CMakeでMSVC10開発をレベルアップ!変数活用でスマートなコーディング
このガイドでは、CMakeにおけるMSVC10関連の変数について、詳細かつ分かりやすく解説します。
変数の種類
CMakeでは、主に以下の3種類の変数が利用できます。
- キャッシュ変数: プロジェクト設定を永続的に保存する変数です。CMake GUIやコマンドラインオプションで設定できます。
- 環境変数: オペレーティングシステムによって提供される変数です。CMakeを使用してアクセスおよび設定できます。
- 内部変数: CMake自身が定義する変数です。通常、直接操作することは想定されていません。
変数の設定方法
変数は、set
コマンドを使用して設定できます。構文は以下の通りです。
set(変数名 値)
例えば、以下のように MY_VARIABLE
という名前の変数に値 "Hello" を設定できます。
set(MY_VARIABLE Hello)
キャッシュ変数を作成するには、CACHE
オプションを追加します。
set(MY_CACHE_VARIABLE "Description" CACHE BOOL ON)
上記の例では、MY_CACHE_VARIABLE
という名前のキャッシュ変数を作成し、説明文を指定し、デフォルト値を TRUE
に設定しています。
変数の使用方法
設定された変数は、様々な場所で利用できます。
- ターゲットソースコード: ターゲットソースコード内で、
#cmake
ディレクティブを使用して変数の値をマクロに展開したり、条件分岐に使用したりできます。 - CMakeLists.txt: プロジェクト設定ファイル内で、他の変数の値を参照したり、条件分岐に使用したりできます。
MSVC10 固有の変数
MSVC10 には、以下のような固有の変数が用意されています。
- VC_LIB_DIR: Visual Studio のライブラリディレクトリパスを格納します。
- VC_INCLUDE_DIR: Visual Studio のインクルードディレクトリパスを格納します。
- MSVC_VERSION: MSVC のバージョン番号を格納します。
- CMAKE_SIZEOF_VOID_POINTER:
void
ポインタのサイズをバイト単位で格納します。
- 変数の値に空白文字が含まれる場合は、二重引用符で囲みます。
- 複数の変数を同時に設定するには、
set
コマンドを複数回実行します。 - 大文字と小文字は区別されます。
- 変数名は、英数字とアンダースコア(_)のみ使用できます。
CMake の変数は、プロジェクト設定を柔軟かつ効率的に行うために役立ちます。MSVC10 固有の変数も活用することで、より詳細な制御が可能になります。
キャッシュ変数を使用したプロジェクト設定
以下の例では、MY_PROJECT_NAME
という名前のキャッシュ変数を作成し、プロジェクト名を設定します。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject NAME MyProject)
set(MY_PROJECT_NAME "My Awesome Project")
set(MY_PROJECT_NAME_DESCRIPTION "This is my awesome project." CACHE STRING "" ON)
message(STATUS "Project name: ${MY_PROJECT_NAME}")
message(STATUS "Project description: ${MY_PROJECT_NAME_DESCRIPTION}")
このコードを実行すると、CMake GUIまたはコマンドラインで MyProject
プロジェクトを作成できます。プロジェクト設定ウィンドウでは、MY_PROJECT_NAME_DESCRIPTION
変数の値を変更することもできます。
環境変数を使用したソースコードの条件分岐
以下の例では、CMAKE_SIZEOF_VOID_POINTER
環境変数を使用して、プラットフォームに応じてポインタサイズの処理を分岐します。
#include <iostream>
int main() {
if (CMAKE_SIZEOF_VOID_POINTER == 4) {
std::cout << "32-bit platform" << std::endl;
} else if (CMAKE_SIZEOF_VOID_POINTER == 8) {
std::cout << "64-bit platform" << std::endl;
} else {
std::cout << "Unknown platform" << std::endl;
}
return 0;
}
このコードを実行すると、コンパイル対象のプラットフォームに応じて "32-bit platform" または "64-bit platform" と出力されます。
MSVC10 固有変数を使用したコンパイラオプション設定
以下の例では、VC_INCLUDE_DIR
変数を使用して、Visual Studio のインクルードディレクトリパスをコンパイラオプションに追加します。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)
add_executable(MyProject main.cpp)
target_link_libraries(MyProject msvrt)
target_compile_options(MyProject PRIVATE
$<INCLUDE_DIR:${VC_INCLUDE_DIR}>
)
このコードを実行すると、Visual Studio のインクルードディレクトリパスがコンパイラオプションに追加され、プロジェクトのビルドに必要なヘッダーファイルが見つかるようになります。
変数を使用したマクロ展開
以下の例では、MY_PROJECT_VERSION
変数を使用して、ソースコード内にプロジェクトバージョンをマクロ展開します。
cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject NAME MyProject)
set(MY_PROJECT_VERSION 1.0.0)
add_executable(MyProject main.cpp)
target_link_libraries(MyProject msvrt)
target_sources(MyProject PRIVATE main.cpp)
#include <iostream>
int main() {
std::cout << "MyProject version: " << MY_PROJECT_VERSION << std::endl;
return 0;
}
このコードを実行すると、ソースコード内の MY_PROJECT_VERSION
マクロが 1.0.0
に展開され、コンパイルされた実行ファイルで "MyProject version: 1.0.0" と出力されます。
- CMake の最新バージョンでは、新しい変数や機能が追加されている可能性があります。詳細は、CMake 公式ドキュメントを参照してください。
- 上記のコードはあくまで例であり、実際のプロジェクトで使用する場合には、必要に応じて修正する必要があります。
MSVC10 を代替する方法はいくつかあります。
最新の Visual Studio
最も簡単な方法は、最新の Visual Studio を使用することです。Visual Studio 2022 は、最新の C++ 標準規格と機能をサポートしており、セキュリティ対策も強化されています。
MinGW
MinGW は、Windows 上で動作するオープンソースの GCC コンパイラスイートです。MSVC10 と互換性のあるバイナリを生成することができ、無料で利用できます。
Clang
Clang は、LLVM プロジェクトの一部であるオープンソースの C/C++ コンパイラです。クロスプラットフォーム対応しており、Windows 上でも利用できます。
上記以外にも、GCC、Intel C++ Compiler、Embarcadero C++ Builder など、様々な C/C++ コンパイラが提供されています。
選択のポイント
MSVC10 の代替方法を選択する際には、以下の点を考慮する必要があります。
- スキル: 使用するコンパイラの習得難易度
- コスト: 無料のコンパイラと有料のコンパイラ
- 互換性: 既存のコードとの互換性
- 必要な機能: 使用する C++ 標準規格やライブラリ、デバッガなどの機能がサポートされているかどうか
最新の Visual Studio
- デメリット: 商用版は有料
- メリット: 最新の機能とセキュリティ、豊富な開発環境
MinGW
- デメリット: 公式なサポートが少ない
- メリット: 無料、MSVC10 と高い互換性
Clang
- デメリット: MinGW よりも習得難易度が高い
- メリット: クロスプラットフォーム対応、オープンソース
- 各コンパイラの公式ドキュメントを参照
MSVC10 の代替方法はいくつかあり、それぞれメリットとデメリットがあります。プロジェクトの要件に合わせて、最適な方法を選択してください。