Makefileでファイルを古く見せる:`--assume-old=file`オプションのしくみと代替方法


--assume-old=file オプションは、GNU Make ユーティリティで使用されるコマンドラインオプションであり、特定のファイルが古いと仮定して、そのファイルおよびその依存関係の再構築を抑制します。これは、開発プロセスにおいて、特定のファイルが変更されていないことがわかっている場合に役立ちます。

使用方法

このオプションは、make コマンドに -o または --assume-old= フラグを付けてファイル名を指定することで使用できます。

make -o file

または

make --assume-old=file

動作

--assume-old=file オプションが指定されると、Make は指定されたファイルとその依存関係を古いと見なします。これは、ファイルのタイムスタンプが実際に古い場合と同様に、Make が動作することを意味します。

  • 依存関係の再構築が抑制される
    指定されたファイルが依存関係の一部である場合、その依存関係の再構築も抑制されます。
  • ファイルの再構築が抑制される
    指定されたファイルは、たとえそれが依存関係よりも古くても、再構築されません。

以下の例では、source.c ファイルと object.o ファイルの関係を示します。

source.c -> object.o

通常、make コマンドを実行すると、source.c ファイルが object.o ファイルよりも新しい場合、object.o ファイルが再構築されます。

しかし、--assume-old=source.c オプションを使用すると、source.c ファイルが古いと仮定され、object.o ファイルは再構築されません。

make -o source.c

注意点

  • このオプションは、開発プロセスにおいて、特定のファイルが変更されていないことがわかっている場合にのみ使用してください。
  • --assume-old=file オプションは、ファイルが実際に古いことを保証するものではありません。ファイルが実際に変更されている場合は、このオプションを使用しても、予期しない結果が生じる可能性があります。

利点

  • 特定のファイルが変更されていないことがわかっている場合、不要な再構築を抑制することで、リソースを節約できます。
  • 開発プロセスの速度を向上させることができます。
  • Make の動作を理解していない場合は、このオプションを誤って使用すると、問題が発生する可能性があります。
  • ファイルが実際に変更されている場合は、予期しない結果が生じる可能性があります。


例 1: 単一ファイルの再構築を抑制する

この例では、source.c ファイルが古いと仮定し、その再構築を抑制します。

# ターゲット

all: object.o

# ルール

object.o: source.c
    gcc -c source.c -o object.o

# オプション

make -o source.c

この例を実行すると、make コマンドは source.c ファイルが古いと仮定し、object.o ファイルを再構築しません。

例 2: ヘッダーファイルの変更に基づいて再構築を制御する

この例では、source.c ファイルと header.h ファイルの関係を示します。header.h ファイルが変更された場合のみ、source.c ファイルと object.o ファイルが再構築されます。

# ターゲット

all: object.o

# ルール

object.o: source.c header.h
    gcc -c source.c -o object.o

# オプション

make -o source.c

この例を実行すると、make コマンドは source.c ファイルが古いと仮定し、object.o ファイルを再構築しません。しかし、header.h ファイルが変更された場合は、source.c ファイルと object.o ファイルが再構築されます。

  • しかし、header.h ファイルが変更された場合は、source.c ファイルと object.o ファイルが古くなったとみなされ、再構築されます。
  • source.c ファイルが header.h ファイルよりも古いため、Make は object.o ファイルが古いと仮定し、再構築しません。
  • make コマンドを実行すると、Make はまずファイルの依存関係を分析します。
  • ルール定義では、object.o ファイルが source.c ファイルと header.h ファイルに依存することを示しています。
  • 上記の例では、-o source.c オプションを使用して、source.c ファイルが古いと仮定しています。


代替手段

以下に、--assume-old=file オプションの代替手段をいくつか紹介します。

  1. 依存関係のターゲット化
    依存関係を個別のターゲットとして定義することで、Make に対してよりきめ細かな制御を提供できます。この方法により、特定のファイルが変更された場合にのみ、必要なファイルを再構築することができます。

  2. -k オプションの使用
    -k オプションを使用すると、Make はエラーが発生しても処理を続行します。これにより、軽微なエラーがあっても、必要なファイルのみを再構築することができます。

  3. make touch コマンドの使用
    make touch コマンドを使用すると、指定されたファイルのタイムスタンプを更新することができます。これにより、Make はファイルを古くなったとみなして、再構築を実行します。

  4. カスタム ルールの作成
    特定の状況に合わせて、カスタム ルールを作成することができます。この方法により、Make の動作をより詳細に制御することができます。

代替手段を選択する際の考慮事項

適切な代替手段を選択する際には、以下の要素を考慮する必要があります。

  • エラー許容度
    軽微なエラーがあっても処理を続行する必要がある場合は、-k オプションを使用することができます。
  • 必要な制御レベル
    よりきめ細かな制御が必要な場合は、カスタム ルールの作成が必要になる場合があります。
  • プロジェクトの複雑性
    プロジェクトが複雑な場合は、依存関係のターゲット化の方が適切な場合があります。

以下の例は、--assume-old=file オプションの代替手段を示しています。

例 1: 依存関係のターゲット化

この例では、source.c ファイルと header.h ファイルの関係を示します。header.h ファイルが変更された場合のみ、object.o ファイルが再構築されます。

# ターゲット

all: object.o

# ルール

header.o: header.h
    gcc -c header.h -o header.o

object.o: source.c header.o
    gcc -c source.c -o object.o

この例では、header.h ファイルを個別のターゲットとして定義することで、--assume-old=file オプションを使用する必要がなくなります。

例 2: -k オプションの使用

この例では、軽微なエラーがあっても object.o ファイルが再構築されるように、-k オプションを使用する方法を示します。

# ターゲット

all: object.o

# ルール

object.o: source.c header.h
    gcc -c source.c -o object.o -Wall -Werror

この例では、-Wall オプションと -Werror オプションを使用して、すべての警告をエラーとして扱います。しかし、-k オプションを使用しているため、軽微なエラーが発生しても object.o ファイルは再構築されます。