Qt QTabWidget::setTabVisible() の解説とプログラミング例【日本語】

具体的には、この関数を使うことで、プログラムの実行中に、あるタブをユーザーに見える状態にしたり、逆に隠したりすることができます。これは、例えば以下のような場合に便利です。

• 高度な設定やデバッグ情報などを、通常は非表示にしておきたい場合。
• ユーザーの操作に応じて、一時的にタブを非表示にしたい場合。
• 特定の条件が満たされたときだけ、あるタブを表示したい場合。

関数の形式

void QTabWidget::setTabVisible(int index, bool visible)

• visible: タブを表示するかどうかを指定するブール値です。
  • true を指定すると、タブが表示されます。
  • false を指定すると、タブが非表示になります。
• index: 表示/非表示を切り替えたいタブのインデックス番号を指定します。タブは QTabWidget に追加された順に、0から始まるインデックスが割り振られます。

例

例えば、QTabWidget に3つのタブ（インデックス0, 1, 2）があるとします。インデックス1のタブを非表示にするには、以下のように記述します。

QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget;
// ... タブの追加処理 ...

// インデックス1のタブを非表示にする
tabWidget->setTabVisible(1, false);

// 後で再び表示する場合
tabWidget->setTabVisible(1, true);

---

無効なインデックスを指定するエラー

• トラブルシューティング
  
  • QTabWidget::count() 関数を使用して、現在のタブの総数を取得し、指定するインデックスが 0 から count() - 1 の範囲内であることを確認してください。
  • タブを追加または削除する処理がある場合は、インデックスの管理が正しく行われているかを見直してください。
  • デバッガーを使用して、setTabVisible() が呼び出される直前のインデックスの値を確認してください。
• 原因
  指定したインデックスが、QTabWidget に実際に存在するタブの範囲外であるため。
• 現象
  setTabVisible() に存在しないタブのインデックス（負の数や、タブの総数以上の数）を渡すと、予期しない動作を引き起こす可能性があります。多くの場合、プログラムがクラッシュしたり、意図しないタブが表示/非表示になったりします。

visible 引数の誤り

• トラブルシューティング
  
  • setTabVisible() に渡される visible の値が、意図したタイミングで意図した値になっているかをデバッガーで確認してください。
  • 条件分岐や論理演算のコードを見直し、誤りがないか確認してください。
  • 必要に応じて、表示/非表示の状態を管理する変数を導入し、その変数の値を追跡すると良いでしょう。
• 原因
  プログラムのロジックの誤り。
• 現象
  visible 引数に意図しないブール値を渡してしまう。例えば、条件判定のミスで常に false が渡されていたり、論理演算子の使い方を間違えたりする場合があります。

レイアウトの問題

• トラブルシューティング
  
  • QLayout::addWidget() や QLayout::insertWidget() を使用してタブを追加している場合、非表示にしたタブがレイアウトマネージャーによってどのように扱われているかを確認してください。
  • レイアウトマネージャーによっては、非表示のウィジェットのサイズを考慮しないものもあります。必要に応じて、レイアウトを再調整する処理を追加することを検討してください（ただし、QTabWidget 自体がレイアウトを管理しているため、直接的なレイアウト操作は通常不要です）。
  • 非表示にしたタブのウィジェット自体を deleteLater() などで破棄することを検討するかもしれませんが、タブウィジェットの所有権に注意する必要があります。QTabWidget が所有しているウィジェットを勝手に破棄すると問題が発生する可能性があります。
• 原因
  デフォルトでは、タブを非表示にしても、そのタブが占めていたスペースは完全に解放されないことがあります。
• 現象
  タブを非表示にした後、レイアウトが崩れる、あるいは非表示にしたタブの分のスペースが残ってしまう。

シグナルとスロットの連携の問題

• トラブルシューティング
  
  • タブの表示/非表示の状態変化に応じて何らかの処理を行いたい場合は、その状態を管理する変数を用意し、setTabVisible() を呼び出す前後にその変数を更新し、必要に応じてその変化に基づいて処理を実行する必要があります。
  • もしタブのコンテンツ自体が変化することで間接的に何かをトリガーしたい場合は、そのコンテンツ側のシグナルとスロットの接続を確認してください。
• 原因
  QTabWidget はタブの表示/非表示に関する固有のシグナルを持っていません。タブの切り替えに関するシグナル (currentChanged()) は、アクティブなタブが変わったときに発行されます。
• 現象
  タブの表示/非表示を切り替えた際に、期待したシグナルが発行されない、あるいはスロットが実行されない。

スタイルの問題

• トラブルシューティング
  
  • アプリケーションに適用しているスタイルシートを確認し、QTabBar や QTabWidget に関連するスタイルルールで、非表示の状態に関する設定がないか確認してください。
  • 必要に応じて、特定のウィジェットに対してスタイルシートを調整することを検討してください。
• 原因
  現在のスタイルシートやテーマが、非表示のタブの描画に影響を与えている可能性があります。
• 現象
  タブを非表示にした際に、見た目が意図したものと異なる（例えば、非表示にしたタブの境界線が残るなど）。

• 最小限のコードで再現
  問題が発生するコードを最小限にまで絞り込み、原因の特定を容易にしてください。
• ログ出力
  重要な処理の前後でログを出力し、プログラムの実行フローを追跡してください。
• デバッガーの活用
  setTabVisible() が呼び出される前後の変数の値やプログラムの状態を詳しく調査してください。

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例1: ボタンによるタブの表示/非表示の切り替え

この例では、QTabWidget に2つのタブがあり、それぞれを表示/非表示を切り替えるための QPushButton を用意します。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTabWidget>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    QMainWindow window;
    QWidget centralWidget;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&centralWidget);

    QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget;
    tabWidget->addTab(new QLabel("最初のタブの内容"), "タブ1");
    tabWidget->addTab(new QLabel("二番目のタブの内容"), "タブ2");

    QPushButton *toggleButton = new QPushButton("タブ2の表示/非表示を切り替え");

    layout->addWidget(tabWidget);
    layout->addWidget(toggleButton);
    window.setCentralWidget(&centralWidget);

    // ボタンがクリックされたときの処理
    QObject::connect(toggleButton, &QPushButton::clicked, [=]() {
        // 現在のタブ2の表示状態を取得
        bool isVisible = tabWidget->isTabVisible(1);
        // 表示状態を反転させる
        tabWidget->setTabVisible(1, !isVisible);
        // ボタンのテキストを更新
        toggleButton->setText(isVisible ? "タブ2を表示" : "タブ2を非表示");
    });

    window.show();
    return a.exec();
}

このコードでは、ボタンがクリックされるたびに、インデックス1（「タブ2」）のタブの表示状態が setTabVisible() によって切り替えられます。isTabVisible() 関数で現在の表示状態を確認し、それに応じてボタンのテキストも変更しています。

例2: チェックボックスによるタブの表示/非表示の制御

この例では、QCheckBox のチェック状態に応じて、タブの表示/非表示を制御します。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTabWidget>
#include <QCheckBox>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    QMainWindow window;
    QWidget centralWidget;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&centralWidget);

    QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget;
    tabWidget->addTab(new QLabel("最初のタブの内容"), "タブA");
    tabWidget->addTab(new QLabel("二番目のタブの内容"), "タブB");
    tabWidget->addTab(new QLabel("三番目のタブの内容"), "タブC");

    QCheckBox *visibleCheckBox = new QCheckBox("タブBを表示");
    visibleCheckBox->setChecked(true); // 初期状態は表示

    layout->addWidget(tabWidget);
    layout->addWidget(visibleCheckBox);
    window.setCentralWidget(&centralWidget);

    // チェックボックスの状態が変更されたときの処理
    QObject::connect(visibleCheckBox, &QCheckBox::stateChanged, [=](int state) {
        // チェックされている場合は表示、そうでなければ非表示
        tabWidget->setTabVisible(1, (state == Qt::Checked));
    });

    window.show();
    return a.exec();
}

ここでは、チェックボックスの状態が変わるたびに、インデックス1（「タブB」）のタブの表示状態が setTabVisible() によって更新されます。

例3: 特定の条件に基づいてタブを動的に表示/非表示にする

この例は少し抽象的ですが、プログラムの内部状態やユーザーの操作など、特定の条件に基づいてタブの表示を切り替える一般的なパターンを示しています。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTabWidget>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QLabel>
#include <QLineEdit>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    QMainWindow window;
    QWidget centralWidget;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&centralWidget);

    QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget;
    tabWidget->addTab(new QLabel("共通の設定"), "基本");
    tabWidget->addTab(new QLabel("詳細な設定 (特定の条件で表示)"), "詳細");
    tabWidget->setTabVisible(1, false); // 初期状態では非表示

    QLineEdit *inputField = new QLineEdit;
    QPushButton *checkButton = new QPushButton("詳細設定を表示/非表示");

    layout->addWidget(tabWidget);
    layout->addWidget(inputField);
    layout->addWidget(checkButton);
    window.setCentralWidget(&centralWidget);

    // ボタンがクリックされたときの処理（例：入力フィールドが空でない場合に詳細設定を表示）
    QObject::connect(checkButton, &QPushButton::clicked, [=]() {
        bool showDetails = !inputField->text().isEmpty();
        tabWidget->setTabVisible(1, showDetails);
    });

    window.show();
    return a.exec();
}

この例では、入力フィールドに何らかのテキストが入力されている場合にのみ、「詳細」タブが表示されるようになっています。setTabVisible() は、プログラムのロジックに基づいて動的に呼び出されます。

---

タブの追加と削除 (addTab() と removeTab())

• 例
  
• 欠点
  
  • タブを再表示する際に、タブの内容（ウィジェットの状態など）を再構築する必要がある場合があります。
  • 頻繁にタブを追加・削除すると、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
• 利点
  
  • 非表示のタブが占めていたスペースも解放されるため、レイアウトがより自然になります。
  • タブに関連付けられたウィジェットやリソースが不要な間はメモリから解放される可能性があります（ただし、ウィジェットの管理方法によります）。
• 説明
  タブを完全に非表示にするのではなく、必要に応じて QTabWidget からタブを削除し、再び必要になったときに addTab() で追加する方法です。

<!-- end list -->

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QTabWidget>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QLabel>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    QMainWindow window;
    QWidget centralWidget;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&centralWidget);

    QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget;
    QWidget *tab1Content = new QLabel("最初のタブの内容");
    QWidget *tab2Content = new QLabel("二番目のタブの内容");
    int tab2Index = tabWidget->addTab(tab2Content, "タブ2"); // インデックスを保存

    QPushButton *toggleButton = new QPushButton("タブ2を削除");

    layout->addWidget(tabWidget);
    layout->addWidget(toggleButton);
    window.setCentralWidget(&centralWidget);

    QObject::connect(toggleButton, &QPushButton::clicked, [=]() {
        if (tabWidget->indexOf(tab2Content) != -1) {
            // タブ2が存在する場合、削除
            tabWidget->removeTab(tab2Index);
            toggleButton->setText("タブ2を追加");
        } else {
            // タブ2が存在しない場合、追加
            tab2Index = tabWidget->insertTab(1, tab2Content, "タブ2"); // 特定の位置に挿入
            toggleButton->setText("タブ2を削除");
        }
    });

    tabWidget->addTab(tab1Content, "タブ1"); // タブ1は最初に追加
    window.show();
    return a.exec();
}

スタックドウィジェット (QStackedWidget) の利用

• 例
  
• 欠点
  
  • QTabWidget が提供する標準的なタブの外観や操作（ドラッグ＆ドロップでのタブの並べ替えなど）は自分で実装する必要があります。
  • タブのタイトルなどを自分で管理する必要があります。
• 利点
  
  • タブの外観を完全にカスタマイズできます。
  • タブ以外の方法でコンテンツを切り替えるインタフェースも容易に実現できます（例：サイドバーのリスト）。
  • 各ウィジェットの表示/非表示は setCurrentIndex() や setCurrentWidget() で直接制御できます。
• 説明
  QTabWidget の代わりに QStackedWidget を使用し、タブに対応する複数のウィジェットを重ねて配置します。そして、ボタンやリストビューなどの別のコントロールを使って、表示するウィジェットを切り替えます。

#include <QApplication>
#include <QMainWindow>
#include <QStackedWidget>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QHBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QLabel>
#include <QListWidget>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);
    QMainWindow window;
    QWidget centralWidget;
    QHBoxLayout *mainLayout = new QHBoxLayout(&centralWidget);

    QListWidget *tabList = new QListWidget;
    tabList->addItem("タブA");
    tabList->addItem("タブB");
    tabList->addItem("タブC");
    tabList->setCurrentRow(0);

    QStackedWidget *stackedWidget = new QStackedWidget;
    stackedWidget->addWidget(new QLabel("タブAの内容"));
    stackedWidget->addWidget(new QLabel("タブBの内容"));
    stackedWidget->addWidget(new QLabel("タブCの内容"));
    stackedWidget->setCurrentIndex(0);

    mainLayout->addWidget(tabList);
    mainLayout->addWidget(stackedWidget);
    window.setCentralWidget(&centralWidget);

    QObject::connect(tabList, &QListWidget::currentRowChanged, stackedWidget, &QStackedWidget::setCurrentIndex);

    window.show();
    return a.exec();
}

この例では、QListWidget で選択された項目に応じて、QStackedWidget に表示するウィジェットが切り替わります。

カスタムウィジェットによるタブの実装

• （具体的なコード例は複雑になるため省略しますが、基本的な考え方としては、複数のボタンを横に並べてタブのように見せかけ、それぞれのボタンがクリックされたときに、対応するコンテンツウィジェットの表示/非表示を切り替える、というような実装になります。）
• 欠点
  
  • 多くの基本的な機能を自分で実装する必要があるため、開発に手間と時間がかかります。
  • アクセシビリティへの配慮も自分で行う必要があります。
• 利点
  
  • 非常に柔軟なユーザーインターフェースを構築できます。
  • 独自のタブのスタイルやアニメーション、インタラクションなどを実装できます。
• 説明
  QTabWidget を直接使用せず、QPushButton や QLabel などを組み合わせて、タブの外観と切り替えのロジックを完全に自作する方法です。

• （具体的なコード例は、どのようなコンテンツをどのように分割・表示したいかによって大きく異なるため、ここでは概念的な説明に留めます。）
• 欠点
  
  • タブのような固定された切り替えインターフェースではありません。
• 利点
  
  • 柔軟なレイアウト変更が可能です。
  • アニメーションなどを組み合わせて、スムーズな表示/非表示の切り替えを実装できます。
• 説明
  必ずしもタブの概念ではありませんが、複数のコンテンツ領域を分割して表示し、必要に応じて特定の領域を縮小したり、完全に隠したりすることで、タブの表示/非表示に近い効果を得ることができます。QSplitter は子ウィジェットのサイズをドラッグで変更できる区切り線を提供し、QFrame などを使ってコンテンツをグループ化します。