Octave プログラミング:meshc 関数の使い方と基本
meshc 関数とは
meshc
関数は、3次元のメッシュ(網目)グラフと、そのグラフの底面(xy 平面)への等高線(コンター)図を同時に描画するために使用されます。mesh
関数と似ていますが、meshc
はさらに等高線図を付け加える点が異なります。
基本的な使い方
meshc
関数の基本的な使い方は以下の通りです。
[X, Y] = meshgrid(x, y);
Z = f(X, Y); % X, Y に対応する Z 値を計算
meshc(X, Y, Z);
ここで、
meshc(X, Y, Z)
は、X
,Y
,Z
で定義されるメッシュグラフを描画し、さらにその底面にZ
の等高線図を描画します。f(X, Y)
は、与えられた関数に基づいて、各グリッド点(X(i, j), Y(i, j))
における z 値Z(i, j)
を計算する関数です。meshgrid(x, y)
は、ベクトルx
とy
から、3次元プロットに必要なグリッド座標X
とY
を生成します。x
とy
は、それぞれ x 軸方向と y 軸方向の座標を表すベクトルです。
主な特徴
- 視覚的な理解の促進
メッシュグラフと等高線図を同時に表示することで、データの三次元的な形状と二次元的な分布の両方を一度に理解するのに役立ちます。 - 等高線図
メッシュグラフの高さ(z 値)の等しい点を線で結んだ等高線図を、底面に表示します。これにより、データの起伏や分布を二次元的に把握することができます。 - 3次元メッシュグラフ
データの三次元的な形状を視覚的に表現します。
オプション
meshc
関数は、さまざまなオプションを指定することで、グラフの外観をカスタマイズできます。一般的なオプションとしては、線の色、線のスタイル、マーカーの種類、カラーマップの指定などがあります。これらのオプションは、関数の引数として追加することができます。
例:
meshc(X, Y, Z, 'EdgeColor', 'r', 'LineStyle', '--');
上記の例では、メッシュの線の色が赤 ('r'
) に、線のスタイルが破線 ('--'
) に設定されます。
Octave の meshc 関数における一般的なエラーとトラブルシューティング
meshc
関数を使用する際に遭遇しやすいエラーとその対処法について解説します。
引数の数の誤り
- トラブルシューティング
help meshc
コマンドを実行して、正しい引数の数と順序を確認してください。通常、meshc(X, Y, Z)
の形式で使用します。 - 例
meshc(X, Y);
(Z が不足している) - エラー
meshc
関数に渡す引数の数が間違っている場合。通常は、X, Y, Z の3つの行列またはベクトルが必要です。
引数のサイズの不一致
- トラブルシューティング
size(X)
,size(Y)
,size(Z)
コマンドを使用して、各行列のサイズを確認し、meshgrid
関数などで適切に生成されているかを確認してください。X
とY
は通常、同じ入力ベクトルからmeshgrid
で生成されます。Z
はX
とY
の各要素に対応する値を計算して作成されます。 - 例
X
が 10x10 の行列で、Y
が 9x9 の行列の場合。 - エラー
X, Y, Z の行列のサイズが一致していない場合。X
とY
は同じサイズである必要があり、Z
も同じサイズである必要があります。
meshgrid の使用忘れまたは誤り
- トラブルシューティング
3次元プロットを行うためには、通常、meshgrid
を使用してグリッド座標を作成する必要があります。正しい使用法は[X, Y] = meshgrid(x, y);
です。その後、Z
をX
とY
に基づいて計算し、meshc(X, Y, Z)
を呼び出します。 - 例
x = 1:5; y = 1:3; meshc(x, y, Z);
(直接ベクトルを渡している) - エラー
2つのベクトルx
とy
からグリッド座標X
とY
を生成する際にmeshgrid
を使用していない、または誤った方法で使用している場合。
Z 値の計算エラー
- トラブルシューティング
Z
の計算に使用している関数や処理を見直し、NaN や Inf が発生する可能性のある箇所を特定して修正してください。条件分岐などを利用して、これらの値を適切に処理することも有効です。 - 例
ゼロ除算が発生し、Z
の要素が Inf になっている。 - エラー
Z
行列の要素が NaN (Not a Number) や Inf (Infinity) を含んでいる場合、予期しないグラフが表示されたり、エラーが発生したりすることがあります。
グラフィックスツールの問題
- トラブルシューティング
別のグラフィックスバックエンドを試してみてください。graphics_toolkit
コマンドで現在の設定を確認し、graphics_toolkit("gnuplot")
やgraphics_toolkit("fltk")
などに変更してみます。 - エラー
Octave のグラフィックスバックエンドに問題がある場合、グラフが正しく表示されないことがあります。
カラーマップに関する問題
- トラブルシューティング
colormap
関数を使用して、別のカラーマップを試してみてください。例えば、colormap("jet")
やcolormap("cool")
などがあります。 - エラー
デフォルトのカラーマップが意図した表示にならない場合。
軸ラベルやタイトルなどの設定ミス
- トラブルシューティング
xlabel
,ylabel
,zlabel
,title
などの関数を使用して、適切にラベルやタイトルを設定しているか確認してください。 - エラー
軸ラベルやタイトルが正しく表示されない、または意図した内容と異なる場合。
- エラーメッセージの確認
Octave が出力するエラーメッセージを注意深く読み、問題の原因の手がかりを探します。 - help meshc の実行
関数の正しい使い方や引数を確認します。 - 変数の内容とサイズの確認
disp
コマンドやワークスペースウィンドウで、X
,Y
,Z
などの変数の内容やサイズを確認します。 - 簡単なデータでのテスト
問題が複雑なデータで発生している場合は、より簡単なデータ(例えば、小さな行列や既知の関数)でmeshc
を実行し、基本的な動作を確認します。 - コードの段階的な実行
問題のあると思われる箇所の手前までコードを実行し、変数の状態を確認しながら進めます。 - オンラインリソースの検索
Octave の公式ドキュメントやオンラインフォーラムで、同様の問題が報告されていないか検索してみます。
例 1: 基本的な meshc の使用
この例では、簡単な 2 変数関数 z = x^2 + y^2
のメッシュグラフと等高線図を描画します。
% x 軸と y 軸の範囲を設定
x = -5:0.5:5;
y = -5:0.5:5;
% x と y のグリッドを作成
[X, Y] = meshgrid(x, y);
% z 値を計算 (関数: z = x^2 + y^2)
Z = X.^2 + Y.^2;
% meshc 関数でメッシュグラフと等高線図を描画
figure;
meshc(X, Y, Z);
% 軸ラベルとタイトルを追加
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("z = x^2 + y^2 のメッシュグラフと等高線図");
解説
- 範囲設定
x
とy
ベクトルで、描画する x 軸と y 軸の範囲と刻み幅を指定します。 - グリッド作成
meshgrid(x, y)
関数を使って、x
とy
の組み合わせからなるグリッド座標X
とY
を作成します。X
とY
は同じサイズの行列になります。 - z 値計算
作成したグリッド座標X
とY
を使って、各点におけるz
の値を計算します。ここでは、各要素ごとにべき乗を行うために.^
を使用しています。 - 描画
meshc(X, Y, Z)
関数を呼び出し、3次元メッシュグラフと底面への等高線図を描画します。 - 装飾
xlabel
,ylabel
,zlabel
,title
関数を使って、グラフに軸ラベルとタイトルを追加し、内容をわかりやすくします。
例 2: より複雑な関数の描画
この例では、より複雑な関数 z = sin(sqrt(x^2 + y^2)) / sqrt(x^2 + y^2)
のグラフを描画します。
% x 軸と y 軸の範囲を設定
x = -3*pi:0.2:3*pi;
y = -3*pi:0.2:3*pi;
% x と y のグリッドを作成
[X, Y] = meshgrid(x, y);
% z 値を計算 (関数: z = sin(sqrt(x^2 + y^2)) / sqrt(x^2 + y^2))
R = sqrt(X.^2 + Y.^2) + eps; % 原点でのゼロ除算を避けるために eps を加える
Z = sin(R) ./ R;
% meshc 関数でメッシュグラフと等高線図を描画
figure;
meshc(X, Y, Z);
% 軸ラベルとタイトルを追加
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("z = sin(r) / r のメッシュグラフと等高線図 (r = sqrt(x^2 + y^2))");
解説
- 関数がより複雑になっただけで、基本的な流れは例 1 と同じです。
- ゼロ除算の回避
原点 (x=0
,y=0
) 付近でR
が非常に小さくなり、ゼロ除算が発生する可能性があるため、微小な値eps
を加えています。 - 要素ごとの演算
sin
関数や除算./
は、行列の各要素に対して演算を行います。
例 3: 等高線のカスタマイズ
この例では、等高線の表示をカスタマイズする方法を示します。
% x 軸と y 軸の範囲を設定
x = -2:0.2:2;
y = -2:0.2:2;
% x と y のグリッドを作成
[X, Y] = meshgrid(x, y);
% z 値を計算 (関数: z = x .* exp(-x.^2 - y.^2))
Z = X .* exp(-X.^2 - Y.^2);
% meshc 関数でメッシュグラフと等高線図を描画
figure;
[C, h] = meshc(X, Y, Z);
% 等高線のレベルを指定
contour(X, Y, Z, [-0.2, -0.1, 0, 0.1, 0.2], 'LineColor', 'r', 'LineWidth', 1.5);
% 軸ラベルとタイトルを追加
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("z = x * exp(-x^2 - y^2) のメッシュグラフとカスタマイズされた等高線図");
解説
- この例では、
meshc
の戻り値として等高線オブジェクトC
とハンドルh
を受け取っていますが、ここでは直接カスタマイズしていません。 - contour 関数によるカスタマイズ
meshc
が描画する等高線とは別に、contour
関数を使って等高線を重ねて描画しています。 - 等高線レベルの指定
contour
関数の第 4 引数[-0.2, -0.1, 0, 0.1, 0.2]
で、描画する等高線の z 値のレベルを指定しています。 - 等高線のスタイル
'LineColor'
と'LineWidth'
オプションで、等高線の色と太さを指定しています。
例 4: サブプロットでの meshc
の使用
複数のグラフを 1 つのウィンドウに表示するために、subplot
関数と組み合わせて meshc
を使用する例です。
% データの準備 (例 1 と同じ)
x = -5:0.5:5;
y = -5:0.5:5;
[X, Y] = meshgrid(x, y);
Z = X.^2 + Y.^2;
% サブプロット 1: meshc
subplot(1, 2, 1); % 1 行 2 列の 1 番目の領域
meshc(X, Y, Z);
title("meshc プロット");
% サブプロット 2: surf (比較用)
subplot(1, 2, 2); % 1 行 2 列の 2 番目の領域
surf(X, Y, Z);
title("surf プロット");
- subplot(m, n, p)
図をm
行n
列に分割し、p
番目の領域をアクティブにします。 - この例では、
meshc
で描画したグラフと、同様の 3 次元サーフェスプロットを行うsurf
関数で描画したグラフを並べて表示しています。
mesh 関数と contour 関数の組み合わせ
mesh
関数はメッシュグラフのみを描画し、contour
関数は等高線図のみを描画します。これらを組み合わせて、meshc
と同様の効果を得ることができます。この方法の利点は、メッシュグラフと等高線図を個別にカスタマイズできる点です。
% データの準備 (meshc の例と同様)
x = -5:0.5:5;
y = -5:0.5:5;
[X, Y] = meshgrid(x, y);
Z = X.^2 + Y.^2;
% 新しい figure を作成
figure;
% メッシュグラフを描画
mesh(X, Y, Z);
hold on; % 複数のグラフを重ねて描画するために hold をオンにする
% 等高線図を底面 (z=min(Z(:))) に描画
contour(x, y, Z, 'LevelList', min(Z(:)), 'LineColor', 'k'); % LevelList で z の最小値を指定
% または、特定の z レベルで等高線を描画することも可能
% contour(x, y, Z, [-5, 0, 5, 10], 'LineColor', 'k');
hold off; % hold をオフにする
% 軸ラベルとタイトルを追加
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("mesh と contour の組み合わせ");
解説
hold off
コマンドで、重ね描きモードを終了します。contour(x, y, Z, ...)
で等高線図を描画します。'LevelList', min(Z(:))
オプションを使用すると、等高線を Z の最小値のレベル(つまり、底面に近い位置)に描画できます。min(Z(:))
は行列 Z のすべての要素の最小値を返します。- 代わりに、描画したい特定の等高線の z 値をベクトルで指定することもできます。
'LineColor', 'k'
で等高線の色を黒に設定しています。
hold on
コマンドで、既存のグラフの上に新しいグラフを重ねて描画するモードに切り替えます。mesh(X, Y, Z)
で 3D メッシュグラフを描画します。
surf 関数と contourf 関数の組み合わせ
surf
関数は色付きのサーフェスプロットを描画し、contourf
関数は塗りつぶされた等高線図を描画します。これらを組み合わせることで、視覚的に豊かな表現を得ることができます。
% データの準備 (meshc の例と同様)
x = -5:0.5:5;
y = -5:0.5:5;
[X, Y] = meshgrid(x, y);
Z = X.^2 + Y.^2;
% 新しい figure を作成
figure;
% サーフェスプロットを描画
surf(X, Y, Z);
hold on;
% 塗りつぶされた等高線図を底面に描画
contourf(x, y, Z, 'LevelList', min(Z(:)), 'LineColor', 'none'); % LineColor を 'none' にして境界線を非表示にすることが多い
hold off;
% 軸ラベルとタイトルを追加
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("surf と contourf の組み合わせ");
解説
contourf(x, y, Z, ...)
で塗りつぶされた等高線図を描画します。'LevelList', min(Z(:))
オプションで、底面に近い位置に等高線を描画します。'LineColor', 'none'
は、塗りつぶされた等高線の境界線を非表示にする一般的な設定です。
surf(X, Y, Z)
で 3D サーフェスプロットを描画します。
等高線図を 3D 空間に投影する
contour3
関数を使用すると、等高線図を 3D 空間内の特定の z レベルに描画できます。これを surf
や mesh
と組み合わせることで、meshc
とは異なる視覚効果を得られます。
% データの準備 (meshc の例と同様)
x = -5:0.5:5;
y = -5:0.5:5;
[X, Y] = meshgrid(x, y);
Z = X.^2 + Y.^2;
% 新しい figure を作成
figure;
% サーフェスプロットを描画
surf(X, Y, Z);
hold on;
% 3D 等高線図を z=min(Z(:)) の高さに描画
contour3(x, y, Z, 'LevelList', min(Z(:)), 'LineColor', 'k');
hold off;
% 軸ラベルとタイトルを追加
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("surf と contour3 の組み合わせ");
解説
contour3(x, y, Z, ...)
は、指定された z レベルに等高線を 3D 空間に描画します。ここでは、底面に近いmin(Z(:))
のレベルに描画しています。
plot3 関数によるワイヤーフレームのカスタマイズ
mesh
関数よりも基本的な plot3
関数を応用することで、より柔軟なワイヤーフレームグラフを作成できます。ただし、等高線図は別途 contour
などで追加する必要があります。
% データの準備 (meshc の例と同様)
x = -5:5;
y = -5:5;
[X, Y] = meshgrid(x, y);
Z = X.^2 + Y.^2;
rows = size(Z, 1);
cols = size(Z, 2);
figure;
hold on;
% 行方向のワイヤーフレームを描画
for i = 1:rows
plot3(X(i, :), Y(i, :), Z(i, :), 'b');
end
% 列方向のワイヤーフレームを描画
for j = 1:cols
plot3(X(:, j), Y(:, j), Z(:, j), 'b');
end
% 等高線図を底面に描画 (例 1 と同様)
contour(x, y, Z, 'LevelList', min(Z(:)), 'LineColor', 'k');
hold off;
xlabel("x 軸");
ylabel("y 軸");
zlabel("z 軸");
title("plot3 によるワイヤーフレームと等高線");
mesh
関数よりも細かい制御が可能ですが、コードは少し複雑になります。- この例では、
plot3
関数を使って、X
,Y
,Z
の各行と各列を線として個別に描画することで、ワイヤーフレームを構成しています。