【Qt入門】QTabWidget currentChanged() のエラーとトラブルシューティング
2025-05-01
void QTabWidget::currentChanged(int index) は、Qt の QTabWidget クラスで定義されているシグナルの一つです。このシグナルは、タブウィジェット内で現在表示されているタブが変更されたときに発行（emit）されます。
もう少し詳しく見ていきましょう。
-
(int index): これはシグナルが送信する引数です。int型のindexは、新しく選択されたタブのインデックス番号を表します。タブは通常、追加された順に 0 から始まるインデックスが割り振られます。例えば、最初に加えられたタブのインデックスは 0、次に加えられたタブのインデックスは 1、といった具合です。 -
QTabWidget::currentChanged: これはシグナルの名前です。QTabWidgetクラスに属しており、タブの選択状態が変化したことを示唆しています。 -
void: これは、このシグナルが値を返さないことを意味します。シグナルは通常、何らかのイベントが発生したことを通知する役割を持つため、直接的な戻り値を持ちません。
このシグナルの主な役割：
currentChanged シグナルは、タブの切り替えに応じて何らかの処理を実行したい場合に非常に役立ちます。例えば、以下のようなケースで利用されます。
- ログ記録: どのタブがいつ選択されたかを記録する。
- 設定の適用: タブごとに異なる設定を管理し、タブが切り替わった際に適切な設定を適用する。
- ボタンやメニューの有効/無効の切り替え: 選択されたタブの状態によって、特定の操作を許可したり禁止したりする。
- 表示内容の更新: 現在のタブに応じて異なる情報を表示したり、データをロードしたりする。
シグナルの使い方：
このシグナルを利用するには、通常、Qt のシグナルとスロットの仕組みを使います。QTabWidget オブジェクトの currentChanged シグナルを、処理を行いたい別のオブジェクトのスロット（関数）に接続（connect）します。
例えば、MainWindow クラスに tabChangedHandler(int index) というスロットがある場合、次のように接続できます。
QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget(this);
MainWindow *mainWindow = this;
// tabWidget の currentChanged シグナルが発行されたら、
// mainWindow の tabChangedHandler スロットを呼び出す。
// その際、シグナルの引数 (新しいタブのインデックス) が
// スロットの引数として渡される。
connect(tabWidget, &QTabWidget::currentChanged, mainWindow, &MainWindow::tabChangedHandler);
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラー
タブを切り替えても、期待した処理が何も起こらない。 - 原因
connect()関数でcurrentChangedシグナルと目的のスロットが正しく接続されていない可能性があります。 - トラブルシューティング
connect()呼び出しが存在するか確認してください。- シグナルの構文 (
&QTabWidget::currentChanged)、スロットの構文 (&YourClass::yourSlot)、そして接続するオブジェクトのポインタが正しいか確認してください。 - Qt 5 以降の新しいシグナル/スロット構文を使用しているか確認してください。古い構文（文字列ベース）はタイプミスがあってもコンパイラが検出できず、実行時にエラーが発生する可能性があります。
- 接続先のオブジェクト (
mainWindowなど) が有効なインスタンスであることを確認してください（nullptr でないかなど）。
- エラー
-
スロットの引数の不一致
- エラー
connect()は成功するものの、タブを切り替えるとプログラムがクラッシュしたり、予期しない動作をしたりする。 - 原因
currentChangedシグナルはint型のインデックスを引数として送信しますが、接続されたスロットの引数の型が異なっている可能性があります。 - トラブルシューティング
- スロットの定義が
void yourSlot(int index)のようになっているか確認してください。引数の型がintである必要があります。 - スロットが引数を必要としない場合でも、
currentChangedシグナルはインデックスを送信するため、スロット側でそれを受け取るように定義する必要があります（受け取ったインデックスを使用しないことも可能です）。
- スロットの定義が
- エラー
-
意図しない複数回のスロット呼び出し
- エラー
タブを一度切り替えただけなのに、スロットが複数回実行される。 - 原因
- 誤って同じシグナルとスロットを複数回接続している可能性があります。
- タブの切り替え処理の中で、意図せず
setCurrentIndex()などを呼び出している可能性があります。
- トラブルシューティング
connect()呼び出しが重複していないか確認してください。- タブの切り替えに関連するコードを見直し、
setCurrentIndex()の呼び出しが意図通りに行われているか確認してください。
- エラー
-
タブのインデックスに関する誤解
- エラー
スロット内で受け取ったインデックスを使ってタブの内容にアクセスしようとした際に、期待したタブと異なるタブにアクセスしてしまう。 - 原因
- タブの追加や削除の順序が想定と異なっている可能性があります。
- インデックスが 0 から始まることを忘れている可能性があります。
- トラブルシューティング
QTabWidget::indexOf()やQTabWidget::tabText()などを利用して、インデックスとタブの関係をデバッグしてください。- タブの追加順序や削除処理を確認し、インデックスがどのように変化するかを理解してください。
- エラー
-
スロット内でのエラー
- エラー
タブを切り替えるとプログラムがクラッシュしたり、スロット内で例外が発生したりする。 - 原因
接続されたスロットの内部でエラーが発生している可能性があります。 - トラブルシューティング
- スロットのコードを注意深くレビューし、論理的な誤りや潜在的な例外発生箇所がないか確認してください。
- デバッガを使用して、スロット内の処理をステップ実行し、エラーが発生している箇所を特定してください。
- エラー
-
初期状態でのシグナル発行
- 誤解
QTabWidgetが最初に表示されたときにもcurrentChangedシグナルが発行されるかどうか。 - 説明
通常、QTabWidgetが最初に表示される際には、最初のタブが自動的に選択されますが、この初期選択時にcurrentChangedシグナルが発行されるかどうかは、Qt のバージョンやプラットフォームによって挙動が異なる場合があります。明示的に最初のタブを選択した場合などには発行されることが多いです。 - トラブルシューティング
初期状態での処理が必要な場合は、QTabWidgetの初期化後や表示後に明示的に最初のタブのインデックスを取得し、必要な処理を行うことを検討してください。
- 誤解
デバッグのヒント
- デバッガを使用して、シグナルが発行された際のプログラムの流れを追跡し、スロットが正しく呼び出されているか、スロット内の処理が期待通りに行われているかを確認する。
qDebug()を使用して、currentChangedシグナルがいつ発行され、どのようなインデックスが渡されているかを確認する。
例1: 現在選択されているタブのインデックスをコンソールに出力する
この例では、QTabWidget の currentChanged シグナルが発行されたときに、新しいタブのインデックスをコンソールに出力する簡単なスロットを作成し、接続します。
#include <QApplication>
#include <QTabWidget>
#include <QLabel>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>
class MainWindow : public QWidget {
public:
MainWindow() {
tabWidget = new QTabWidget;
QWidget *tab1 = new QWidget;
QLabel *label1 = new QLabel("タブ 1 の内容");
QVBoxLayout *layout1 = new QVBoxLayout(tab1);
layout1->addWidget(label1);
tabWidget->addTab(tab1, "タブ 1");
QWidget *tab2 = new QWidget;
QLabel *label2 = new QLabel("タブ 2 の内容");
QVBoxLayout *layout2 = new QVBoxLayout(tab2);
layout2->addWidget(label2);
tabWidget->addTab(tab2, "タブ 2");
QWidget *tab3 = new QWidget;
QLabel *label3 = new QLabel("タブ 3 の内容");
QVBoxLayout *layout3 = new QVBoxLayout(tab3);
layout3->addWidget(label3);
tabWidget->addTab(tab3, "タブ 3");
QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(this);
mainLayout->addWidget(tabWidget);
// currentChanged シグナルが発行されたら、onCurrentTabChanged スロットを呼び出す
connect(tabWidget, &QTabWidget::currentChanged, this, &MainWindow::onCurrentTabChanged);
}
private slots:
void onCurrentTabChanged(int index) {
qDebug() << "現在のタブのインデックス:" << index;
}
private:
QTabWidget *tabWidget;
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication a(argc, argv);
MainWindow w;
w.show();
return a.exec();
}
説明
- ユーザーがタブを切り替えるたびに、
onCurrentTabChangedスロットが呼び出され、新しいタブのインデックスがコンソールに表示されます。 onCurrentTabChangedスロットはint indexを引数として受け取り、qDebug()を使ってコンソールに現在のタブのインデックスを出力します。connect()関数を使用して、tabWidgetのcurrentChangedシグナルをMainWindowクラスのonCurrentTabChangedスロットに接続しています。- コンストラクタ内で
QTabWidgetのインスタンスを作成し、3つのタブを追加しています。各タブには簡単なQLabelが配置されています。 MainWindowクラスはQWidgetを継承しており、メインウィンドウの役割を果たします。
例2: 現在選択されているタブのテキストをラベルに表示する
この例では、タブが切り替えられたときに、選択されたタブのテキストを取得し、別のラベルに表示します。
#include <QApplication>
#include <QTabWidget>
#include <QLabel>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
class MainWindow : public QWidget {
public:
MainWindow() {
tabWidget = new QTabWidget;
QWidget *tab1 = new QWidget;
// ... (タブ 1 の内容)
tabWidget->addTab(tab1, "ホーム");
QWidget *tab2 = new QWidget;
// ... (タブ 2 の内容)
tabWidget->addTab(tab2, "設定");
QWidget *tab3 = new QWidget;
// ... (タブ 3 の内容)
tabWidget->addTab(tab3, "ヘルプ");
infoLabel = new QLabel("現在選択中のタブ:");
QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(this);
mainLayout->addWidget(tabWidget);
mainLayout->addWidget(infoLabel);
connect(tabWidget, &QTabWidget::currentChanged, this, &MainWindow::onCurrentTabChanged);
}
private slots:
void onCurrentTabChanged(int index) {
QString currentTabText = tabWidget->tabText(index);
infoLabel->setText("現在選択中のタブ: " + currentTabText);
}
private:
QTabWidget *tabWidget;
QLabel *infoLabel;
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication a(argc, argv);
MainWindow w;
w.show();
return a.exec();
}
説明
- 取得したタブのテキストは、
infoLabelのテキストとして設定され、GUI 上に表示されます。 onCurrentTabChangedスロットでは、引数として渡されたインデックスを使用してtabWidget->tabText(index)を呼び出し、選択されたタブのテキストを取得しています。MainWindowクラスには、QTabWidgetと、現在のタブのテキストを表示するためのQLabel(infoLabel) が含まれています。
例3: 選択されたタブに応じて異なる処理を行う
この例では、選択されたタブのインデックスに基づいて、異なる関数を呼び出す方法を示します。
#include <QApplication>
#include <QTabWidget>
#include <QLabel>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>
class MainWindow : public QWidget {
public:
MainWindow() {
tabWidget = new QTabWidget;
tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 1 の内容"), "タブ 1");
tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 2 の内容"), "タブ 2");
tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 3 の内容"), "タブ 3");
QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(this);
mainLayout->addWidget(tabWidget);
setLayout(mainLayout);
connect(tabWidget, &QTabWidget::currentChanged, this, &MainWindow::onCurrentTabChanged);
}
private slots:
void onCurrentTabChanged(int index) {
if (index == 0) {
processTab1();
} else if (index == 1) {
processTab2();
} else if (index == 2) {
processTab3();
}
}
void processTab1() {
qDebug() << "タブ 1 の処理を実行";
}
void processTab2() {
qDebug() << "タブ 2 の処理を実行";
}
void processTab3() {
qDebug() << "タブ 3 の処理を実行";
}
private:
QTabWidget *tabWidget;
};
int main(int argc, char *argv[]) {
QApplication a(argc, argv);
MainWindow w;
w.show();
return a.exec();
}
- これにより、選択されたタブに応じて異なるロジックを実行することができます。
onCurrentTabChangedスロット内で、渡されたindexの値に応じてif-else if文を使用し、異なる処理を行う関数 (processTab1,processTab2,processTab3) を呼び出しています。
QTabWidget::currentIndex() のポーリング
- 使用例
#include <QApplication> #include <QTabWidget> #include <QLabel> #include <QVBoxLayout> #include <QWidget> #include <QTimer> #include <QDebug> class MainWindow : public QWidget { public: MainWindow() { tabWidget = new QTabWidget; tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 1"), "タブ 1"); tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 2"), "タブ 2"); QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(this); mainLayout->addWidget(tabWidget); setLayout(mainLayout); timer = new QTimer(this); connect(timer, &QTimer::timeout, this, &MainWindow::checkCurrentIndex); timer->start(100); // 100ミリ秒ごとにチェック previousIndex = tabWidget->currentIndex(); } private slots: void checkCurrentIndex() { int currentIndex = tabWidget->currentIndex(); if (currentIndex != previousIndex) { qDebug() << "タブが変更されました。新しいインデックス:" << currentIndex; // ここでタブが切り替わった際の処理を行う previousIndex = currentIndex; } } private: QTabWidget *tabWidget; QTimer *timer; int previousIndex; }; int main(int argc, char *argv[]) { QApplication a(argc, argv); MainWindow w; w.show(); return a.exec(); } - 欠点
タブが切り替わった瞬間に処理を行うのではなく、ポーリングのタイミングに依存するため、リアルタイム性が低い可能性があります。また、不要なポーリングはパフォーマンスに影響を与える可能性があります。 - 利点
シグナルとスロットの接続が不要で、シンプルな実装になる場合があります。 - 方法
定期的にまたは必要なタイミングでQTabWidget::currentIndex()関数を呼び出し、現在選択されているタブのインデックスを取得する方法です。
イベントフィルタの使用
- 使用例（概念的なもの）
#include <QApplication> #include <QTabWidget> #include <QLabel> #include <QVBoxLayout> #include <QWidget> #include <QEvent> #include <QDebug> class MainWindow : public QWidget { public: MainWindow() { tabWidget = new QTabWidget; tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 1"), "タブ 1"); tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 2"), "タブ 2"); QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(this); mainLayout->addWidget(tabWidget); setLayout(mainLayout); tabWidget->installEventFilter(this); } protected: bool eventFilter(QObject *watched, QEvent *event) override { if (watched == tabWidget && event->type() == QEvent::MouseButtonRelease) { // マウスボタンが離されたときに、タブの選択が変更された可能性がある QPoint mousePos = static_cast<QMouseEvent*>(event)->pos(); QTabBar *tabBar = tabWidget->tabBar(); int tabIndex = tabBar->tabAt(mousePos); if (tabIndex != -1 && tabIndex != tabWidget->currentIndex()) { qDebug() << "マウス操作によりタブが変更された可能性。新しいインデックス:" << tabIndex; // ここでタブが切り替わった際の処理を行う } } return QWidget::eventFilter(watched, event); } private: QTabWidget *tabWidget; }; int main(int argc, char *argv[]) { QApplication a(argc, argv); MainWindow w; w.show(); return a.exec(); }QTabBarのシグナルを監視する方法が考えられます（下記参照）。 - 欠点
どのイベントがタブの切り替えを引き起こすかを正確に把握する必要があり、実装が複雑になる可能性があります。また、Qt の内部実装に依存するため、将来のバージョンで動作が変わる可能性があります。 - 利点
シグナルに直接依存せず、より低レベルなイベントを捕捉できるため、より柔軟な制御が可能です。 - 方法
QTabWidgetオブジェクトにイベントフィルタをインストールし、タブの選択に関連するイベント（例えば、マウスボタンのリリースイベントなど）を監視する方法です。
QTabBar のシグナルを使用する
- 使用例
#include <QApplication> #include <QTabWidget> #include <QLabel> #include <QVBoxLayout> #include <QWidget> #include <QTabBar> #include <QDebug> class MainWindow : public QWidget { public: MainWindow() { tabWidget = new QTabWidget; tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 1"), "タブ 1"); tabWidget->addTab(new QLabel("タブ 2"), "タブ 2"); QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(this); mainLayout->addWidget(tabWidget); setLayout(mainLayout); // QTabWidget の内部の QTabBar オブジェクトを取得し、その currentChanged シグナルに接続 connect(tabWidget->tabBar(), &QTabBar::currentChanged, this, &MainWindow::onTabChangedFromTabBar); } private slots: void onTabChangedFromTabBar(int index) { qDebug() << "QTabBar からの通知: 現在のタブのインデックス:" << index; // ここでタブが切り替わった際の処理を行う } private: QTabWidget *tabWidget; }; int main(int argc, char *argv[]) { QApplication a(argc, argv); MainWindow w; w.show(); return a.exec(); } - 欠点
QTabWidgetの API を少し深く理解する必要があります。 - 利点
QTabWidgetのcurrentChangedシグナルと同様に、タブが実際に切り替わったタイミングで通知を受け取ることができます。QTabBarはタブの選択に関するより直接的な情報を持っています。 - 方法
QTabWidget::tabBar()関数でQTabBarオブジェクトを取得し、そのcurrentChanged(int index)シグナルに接続する方法です。QTabWidgetは内部でQTabBarを使用してタブの表示と操作を管理しています。
- 欠点
QTabWidgetの仮想関数の設計に依存し、Qt の内部実装の詳細を理解する必要があります。一般的には、シグナルとスロットの仕組みを使用する方が推奨されます。 - 利点
QTabWidgetの内部動作をより深く制御できます。 - 方法
QTabWidgetを継承したカスタムクラスを作成し、タブの選択に関連する仮想関数（もし存在すれば）をオーバーライドする方法です。