Qtプログラミング：QGraphicsScene::addEllipse()の活用法とエラー対処法

基本的な使い方

QGraphicsScene::addEllipse()には、いくつかのオーバーロードされたバージョンがあります。最も基本的なものは次のとおりです。

QGraphicsEllipseItem *QGraphicsScene::addEllipse(qreal x, qreal y, qreal w, qreal h, const QPen &pen = QPen(), const QBrush &brush = QBrush());

この関数は、指定された位置とサイズで楕円を描画し、QGraphicsEllipseItemへのポインタを返します。

• brush: 楕円の塗りつぶしブラシ（色、パターンなど）。デフォルトでは、塗りつぶしなしです。
• pen: 楕円の輪郭線のペン（線種、色など）。デフォルトでは、デフォルトのペンが使用されます。
• w, h: 楕円の幅と高さ。
• x, y: 楕円の左上隅の座標。

具体的な例

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QPen>
#include <QBrush>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 赤い輪郭線で、青色に塗りつぶされた楕円を描画
    QPen redPen(Qt::red);
    QBrush blueBrush(Qt::blue);
    scene.addEllipse(10, 10, 100, 50, redPen, blueBrush);

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、QGraphicsScene上に、左上隅が(10, 10)、幅が100、高さが50の楕円を描画しています。楕円の輪郭線は赤色、塗りつぶしは青色です。

QGraphicsScene::addEllipse()には、QRectFやQRectを引数として受け取るオーバーロードもあります。

QGraphicsEllipseItem *QGraphicsScene::addEllipse(const QRectF &rect, const QPen &pen = QPen(), const QBrush &brush = QBrush());
QGraphicsEllipseItem *QGraphicsScene::addEllipse(const QRect &rect, const QPen &pen = QPen(), const QBrush &brush = QBrush());

これらのオーバーロードを使用すると、矩形に基づいて楕円を描画できます。矩形が正方形の場合、楕円は円になります。

QGraphicsEllipseItem

QGraphicsScene::addEllipse()が返すQGraphicsEllipseItemは、シーン上の楕円を表すグラフィカルアイテムです。このアイテムを使用して、楕円の位置、サイズ、外観などを変更できます。

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一般的なエラーとトラブルシューティング

1. • 原因
     
     • 座標、幅、高さの値がシーンの表示範囲外にある。
     • ペンやブラシが設定されていない、または色が透明である。
     • QGraphicsViewがQGraphicsSceneを正しく表示していない。
   • トラブルシューティング
     
     • 座標、幅、高さの値を確認し、シーンの表示範囲内に収まるように調整してください。
     • QPenとQBrushが正しく設定されているか確認し、可視の色とスタイルが設定されていることを確認してください。
     • QGraphicsViewがシーンを表示しているか、show()が呼ばれているかを確認してください。
     • QGraphicsViewのfitInView()関数を使用して、シーン全体が表示されるように調整することも有効です。

2. 楕円の位置やサイズが意図したとおりにならない
   

   • 原因
     
     • 座標の指定が誤っている（左上隅の座標を指定する必要がある）。
     • 幅と高さの単位が想定と異なる（ピクセル単位）。
     • QGraphicsViewの変換設定（スケール、回転など）が影響している。
   • トラブルシューティング
     
     • 座標の指定方法を確認し、左上隅の座標を指定していることを確認してください。
     • 幅と高さの単位がピクセル単位であることを確認してください。
     • QGraphicsViewの変換設定を確認し、必要に応じてリセットまたは調整してください。

3. 楕円の輪郭線や塗りつぶしが期待どおりにならない
   

   • 原因
     
     • QPenやQBrushの設定が誤っている。
     • QPenの線の太さやスタイル、QBrushの色やパターンが意図したものではない。
   • トラブルシューティング
     
     • QPenとQBrushの設定を再確認し、必要な線の太さ、スタイル、色、パターンが設定されていることを確認してください。
     • 色の指定には、Qt::red、QColor(255, 0, 0)などの方法があります。

4. 楕円が他のアイテムと重なって表示順序がおかしい
   

   • 原因
     
     • QGraphicsItemのZ値（Z-value）が適切に設定されていない。
   • トラブルシューティング
     
     • QGraphicsEllipseItemのsetZValue()関数を使用して、表示順序を調整してください。Z値が大きいアイテムが前面に表示されます。

5. パフォーマンスの問題
   

   • 原因
     
     • 非常に多くの楕円を描画している。
     • 複雑なペンやブラシを使用している。
     • QGraphicsViewのレンダリング設定が最適化されていない。
   • トラブルシューティング
     
     • 描画する楕円の数を減らすか、表示範囲外の楕円を削除してください。
     • 単純なペンやブラシを使用してください。
     • QGraphicsViewのレンダリング設定（キャッシュ、最適化オプションなど）を調整してください。
     • 必要な時だけ再描画するように、update()関数を効率的に使用してください。

デバッグのヒント

• 単純な例を作成し、問題を再現できる最小限のコードでデバッグしてください。
• qDebug()を使用して、座標、幅、高さ、ペン、ブラシなどの値をログ出力し、値が正しいか確認してください。

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例1: 基本的な楕円の描画

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QPen>
#include <QBrush>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 楕円を描画 (x, y, width, height)
    scene.addEllipse(50, 50, 200, 100);

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、QGraphicsScene上に、左上隅が(50, 50)、幅が200、高さが100のデフォルトの楕円を描画しています。

例2: ペンとブラシを使った楕円の描画

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QPen>
#include <QBrush>
#include <QColor>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 赤い輪郭線と青い塗りつぶしで楕円を描画
    QPen redPen(Qt::red);
    QBrush blueBrush(Qt::blue);
    scene.addEllipse(100, 100, 150, 75, redPen, blueBrush);

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、赤い輪郭線と青い塗りつぶしを持つ楕円を描画しています。QPenとQBrushを使用して、楕円の外観をカスタマイズしています。

例3: 矩形を用いた楕円の描画

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QRectF>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 矩形を作成し、それに基づいて楕円を描画
    QRectF rect(200, 200, 80, 80);
    scene.addEllipse(rect); //矩形が正方形であるため円になる

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、QRectFオブジェクトを使用して楕円の位置とサイズを指定しています。矩形が正方形であるため描画される楕円は円になります。

例4: 楕円の属性の変更

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsEllipseItem>
#include <QPen>
#include <QBrush>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // 楕円を作成し、QGraphicsEllipseItemへのポインタを取得
    QGraphicsEllipseItem *ellipseItem = scene.addEllipse(10, 10, 100, 50);

    // 楕円の属性を変更
    QPen greenPen(Qt::green, 3); // 緑色の太い輪郭線
    ellipseItem->setPen(greenPen);

    QBrush yellowBrush(Qt::yellow); // 黄色の塗りつぶし
    ellipseItem->setBrush(yellowBrush);

    ellipseItem->setZValue(1); // 他のアイテムよりも前面に表示

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、QGraphicsScene::addEllipse()が返すQGraphicsEllipseItemへのポインタを使用して、楕円のペン、ブラシ、Z値を変更しています。

例5: マウスイベントに応じた楕円の描画

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QMouseEvent>

class MyScene : public QGraphicsScene {
protected:
    void mousePressEvent(QGraphicsSceneMouseEvent *event) override {
        // マウスがクリックされた位置に楕円を描画
        addEllipse(event->scenePos().x() - 25, event->scenePos().y() - 25, 50, 50);
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    MyScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    view.show();
    return app.exec();
}

この例では、QGraphicsSceneを継承したカスタムシーンを作成し、mousePressEvent()をオーバーライドして、マウスがクリックされた位置に楕円を描画しています。  

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QPainterPath を使用して楕円を作成する

QPainterPathは、複雑な図形を描画するための強力なクラスです。楕円もQPainterPathを使って作成できます。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QPainterPath>
#include <QGraphicsPathItem>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // QPainterPathで楕円を作成
    QPainterPath path;
    path.addEllipse(100, 100, 200, 100);

    // QGraphicsPathItemを作成し、シーンに追加
    QGraphicsPathItem *pathItem = new QGraphicsPathItem(path);
    scene.addItem(pathItem);

    view.show();
    return app.exec();
}

• 欠点
  
  • QGraphicsEllipseItemに比べて、少し冗長なコードになります。
• 利点
  
  • QPainterPathは、楕円だけでなく、より複雑な形状も作成できます。
  • パスを編集して、楕円の形状を変更したり、他の図形と組み合わせたりできます。

QGraphicsItem を継承してカスタム楕円を作成する

QGraphicsItemを継承して、独自の楕円描画ロジックを実装することもできます。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsItem>
#include <QPainter>
#include <QRectF>

class MyEllipseItem : public QGraphicsItem {
public:
    MyEllipseItem(qreal x, qreal y, qreal w, qreal h, QGraphicsItem *parent = nullptr)
        : QGraphicsItem(parent), rect(x, y, w, h) {}

    QRectF boundingRect() const override {
        return rect;
    }

    void paint(QPainter *painter, const QStyleOptionGraphicsItem *option, QWidget *widget) override {
        painter->drawEllipse(rect);
    }

private:
    QRectF rect;
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // カスタム楕円アイテムを作成し、シーンに追加
    MyEllipseItem *ellipseItem = new MyEllipseItem(50, 50, 150, 80);
    scene.addItem(ellipseItem);

    view.show();
    return app.exec();
}

• 欠点
  
  • より多くのコードが必要です。
  • QGraphicsItemの描画パイプラインを理解する必要があります。
• 利点
  
  • 描画ロジックを完全に制御できます。
  • カスタムの描画効果やアニメーションを実装できます。

QPixmap を使用して楕円の画像を事前に描画し、それを表示する

楕円の画像を事前に作成し、QGraphicsPixmapItemを使用してシーンに表示することもできます。

#include <QApplication>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QPixmap>
#include <QPainter>
#include <QGraphicsPixmapItem>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    QGraphicsView view(&scene);

    // QPixmapを作成し、楕円を描画
    QPixmap pixmap(200, 100);
    pixmap.fill(Qt::transparent); // 透明な背景
    QPainter painter(&pixmap);
    painter.drawEllipse(0, 0, 200, 100);

    // QGraphicsPixmapItemを作成し、シーンに追加
    QGraphicsPixmapItem *pixmapItem = new QGraphicsPixmapItem(pixmap);
    pixmapItem->setPos(100, 100);
    scene.addItem(pixmapItem);

    view.show();
    return app.exec();
}

• 欠点
  
  • 動的な変更が難しい。
  • 画像の管理が必要です。
• 利点
  
  • 複雑な描画やエフェクトを事前に作成できます。
  • パフォーマンスが向上する場合があります。