QtのQTabWidgetでコーナーウィジェットを活用!基本から応用まで徹底解説
QTabWidgetとは?
QTabWidget
は、複数のタブとそれぞれのタブに関連付けられたページ(ウィジェット)を管理するためのウィジェットです。通常、上部にタブが並び、その下に選択されたタブに対応するコンテンツが表示されます。
cornerWidget()の役割
QTabWidget::cornerWidget()
は、タブバーの特定の隅(通常は右上)に表示されるウィジェットを取得するために使用されます。この関数は、setCornerWidget()
と組み合わせて使用され、タブバーの隅に任意のウィジェット(例えば、追加のボタンや検索フィールドなど)を配置することができます。
主な特徴と使い方:
- 注意点:
- 通常、
cornerWidget
はNorth
(上)またはSouth
(下)のタブ位置用に設計されています。West
(左)やEast
(右)のタブ位置では正しく表示されない場合があります。 - タブがない場合、コーナーウィジェットが表示されないことがあります。これは、タブバー自体が表示されないためです。
- スタイルシートを適用する際に、コーナーウィジェットの配置やサイズに影響を与えることがあります。
- 通常、
- 用途: タブの追加ボタン、設定ボタン、検索バーなど、タブ全体に共通する機能や操作を配置するのに便利です。
- 設定方法:
setCornerWidget(QWidget *widget, Qt::Corner corner = Qt::TopRightCorner)
関数を使って、指定したウィジェットをその隅に設定します。 - 配置場所:
QTabWidget::cornerWidget()
は、Qt::Corner
列挙型で指定された隅に配置されたウィジェットを返します。デフォルトではQt::TopRightCorner
(右上)です。
例えば、タブウィジェットの右上に新しいタブを追加するボタンを配置したい場合、次のように使用できます。
#include <QtWidgets/QApplication>
#include <QtWidgets/QTabWidget>
#include <QtWidgets/QPushButton>
#include <QtWidgets/QWidget>
#include <QtWidgets/QVBoxLayout>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QTabWidget tabWidget;
// タブに表示するページを作成
QWidget *page1 = new QWidget();
QVBoxLayout *layout1 = new QVBoxLayout(page1);
layout1->addWidget(new QPushButton("ボタン1"));
tabWidget.addTab(page1, "タブ1");
QWidget *page2 = new QWidget();
QVBoxLayout *layout2 = new QVBoxLayout(page2);
layout2->addWidget(new QPushButton("ボタン2"));
tabWidget.addTab(page2, "タブ2");
// コーナーウィジェットとしてボタンを作成
QPushButton *addButton = new QPushButton("+");
addButton->setFixedSize(24, 24); // サイズを固定
// タブウィジェットの右上にボタンを配置
tabWidget.setCornerWidget(addButton, Qt::TopRightCorner);
// ボタンがクリックされたときの処理(例: 新しいタブを追加)
QObject::connect(addButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
static int tabCount = 2;
QWidget *newPage = new QWidget();
QVBoxLayout *newLayout = new QVBoxLayout(newPage);
newLayout->addWidget(new QPushButton(QString("新しいボタン %1").arg(++tabCount)));
tabWidget.addTab(newPage, QString("新しいタブ %1").arg(tabCount));
});
tabWidget.setWindowTitle("QTabWidget with Corner Widget");
tabWidget.show();
return a.exec();
}
コーナーウィジェットが表示されない
原因:
- ウィジェットの親オブジェクト:
setCornerWidget()
に渡すウィジェットが、すでに別の親ウィジェットを持っている場合、QTabWidget
に正しく設定されないことがあります。 - ウィジェットのサイズポリシー: ウィジェットの
sizePolicy
がFixed
に設定されている場合や、minimumSize
、maximumSize
が適切に設定されていない場合、表示領域に収まらないことがあります。 - レイアウトの問題: コーナーウィジェットとして複数のウィジェットを配置するために
QWidget
をコンテナとして使用し、その中にレイアウトを設定した場合、レイアウトのマージンやスペースによってウィジェットがタブバーの範囲外に押し出されてしまうことがあります。 - タブの位置が横向きではない場合:
QTabWidget::setCornerWidget()
は、タブの配置がQt::North
(上) またはQt::South
(下) の場合に最も適切に機能するように設計されています。Qt::West
(左) やQt::East
(右) の場合、表示されないか、予期せぬ位置に表示されることがあります。 - タブがない場合:
QTabWidget
にタブが1つも追加されていない場合、タブバー自体が表示されないため、コーナーウィジェットも表示されません。コーナーウィジェットはタブバーの一部として扱われるためです。
トラブルシューティング:
- ウィジェットの親を確認する:
setCornerWidget()
に渡すウィジェットが、他のウィジェットの子になっていないか確認してください。もし親がある場合は、setParent(nullptr)
で親を解除するか、QTabWidget
に設定する前に新しいウィジェットを作成することを検討してください。 - シンプルなウィジェットで試す: まずは
QPushButton
やQLabel
など、非常にシンプルなウィジェットをcornerWidget
として設定してみて、それが表示されるか確認します。表示される場合は、複雑なカスタムウィジェット側の問題である可能性が高いです。 setMinimumSize
でサイズを指定する: 特にカスタムウィジェットをコーナーウィジェットとして使用する場合、明示的にsetMinimumSize()
を設定することで、表示領域が確保されることがあります。- レイアウトのマージンを0にする: 複数のウィジェットをコーナーに配置する場合、
QHBoxLayout
やQVBoxLayout
を使用してそれらのウィジェットを格納するQWidget
を作成し、そのレイアウトのsetContentsMargins(0, 0, 0, 0)
を呼び出してマージンをなくしてみてください。 - タブの位置を確認する:
QTabWidget::tabPosition()
がQt::North
またはQt::South
であることを確認してください。もし左右にタブを配置したい場合は、別の方法(例えば、タブウィジェットと並列に別のウィジェットを配置し、適切なレイアウトで管理する)を検討する必要があります。 - タブを追加する: コーナーウィジェットが表示されない場合は、まず
QTabWidget
に最低1つ以上のタブが追加されていることを確認してください。
コーナーウィジェットがタブに重なる(オーバーラップ)
原因:
- スタイルの問題: 使用しているスタイルシートやテーマによっては、コーナーウィジェットとタブバーの間に適切なスペースが確保されず、重なって表示されることがあります。
トラブルシューティング:
QTabWidget
のスタイルオプションを調整する: より高度なケースでは、QTabWidget
のQStyle
をオーバーライドして、コーナーウィジェットの描画領域を調整する必要があるかもしれません。これはかなり複雑な作業になります。- レイアウトのマージンを調整する: 複数のウィジェットを配置するためにレイアウトを使用している場合、レイアウトの
setContentsMargins()
でマージンを調整してスペースを確保します。 - スタイルシートでマージンを設定する: コーナーウィジェット自体に
margin
やpadding
をスタイルシートで設定することで、タブとの間にスペースを設けることができます。// 例: コーナーウィジェットのボタンに左側にマージンを追加 addButton->setStyleSheet("QPushButton { margin-left: 10px; }");
コーナーウィジェットのサイズ調整が難しい
原因:
- タブバーの
expanding
プロパティ:QTabBar
のexpanding
プロパティがtrue
の場合、タブが可能な限り領域を占有しようとし、コーナーウィジェットのスペースが狭まることがあります。 QSizePolicy
の設定不足:QSizePolicy
がFixed
やPreferred
になっていると、ウィジェットが適切に伸縮しないことがあります。
トラブルシューティング:
- 最小・最大サイズを設定する: 必要に応じて、
setMinimumSize()
やsetMaximumSize()
を使用して、ウィジェットのサイズを制限または保証します。 QTabBar::setExpanding(false)
を設定する:QTabWidget
のtabBar()
を取得し、setExpanding(false)
を設定することで、タブが領域を占有しすぎないようにすることができます。tabWidget.tabBar()->setExpanding(false);
QSizePolicy
をExpanding
に設定する: コーナーウィジェットが伸縮するようにしたい場合、setSizePolicy(QSizePolicy::Expanding, QSizePolicy::Expanding)
を設定してみてください。
cornerWidgetのクリックイベントが反応しない
原因:
- イベントフィルタの問題: 稀に、他のウィジェットや親ウィジェットがイベントフィルタを適用しており、クリックイベントを消費してしまっている場合があります。
- ウィジェットが非表示になっている: 前述の理由でウィジェットが実際には表示されていない(または見えない領域にある)ため、クリックできない。
トラブルシューティング:
- イベントフィルタの確認: アプリケーション全体や親ウィジェットにイベントフィルタが設定されていないか確認します。
- シンプルなボタンでテスト: 問題のウィジェットが複雑な場合は、一時的にシンプルな
QPushButton
に置き換えて、クリックイベントが正常に動作するか確認します。 - 表示されているか確認: デバッガーや
qDebug()
を使って、ウィジェットのgeometry()
やisVisible()
を確認し、実際に画面に表示されているか確認します。
Qt Designer
ではQTabWidget
のコーナーウィジェットを直接配置する機能が提供されていない場合があります。このため、通常はコードでsetCornerWidget()
を呼び出す必要があります。
トラブルシューティング:
- コードで実装する:
Qt Designer
でUIを設計した後、C++やPythonコードでsetCornerWidget()
を使ってコーナーウィジェットを設定してください。
例1:右上に「+」ボタンを配置して新しいタブを追加する
これはcornerWidget()
の最も一般的な使用例の一つです。新しいタブを追加するボタンをタブバーの隅に置きます。
目標: QTabWidget
の右上に小さな「+」ボタンを配置し、クリックすると新しいタブが追加されるようにする。
#include <QtWidgets/QApplication>
#include <QtWidgets/QTabWidget>
#include <QtWidgets/QPushButton>
#include <QtWidgets/QWidget>
#include <QtWidgets/QVBoxLayout> // 各タブのコンテンツ用のレイアウト
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QTabWidget tabWidget;
tabWidget.setWindowTitle("QTabWidget with Add Tab Button");
// 最初のタブを作成
QWidget *page1 = new QWidget();
QVBoxLayout *layout1 = new QVBoxLayout(page1);
layout1->addWidget(new QPushButton("Content for Tab 1"));
tabWidget.addTab(page1, "Tab 1");
// 2番目のタブを作成
QWidget *page2 = new QWidget();
QVBoxLayout *layout2 = new QVBoxLayout(page2);
layout2->addWidget(new QPushButton("Content for Tab 2"));
tabWidget.addTab(page2, "Tab 2");
// --- ここからが cornerWidget の設定 ---
// コーナーウィジェットとして使用するQPushButtonを作成
QPushButton *addTabButton = new QPushButton("+");
addTabButton->setFixedSize(24, 24); // ボタンのサイズを固定
// QTabWidget の右上にボタンを配置
tabWidget.setCornerWidget(addTabButton, Qt::TopRightCorner);
// ボタンがクリックされたときの接続
QObject::connect(addTabButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
static int tabCount = 2; // 既に2つのタブがあるので2から開始
QWidget *newPage = new QWidget();
QVBoxLayout *newLayout = new QVBoxLayout(newPage);
newLayout->addWidget(new QPushButton(QString("New Button in Tab %1").arg(++tabCount)));
tabWidget.addTab(newPage, QString("New Tab %1").arg(tabCount));
tabWidget.setCurrentIndex(tabCount - 1); // 新しく追加されたタブを選択
});
tabWidget.show();
return a.exec();
}
解説:
QPushButton *addTabButton = new QPushButton("+");
で、"+"というテキストを持つボタンを作成します。addTabButton->setFixedSize(24, 24);
で、ボタンのサイズを固定して、タブバー内で収まりがよくなるようにします。tabWidget.setCornerWidget(addTabButton, Qt::TopRightCorner);
で、作成したボタンをQTabWidget
の右上(Qt::TopRightCorner
)に設定します。QObject::connect(...)
で、ボタンがクリックされたときに新しいタブを追加するスロットを接続しています。static int tabCount
を使って、タブの数を管理し、新しいタブの名前を生成しています。
例2:右上に検索フィールドと設定ボタンを配置する
複数のウィジェットをcornerWidget
として配置したい場合は、それらをQWidget
などのコンテナウィジェットに入れ、その中にレイアウトを設定します。
目標: QTabWidget
の右上にQLineEdit
(検索フィールド)とQPushButton
(設定ボタン)を並べて配置する。
#include <QtWidgets/QApplication>
#include <QtWidgets/QTabWidget>
#include <QtWidgets/QPushButton>
#include <QtWidgets/QLineEdit>
#include <QtWidgets/QWidget>
#include <QtWidgets/QHBoxLayout> // 複数のウィジェットを並べるためのレイアウト
#include <QtWidgets/QVBoxLayout> // 各タブのコンテンツ用
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QTabWidget tabWidget;
tabWidget.setWindowTitle("QTabWidget with Search and Settings");
// タブのコンテンツ
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
QWidget *page = new QWidget();
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(page);
layout->addWidget(new QPushButton(QString("Content for Tab %1").arg(i + 1)));
tabWidget.addTab(page, QString("Tab %1").arg(i + 1));
}
// --- ここからが cornerWidget の設定 ---
// 複数のウィジェットを格納するためのコンテナウィジェット
QWidget *cornerContainer = new QWidget();
QHBoxLayout *cornerLayout = new QHBoxLayout(cornerContainer);
cornerLayout->setContentsMargins(0, 0, 0, 0); // マージンをなくして、タブバーに密着させる
cornerLayout->setSpacing(5); // ウィジェット間のスペース
// 検索フィールド
QLineEdit *searchLineEdit = new QLineEdit();
searchLineEdit->setPlaceholderText("Search...");
searchLineEdit->setFixedWidth(150); // 幅を固定
cornerLayout->addWidget(searchLineEdit);
// 設定ボタン
QPushButton *settingsButton = new QPushButton("Settings");
settingsButton->setFixedSize(80, 24); // サイズを固定
cornerLayout->addWidget(settingsButton);
// QTabWidget の右上にコンテナウィジェットを配置
tabWidget.setCornerWidget(cornerContainer, Qt::TopRightCorner);
// シグナル・スロットの接続 (例)
QObject::connect(searchLineEdit, &QLineEdit::returnPressed, [&]() {
qDebug() << "Search for:" << searchLineEdit->text();
});
QObject::connect(settingsButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
qDebug() << "Settings button clicked!";
});
tabWidget.show();
return a.exec();
}
解説:
QWidget *cornerContainer = new QWidget();
で、複数のウィジェットを格納するための親ウィジェットを作成します。QHBoxLayout *cornerLayout = new QHBoxLayout(cornerContainer);
で、その親ウィジェットに水平レイアウトを設定します。cornerLayout->setContentsMargins(0, 0, 0, 0);
は非常に重要です。これを設定しないと、デフォルトのマージンによってウィジェットがタブバーから離れてしまったり、見切れてしまったりすることがあります。cornerLayout->setSpacing(5);
で、ウィジェット間のスペースを設定します。- 作成した
QLineEdit
とQPushButton
をcornerLayout
に追加します。 - 最後に、
tabWidget.setCornerWidget(cornerContainer, Qt::TopRightCorner);
で、cornerContainer
をcornerWidget
として設定します。
cornerWidget()
は右上に限らず、Qt::Corner
列挙型で指定できる他の隅にも配置できます。ただし、通常は上または下のタブ位置で最適に機能します。
目標: QTabWidget
の左下(タブが下にある場合)に、情報表示用のカスタムラベルを配置する。
#include <QtWidgets/QApplication>
#include <QtWidgets/QTabWidget>
#include <QtWidgets/QLabel>
#include <QtWidgets/QPushButton>
#include <QtWidgets/QWidget>
#include <QtWidgets/QVBoxLayout>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QTabWidget tabWidget;
tabWidget.setWindowTitle("QTabWidget with Bottom Left Info");
tabWidget.setTabPosition(QTabWidget::South); // タブを下に配置
// タブのコンテンツ
for (int i = 0; i < 3; ++i) {
QWidget *page = new QWidget();
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(page);
layout->addWidget(new QPushButton(QString("Content for Tab %1").arg(i + 1)));
tabWidget.addTab(page, QString("Tab %1").arg(i + 1));
}
// --- ここからが cornerWidget の設定 ---
// 情報表示用のQLabelを作成
QLabel *infoLabel = new QLabel("Version: 1.0.0");
infoLabel->setStyleSheet("color: gray; font-size: 10px; padding-left: 5px;"); // スタイルを設定
// QTabWidget の左下 (タブが下にある場合) にラベルを配置
tabWidget.setCornerWidget(infoLabel, Qt::BottomLeftCorner);
tabWidget.show();
return a.exec();
}
解説:
tabWidget.setTabPosition(QTabWidget::South);
で、タブの位置を下に設定します。これにより、コーナーウィジェットもタブバーの底部に配置されます。QLabel *infoLabel = new QLabel("Version: 1.0.0");
で、情報表示用のラベルを作成します。infoLabel->setStyleSheet(...)
で、テキストの色やフォントサイズ、左側のパディングを設定し、見栄えを調整しています。tabWidget.setCornerWidget(infoLabel, Qt::BottomLeftCorner);
で、ラベルをQTabWidget
の左下(Qt::BottomLeftCorner
)に設定します。
タブのカスタム描画 (QTabBarのサブクラス化)
利点:
- パフォーマンス: 大量の要素を配置する場合、ウィジェットを多数インスタンス化するよりも描画の方が軽量になる場合があります。
- Pixel-Perfectな配置: 描画なので、非常に precise な位置に要素を配置できます。
- 高度なカスタマイズ性: ウィジェットを配置するだけでなく、タブバーのデザイン自体を完全に制御できます。
欠点:
- スタイルシートとの連携: スタイルシートとの連携が難しくなる場合があります。
- ウィジェットの機能の再実装: 通常の
QPushButton
のようなウィジェットが持つ組み込みの機能(ホバー効果、クリック状態など)を自分で再実装する必要があります。 - 実装の複雑さ:
paintEvent()
をオーバーライドし、カスタム描画ロジックを記述するのは非常に複雑です。特に、インタラクティブな要素(ボタンなど)を描画した場合、マウスイベントなども自分で処理する必要があります。
使用が適しているケース:
- インタラクティブ性の低い、情報表示のような要素をタブバーに表示したい場合。
- 非常に特殊なデザイン要件があり、標準のウィジェットでは実現できない場合。
簡単なコード例 (概念のみ):
// MyTabBar.h
#include <QTabBar>
#include <QPainter>
#include <QStyleOptionTab> // スタイルオプションにアクセスするため
class MyTabBar : public QTabBar
{
Q_OBJECT
public:
explicit MyTabBar(QWidget *parent = nullptr);
protected:
void paintEvent(QPaintEvent *event) override;
// 必要に応じて mousePressEvent, mouseMoveEvent などもオーバーライド
};
// MyTabBar.cpp
MyTabBar::MyTabBar(QWidget *parent) : QTabBar(parent) {}
void MyTabBar::paintEvent(QPaintEvent *event)
{
QTabBar::paintEvent(event); // デフォルトのタブ描画を呼び出す
QPainter painter(this);
painter.setPen(Qt::red);
painter.setFont(QFont("Arial", 10));
// 例: 右上にテキストを描画
QRect rect = this->rect();
painter.drawText(rect.adjusted(-100, 0, -10, 0), Qt::AlignRight | Qt::AlignVCenter, "Custom Text");
}
// QTabWidgetにカスタムQTabBarを設定
// QTabWidget tabWidget;
// tabWidget.setTabBar(new MyTabBar());
タブウィジェット全体をレイアウトに配置する
利点:
Qt Designer
での編集:Qt Designer
を使用してUIを設計する際に、レイアウトに直接ウィジェットをドラッグ&ドロップで配置できます。- 標準ウィジェットの利用:
QPushButton
、QLineEdit
などの標準ウィジェットをそのまま使用でき、そのすべての機能(シグナル/スロット、スタイルシートなど)が利用可能です。 - 柔軟なレイアウト:
cornerWidget()
が提供する固定された隅だけでなく、タブウィジェットの上下左右どこにでもウィジェットを配置できます。 - シンプルで分かりやすい: 標準のレイアウトマネージャーを使用するため、最も直感的で理解しやすい方法です。
欠点:
- スペースの消費: タブウィジェット自体のサイズが小さくなり、隣接するウィジェットのために追加のスペースが必要になることがあります。
- タブバーと一体感がない:
cornerWidget()
のようにタブバーの一部として見せるのではなく、タブウィジェットの「隣」に配置されるため、視覚的な一体感が失われる場合があります。
使用が適しているケース:
Qt Designer
でのGUI設計を重視する場合。- より複雑なコントロール群をタブウィジェットの近くに配置したい場合(例:ツールバーのような機能)。
- タブバーの隅ではなく、タブウィジェットの全体の領域に影響を与えずに、機能的な要素を配置したい場合。
簡単なコード例:
#include <QtWidgets/QApplication>
#include <QtWidgets/QWidget>
#include <QtWidgets/QTabWidget>
#include <QtWidgets/QPushButton>
#include <QtWidgets/QLineEdit>
#include <QtWidgets/QVBoxLayout>
#include <QtWidgets/QHBoxLayout>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QWidget window;
QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(&window);
QTabWidget *tabWidget = new QTabWidget();
tabWidget->addTab(new QWidget(), "Tab 1");
tabWidget->addTab(new QWidget(), "Tab 2");
// タブウィジェットのすぐ上に検索バーと設定ボタンを配置する例
QHBoxLayout *topControlsLayout = new QHBoxLayout();
QLineEdit *searchBar = new QLineEdit();
searchBar->setPlaceholderText("Search...");
QPushButton *settingsBtn = new QPushButton("Settings");
topControlsLayout->addWidget(searchBar);
topControlsLayout->addStretch(); // 検索バーが広がりすぎないように
topControlsLayout->addWidget(settingsBtn);
mainLayout->addLayout(topControlsLayout); // コントロールをメインレイアウトに追加
mainLayout->addWidget(tabWidget); // その下にタブウィジェットを追加
window.setWindowTitle("TabWidget with External Controls");
window.show();
return a.exec();
}
イベントフィルタの使用
利点:
- 状況に応じた表示: 特定の条件(例:右クリック、特定の修飾キーを押しながらクリック)でのみインタラクションを提供したい場合に有効です。
- リソース消費が少ない: ウィジェットを常時表示する必要がないため、必要なときにだけ動作させることができます。
欠点:
- 複雑なイベント処理: イベントフィルタ内で、どの位置でクリックされたかなどを正確に判断し、それに応じた処理を記述する必要があります。
- 視覚的なガイダンスの欠如: ユーザーがその領域に機能があることを認識しにくい場合があります(視覚的なヒントがないため)。
使用が適しているケース:
- タブバー自体をクリーンに保ちたいが、隠れた機能を提供したい場合。
- コンテキストメニューのように、ユーザーのアクションによって一時的に表示される機能を提供したい場合。
簡単なコード例 (概念のみ):
// QTabWidget のイベントフィルタとして設定
// bool MyEventFilter::eventFilter(QObject *obj, QEvent *event) {
// if (obj == myTabWidget->tabBar() && event->type() == QEvent::MouseButtonPress) {
// QMouseEvent *mouseEvent = static_cast<QMouseEvent*>(event);
// if (mouseEvent->button() == Qt::RightButton) {
// // 右クリックされた位置に応じてカスタムメニューを表示
// QMenu contextMenu;
// contextMenu.addAction("Action 1");
// contextMenu.exec(mouseEvent->globalPos());
// return true; // イベントを消費
// }
// }
// return QObject::eventFilter(obj, event);
// }
// myTabWidget->tabBar()->installEventFilter(new MyEventFilter(this));
利点:
- 標準的なQtの機能:
QToolButton
の組み込みのポップアップ機能を利用するため、実装が比較的容易です。 - 明示的なアクション: ユーザーはボタンを見ることで、追加の機能があることを認識できます。
- 省スペース: ボタンをクリックするまで他のウィジェットが表示されないため、通常時は省スペースです。
欠点:
cornerWidget()
のようなタブバーとの一体感はありません。
使用が適しているケース:
- 設定オプションなど、頻繁にはアクセスされないが、常にアクセス可能であるべき機能を提供したい場合。