouse_events_allowed
がTrue
の場合にのみ実行されるように条件分岐されています。
イベントループ内でのフィルタリング (手動フィルタリング)
event.set_allowed()
を使わずに、イベントループ内で取得したイベントの種類をチェックし、必要なイベントのみを処理する方法です。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
pygame.display.set_caption("手動フィルタリングの例")
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
if event.key == K_SPACE:
print("スペースキーが押されました")
# 他のキー入力処理
elif event.type == MOUSEBUTTONDOWN:
print("マウスボタンが押されました")
# マウスボタンの処理
# 他の必要なイベントタイプの処理
利点
- 特定の条件下でのみ特定のイベントを処理するといった、より複雑なロジックを実装しやすいです。
- イベントの種類だけでなく、イベントの属性(例えば、どのキーが押されたか、どのマウスボタンが押されたかなど)に基づいて細かく処理を分岐できます。
event.set_allowed()
を使う必要がなく、より直接的にイベントの種類を制御できます。
欠点
- 処理するイベントの種類が多い場合、イベントループ内の
if/elif
の連鎖が長くなり、コードが煩雑になることがあります。 - 許可しないイベントも一旦
pygame.event.get()
で取得されるため、わずかながらパフォーマンスに影響が出る可能性があります(通常は無視できる程度です)。
カスタムイベントの利用
pygame.event.post()
を使って、プログラム内で独自のイベントを作成し、それをイベントループ内で処理する方法です。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
pygame.display.set_caption("カスタムイベントの例")
# カスタムイベントのタイプを定義
MY_CUSTOM_EVENT = pygame.USEREVENT + 1
# 特定の条件が満たされたときにカスタムイベントを発生させる
def trigger_custom_event():
custom_event = pygame.event.Event(MY_CUSTOM_EVENT)
pygame.event.post(custom_event)
# 何らかの条件 (例: 時間経過) でカスタムイベントを発生させる
pygame.time.set_timer(MY_CUSTOM_EVENT, 2000) # 2秒ごとにカスタムイベントを発生
running = True
while running:
for event in pygame.event.get():
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN:
if event.key == K_SPACE:
trigger_custom_event()
elif event.type == MY_CUSTOM_EVENT:
print("カスタムイベントが発生しました!")
pygame.quit()
利点
- イベントループ内の処理を整理しやすくなります。
- 標準のPygameイベントだけでは表現できない、より意味のあるイベントを作成できます。
- 特定のプログラムの状態や条件に基づいてイベントを発生させ、処理をトリガーできます。
欠点
- カスタムイベントの定義と発生、そして処理の記述が必要になるため、やや複雑になる場合があります。
イベントキューの直接操作 (高度な利用)
pygame.event.get()
で取得したイベントのリストを直接操作したり、pygame.event.clear()
でイベントキューをクリアしたりする方法です。これは通常、非常に特殊な状況でのみ使用されます。
import pygame
from pygame.locals import *
pygame.init()
screen = pygame.display.set_mode((400, 300))
pygame.display.set_caption("イベントキュー直接操作の例")
running = True
while running:
events = pygame.event.get()
for event in events:
if event.type == QUIT:
running = False
elif event.type == KEYDOWN and event.key == K_SPACE:
print("スペースキーが押されました")
# 特定の条件でイベントキューをクリアする (例: マウスボタンが押されたら)
for event in events:
if event.type == MOUSEBUTTONDOWN:
pygame.event.clear()
print("マウスボタンが押されたのでイベントキューをクリアしました")
break # クリアしたら内側のループを抜ける
pygame.quit()
利点
- イベントキューの内容を完全に制御できます。
欠点
- 一般的なイベント処理のパターンから外れるため、コードの可読性や保守性が低下する可能性があります。
- イベント処理の流れを複雑にする可能性があり、予期しない動作を引き起こしやすいです。
イベント監視スレッド (マルチスレッド)
より複雑なアプリケーションでは、イベント監視をメインループとは別のスレッドで行い、必要なイベントをメインループに通知するような設計も考えられます。ただし、Pygameはスレッドセーフではない部分もあるため、注意が必要です。
利点
- 複雑なイベント処理ロジックを分離できます。
- メインループの処理をブロックせずにイベントを監視できます。
欠点
- デバッグが難しくなる可能性があります。
- Pygameのスレッドセーフに関する注意が必要で、適切に同期処理を行う必要があります。
- 複雑な非同期処理
マルチスレッドによるイベント監視は、高度な知識と注意が必要です。 - 特殊な制御
イベントキューの直接操作は、慎重に検討した上で使用してください。 - プログラムの状態に基づいたイベント
カスタムイベントの利用が有効です。 - イベント属性に基づいた詳細な処理
イベントループ内での手動フィルタリングが適しています。 - 単純なフィルタリング
event.set_allowed()
が最も簡潔で効率的な方法です。