【Qtプログラミング】QGraphicsViewの表示トラブル解決！setupViewport関連エラーと対策

2025-05-27

まず、この関数はQt 5.15やQt 6.xの公式ドキュメントには直接記載されていないため、非公開または内部的に使用される関数である可能性が高いです。通常、Qtの公開APIとして提供されているものではありません。

しかし、その名前から推測される役割と、Qt Graphics Viewフレームワークの一般的な動作から、以下のように考えられます。

QGraphicsView と Viewport の関係

QtのGraphics Viewフレームワークは、以下の3つの主要なクラスで構成されています。

QGraphicsScene: 描画されるアイテム（図形、画像、テキストなど）を管理する論理的なキャンバスです。
QGraphicsView: QGraphicsSceneの内容を表示するためのウィジェット（GUIコンポーネント）です。
QGraphicsItem: シーン上に配置される個々のグラフィックオブジェクトです。

QGraphicsView は QAbstractScrollArea を継承しており、内部的にビューポート (viewport) と呼ばれる領域を持っています。このビューポートは、実際にシーンの内容が表示される QWidget です。デフォルトでは通常の QWidget が使用されますが、setViewport() 関数を使って QOpenGLWidget などのカスタムウィジェットを設定することで、OpenGLによる高速なレンダリングを利用することも可能です。

setupViewport() の役割の推測

void QGraphicsView::setupViewport() という関数名から、この関数は QGraphicsView が自身のビューポートを初期設定したり、何らかの変更があった際にビューポートの状態を調整したりするために使用されるものと推測されます。具体的には以下のような処理が含まれる可能性があります。

レンダリング関連の初期化: setRenderHints() などで設定されるレンダリングヒントに応じて、QPainter の設定など、レンダリングに必要な準備を行う。
変換行列の適用: QGraphicsView はズームや回転などの変換をサポートしており、これらの変換をビューポートに適用するための初期設定や更新を行う。
イベントハンドリングの準備: ビューポートがマウスやキーボードイベントをどのように処理し、それらをシーンイベントに変換して QGraphicsScene に転送するかを準備する。
ビューポートの更新モードの設定: QGraphicsView::setViewportUpdateMode() で設定されるビューポートの更新モード（例: FullViewportUpdate, MinimalViewportUpdate など）に応じて、内部的なレンダリングの仕組みを調整する。
ビューポートの初期化: QGraphicsView が作成された際や、シーンが設定された際に、ビューポートのサイズや位置、スクロールバーの範囲などを初期設定する。

なぜ公開APIではないのか？

通常、Qtのユーザーは QGraphicsView のビューポートを直接操作する必要はほとんどありません。QGraphicsView は setScene()、centerOn()、fitInView()、setTransform()、setViewportUpdateMode() といった公開された関数を通じて、シーンの表示や操作を行います。setupViewport() のような関数が内部的に存在する場合、それはこれらの公開APIが呼び出された結果として、QGraphicsView が自身のビューポートを適切に管理するために呼び出す「裏方」の関数である可能性が高いです。

したがって、開発者がこの関数を直接呼び出すことは想定されておらず、もし利用しようとしてもアクセスできないか、予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。QtのAPIを使用する際は、公式ドキュメントに記載されている公開されたインターフェースを利用することが重要です。

しかし、この関数がビューポートの設定や更新に関わる内部的な処理を担っていると推測されるため、ビューポートの表示に関する問題は、間接的にこの関数の動作と関連していると考えることができます。

ここでは、QGraphicsView のビューポートに関連する一般的な問題と、それらのトラブルシューティングについて解説します。

QGraphicsView::setupViewport() が内部的に行っている可能性のある処理（ビューポートの初期化、更新モードの設定、レンダリングの準備など）に起因する、またはそれと関連する可能性のある問題は以下の通りです。

シーンの内容が表示されない、または一部しか表示されない

考えられる原因

レンダリングヒントの問題
QPainter::Antialiasing など特定のレンダリングヒントがパフォーマンスに影響を与え、表示の遅延や欠けを引き起こすことがあります。
アイテムがシーンの範囲外に配置されている
QGraphicsItem が QGraphicsScene の可視範囲外に配置されている場合、表示されません。
QGraphicsView のサイズが小さすぎる、またはレイアウトの問題
QGraphicsView 自体が小さすぎると、シーンの一部しか見えません。また、親ウィジェットのレイアウトが正しく機能していない可能性もあります。
QGraphicsScene::sceneRect() が適切に設定されていない、または小さすぎる
QGraphicsView はデフォルトで QGraphicsScene::itemsBoundingRect() を基に表示範囲を決定します。もしアイテムがない、またはアイテムの境界矩形が適切でない場合、表示が意図したものと異なることがあります。
QGraphicsScene が QGraphicsView に設定されていない
最も基本的なエラーです。QGraphicsView::setScene() を呼び出していないか、間違ったシーンを渡している可能性があります。

トラブルシューティング

QGraphicsView::setRenderHints() を調整してみてください。特に、OpenGL を使用している場合は、描画の問題が発生することがあります。
QGraphicsItem の pos() や boundingRect() を確認し、シーン内で期待する位置に存在するかデバッグ出力などで確認してください。
QGraphicsView が適切なサイズで表示されるように、親ウィジェットのレイアウト（例: QVBoxLayout, QHBoxLayout）を確認し、QGraphicsView が expand するように設定されているか確認してください。
scene->setSceneRect(0, 0, width, height); のように、QGraphicsScene::setSceneRect() を明示的に設定し、表示したい範囲を定義してみてください。
ui->graphicsView->setScene(scene); のように、QGraphicsScene が正しく設定されていることを確認してください。

スクロールバーが表示されない、または正しく機能しない

考えられる原因

QGraphicsView::setSceneRect() がビューポートに合わせられている
QGraphicsView::viewport()->rect() のサイズをそのまま setSceneRect() に設定してしまうと、シーンのサイズとビューポートのサイズが一致するため、スクロールバーは表示されません。これは意図的な動作ですが、スクロールを期待している場合は問題となります。
QGraphicsScene::sceneRect() が小さすぎる
シーンの論理的なサイズがビューポートのサイズよりも小さい場合、スクロールの必要がないためスクロールバーが表示されません。
QGraphicsView::setVerticalScrollBarPolicy() / setHorizontalScrollBarPolicy() の設定
スクロールバーのポリシーが Qt::ScrollBarAlwaysOff などに設定されていると表示されません。

トラブルシューティング

QGraphicsView と QGraphicsScene の sceneRect の関係を理解し、必要に応じて QGraphicsView::fitInView() などでビューポート内の表示を調整してください。
QGraphicsScene::sceneRect() を、実際に表示したい内容の最大範囲よりも十分に大きく設定してください。
ui->graphicsView->setHorizontalScrollBarPolicy(Qt::ScrollBarAsNeeded); や Qt::ScrollBarAlwaysOn など、適切なスクロールバーポリシーが設定されていることを確認してください。

グラフィックが正しく更新されない、ちらつく、または描画がおかしい

考えられる原因

パフォーマンスの問題
多数のアイテムや複雑な描画を頻繁に行う場合、パフォーマンスの低下が描画の遅延やちらつきとして現れることがあります。
OpenGL ビューポート使用時の問題
setViewport(new QOpenGLWidget()) を使用している場合、グラフィックスドライバーや特定の Qt バージョンとの相性、または半透明の背景設定（Qt::WA_TranslucentBackground）などによって、表示の問題（例: 画面に穴が開く、黒い領域が表示される）が発生することがあります。
カスタム QGraphicsItem の paint() 関数での描画範囲超過
QGraphicsItem::paint() 関数内で boundingRect() の外側に描画している場合、ビューポートがその部分を更新しないため、表示がおかしくなることがあります。
QGraphicsItem::boundingRect() が正しくない
QGraphicsItem の boundingRect() は、そのアイテムが占める領域を正確に返す必要があります。これが不正確だと、Qtが描画するべき領域を正しく判断できず、描画が欠けたり、残像が残ったりすることがあります。
QGraphicsView::setViewportUpdateMode() の設定
更新モードが NoViewportUpdate に設定されていると、自動的な更新が行われません。また、MinimalViewportUpdate（デフォルト）や SmartViewportUpdate は最適化のために一部の描画をスキップすることがあり、特定の状況で問題を引き起こすことがあります。

トラブルシューティング

パフォーマンス最適化
- QGraphicsItem::CacheMode (例: QGraphicsItem::DeviceCoordinateCache) を設定して、アイテムの描画結果をキャッシュする。
- QGraphicsView::setOptimizationFlags() を使用して、描画の最適化を有効にする（例: DontSavePainterState, DontClipPainter）。
- QGraphicsScene::setItemIndexMethod(QGraphicsScene::NoIndex); を設定して、アイテムのインデックス作成を無効にする（多数のアイテムがあり、頻繁に移動しない場合に有効）。
- QGraphicsItem::paint() 関数内で QStyleOptionGraphicsItem の exposedRect を利用し、実際に描画が必要な領域のみを描画するように最適化する。
OpenGL 関連の問題
- setViewport(new QWidget()); に戻して、OpenGL を使用しない場合に問題が再現するか確認します。
- Qt::WA_TranslucentBackground のような属性が影響しているか確認し、必要であれば削除または代替手段を検討します。
- レンダリングヒントや OpenGL フォーマット（QGLFormat）の調整を試みます。
QGraphicsItem::prepareGeometryChange() の呼び出し
QGraphicsItem のサイズや形状が変更される前に、必ず prepareGeometryChange() を呼び出すようにしてください。
QGraphicsItem::boundingRect() の正確性確認
カスタムアイテムの場合、boundingRect() がそのアイテムの全ての描画範囲を正確にカバーしていることを確認してください。デバッグ用に painter->drawRect(boundingRect()); を paint() 関数に追加して、描画範囲を確認するのも有効です。
更新モードの変更
一時的に ui->graphicsView->setViewportUpdateMode(QGraphicsView::FullViewportUpdate); を試してみてください。これにより、毎回ビューポート全体が再描画され、問題が解決する場合があります（ただし、パフォーマンスは低下します）。

マッピング関数の問題 (mapToScene(), mapFromScene() など)

考えられる原因

ビューの変換行列 (Transformation Matrix) の影響
ズーム、回転、平行移動などの変換が適用されている場合、マッピング関数の結果が意図と異なることがあります。
ビューポートの座標とシーンの座標の混同
mapToScene() や mapFromScene() を使用する際に、ビューポートのローカル座標とシーンのグローバル座標を混同している場合があります。

変換が適用されている場合、QGraphicsView::transform() や QGraphicsItem::transform() の状態を理解し、必要に応じて QGraphicsView::resetTransform() でリセットしたり、逆変換を適用したりしてください。
QGraphicsView::mapToScene(event->pos()) のように、マウスイベントの座標は常にビューポートのローカル座標であることを確認し、QGraphicsScene の座標に変換してから使用してください。

Qtプログラミングにおいて、void QGraphicsView::setupViewport() は、前述の通り非公開の内部関数であり、通常は開発者が直接呼び出すことはありません。そのため、この関数を「直接呼び出す」例を示すコードは存在しません。

しかし、この関数が担っていると推測される「ビューポートの設定や更新」に関連する、公開されているAPIを使ったプログラミング例を示すことはできます。これらのAPIを呼び出すことで、内部的に setupViewport() のような処理がトリガーされる可能性があります。

ここでは、QGraphicsView のビューポート表示に影響を与える、一般的なコード例をいくつか紹介し、それらが setupViewport() の「間接的な」関連コードとしてどのように機能するかを説明します。

例1: シーンとビューポートの基本的な設定

これは、最も基本的な QGraphicsView のセットアップです。setScene() を呼び出すことで、QGraphicsView はビューポートにシーンの内容を表示するために必要な初期設定を行います。この初期設定の段階で、setupViewport() のような内部関数が呼び出され、ビューポートのサイズやスクロールバーの初期状態などが設定される可能性があります。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    // 1. シーンの作成
    QGraphicsScene *scene = new QGraphicsScene();
    scene->setSceneRect(-200, -150, 400, 300); // シーンの論理的な範囲を設定

    // シーンにアイテムを追加
    QGraphicsRectItem *rect1 = new QGraphicsRectItem(-100, -50, 50, 50);
    rect1->setBrush(Qt::blue);
    scene->addItem(rect1);

    QGraphicsRectItem *rect2 = new QGraphicsRectItem(50, 20, 80, 60);
    rect2->setBrush(Qt::red);
    scene->addItem(rect2);

    // 2. ビューの作成
    QGraphicsView *view = new QGraphicsView();
    view->setScene(scene); // シーンをビューに設定

    // ビューポートの初期表示設定（オプション）
    // シーン全体をビューポートに収める
    view->fitInView(scene->sceneRect(), Qt::KeepAspectRatio);

    // スクロールバーのポリシーを設定
    view->setHorizontalScrollBarPolicy(Qt::ScrollBarAsNeeded);
    view->setVerticalScrollBarPolicy(Qt::ScrollBarAsNeeded);

    // ウィンドウの設定
    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    layout->addWidget(view);
    window.setWindowTitle("QGraphicsView Basic Setup");
    window.resize(600, 400);
    window.show();

    return a.exec();
}

解説

view->setHorizontalScrollBarPolicy() / setVerticalScrollBarPolicy()：スクロールバーの表示ポリシーを設定します。これもビューポートのレイアウトや機能に直接影響するため、内部的にビューポートの再設定（setupViewport() のような処理）がトリフレされる可能性があります。
view->fitInView(scene->sceneRect(), Qt::KeepAspectRatio);：これは、シーン全体がビューポート内に収まるようにビューの変換行列を調整します。これにより、ビューポートの表示内容が大きく変わるため、ビューポートの更新処理が内部的に行われます。
view->setScene(scene);：この行が最も重要です。これにより、QGraphicsView は指定された QGraphicsScene を表示するための準備を開始します。この過程で、ビューポートの初期化や、シーンの内容を表示するための内部的な設定（例えば setupViewport() が行っているようなこと）がトリガーされます。

例2: OpenGL ビューポートの使用

QGraphicsView のビューポートとして OpenGL ウィジェットを設定することで、ハードウェアアクセラレーションを利用した描画が可能になります。setViewport() を呼び出すことは、ビューポートそのものを根本的に変更するため、ビューポートの初期化や設定（setupViewport() のような処理）が必然的に行われます。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsEllipseItem>
#include <QOpenGLWidget> // OpenGLビューポート用
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QGraphicsScene *scene = new QGraphicsScene();
    scene->setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    QGraphicsEllipseItem *ellipse = new QGraphicsEllipseItem(0, 0, 80, 80);
    ellipse->setPos(-40, -40); // シーンの中心に配置
    ellipse->setBrush(Qt::green);
    scene->addItem(ellipse);

    QGraphicsView *view = new QGraphicsView();
    view->setScene(scene);

    // OpenGL ビューポートを設定
    // これにより、ビューポートの内部的な設定が大きく変わる
    view->setViewport(new QOpenGLWidget()); 

    // OpenGLビューポートの場合、レンダリングヒントを設定することが推奨される
    view->setRenderHints(QPainter::Antialiasing | QPainter::SmoothPixmapTransform);

    // ウィンドウの設定
    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    layout->addWidget(view);
    window.setWindowTitle("QGraphicsView with OpenGL Viewport");
    window.resize(500, 400);
    window.show();

    return a.exec();
}

解説

view->setRenderHints(...)：OpenGLビューポートを使用する場合、特定のレンダリングヒント（アンチエイリアシングなど）はパフォーマンスや描画品質に大きな影響を与えることがあります。これらのヒントの設定も、ビューポートの内部的な描画設定に影響を与えます。
view->setViewport(new QOpenGLWidget());：この行が、デフォルトの QWidget ビューポートを QOpenGLWidget に置き換えます。これにより、QGraphicsView は描画パイプラインをOpenGL用に再構成する必要があり、ビューポートの初期化と設定（setupViewport() が行っているようなこと）が内部的に実行されます。

例3: ビューポートの更新モードの変更

QGraphicsView::setViewportUpdateMode() は、ビューポートがどのように再描画されるかを制御します。この設定を変更すると、ビューポートの描画戦略が変わり、内部的に setupViewport() のような関数が呼び出されて、その変更を反映させるための処理が行われる可能性があります。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsEllipseItem>
#include <QPushButton>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QTimer>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QGraphicsScene *scene = new QGraphicsScene();
    scene->setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    QGraphicsEllipseItem *ellipse = new QGraphicsEllipseItem(0, 0, 80, 80);
    ellipse->setPos(-40, -40);
    ellipse->setBrush(Qt::cyan);
    scene->addItem(ellipse);

    QGraphicsView *view = new QGraphicsView();
    view->setScene(scene);

    // デフォルトは MinimalViewportUpdate
    view->setViewportUpdateMode(QGraphicsView::FullViewportUpdate); // あえてFullViewportUpdateに設定

    // 定期的にアイテムを移動させて、更新モードの影響を見る
    QTimer timer;
    QObject::connect(&timer, &QTimer::timeout, [&]() {
        static qreal x = 0;
        x += 1.0;
        if (x > 100) x = -100;
        ellipse->setPos(x, ellipse->y());
    });
    timer.start(50); // 50msごとに移動

    // ボタンで更新モードを切り替える例（デバッグ用）
    QPushButton *toggleButton = new QPushButton("Toggle Update Mode");
    QObject::connect(toggleButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
        if (view->viewportUpdateMode() == QGraphicsView::FullViewportUpdate) {
            view->setViewportUpdateMode(QGraphicsView::MinimalViewportUpdate);
            toggleButton->setText("Mode: Minimal");
        } else {
            view->setViewportUpdateMode(QGraphicsView::FullViewportUpdate);
            toggleButton->setText("Mode: Full");
        }
    });

    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    layout->addWidget(view);
    layout->addWidget(toggleButton);
    window.setWindowTitle("QGraphicsView Update Mode");
    window.resize(500, 400);
    window.show();

    return a.exec();
}

解説

view->setViewportUpdateMode(QGraphicsView::FullViewportUpdate);：この行で、ビューポートの更新戦略を変更しています。この変更は、QGraphicsView がアイテムの変更をどのように検知し、ビューポートのどの部分を再描画するかという内部的なロジックに影響を与えます。setupViewport() のような関数が、このモード変更に応じて描画パイプラインの準備や設定を再調整する可能性があります。

void QGraphicsView::setupViewport() は、Qt Graphics Viewフレームワークの内部実装の一部であり、開発者が直接扱うことはありません。しかし、QGraphicsView::setScene(), QGraphicsView::setViewport(), QGraphicsView::setViewportUpdateMode(), QGraphicsView::fitInView() などの公開APIを呼び出すことで、間接的にビューポートの初期化や更新がトリガーされ、setupViewport() のような内部処理が実行されると推測されます。

しかし、この内部的な処理を間接的に制御したり、ビューポートの動作をカスタマイズしたりするための「代替手段」はいくつか存在します。これらは、QGraphicsView の公開APIを利用したり、場合によっては QGraphicsView をサブクラス化して特定のイベントをオーバーライドしたりすることで実現されます。

以下に、setupViewport() のような内部処理に関連する代替プログラミング方法と、それぞれのユースケースを説明します。

QGraphicsView の公開APIを最大限に活用する

これが最も一般的で推奨される方法です。Qtは、ビューポートの表示や動作を制御するための豊富なAPIを提供しています。

fitInView(const QRectF &rect, Qt::AspectRatioMode aspectRatioMode = Qt::IgnoreAspectRatio):
- 目的: 指定されたシーンの領域がビューポート内に収まるように、ビューのズームと位置を調整します。
- 関連性: ビューの変換行列を大きく変更するため、ビューポートの再描画とそれに関連する内部設定が頻繁に発生します。
- 使用例:
```
myView->fitInView(myScene->itemsBoundingRect(), Qt::KeepAspectRatio); // シーンの全アイテムが収まるように表示
```
setSceneRect(const QRectF &rect):
- 目的: ビューが「表示可能」とみなすシーンの論理的な範囲を設定します。これに基づいてスクロールバーの範囲などが決定されます。
- 関連性: シーンの表示可能範囲が変わることで、ビューポートのスクロール範囲や初期表示位置に影響を与え、内部的な再計算がトリガーされます。
- 使用例:
```
myScene->setSceneRect(-1000, -1000, 2000, 2000); // 広大なシーンを設定
myView->setScene(myScene);
myView->centerOn(0, 0); // シーンの中心にビューポートを移動
```
setViewportUpdateMode(ViewportUpdateMode mode):
- 目的: ビューポートがどのように再描画されるかを制御します。FullViewportUpdate (常にビューポート全体を再描画) や MinimalViewportUpdate (変更された部分のみ再描画) などがあります。
- 関連性: 更新モードを変更すると、ビューポートの内部的な描画戦略が変化し、その設定を反映するための処理が内部的に行われます。
- 使用例:
```
myView->setViewportUpdateMode(QGraphicsView::FullViewportUpdate); // 常に全体を再描画（デバッグや特定の描画問題解決に）
```
setViewport(QWidget *widget):
- 目的: QGraphicsView が描画に使用するビューポートウィジェットをカスタムなものに置き換えます。例えば、OpenGLによる高速なレンダリングのために QOpenGLWidget を設定できます。
- 関連性: ビューポートウィジェット自体を変更するため、ビューポートの初期化や設定（setupViewport() が行うような処理）が全面的にやり直されます。
- 使用例:
```
QGraphicsView *myView = new QGraphicsView();
myView->setViewport(new QOpenGLWidget()); // OpenGLを有効にする
myView->setRenderHints(QPainter::Antialiasing | QPainter::SmoothPixmapTransform);
```
setScene(QGraphicsScene *scene):
- 目的: QGraphicsView に表示する QGraphicsScene を設定します。
- 関連性: シーンを設定すると、ビューポートはシーンの内容に合わせて初期化され、必要な描画設定が行われます。
- 使用例:
```
QGraphicsScene *myScene = new QGraphicsScene();
QGraphicsView *myView = new QGraphicsView();
myView->setScene(myScene); // シーンを設定すると、ビューポートの初期化がトリガーされる
```

QGraphicsView のサブクラス化とイベントのオーバーライド

より詳細な制御やカスタム描画が必要な場合、QGraphicsView をサブクラス化し、特定の仮想関数をオーバーライドします。

カスタム QGraphicsItem を作成し、paint() 関数をオーバーライド:
- 目的: 独自の描画ロジックを持つグラフィックアイテムを作成し、シーンに追加します。
- 関連性: ビューポートがシーンのアイテムを描画する際に、これらのカスタムアイテムの paint() 関数が呼び出されます。setupViewport() のような内部関数は、これらのアイテムを効率的に描画するための準備を行います。
- 使用例: (これは QGraphicsView の直接的なビューポート設定ではないですが、描画フローの重要な一部です)
```
class MyCustomItem : public QGraphicsItem {
public:
    QRectF boundingRect() const override {
        return QRectF(-20, -20, 40, 40); // アイテムの描画範囲
    }
    void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionGraphicsItem *option, QWidget *widget) override {
        Q_UNUSED(option);
        Q_UNUSED(widget);
        painter->setBrush(Qt::darkCyan);
        painter->drawEllipse(boundingRect());
        painter->drawText(boundingRect(), Qt::AlignCenter, "Custom");
    }
};
// 使用方法:
// myScene->addItem(new MyCustomItem());
```

void drawBackground(QPainter *painter, const QRectF &rect) / void drawForeground(QPainter *painter, const QRectF &rect) のオーバーライド:

目的: シーンのアイテムが描画される前（背景）または後（前景）に、カスタムな描画を行うことができます。これらはビューポートに直接描画されます。
関連性: これらの関数はビューポートの描画サイクルの一部であり、setupViewport() が描画の準備をしている中に組み込まれることがあります。

使用例:

class CustomGraphicsView : public QGraphicsView {
protected:
    void drawBackground(QPainter *painter, const QRectF &rect) override {
        QGraphicsView::drawBackground(painter, rect); // 基底クラスの処理を呼び出す
        // ビューポートの背景にグリッドを描画
        painter->setPen(Qt::lightGray);
        for (qreal x = rect.left(); x < rect.right(); x += 50) {
            painter->drawLine(QPointF(x, rect.top()), QPointF(x, rect.bottom()));
        }
        for (qreal y = rect.top(); y < rect.bottom(); y += 50) {
            painter->drawLine(QPointF(rect.left(), y), QPointF(rect.right(), y));
        }
    }
};

void resizeEvent(QResizeEvent *event) のオーバーライド:
- 目的: QGraphicsView ウィジェット自体のサイズが変更されたときにカスタムな処理を行います。
- 関連性: ビューのサイズ変更はビューポートのサイズ変更を意味するため、このイベントは setupViewport() のような内部処理が呼び出されるきっかけとなります。このイベントをオーバーライドすることで、ビューポートのサイズ変更時に特定の表示調整（例: シーンをビューポートにフィットさせる、特定のアイテムを中央に配置する）を行うことができます。
- 使用例:
```
class CustomGraphicsView : public QGraphicsView {
protected:
    void resizeEvent(QResizeEvent *event) override {
        QGraphicsView::resizeEvent(event); // 基底クラスの処理を呼び出す
        // ビューのサイズ変更時に常にシーン全体をビューポートにフィットさせる
        if (scene()) {
            fitInView(scene()->sceneRect(), Qt::KeepAspectRatio);
        }
    }
};
// 使用方法:
// CustomGraphicsView *myCustomView = new CustomGraphicsView();
// myCustomView->setScene(myScene);
```

イベントフィルターの使用 (上級者向け)

特定のイベントを QGraphicsView やそのビューポートが処理する前に横取りして、カスタムな動作を実装したい場合にイベントフィルターを使用できます。これは強力ですが、Qtの内部動作を深く理解している必要があります。

ビューポートウィジェットにイベントフィルターをインストール:

目的: ビューポートウィジェット（通常は QGraphicsView::viewport() で取得）が受け取るマウスイベント、キーイベント、ペイントイベントなどを直接監視・変更します。
関連性: setupViewport() が初期化するイベントハンドリングを、より低レベルで変更する可能性があります。ただし、Qtの内部イベント処理と競合するリスクもあります。

使用例: (これはより複雑なユースケースであり、注意が必要です)

class MyEventFilter : public QObject {
    Q_OBJECT
protected:
    bool eventFilter(QObject *obj, QEvent *event) override {
        if (obj == myView->viewport() && event->type() == QEvent::Paint) {
            // ここでカスタム描画ロジックを挿入できるが、通常はdrawBackground/Foregroundを推奨
            // QPainter p(static_cast<QWidget*>(obj));
            // p.drawRect(0,0,10,10);
            // return true; // イベントを消費してビューポートの通常の描画を停止する（危険）
        }
        return QObject::eventFilter(obj, event);
    }
};
// 使用方法:
// MyEventFilter *filter = new MyEventFilter();
// myView->viewport()->installEventFilter(filter);