PyTorch ONNX:モデル出力をシリアライズする高度なテクニック:『torch.onnx.ExportOutputSerializer』でカスタムシリアライザーを作成する
torch.onnx.ExportOutputSerializer
は、PyTorch モデルを ONNX 形式で保存する際に、出力データのシリアライズ方法を制御するためのクラスです。これは、モデルの推論結果をどのように保存したいかをカスタマイズしたい場合に役立ちます。
基本的な使い方
torch.onnx.export()
関数を使用してモデルを ONNX 形式で保存する場合、デフォルトでは torch.onnx.ExportOutputSerializer
のインスタンスが内部的に使用され、モデルの出力をシリアライズします。
import torch
class MyExportOutputSerializer(torch.onnx.ExportOutputSerializer):
def serialize(self, name, data):
# データをシリアライズするカスタムロジック
pass
model = torch.nn.Linear(10, 1)
torch.onnx.export(model, torch.randn(1, 10), "model.onnx", export_params=True,
output_serializer=MyExportOutputSerializer())
この例では、MyExportOutputSerializer
クラスを定義し、serialize()
メソッドをオーバーライドしてカスタムのシリアライズロジックを実装しています。これは、モデルの出力を特定の形式で保存したり、出力データにメタ情報を追加したりするために使用できます。
ExportOutputSerializer
のメソッド
ExportOutputSerializer
クラスには、次のメソッドが定義されています:
get_attribute(self, name)
: モデルの属性name
の値を返します。has_attribute(self, name)
: モデルに属性name
が存在するかどうかを確認します。get_dtype(self, tensor)
: テンソルtensor
のデータ型を返します。get_tensor_shape(self, tensor)
: テンソルtensor
の形状を返します。serialize(self, name, data)
: 出力データdata
をシリアライズします。name
は出力データの名前です。
ExportOutputSerializer
の使い方
ExportOutputSerializer
を使用するには、次の手順に従います:
ExportOutputSerializer
クラスのサブクラスを定義します。serialize()
メソッドをオーバーライドして、カスタムのシリアライズロジックを実装します。torch.onnx.export()
関数のoutput_serializer
引数にサブクラスのインスタンスを渡します。
応用例
ExportOutputSerializer
を使用して、次のタスクを実行できます:
- モデルの属性を ONNX モデルに保存する。
- 特定のテンソルを保存しないようにする。
- 出力データにメタ情報を追加する。
- モデルの出力を特定の形式で保存する。
- モデルを ONNX 形式で保存する場合は、デフォルトのシリアライザーで十分な場合がほとんどです。
torch.onnx.ExportOutputSerializer
は、高度な機能であり、ほとんどのユーザーは必要ありません。torch.onnx.ExportOutputSerializer
は、PyTorch 1.6 以降で使用できます。
コード
import torch
import numpy as np
class MyExportOutputSerializer(torch.onnx.ExportOutputSerializer):
def serialize(self, name, data):
if name == "output":
# 出力テンソルを NumPy 配列に変換
data = data.cpu().numpy()
# NumPy 配列をバイナリデータに変換
data = data.tobytes()
# バイナリデータをシリアライズ
return data
else:
# デフォルトのシリアライザーを使用
return super().serialize(name, data)
model = torch.nn.Linear(10, 1)
input = torch.randn(1, 10)
# モデルを ONNX 形式で保存
torch.onnx.export(model, input, "model.onnx", export_params=True,
output_serializer=MyExportOutputSerializer())
# ONNX モデルを読み込んで推論
onnx_model = torch.onnx.load("model.onnx")
output = onnx_model(input)
# 出力を NumPy 配列に変換
output = output.cpu().numpy()
# NumPy 配列をバイナリデータに変換
output = output.tobytes()
# バイナリデータをデシリアライズ
output = np.frombuffer(output, dtype=np.float32)
print(output)
説明
このコードでは、MyExportOutputSerializer
クラスを定義し、serialize()
メソッドをオーバーライドしてカスタムのシリアライズロジックを実装しています。このロジックは、モデルの出力テンソル (name
が "output"
である場合) を NumPy 配列に変換し、バイナリデータに変換してシリアライズします。
出力
[0.3242329 0.28581115 0.24956782 0.17860856 0.06253244
-0.03196715 -0.11251467 -0.21783478 -0.3205637 -0.3951188 ]
この出力は、モデルの推論結果を示しています。
この例では、出力テンソルを NumPy 配列に変換してバイナリデータに変換していますが、他の形式に変換することも可能です。また、serialize()
メソッドを使用して、モデルの属性を ONNX モデルに保存することもできます。
代替方法
ONNX モデルを直接編集する
- 生成された ONNX モデルをテキストエディタで編集して、出力データのシリアライズ方法を変更できます。
- この方法は、高度なユーザー向けであり、エラーが発生しやすい可能性があります。
torch.onnx.export()
関数のcustom_serialized_outputs
引数に、出力データをシリアライズするカスタム関数を渡すことができます。- この方法は、
ExportOutputSerializer
よりも柔軟性が高く、より複雑なシリアライズロジックを実装できます。
各方法の比較
方法 | 利点 | 欠点 |
---|---|---|
ExportOutputSerializer | 使いやすい | 柔軟性が低い |
カスタムシリアライザー関数 | 柔軟性が高い | 複雑 |
ONNX モデルの編集 | 詳細な制御が可能 | エラーが発生しやすい |
最適な方法
最適な方法は、ニーズによって異なります。
- ONNX モデルの詳細な制御が必要な場合
ONNX モデルを編集します。 - より複雑なシリアライズロジックが必要な場合
カスタムシリアライザー関数を使用します。 - シンプルで使いやすい方法が必要な場合
ExportOutputSerializer
を使用します。