NumPy indices() の性能分析:大規模配列での注意点と最適化

2025-05-27

もう少し詳しく見ていきましょう。

基本的な考え方

numpy.indices(shape) を呼び出すと、形状 shape に対応したインデックスの配列が返ってきます。返り値は、形状が (N, d_0, d_1, ..., d_{n-1}) の配列です。ここで、Nshape の次元数(つまり、要素数)であり、d_0, d_1, ..., d_{n-1}shape の各次元のサイズです。

返される配列の i 番目の要素(最初の次元に沿って)は、元の配列の i 番目の次元に対応するインデックスの配列になります。

例を見てみましょう

例えば、形状が (2, 3) の配列に対するインデックスを取得したい場合、以下のようにします。

import numpy as np

shape = (2, 3)
indices = np.indices(shape)
print(indices)

このコードを実行すると、次のような出力が得られます。

[[[0 0 0]
  [1 1 1]]

 [[0 1 2]
  [0 1 2]]]

この出力は、形状が (2, 2, 3) の配列です。

  • 次の次元(インデックス 1)は、元の配列の二番目の次元(列)のインデックスを表しています。つまり、各行内で、列インデックスが 0, 1, 2 のいずれであるかを示しています。
  • 最初の次元(インデックス 0)は、元の配列の最初の次元(行)のインデックスを表しています。つまり、すべての要素に対して、行インデックスが 0 であるか 1 であるかを示しています。

numpy.indices() の使い方

numpy.indices() で生成されたインデックス配列は、多次元配列の特定の要素にアクセスしたり、操作したりする際に非常に便利です。例えば、条件に基づいて配列の要素を選択する際に、対応するインデックスを生成して利用することができます。

import numpy as np

a = np.array([[10, 20, 30],
              [40, 50, 60]])

indices = np.indices(a.shape)
print("行インデックス:\n", indices[0])
print("列インデックス:\n", indices[1])

# これらのインデックスを使って要素にアクセスする
print("\n要素 a[0, 1]:", a[indices[0][0, 1], indices[1][0, 1]]) # a[0, 1]
print("要素 a[1, 2]:", a[indices[0][1, 2], indices[1][1, 2]]) # a[1, 2]

numpy.mgridnumpy.meshgrid との違い

numpy.indices() と似た機能を持つ関数に numpy.mgridnumpy.meshgrid があります。

  • numpy.meshgrid: 与えられた1次元配列から、直交座標系のような多次元の座標配列を生成します。numpy.indices() とは少し目的が異なります。
  • numpy.mgrid: スライス記法を使ってインデックスの配列を生成します。例えば、np.mgrid[0:2, 0:3]numpy.indices((2, 3)) と同様の結果を返しますが、返り値の形状が異なります(最初の次元が最初に来ます)。


一般的なエラーとトラブルシューティング

    • エラー
      numpy.indices() に渡した形状と、返ってくる配列の形状が期待と異なる。特に、返り値の最初の次元が入力の次元数になっていることを忘れがちです。
    • 原因
      numpy.indices(shape) は、形状 (N, d_0, d_1, ..., d_{n-1}) の配列を返します。ここで Nshape の要素数です。例えば、shape=(2, 3) なら、返り値の形状は (2, 2, 3) になります。
    • トラブルシューティング
      返り値の形状をよく確認し、最初の次元がインデックスの種類(各次元に対応するインデックス)を表していることを理解しましょう。特定の次元のインデックスを取得したい場合は、返り値の最初の次元に沿ってインデックスを指定します(例: 行インデックスなら indices[0]、列インデックスなら indices[1])。
  1. インデックスを使った配列アクセス時のエラー

    • エラー
      numpy.indices() で生成したインデックスを使って別の配列にアクセスしようとした際に、IndexError が発生する。
    • 原因
      生成されたインデックス配列の形状が、アクセスしたい配列の形状と互換性がない可能性があります。また、インデックスの値が配列の範囲外である可能性も考えられます。
    • トラブルシューティング
      • numpy.indices() に渡した形状が、アクセスしたい配列の形状と一致しているか確認してください。
      • 生成されたインデックス配列の各要素の値が、アクセスしたい配列の対応する次元の範囲内(0から次元のサイズ-1まで)であることを確認してください。
      • ブロードキャスティングのルールを理解し、インデックス配列とアクセスしたい配列の形状がどのように相互作用するかを考慮してください。
  2. 大きな形状でのメモリ使用量

    • 注意点
      非常に大きな形状を numpy.indices() に渡すと、生成されるインデックス配列も非常に大きくなり、メモリを大量に消費する可能性があります。
    • トラブルシューティング
      大きな配列に対する操作では、numpy.indices() で全てのインデックスを事前に生成するのではなく、イテレータやスライスなどを活用して必要な部分だけを処理することを検討してください。NumPyのメモリ効率的な操作方法を理解することが重要です。
  3. 型に関する問題(稀)

    • エラー
      生成されたインデックスの型が期待と異なる。
    • 原因
      通常、numpy.indices() は整数のインデックスを生成しますが、稀に意図しない型になることがあります。
    • トラブルシューティング
      生成された配列の dtype 属性を確認し、必要であれば astype() メソッドで明示的に型を変換してください。

デバッグのヒント

  • NumPyのドキュメント
    NumPyの公式ドキュメントで numpy.indices() の詳細な仕様や例を確認しましょう。
  • 小さな例で試す
    まずは小さな形状で numpy.indices() を実行し、出力がどのように対応しているかを確認すると理解が深まります。
  • print() 関数
    生成されたインデックス配列の形状 (.shape) や内容を print() 関数で出力して確認しましょう。


例1: 多次元配列の要素へのアクセス

import numpy as np

# 3x4 の配列を作成
a = np.array([[1, 2, 3, 4],
              [5, 6, 7, 8],
              [9, 10, 11, 12]])

# 配列の形状に対するインデックス配列を生成
indices = np.indices(a.shape)
print("インデックス配列:\n", indices)
print("インデックス配列の形状:", indices.shape)

# indices[0] は行インデックス、indices[1] は列インデックス
row_indices = indices[0]
col_indices = indices[1]
print("\n行インデックス:\n", row_indices)
print("列インデックス:\n", col_indices)

# これらのインデックスを使って配列の要素にアクセス
# 例えば、a[0, 1] の要素にアクセスするには
element1 = a[row_indices[0, 1], col_indices[0, 1]]
print("\na[0, 1]:", element1)

# すべての要素にインデックスを使ってアクセスする例
print("\nすべての要素にインデックスを使ってアクセス:")
for i in range(a.shape[0]):
    for j in range(a.shape[1]):
        print(f"a[{row_indices[i, j]}, {col_indices[i, j]}] = {a[row_indices[i, j], col_indices[i, j]]}")

この例では、3x4 の配列 a に対して numpy.indices(a.shape) を実行し、行インデックスと列インデックスの配列 indices を取得しています。indices[0] が行インデックスの配列、indices[1] が列インデックスの配列に対応していることがわかります。これらのインデックスを使って、元の配列 a の特定の要素にアクセスする方法を示しています。

例2: 条件に基づいた要素の選択

import numpy as np

# 4x3 の配列を作成
b = np.array([[10, 25, 5],
              [30, 15, 20],
              [5, 40, 12],
              [22, 8, 35]])

# 条件: 20より大きい要素
condition = b > 20

# 条件を満たす要素のインデックスを取得
indices = np.indices(b.shape)
row_indices = indices[0][condition]
col_indices = indices[1][condition]

print("元の配列:\n", b)
print("\n20より大きい要素の条件:\n", condition)
print("\n20より大きい要素の行インデックス:", row_indices)
print("20より大きい要素の列インデックス:", col_indices)

# これらのインデックスを使って要素を表示
print("\n20より大きい要素:")
for i in range(len(row_indices)):
    print(f"b[{row_indices[i]}, {col_indices[i]}] = {b[row_indices[i], col_indices[i]]}")

この例では、配列 b の要素のうち、20より大きい要素のインデックスを numpy.indices() とブールインデックスを使って抽出しています。conditionb と同じ形状のブール配列で、20より大きい要素が True になっています。このブール配列を使って indices[0]indices[1] から対応するインデックスを取り出すことで、条件を満たす要素の位置を知ることができます。

例3: 配列の一部の要素に対する操作

import numpy as np

# 2x5 の配列を作成
c = np.array([[1, 2, 3, 4, 5],
              [6, 7, 8, 9, 10]])

# 特定の範囲のインデックスを生成 (例えば、2列目から4列目)
indices = np.indices(c.shape)
selected_cols = np.logical_and(indices[1] >= 1, indices[1] <= 3)

print("元の配列:\n", c)
print("\n選択された列の条件:\n", selected_cols)
print("\n選択された要素:")
print(c[indices[0][selected_cols], indices[1][selected_cols]])

# 選択された要素に値を代入する例
c[indices[0][selected_cols], indices[1][selected_cols]] = -1
print("\n操作後の配列:\n", c)

この例では、numpy.indices() を使って配列 c の形状に対応するインデックスを生成し、そのインデックスを使って特定の列(2列目から4列目)の要素を選択し、値を変更しています。np.logical_and() を使って列インデックスに対する条件を作成し、ブールインデックスとして利用しています。

例4: numpy.mgrid との比較

import numpy as np

shape = (2, 3)
indices_by_indices = np.indices(shape)
indices_by_mgrid = np.mgrid[0:shape[0], 0:shape[1]]

print("numpy.indices の結果:\n", indices_by_indices)
print("numpy.indices の形状:", indices_by_indices.shape)

print("\nnumpy.mgrid の結果:\n", indices_by_mgrid)
print("numpy.mgrid の形状:", indices_by_mgrid.shape)

この例では、numpy.indices() と似た機能を持つ numpy.mgrid を比較しています。出力の形状が異なることに注目してください。numpy.indices() は最初の次元がインデックスの種類を表すのに対し、numpy.mgrid は最初の次元が入力の最初の次元に対応しています。どちらを使うかは、その後の処理や考え方によって選択されます。



numpy.meshgrid() を利用する

numpy.meshgrid() は、与えられた1次元配列から座標の格子状の配列を生成する関数です。numpy.indices() とは出力の形状が異なりますが、多次元配列の各要素に対応するインデックスの組み合わせを得るという点で類似した目的で使用できます。

import numpy as np

# 形状
shape = (2, 3)
rows = np.arange(shape[0])  # [0, 1]
cols = np.arange(shape[1])  # [0, 1, 2]

# meshgrid を使ってインデックスの組み合わせを生成
col_indices, row_indices = np.meshgrid(cols, rows)

print("行インデックス (meshgrid):\n", row_indices)
print("列インデックス (meshgrid):\n", col_indices)

# numpy.indices の結果と比較
indices_by_indices = np.indices(shape)
print("\n行インデックス (indices):\n", indices_by_indices[0])
print("列インデックス (indices):\n", indices_by_indices[1])

numpy.meshgrid() は、生成される配列の順序が numpy.indices() と逆になる(上記の例では row_indices が最初に来る)点に注意が必要です。また、numpy.indices() が形状全体を受け取るのに対し、meshgrid() は各次元のインデックス範囲(1次元配列)を個別に指定します。

numpy.arange() とブロードキャスティングを利用する

明示的に各次元のインデックス範囲を numpy.arange() で作成し、ブロードキャスティングを利用してインデックス配列を生成する方法です。

import numpy as np

# 形状
shape = (2, 3)
rows = np.arange(shape[0]).reshape(-1, 1)  # 縦ベクトルにreshape
cols = np.arange(shape[1]).reshape(1, -1)  # 横ベクトルにreshape

print("行インデックス (ブロードキャスティング):\n", rows)
print("列インデックス (ブロードキャスティング):\n", cols)

# これらのインデックスを使って配列の要素にアクセスする例
a = np.array([[1, 2, 3],
              [4, 5, 6]])
print("\n要素 a[rows, cols]:\n", a[rows, cols])

この方法では、行インデックスと列インデックスをそれぞれ縦ベクトルと横ベクトルとして作成し、配列 a に同時にインデックスとして渡すことで、すべての要素にアクセスできます。numpy.indices() のように、各次元に対応するインデックスの配列が個別に生成されるわけではありませんが、ブロードキャスティングによって同様の要素へのアクセスが可能になります。

Pythonのリスト内包表記やループを使う

NumPyの配列操作に特化せず、Pythonの基本的な機能を使ってインデックスのリストや配列を生成することも可能です。ただし、大規模な配列に対してはNumPyの機能を使う方が効率的です。

import numpy as np

# 形状
shape = (2, 3)

# リスト内包表記でインデックスのペアを生成
index_pairs = [(i, j) for i in range(shape[0]) for j in range(shape[1])]
print("インデックスのペア (リスト内包表記):\n", index_pairs)

# NumPy配列に変換
index_array = np.array(index_pairs).reshape(shape + (2,))
print("\nインデックス配列 (NumPy):\n", index_array)

# 各次元のインデックス配列に分割 (numpy.indices と同様の形式)
row_indices_list = [[i for j in range(shape[1])] for i in range(shape[0])]
col_indices_list = [[j for j in range(shape[1])] for i in range(shape[0])]
row_indices_manual = np.array(row_indices_list)
col_indices_manual = np.array(col_indices_list)

print("\n行インデックス (手動生成):\n", row_indices_manual)
print("列インデックス (手動生成):\n", col_indices_manual)

この方法は、柔軟性が高い反面、コードが冗長になりやすく、NumPyの最適化された演算を利用できないため、パフォーマンスが劣る可能性があります。

numpy.ndenumerate() を利用する

配列の要素とそのインデックスを同時にイテレートしたい場合には、numpy.ndenumerate() が便利です。これはインデックス配列を明示的に生成するわけではありませんが、同様の目的を達成できます。

import numpy as np

a = np.array([[10, 20, 30],
              [40, 50, 60]])

print("要素とインデックス:")
for index, value in np.ndenumerate(a):
    print(f"インデックス {index}: 値 {value}")

numpy.ndenumerate() は、各要素のインデックスをタプルとして返します。個々の次元のインデックス配列が必要な場合には、この結果を加工する必要があります。

  • numpy.ndenumerate()
    配列の要素とインデックスを同時に処理したい場合に適しています。
  • リスト内包表記やループ
    小規模な配列や、NumPyの機能だけでは複雑なインデックス生成が必要な場合に検討できますが、パフォーマンスには注意が必要です。
  • ブロードキャスティング
    簡潔なコードで、配列の形状に基づいて効率的にインデックス操作を行いたい場合に有効です。
  • numpy.meshgrid()
    座標の格子点を生成するのに適しており、関数の評価などを多次元空間で行う場合に役立ちます。