Qtプログラミング：QGraphicsScene::selectedItems()完全解説【初心者向け】

2025-04-26

具体的には、以下の点が重要です。

選択状態の管理
- 選択状態は、ユーザーがアイテムをクリックしたり、ドラッグしたり、キーボード操作を行ったりすることで変化します。QGraphicsScene は、これらの選択状態を内部で管理し、selectedItems() 関数を通じて外部に提供します。
使用例
- 選択されたアイテムに対して何らかの操作（移動、削除、プロパティの変更など）を行う場合に、この関数を使用して選択されたアイテムのリストを取得し、各アイテムに対して処理を行います。
返り値
- この関数は、QList<QGraphicsItem *> 型の値を返します。これは、QGraphicsItem オブジェクトへのポインタのリストです。つまり、選択された各アイテムへのポインタがリストに格納されています。
選択されたアイテムの取得
- ユーザーがグラフィカルシーン内でアイテムを選択すると、それらのアイテムは「選択された」状態になります。selectedItems() 関数は、この選択された状態のアイテムのリストを取得するために使用されます。

以下に、簡単なコード例を示します。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // いくつかの矩形アイテムを追加
    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    QGraphicsRectItem *rect3 = scene.addRect(0, 60, 50, 50);

    // 選択可能にする
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);
    rect3->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    // ユーザーがアイテムを選択した後に、選択されたアイテムのリストを取得
    QList<QGraphicsItem *> selectedItems = scene.selectedItems();

    // 選択されたアイテムの情報を表示
    foreach (QGraphicsItem *item, selectedItems) {
        qDebug() << "Selected item:" << item;
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、矩形アイテムをシーンに追加し、それらを「選択可能」に設定しています。ユーザーがこれらのアイテムを選択すると、selectedItems() 関数を使用して選択されたアイテムのリストを取得し、デバッグ出力に表示しています。

選択されたアイテムが空のリストを返す (空の QList)

トラブルシューティング
- QGraphicsItem::setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable) を呼び出して、アイテムが選択可能であることを確認します。
- ユーザーがアイテムをクリックまたはドラッグして選択していることを確認します。
- 選択処理に関連するイベントハンドラ（mousePressEvent、mouseReleaseEvent など）が正しく実装されていることを確認します。
- グラフィックビューが、選択モード（QGraphicsView::DragMode）が正しく設定されているか確認してください。
原因
- アイテムが選択可能に設定されていない。QGraphicsItem::ItemIsSelectable フラグが設定されていない場合、アイテムは選択されません。
- ユーザーがアイテムを選択していない。
- 選択処理が正しく実装されていない。

選択されたアイテムのリストに期待しないアイテムが含まれる

トラブルシューティング
- アイテムの配置と重なりを確認し、意図したアイテムのみが選択されるように調整します。
- 選択領域を調整します。
- アイテムのzValue()を確認し、重なり順序を調整します。
原因
- 複数のアイテムが重なっており、意図しないアイテムが選択されている。
- 選択領域が広すぎる。
- アイテムのZ値が期待したものではない。

選択されたアイテムのリストのアイテムポインタが無効になる

トラブルシューティング
- アイテムを削除する前に、選択されたアイテムのリストを使用する処理が完了していることを確認します。
- アイテムを削除するときは、選択されたアイテムのリストからそのアイテムポインタも削除してください。もしくは、リストのコピーを作成し、コピーに対して処理を行うようにしてください。
- スマートポインタの使用を検討してください。
原因
- 選択されたアイテムがシーンから削除された後、リストを使用しようとした。
- アイテムを削除した際に、リストからアイテムポインタを削除していない。

選択されたアイテムのリストのアイテムの型キャストの問題

トラブルシューティング
- qgraphicsitem_cast を使用して、安全な型キャストを実行します。
- リスト内のアイテムの型を事前に確認し、適切な型キャストを実行します。
- リスト内のアイテムの型を統一するように設計を見直す。
原因
- リスト内のアイテムが期待する型でないため、型キャストが失敗する。
- リスト内のアイテムの型が混在している。

選択処理のパフォーマンスの問題

トラブルシューティング
- シーン内のアイテム数を減らすか、表示を最適化します。
- 選択処理を簡素化します。
- 選択処理を非同期で実行することを検討します。
原因
- シーン内のアイテム数が非常に多い。
- 選択処理が複雑すぎる。

QGraphicsScene::items(const QRectF &area, Qt::ItemSelectionMode mode = Qt::IntersectsItemShape) などの関数を使い、選択領域内のアイテムを直接取得し、選択状態を設定するなどの方法を試す。
デバッガを使用して、選択処理の各ステップを追跡します。
qDebug() を使用して、選択されたアイテムのリストの内容をログに出力します。

例1: 選択されたアイテムの情報を表示する

この例では、シーン内の選択されたアイテムの情報をコンソールに表示します。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 矩形アイテムを追加し、選択可能にする
    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    // ユーザーがアイテムを選択した後
    QList<QGraphicsItem *> selectedItems = scene.selectedItems();

    // 選択されたアイテムの情報を表示
    foreach (QGraphicsItem *item, selectedItems) {
        qDebug() << "選択されたアイテム:" << item
                 << ", 位置:" << item->pos()
                 << ", 型:" << item->type();
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

このコードでは、selectedItems() を呼び出して選択されたアイテムのリストを取得し、各アイテムの位置と型を qDebug() で表示します。

例2: 選択されたアイテムを移動する

この例では、選択されたアイテムをマウスでドラッグして移動できるようにします。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>

class MovableRectItem : public QGraphicsRectItem {
public:
    MovableRectItem(qreal x, qreal y, qreal width, qreal height)
        : QGraphicsRectItem(x, y, width, height) {
        setFlag(ItemIsMovable);
        setFlag(ItemIsSelectable);
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 移動可能な矩形アイテムを追加
    MovableRectItem *rect1 = new MovableRectItem(0, 0, 50, 50);
    scene.addItem(rect1);

    MovableRectItem *rect2 = new MovableRectItem(60, 0, 50, 50);
    scene.addItem(rect2);

    view.show();
    return app.exec();
}

ここでは、QGraphicsRectItem を継承した MovableRectItem クラスを作成し、ItemIsMovable フラグを設定してドラッグ可能にしています。また、ItemIsSelectable フラグを設定して選択可能にしています。

例3: 選択されたアイテムを削除する

この例では、選択されたアイテムを削除します。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 矩形アイテムを追加し、選択可能にする
    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    // ユーザーがアイテムを選択した後、削除する
    QList<QGraphicsItem *> selectedItems = scene.selectedItems();
    foreach (QGraphicsItem *item, selectedItems) {
        scene.removeItem(item);
        delete item; // アイテムを削除
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、選択されたアイテムを scene.removeItem() でシーンから削除し、delete でメモリから解放しています。アイテムを削除する際はメモリリークに注意してください。

例4: 選択されたアイテムのプロパティを変更する

この例では、選択されたアイテムのペン色を変更します。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QPen>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 矩形アイテムを追加し、選択可能にする
    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    // ユーザーがアイテムを選択した後、ペン色を変更する
    QList<QGraphicsItem *> selectedItems = scene.selectedItems();
    foreach (QGraphicsItem *item, selectedItems) {
        QGraphicsRectItem *rect = qgraphicsitem_cast<QGraphicsRectItem *>(item);
        if (rect) {
            rect->setPen(QPen(Qt::red));
        }
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

QGraphicsScene::items(const QRectF &area, Qt::ItemSelectionMode mode = Qt::IntersectsItemShape) を使用する

この関数は、指定された領域内のアイテムを返します。選択領域を定義し、Qt::IntersectsItemShape または Qt::ContainsItemShape などの選択モードを使用することで、特定の条件を満たすアイテムを取得できます。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    // 選択領域を定義
    QRectF selectionArea(25, 0, 75, 50);

    // 選択領域と交差するアイテムを取得
    QList<QGraphicsItem *> itemsInArea = scene.items(selectionArea, Qt::IntersectsItemShape);

    // 取得したアイテムを表示
    foreach (QGraphicsItem *item, itemsInArea) {
        qDebug() << "領域内のアイテム:" << item;
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、selectionArea で定義された領域と交差するアイテムを取得しています。Qt::ContainsItemShape を使用すれば、領域内に完全に含まれるアイテムのみを取得できます。

QGraphicsItem::isSelected() を使用して手動で選択状態を確認する

シーン内のすべてのアイテムを反復処理し、QGraphicsItem::isSelected() を使用して選択状態を確認する方法です。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);

    // シーン内のすべてのアイテムを反復処理
    QList<QGraphicsItem *> allItems = scene.items();
    QList<QGraphicsItem *> selectedItems;

    foreach (QGraphicsItem *item, allItems) {
        if (item->isSelected()) {
            selectedItems.append(item);
        }
    }

    // 選択されたアイテムを表示
    foreach (QGraphicsItem *item, selectedItems) {
        qDebug() << "選択されたアイテム:" << item;
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

この方法は、シーン内のすべてのアイテムをチェックするため、アイテム数が多い場合はパフォーマンスに影響を与える可能性があります。

カスタム選択ロジックの実装

独自の選択ロジックを実装することで、より複雑な選択条件に対応できます。例えば、特定のプロパティを持つアイテムのみを選択したり、特定の種類のアイテムのみを選択したりできます。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    QGraphicsRectItem *rect1 = scene.addRect(0, 0, 50, 50);
    rect1->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);
    rect1->setData(0, "red"); // カスタムデータを設定

    QGraphicsRectItem *rect2 = scene.addRect(60, 0, 50, 50);
    rect2->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsSelectable);
    rect2->setData(0, "blue");

    // カスタム選択ロジックを実装
    QList<QGraphicsItem *> allItems = scene.items();
    QList<QGraphicsItem *> selectedRedItems;

    foreach (QGraphicsItem *item, allItems) {
        if (item->isSelected() && item->data(0) == "red") {
            selectedRedItems.append(item);
        }
    }

    // 選択された赤いアイテムを表示
    foreach (QGraphicsItem *item, selectedRedItems) {
        qDebug() << "選択された赤いアイテム:" << item;
    }

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、QGraphicsItem::setData() を使用してカスタムデータを設定し、選択ロジックでそのデータに基づいてアイテムを選択しています。