Octave 3D描画:shrinkfacesを活用した表現力向上

2025-04-26

「shrinkfaces」とは何か?

「shrinkfaces」は、Octaveのグラフ描画機能において、3次元のパッチオブジェクト(patch関数などで作成される、ポリゴンの集合体)の面(フェイス)を縮小して表示するためのプロパティまたは関数です。

具体的には、各面のポリゴンを内側に少し小さく描画することで、隣接する面との間にわずかな隙間を作ります。これにより、個々の面がより明確に区別できるようになり、複雑な3次元形状の視覚的な理解を助けます。特に、多数の小さな面が密集している場合に有効です。

どのような場面で使うのか?

  • 視覚的なノイズの低減
    面がぴったりと接している場合に生じやすい、モアレのような視覚的なノイズを軽減する効果もあります。
  • ポリゴンの境界を強調
    面と面の間に隙間ができることで、ポリゴンの境界線が強調され、形状の構造がより明確になります。
  • 複雑な3次元モデルの可視化
    例えば、有限要素解析の結果や、複雑な幾何学的形状をパッチオブジェクトで表現した場合、面が重なり合って見えにくいことがあります。「shrinkfaces」を適用することで、個々の要素や面が分離して見えるようになり、形状の全体像や細部を把握しやすくなります。

Octaveでの使い方

「shrinkfaces」は、patch関数でパッチオブジェクトを作成する際に、名前と値のペアとして指定するか、作成後にオブジェクトのプロパティとして設定することで使用できます。

patch関数で作成時に指定する場合:

vertices = [ ... ]; % 頂点座標
faces = [ ... ];    % 面の定義(頂点のインデックス)

patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'blue', 'shrinkfaces', 0.5);

上記の例では、'shrinkfaces', 0.5 の部分で「shrinkfaces」プロパティに 0.5 の値を設定しています。この値は、面の縮小率を表し、通常 0(縮小なし)から 1 の間の値を指定します。1 に近づくほど縮小率が大きくなります。

作成後のパッチオブジェクトのプロパティとして設定する場合:

まず、patch関数でパッチオブジェクトを作成し、そのハンドルを取得します。

p = patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'red');

次に、set関数を使って「shrinkfaces」プロパティを設定します。

set(p, 'shrinkfaces', 0.2);
  • 2次元のプロットには「shrinkfaces」は適用されません。
  • 極端に大きな値を設定すると、面が小さくなりすぎて形状が認識しにくくなる場合があります。適切な値を試しながら調整することが重要です。
  • 「shrinkfaces」の値は、面のサイズに対する相対的な縮小量です。


「shrinkfaces」に関する一般的なエラーとトラブルシューティング

「shrinkfaces」は3次元パッチオブジェクトの表示に関する機能であり、誤った使い方や他のプロパティとの組み合わせによっては、意図しない結果やエラーが発生することがあります。以下に、よくあるエラーとその対処法を説明します。

shrinkfacesプロパティが認識されない、または効果がない

  • トラブルシューティング

    • 描画しているオブジェクトが patch 関数で作成された3次元オブジェクトであることを確認してください。
    • プロパティ名 'shrinkfaces' のスペルを再度確認してください。大文字・小文字も区別されます。
    • Octaveのバージョンを確認し、必要であればアップデートを検討してください。
    • shrinkfaces に設定している値が数値であり、通常は 0 から 1 の間であることを確認してください。
    • 対象が3次元パッチオブジェクトではない
      shrinkfacespatch関数で作成された3次元のパッチオブジェクトに対してのみ有効です。ラインプロット (plot) やサーフェスプロット (surf) など、他の種類のグラフオブジェクトには適用できません。
    • プロパティ名のスペルミス
      'shrinkfaces' のスペルが間違っていると、Octaveはプロパティとして認識しません。
    • 古いOctaveのバージョン
      非常に古いバージョンのOctaveでは、shrinkfacesプロパティがサポートされていない可能性があります。最新版または比較的新しいバージョンを使用しているか確認してください。
    • 無効な値
      shrinkfacesに数値以外の値や、範囲外の値を設定した場合(通常は0から1の間の数値)、予期しない動作をすることがあります。

面が意図せず小さすぎる、または消えて見える

  • トラブルシューティング

    • shrinkfaces の値を小さくしてみてください。0に近い値から徐々に増やして、適切な縮小率を見つけましょう。
    • 元のパッチオブジェクトの頂点座標や面の定義を確認し、面のサイズが極端に小さくないか確認してください。必要であれば、より大きなポリゴンでオブジェクトを再構成することを検討してください。
  • 原因

    • shrinkfacesに大きな値を設定
      shrinkfaces の値を大きくしすぎると、面が極端に縮小され、ほとんど見えなくなったり、点のように表示されたりすることがあります。
    • 元の面のサイズが小さい
      元のポリゴンのサイズが非常に小さい場合、わずかな縮小率でも大きく影響を受け、消えて見えることがあります。

隣接する面との間に隙間ができない

  • トラブルシューティング

    • shrinkfaces の値を少しずつ大きくしてみてください。
    • パッチオブジェクトの面の定義 (Faces プロパティ) を確認し、意図しない重複がないか確認してください。
  • 原因

    • shrinkfacesの値が小さすぎる、または0
      shrinkfaces の値が 0 であるか、非常に小さい場合、面はほとんど縮小されず、隙間が認識できないことがあります。
    • 面の定義が重複している
      隣接する面が全く同じ頂点を共有している場合、縮小しても隙間が目立たないことがあります。
  • トラブルシューティング

    • EdgeColor を明示的に設定したり、線の太さを調整するなど、他の描画プロパティを調整してみてください。
    • view 関数を使って視点を変更し、様々な角度からオブジェクトを確認してみてください。
    • ライティング (lighting) を適用することで、面の境界や隙間がより強調される場合があります。
  • 原因

    • 他のプロパティとの干渉
      FaceColorEdgeColorFaceAlpha などの他のパッチオブジェクトのプロパティの設定によっては、「shrinkfaces」の効果が見えにくい場合があります。例えば、EdgeColornone に設定されていると、面の境界が強調されず、隙間が分かりにくいことがあります。
    • ビューの設定
      カメラの位置や視点の角度によっては、縮小された面とその間の隙間が認識しにくいことがあります。

一般的なトラブルシューティングのヒント

  • ドキュメントを参照する
    Octaveの公式ドキュメントや help patch コマンドで、shrinkfaces プロパティの詳細や関連するプロパティについて確認してください。
  • 簡単な例で試す
    まずは単純な立方体などのパッチオブジェクトを作成し、様々な shrinkfaces の値を試して、効果を理解することから始めましょう。


基本的な立方体の描画と shrinkfaces の適用

この例では、基本的な立方体を作成し、shrinkfaces プロパティを適用して面の間に隙間を作ります。

% 立方体の頂点座標
vertices = [
    0 0 0;
    1 0 0;
    1 1 0;
    0 1 0;
    0 0 1;
    1 0 1;
    1 1 1;
    0 1 1
];

% 立方体の面の定義(頂点のインデックス)
faces = [
    1 2 3 4; % 底面
    5 6 7 8; % 上面
    1 2 6 5; % 前面
    2 3 7 6; % 右側面
    3 4 8 7; % 背面
    4 1 5 8  % 左側面
];

% shrinkfaces なしで描画
figure;
subplot(1, 2, 1);
patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'cyan');
title('shrinkfaces なし');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;

% shrinkfaces を適用して描画
subplot(1, 2, 2);
patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'magenta', 'shrinkfaces', 0.2);
title('shrinkfaces = 0.2');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;

このコードを実行すると、2つのサブプロットが表示されます。左側は shrinkfaces を適用していない通常の立方体で、面がぴったりと接しています。右側は shrinkfaces0.2 の値を設定した立方体で、各面の間にわずかな隙間ができているのがわかります。

作成後に shrinkfaces プロパティを変更する

この例では、まず shrinkfaces なしでパッチオブジェクトを作成し、その後でプロパティを変更します。

% 立方体の頂点と面は上記の例と同じ

figure;
p = patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'yellow');
title('初期状態 (shrinkfaces なし)');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;
pause(2); % 2秒待つ

% shrinkfaces プロパティを後から設定
set(p, 'shrinkfaces', 0.5);
title('shrinkfaces = 0.5 に変更');
pause(2); % さらに2秒待つ

% shrinkfaces を再び無効にする
set(p, 'shrinkfaces', 0);
title('shrinkfaces を無効化');

このコードを実行すると、まず shrinkfaces なしの立方体が表示され、2秒後に shrinkfaces0.5 に設定されて面の間に隙間が現れます。さらに2秒後には shrinkfaces0 に戻り、隙間がなくなります。

複雑な形状への shrinkfaces の適用

より多くの面を持つ複雑な形状の例として、球体に近い形状を isosurface 関数と patch 関数を使って作成し、shrinkfaces を適用してみます。

% 球体に近い形状のデータを作成
[x, y, z] = meshgrid(-2:0.2:2);
v = x.^2 + y.^2 + z.^2 + x.*y.*z < 8;
isosurface(x, y, z, v);
hold on;
p = patch(isosurface(x, y, z, v));
isonormals(x, y, z, v, p);
set(p, 'FaceColor', 'blue', 'EdgeColor', 'none');
title('shrinkfaces なし');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(135, 30);
axis equal;
hold off;

figure;
isosurface(x, y, z, v);
hold on;
p_shrunk = patch(isosurface(x, y, z, v));
isonormals(x, y, z, v, p_shrunk);
set(p_shrunk, 'FaceColor', 'green', 'EdgeColor', 'none', 'shrinkfaces', 0.1);
title('shrinkfaces = 0.1');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(135, 30);
axis equal;
hold off;

この例では、isosurface で生成された複雑な形状に対して、shrinkfaces を適用することで、密集したポリゴンがわずかに分離され、形状の構造がより理解しやすくなる効果が確認できます。

shrinkfaces の値を変化させるアニメーション

shrinkfaces の値を時間的に変化させることで、面の縮小具合をアニメーションとして表示する例です。

% 立方体の頂点と面は最初の例と同じ

figure;
p = patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'red');
title('shrinkfaces アニメーション');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;

for shrink_val = 0:0.05:0.5
    set(p, 'shrinkfaces', shrink_val);
    drawnow();
    pause(0.1);
end

for shrink_val = 0.5:-0.05:0
    set(p, 'shrinkfaces', shrink_val);
    drawnow();
    pause(0.1);
end


頂点座標の操作による面の縮小

shrinkfaces プロパティは内部的に各面のポリゴンを縮小していますが、これをプログラミングによって明示的に行うことができます。具体的には、各面の頂点座標を、その面の中心に向かってわずかに移動させることで、面を縮小します。

% 立方体の頂点と面(前回の例と同じ)
vertices = [ ... ];
faces = [ ... ];

% 縮小率
shrink_factor = 0.1;

% 新しい頂点座標を格納する配列
shrunk_vertices = zeros(size(vertices));

% 各面ごとに処理
for i = 1:size(faces, 1)
    face_indices = faces(i, :);
    face_v = vertices(face_indices, :);

    % 面の中心を計算
    center = mean(face_v, 1);

    % 各頂点を中心に向かって移動
    for j = 1:length(face_indices)
        vertex = face_v(j, :);
        direction = center - vertex;
        shrunk_vertices(face_indices(j), :) = vertex + direction * shrink_factor;
    end
end

% 新しい頂点と元の面定義でパッチオブジェクトを作成
figure;
patch('Vertices', shrunk_vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'blue');
title('頂点操作による面の縮小');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;

この方法では、shrink_factor の値を調整することで、縮小の度合いを制御できます。複雑な形状の場合、面の法線ベクトルを利用して内側に移動させるなど、より高度な処理が必要になることがあります。

メリット

  • 特定の形状に合わせてカスタマイズしやすい。
  • 縮小のアルゴリズムを細かく制御できる。

デメリット

  • 計算コストが shrinkfaces プロパティよりも高くなる可能性がある。
  • 実装がやや複雑になる。

面の境界線を強調するためのエッジの描画

shrinkfaces の主な目的は、隣接する面を区別しやすくすることです。これと同様の効果を得るために、パッチオブジェクトの面はそのままに、各面の境界線(エッジ)を明示的に描画する方法があります。

% 立方体の頂点と面(前回の例と同じ)
vertices = [ ... ];
faces = [ ... ];

figure;
patch('Vertices', vertices, 'Faces', faces, 'FaceColor', 'cyan', 'EdgeColor', 'black', 'LineWidth', 1);
title('エッジ描画による境界の強調');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;

この例では、patch 関数の 'EdgeColor' プロパティを 'black' に設定し、'LineWidth' で線の太さを指定しています。これにより、面と面の境界線が強調され、個々の面が区別しやすくなります。

メリット

  • 元の形状を変形させないため、正確な形状を維持できる。
  • 実装が非常に簡単である。

デメリット

  • shrinkfaces のように面全体が分離するわけではない。
  • 面が重なっている部分は境界線が重なって見えることがある。

複数のパッチオブジェクトの重ね合わせ

各面を個別の小さなパッチオブジェクトとして作成し、わずかに縮小した状態で同じ場所に重ねて描画することで、shrinkfaces と似た効果を得ることができます。

% 立方体の頂点と面(前回の例と同じ)
vertices = [ ... ];
faces = [ ... ];

figure;
hold on;

shrink_factor = 0.05;

for i = 1:size(faces, 1)
    face_indices = faces(i, :);
    face_v = vertices(face_indices, :);
    center = mean(face_v, 1);
    shrunk_face_v = zeros(size(face_v));
    for j = 1:size(face_v, 1)
        direction = center - face_v(j, :);
        shrunk_face_v(j, :) = face_v(j, :) + direction * shrink_factor;
    end
    patch('Vertices', shrunk_face_v, 'Faces', 1:size(shrunk_face_v, 1), 'FaceColor', 'green');
end

title('個別パッチの重ね合わせ');
xlabel('X'); ylabel('Y'); zlabel('Z');
view(3);
axis equal;
hold off;

この方法は、各面を独立して制御できるため、より柔軟な表現が可能です。ただし、多数の面がある場合は、作成するパッチオブジェクトの数が増え、描画処理の負荷が高くなる可能性があります。

メリット

  • より複雑な視覚効果を実装できる可能性がある。
  • 各面の色やプロパティを個別に設定できる。
  • 多数の面がある場合にパフォーマンスが低下する可能性がある。
  • 実装がやや複雑になる。