NumPyで行列のランクを計算する方法:linalg.matrix_rank() 関数とその他の方法


この関数は、行列の特異値分解 (SVD) を用いてランクを計算します。SVD は、行列を 3 つの行列の積に分解する手法です。

A = U * S * V.H

ここで、

  • V.HV の共役行列
  • S は対角行列であり、その対角要素は特異値と呼ばれる
  • U は直交行列
  • A は元の行列

行列のランクは、特異値のうち、0 ではないものの個数に等しいです。linalg.matrix_rank() 関数は、この特異値の個数を数えることでランクを計算します。

関数の使い方

linalg.matrix_rank() 関数の使い方は以下の通りです。

linalg.matrix_rank(A, tol=None, hermitian=False)
  • hermitian (オプション): A がエルミート行列かどうかを示すフラグ。デフォルトは False です。
  • tol (オプション): 特異値が 0 とみなされる閾値。デフォルトは S.max() * max(M, N) * eps です。
  • A: ランクを計算したい行列

関数の例

以下の例では、行列のランクを計算する方法を示します。

import numpy as np

A = np.array([[1, 2, 3],
              [4, 5, 6],
              [7, 8, 9]])

rank = linalg.matrix_rank(A)
print(rank)  # 出力: 3

この例では、行列 A のランクは 3 であることがわかります。

linalg.matrix_rank() 関数は、さまざまな場面で使用できます。以下に、いくつかの例を挙げます。

  • 低ランク近似の計算
  • 固有値問題の解法
  • 行列式の計算
  • 線形回帰モデルにおける共線性の検出

linalg.matrix_rank() 関数は、NumPy の linalg モジュールにおける重要な機能の 1 つです。行列のランクを計算することで、さまざまな線形代数問題を解くことができます。

  • 行列の次元が大きい場合、SVD を用いた計算は時間がかかる場合があります。そのような場合は、より効率的な方法 (QR 分解など) を用いる必要があります。
  • linalg.matrix_rank() 関数は、行列のランクを正確に計算するために、SVD を用いています。そのため、計算コストが高くなります。


例 1:行列のランクを計算する

import numpy as np

A = np.array([[1, 2, 3],
              [4, 5, 6],
              [7, 8, 9]])

rank = linalg.matrix_rank(A)
print(rank)  # 出力: 3

例 2:共線性を検出する

線形回帰モデルにおいて、共線性は、説明変数間に強い相関関係があることを指します。共線性があると、モデルの精度が低下したり、数値的に不安定になったりする可能性があります。

linalg.matrix_rank() 関数を使用して、共線性を検出することができます。説明変数行列のランクが説明変数の数よりも小さい場合、共線性が存在する可能性があります。

import numpy as np

X = np.array([[1, 2, 3],
              [4, 5, 6],
              [7, 8, 9]])

rank = linalg.matrix_rank(X)
num_features = X.shape[1]

if rank < num_features:
    print("共線性が存在する可能性があります。")
else:
    print("共線性はない可能性があります。")

この例では、説明変数行列 X のランクを計算し、説明変数の数と比較しています。ランクが説明変数の数よりも小さい場合、共線性が存在する可能性があることを示しています。

SVD は、行列を 3 つの行列の積に分解する手法です。SVD は、さまざまな線形代数問題を解くために使用できます。

linalg.matrix_rank() 関数は、SVD を用いて行列のランクを計算します。SVD の結果自体を取得するには、以下のように svd() 関数を使用する必要があります。

import numpy as np

A = np.array([[1, 2, 3],
              [4, 5, 6],
              [7, 8, 9]])

U, S, Vh = np.linalg.svd(A)

print(U)
print(S)
print(Vh)


行基本変形

最も基本的な方法は、行基本変形を用いて計算する方法です。具体的には、以下の手順で行います。

  1. 与えられた行列をガウス消去法を用いて階段行列に変換します。
  2. 階段行列において、0以外の行の数を数えます。
  3. 数えた個数が行列のランクとなります。

この方法は、理解しやすく、計算も比較的簡単です。しかし、行列の規模が大きくなると、計算量が増加し、非効率になってしまうという欠点があります。

QR分解

QR分解は、行列を直交行列と上三角行列の積に分解する手法です。QR分解を用いて行列のランクを計算する方法は以下の通りです。

  1. 与えられた行列をQR分解します。
  2. 上三角行列において、対角線上の0でない要素の数を数えます。
  3. 数えた個数が行列のランクとなります。

QR分解は、行基本変形よりも計算効率が良く、大規模な行列にも適用できます。また、QR分解の結果は、他の線形代数問題を解くのにも利用できます。

特異値分解 (SVD)

SVDは、行列を3つの行列の積に分解する手法です。SVDを用いて行列のランクを計算する方法は以下の通りです。

  1. 与えられた行列のSVDを行います。
  2. 特異値のうち、0でないものの個数を数えます。
  3. 数えた個数が行列のランクとなります。

SVDは、QR分解よりもさらに計算効率が良く、大規模な行列にも適用できます。また、SVDの結果は、次元削減や異常検出などの様々なタスクにも利用できます。

ライブラリの利用

上記以外にも、行列のランクを計算するためのライブラリがいくつか存在します。例えば、SciPyやLAPACKなどのライブラリには、行列のランクを計算する関数を提供しています。

これらのライブラリを利用する方法は、それぞれライブラリによって異なりますが、たいていは関数に行列を渡すだけで、ランクを計算することができます。ライブラリを利用する方法は、比較的簡単で、効率的に計算を行うことができます。

それぞれの方法の利点と欠点は以下の表の通りです。

方法利点欠点
行基本変形理解しやすい、計算が簡単計算量が多くなる
QR分解計算効率が良い特殊なライブラリが必要
SVD計算効率が良い、応用範囲が広い計算量が多い
ライブラリの利用簡単、効率的ライブラリに依存する

どの方法を選択するかは、行列の規模や計算要件によって異なります。

  • ライブラリを利用する方法は、最も簡単で効率的ですが、ライブラリに依存することになります。
  • 大規模な行列や、計算効率が重要な場合は、QR分解やSVDを用いるのがおすすめです。
  • 小規模な行列の場合は、行基本変形を用いるのが最も簡単です。

上記以外にも、様々な方法で行列のランクを計算することができます。ここでは、代表的な方法をいくつか紹介しました。