Qt QGraphicsScene dragLeaveEvent()とは？役割と使い方【日本語解説】

2025-04-26

QGraphicsScene::dragLeaveEvent() とは

QGraphicsScene::dragLeaveEvent() は、Qtのグラフィックスビューフレームワークで使用される QGraphicsScene クラスの仮想関数の一つです。この関数は、ドラッグ＆ドロップ操作において、ドラッグされているオブジェクト（通常はマウスカーソルの下にあるアイテム）がシーンの境界から離れた（つまり、シーンの外に出た）ときに呼び出されます。

役割と目的

このイベントハンドラ関数の主な役割は、ドラッグされているオブジェクトがシーンから離れる際の処理をカスタマイズすることです。例えば、以下のような処理を行うことができます。

カスタムロジックの実行
ドラッグがシーンから離れる特定の状況に応じて、独自の処理を実行することができます。
状態のリセット
ドラッグ操作に関連する内部状態をリセットする必要がある場合に、この関数内で処理を行うことができます。
フィードバックの変更
ドラッグ操作中に、ドラッグされているアイテムの下に何らかの視覚的なフィードバック（例えば、ドロップ可能領域のハイライト表示など）を表示している場合、dragLeaveEvent() が呼び出されたときにそのフィードバックを消去することができます。

イベントの発生条件

dragLeaveEvent() は、以下の条件が満たされたときに QGraphicsScene オブジェクトによって生成され、そのイベントハンドラ関数が呼び出されます。

ドラッグ＆ドロップ操作が進行中であること。
マウスカーソルが QGraphicsScene のクライアント領域内から外に出たこと。
ドラッグされているデータが、シーンにドロップ可能なデータタイプであるかどうかは関係ありません。単にカーソルがシーンの境界を離れたときに発生します。

デフォルトの動作

QGraphicsScene クラスの dragLeaveEvent() のデフォルト実装は、特に何もしません。したがって、ドラッグがシーンから離れた際に何らかの特別な処理を行いたい場合は、この関数を継承して再実装する必要があります。

#include <QGraphicsScene>
#include <QDragLeaveEvent>
#include <QDebug>

class MyGraphicsScene : public QGraphicsScene {
public:
    MyGraphicsScene(QObject *parent = nullptr) : QGraphicsScene(parent) {}

protected:
    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        qDebug() << "ドラッグがシーンから離れました。";
        // ここでカスタムの処理を追加できます。
        // 例えば、ドロップ可能領域のハイライトを消去するなど。

        // 基底クラスの dragLeaveEvent() を呼び出す必要はありません。
        // デフォルトの動作は何もしないためです。
    }
};

ドラッグ操作が完了（ドロップされた、またはキャンセルされた）際には、別のイベント（例えば、dropEvent() やドラッグ操作を中断するユーザー操作など）が発生します。
dragLeaveEvent() は、ドラッグ操作が完全に終了したわけではありません。ユーザーはマウスボタンを離さずに、再びシーン内にカーソルを戻す可能性があります。

一般的なエラーとトラブルシューティング

QGraphicsScene::dragLeaveEvent() は比較的単純なイベントですが、誤った実装や理解不足により、いくつかの問題が発生することがあります。以下に、よくあるエラーとその解決策を挙げます。

dragLeaveEvent() が期待通りに呼び出されない

トラブルシューティング
- QGraphicsView::viewport()->setAcceptDrops(true) が呼び出されていることを確認します。
- イベントフィルタを使用している場合は、eventFilter() 関数の実装を確認し、QEvent::DragLeave イベントが処理されずに親ウィジェットやシーンに伝播していることを確認します。
- デバッガを使用して、マウスカーソルがシーンの境界を離れる際に、実際に QEvent::DragLeave イベントが生成されているかを確認します。
- シーン上のアイテムがドラッグイベントを処理していないか確認します。必要であれば、アイテムの dragLeaveEvent() を確認するか、setAcceptDrops(false) を設定します。
- ドラッグ＆ドロップ機能が有効になっていない
  QGraphicsView またはそのビューポートで、ドラッグ＆ドロップ操作が有効になっていることを確認してください。setAcceptDrops(true) が呼び出されている必要があります。
- イベントフィルタによる遮断
  シーンやビュー、またはその親ウィジェットにインストールされたイベントフィルタが、QEvent::DragLeave イベントを横取りして処理している可能性があります。イベントフィルタの処理内容を確認し、意図しない遮断がないか確認してください。
- マウス追跡の問題
  マウスカーソルがシーンの境界を離れる際に、正しくイベントが生成されない場合があります。これは、ビューやシーンのジオメトリ、またはオペレーティングシステムの設定に依存する可能性があります。
- 子アイテムとの干渉
  シーンに追加された子アイテムが、ドラッグイベントを吸収している可能性があります。特に、アイテムが setAcceptDrops(true) を設定している場合、ドラッグイベントがアイテムに先に送られることがあります。

dragLeaveEvent() 内での処理が期待通りに行われない

トラブルシューティング
- デバッガを使用して、dragLeaveEvent() 関数の実行ステップを追跡し、変数の値や制御フローを確認します。
- 処理に必要な変数が正しいスコープでアクセス可能であることを確認します。
- 関連する他のイベントハンドラやスロットの処理内容を確認し、競合がないか検討します。
原因
- ロジックの誤り
  再実装した dragLeaveEvent() 関数のロジックに誤りがあり、意図した処理が行われていない可能性があります。
- スコープの問題
  関数内で使用している変数のスコープが正しくない場合があります。
- 他のイベントとの競合
  dragLeaveEvent() の処理が、他のイベントハンドラやスロットの処理と競合している可能性があります。

視覚的なフィードバックが正しく更新されない

トラブルシューティング
- dragLeaveEvent() が呼び出される条件を再確認し、フィードバックを消去するタイミングが適切かどうか検討します。
- フィードバックの消去後に、関連するシーンやアイテムに対して update() を呼び出し、再描画を強制します。
原因
- フィードバックの更新タイミングの誤り
  dragLeaveEvent() でフィードバックを消去する処理を行っている場合、そのタイミングが適切でない可能性があります。例えば、カーソルがわずかに境界線をかすめただけでイベントが発生し、すぐにフィードバックが消えてしまう場合があります。
- 描画の問題
  フィードバックの消去処理が正しく行われていても、再描画が適切に行われていないために視覚的に更新されないことがあります。update() 関数などを呼び出して、シーンまたは関連するアイテムの再描画をトリガーする必要がある場合があります。

ドロップ操作との連携の問題

トラブルシューティング
- ドラッグ＆ドロップ操作全体の状態管理を見直し、dragLeaveEvent() での状態リセットが、他のイベントハンドラと整合性が取れているか確認します。
原因
- 状態管理の不整合
  dragLeaveEvent() でドラッグ操作に関連する状態をリセットする場合、そのリセット処理が不完全であったり、その後の dropEvent() や他のドラッグ関連イベントとの間で状態の不整合が生じている可能性があります。

一般的なデバッグのヒント

シンプルなテストケースの作成
問題が複雑な場合に、最小限のコードで問題を再現できるテストケースを作成し、問題を切り分けて解決を試みます。
Qtのドキュメントの参照
QGraphicsScene、QGraphicsView、QDragLeaveEvent などの関連クラスのドキュメントを再確認し、関数の仕様や注意点などを理解します。
ブレークポイントの設定
デバッガを使用して dragLeaveEvent() 関数内にブレークポイントを設定し、イベント発生時に処理が停止するようにして、ステップ実行で詳細を確認します。
qDebug() の活用
dragLeaveEvent() 関数内や関連する箇所で qDebug() を使用して、イベントの発生や変数の値などをログ出力し、処理の流れを把握します。

例1: ドラッグが離れたときにシーンの背景色を元に戻す

この例では、ドラッグ操作がシーン上にある間は背景色を特定の色に変更し、ドラッグがシーンから離れたときに元の背景色に戻します。

#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QDragEnterEvent>
#include <QDragLeaveEvent>
#include <QColor>
#include <QBrush>
#include <QApplication>

class MyGraphicsScene : public QGraphicsScene {
private:
    QBrush originalBackgroundBrush;
    bool isDraggingOver;

public:
    MyGraphicsScene(QObject *parent = nullptr) : QGraphicsScene(parent), isDraggingOver(false) {
        originalBackgroundBrush = backgroundBrush();
    }

protected:
    void dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event) override {
        // 受け入れ可能なデータタイプであれば受け入れる
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            event->acceptProposedAction();
            setBackgroundBrush(Qt::lightGray);
            isDraggingOver = true;
        } else {
            event->ignore();
        }
    }

    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        if (isDraggingOver) {
            setBackgroundBrush(originalBackgroundBrush);
            isDraggingOver = false;
        }
    }

    void dropEvent(QDropEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            // ドロップされたテキストを処理する（ここでは省略）
            setBackgroundBrush(originalBackgroundBrush);
            isDraggingOver = false;
            event->acceptProposedAction();
        } else {
            event->ignore();
        }
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    MyGraphicsScene scene;
    scene.setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    QGraphicsView view(&scene);
    view.setAcceptDrops(true);
    view.show();

    // ドラッグを開始するためのダミーアイテム
    QGraphicsRectItem *rect = new QGraphicsRectItem(0, 0, 50, 50);
    rect->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsMovable);
    scene.addItem(rect);

    return a.exec();
}

説明

dropEvent() でも、ドロップが完了した際に背景色を元に戻し、isDraggingOver を false に設定しています。
dragLeaveEvent() で、isDraggingOver が true であれば（つまり、dragEnterEvent() が成功していれば）、背景色を元の色に戻し、isDraggingOver を false に設定します。
dragEnterEvent() で、ドラッグがシーンに入ってきたときに背景色を薄い灰色に変更し、isDraggingOver を true に設定します。
isDraggingOver は、現在ドラッグ操作がシーン上にあるかどうかを追跡するフラグです。
originalBackgroundBrush は、シーンの元の背景色を保存するために使用されます。
MyGraphicsScene クラスは QGraphicsScene を継承しています。

例2: ドラッグが離れたときに特定のアイテムのハイライトを消す

この例では、ドラッグ操作中に特定のアイテムをハイライト表示し、ドラッグがシーンから離れたときにそのハイライトを消します。

#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QGraphicsRectItem>
#include <QDragEnterEvent>
#include <QDragLeaveEvent>
#include <QPen>
#include <QBrush>
#include <QApplication>

class MyGraphicsScene : public QGraphicsScene {
private:
    QGraphicsRectItem *targetItem;
    QPen originalPen;

public:
    MyGraphicsScene(QObject *parent = nullptr) : QGraphicsScene(parent), targetItem(nullptr) {
        // ターゲットとなる矩形アイテムを作成
        targetItem = new QGraphicsRectItem(-25, -25, 50, 50);
        addItem(targetItem);
        originalPen = targetItem->pen();
    }

protected:
    void dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            event->acceptProposedAction();
            // ターゲットアイテムをハイライト表示
            QPen highlightPen = originalPen;
            highlightPen.setColor(Qt::blue);
            highlightPen.setWidth(3);
            targetItem->setPen(highlightPen);
        } else {
            event->ignore();
        }
    }

    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        // ハイライトを元に戻す
        if (targetItem) {
            targetItem->setPen(originalPen);
        }
    }

    void dropEvent(QDropEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            // ドロップ処理（ここでは省略）
            if (targetItem) {
                targetItem->setPen(originalPen); // ドロップ後もハイライトを消す
            }
            event->acceptProposedAction();
        } else {
            event->ignore();
        }
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    MyGraphicsScene scene;
    scene.setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    QGraphicsView view(&scene);
    view.setAcceptDrops(true);
    view.show();

    // ドラッグを開始するためのダミーアイテム
    QGraphicsRectItem *draggableRect = new QGraphicsRectItem(50, 50, 30, 30);
    draggableRect->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsMovable);
    scene.addItem(draggableRect);

    return a.exec();
}

説明

dropEvent() でも、ドロップ完了後にハイライトを消しています。
dragLeaveEvent() で、ターゲットアイテムが存在すれば、そのペンを元の originalPen に戻してハイライトを消します。
dragEnterEvent() で、ドラッグがシーンに入ってきたときに、ターゲットアイテムのペンを青色の太い線に変更してハイライト表示します。
originalPen は、ターゲットアイテムの元のペン（線のスタイル）を保存します。
MyGraphicsScene に targetItem という QGraphicsRectItem のポインタを追加し、コンストラクタでインスタンス化しています。

例3: ドラッグが離れたときにカスタムシグナルを発行する

この例では、ドラッグがシーンから離れたときに、カスタムシグナルを発行します。これは、他のオブジェクトにドラッグが終了したことを通知するのに役立ちます。

#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QDragEnterEvent>
#include <QDragLeaveEvent>
#include <QMimeData>
#include <QApplication>
#include <QObject>
#include <QDebug>

class MyGraphicsScene : public QGraphicsScene {
    Q_OBJECT

signals:
    void dragExited();

public:
    MyGraphicsScene(QObject *parent = nullptr) : QGraphicsScene(parent) {}

protected:
    void dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            event->acceptProposedAction();
            qDebug() << "ドラッグがシーンに入りました。";
        } else {
            event->ignore();
        }
    }

    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        emit dragExited();
        qDebug() << "ドラッグがシーンから離れました。";
    }

    void dropEvent(QDropEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            qDebug() << "データがドロップされました：" << event->mimeData()->text();
            event->acceptProposedAction();
        } else {
            event->ignore();
        }
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    MyGraphicsScene scene;
    scene.setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    QGraphicsView view(&scene);
    view.setAcceptDrops(true);
    view.show();

    QObject::connect(&scene, &MyGraphicsScene::dragExited, [](){
        qDebug() << "dragExited シグナルが発行されました。";
    });

    // ドラッグを開始するためのダミーアイテム
    QGraphicsRectItem *draggableRect = new QGraphicsRectItem(50, 50, 30, 30);
    draggableRect->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsMovable);
    scene.addItem(draggableRect);

    return a.exec();
}

#include "main.moc" // mocで生成されたファイル

main() 関数内では、このシグナルにラムダ関数を接続して、シグナルが発行されたときにメッセージをデバッグ出力するようにしています。
dragLeaveEvent() 内で emit dragExited(); を呼び出すことで、ドラッグがシーンから離れたときに dragExited シグナルを発行します。
dragExited() というカスタムシグナルを signals セクションで宣言しています。
MyGraphicsScene クラスで Q_OBJECT マクロを使用し、シグナルとスロットのメカニズムを有効にしています。

QGraphicsView::mouseMoveEvent() の利用

QGraphicsScene ではなく、それを表示する QGraphicsView の mouseMoveEvent() を利用して、マウスカーソルの位置を監視する方法です。

コード例 (イメージ)
欠点
- ドラッグ＆ドロップ操作中かどうかを別途管理する必要があります（例えば、dragEnterEvent() でフラグを立て、dropEvent() や他の適切なタイミングでフラグをリセットするなど）。
- 単純にシーンから離れたというイベントだけでなく、常にマウスの位置を監視する必要があるため、わずかにパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
利点
- dragLeaveEvent() よりも頻繁にイベントが発生するため、より細かなカーソルの動きに反応できます。
- ドラッグ＆ドロップ操作中だけでなく、通常のマウス移動時にも利用できます。
仕組み
mouseMoveEvent() は、マウスカーソルがビュー上で移動するたびに発生します。このイベントハンドラ内で、現在のマウスカーソルの位置を QPoint で取得し、それをビューの座標からシーンの座標に変換 (QGraphicsView::mapToScene()) します。そして、そのシーン座標が QGraphicsScene::sceneRect() の範囲内にあるかどうかをチェックすることで、マウスカーソルがシーンの内外どちらにあるかを判断できます。

#include <QGraphicsView>
#include <QMouseEvent>
#include <QGraphicsScene>
#include <QDebug>

class MyGraphicsView : public QGraphicsView {
private:
    bool isDragging = false;

protected:
    void mouseMoveEvent(QMouseEvent *event) override {
        QGraphicsView::mouseMoveEvent(event);
        if (isDragging) {
            QPointF scenePos = mapToScene(event->pos());
            if (!sceneRect().contains(scenePos)) {
                qDebug() << "マウスカーソルがシーンの外に出ました (mouseMoveEvent)。";
                // ここで dragLeaveEvent() の代替処理を行う
            } else {
                // マウスカーソルがシーンの中にある場合の処理
            }
        }
    }

    void dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event) override {
        QGraphicsView::dragEnterEvent(event);
        isDragging = true;
    }

    void dropEvent(QDropEvent *event) override {
        QGraphicsView::dropEvent(event);
        isDragging = false;
    }

    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        QGraphicsView::dragLeaveEvent(event);
        isDragging = false; // こちらも念のためリセット
    }
};

QGraphicsItem::dragLeaveEvent() の利用 (アイテム固有の処理)

シーン全体ではなく、特定の QGraphicsItem がドラッグされているオブジェクトから離れたときに処理を行いたい場合、各アイテムの dragLeaveEvent() を再実装できます。

コード例 (イメージ)
欠点
- シーン全体の境界から離れたというイベントを直接的に捉えることはできません。各アイテムが個別に離れたことを検出する必要があります。
利点
- シーン全体ではなく、特定のアイテムとのインタラクションに基づいて処理を行えます。
- より局所的な制御が可能です。
仕組み
ドラッグ操作中にカーソルがアイテムの上から離れると、そのアイテムの dragLeaveEvent() が呼び出されます。

#include <QGraphicsItem>
#include <QDragLeaveEvent>
#include <QDebug>
#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QMimeData>
#include <QApplication>

class MyGraphicsItem : public QGraphicsRectItem {
public:
    MyGraphicsItem(qreal x, qreal y, qreal width, qreal height, QGraphicsItem *parent = nullptr)
        : QGraphicsRectItem(x, y, width, height, parent) {
        setAcceptDrops(true); // このアイテムがドロップを受け付けるように設定
    }

protected:
    void dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            event->acceptProposedAction();
            qDebug() << "アイテム上にドラッグが入りました。";
        } else {
            event->ignore();
        }
    }

    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        qDebug() << "アイテムからドラッグが離れました。";
        // このアイテムからドラッグが離れたときの処理
        // 例えば、ハイライトを消すなど
    }

    void dropEvent(QDropEvent *event) override {
        if (event->mimeData()->hasText()) {
            qDebug() << "アイテムにドロップされました：" << event->mimeData()->text();
            event->acceptProposedAction();
        } else {
            event->ignore();
        }
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    scene.setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    MyGraphicsItem *item = new MyGraphicsItem(-50, -50, 100, 100);
    scene.addItem(item);

    QGraphicsView view(&scene);
    view.setAcceptDrops(true);
    view.show();

    QGraphicsRectItem *draggableRect = new QGraphicsRectItem(50, 50, 30, 30);
    draggableRect->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsMovable);
    scene.addItem(draggableRect);

    return a.exec();
}

タイマーの利用 (間接的な検出)

直接的なイベントに頼るのではなく、タイマーを使用して定期的にマウスカーソルの位置をチェックし、シーンの境界内にあるかどうかを判断する方法です。

コード例 (イメージ)
欠点
- イベントが発生するタイミングと正確に同期しないため、わずかな遅延が生じる可能性があります。
- 不要なチェックを繰り返す可能性があるため、パフォーマンスに影響を与える可能性があります（タイマーの間隔を適切に設定する必要があります）。
- ドラッグ＆ドロップ操作中かどうかを別途管理する必要があります。
利点
- イベントドリブンではないため、特定の状況に依存せず、定期的に状態を監視できます。
仕組み
QTimer を設定し、一定間隔でスロットを呼び出します。そのスロット内で、現在のマウスカーソルのグローバル座標を取得し (QCursor::pos()), それをビューの座標に変換 (QGraphicsView::mapFromGlobal()), さらにシーンの座標に変換 (QGraphicsView::mapToScene()) します。そして、シーン座標が sceneRect() の範囲内にあるかどうかをチェックします。

#include <QGraphicsScene>
#include <QGraphicsView>
#include <QTimer>
#include <QCursor>
#include <QPoint>
#include <QPointF>
#include <QDebug>
#include <QApplication>

class MyGraphicsView : public QGraphicsView {
private:
    QTimer timer;
    bool isMouseInScene = false;
    bool isDragging = false;

public:
    MyGraphicsView(QGraphicsScene *scene, QWidget *parent = nullptr) : QGraphicsView(scene, parent) {
        setMouseTracking(true); // マウスボタンを押さなくても mouseMoveEvent を発生させる
        timer.setInterval(100); // 100ミリ秒ごとにチェック
        connect(&timer, &QTimer::timeout, this, &MyGraphicsView::checkMousePosition);
        timer.start();
        setAcceptDrops(true);
    }

private slots:
    void checkMousePosition() {
        if (isDragging) {
            QPoint globalPos = QCursor::pos();
            QPoint viewportPos = viewport()->mapFromGlobal(globalPos);
            QPointF scenePos = mapToScene(viewportPos);
            bool nowInScene = sceneRect().contains(scenePos);

            if (isMouseInScene && !nowInScene) {
                qDebug() << "マウスカーソルがシーンの外に出ました (タイマー)。";
                isMouseInScene = false;
                // ここで dragLeaveEvent() の代替処理を行う
            } else if (!isMouseInScene && nowInScene) {
                qDebug() << "マウスカーソルがシーンの中に入りました (タイマー)。";
                isMouseInScene = true;
                // 必要であれば、シーンに入ったときの処理
            }
        }
    }

protected:
    void dragEnterEvent(QDragEnterEvent *event) override {
        QGraphicsView::dragEnterEvent(event);
        isDragging = true;
        QPointF startScenePos = mapToScene(viewport()->mapFromGlobal(QCursor::pos()));
        isMouseInScene = sceneRect().contains(startScenePos);
    }

    void dropEvent(QDropEvent *event) override {
        QGraphicsView::dropEvent(event);
        isDragging = false;
        isMouseInScene = false;
    }

    void dragLeaveEvent(QDragLeaveEvent *event) override {
        QGraphicsView::dragLeaveEvent(event);
        isDragging = false;
        isMouseInScene = false;
    }
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication a(argc, argv);

    QGraphicsScene scene;
    scene.setSceneRect(-100, -100, 200, 200);

    MyGraphicsView view(&scene);
    view.show();

    QGraphicsRectItem *draggableRect = new QGraphicsRectItem(50, 50, 30, 30);
    draggableRect->setFlag(QGraphicsItem::ItemIsMovable);
    scene.addItem(draggableRect);

    return a.exec();
}