PyTorchモデルのONNX変換をレベルアップ!TorchDynamoバックエンドで実現する高度な機能


「torch.onnx.ONNX Backend for TorchDynamo」は、PyTorchモデルをOpen Neural Network Exchange (ONNX) 形式に変換するための最新かつ高度なツールです。ONNXは、機械学習モデルを様々なハードウェアプラットフォームやランタイム環境で実行可能にするオープン規格です。

利点

TorchDynamoバックエンドは、従来のTorchScriptベースのエクスポーターに比べて以下の利点を提供します。

  • メンテナンス性向上
    TorchDynamoは、PyTorchの最新機能と進化に追随しやすくなっています。
  • 改善されたパフォーマンス
    TorchDynamoは、モデルをより効率的にONNXに変換し、推論速度の向上が期待できます。
  • より高い汎用性
    TorchDynamoは、より幅広いPyTorchモデルをONNXに変換できます。これには、動的形状、制御フロー、カスタムオペレーターを含むモデルが含まれます。

仕組み

TorchDynamoは、PyTorchモデルの計算グラフを分析し、それをONNXグラフに変換します。この変換プロセスは、以下の主要なステップで構成されます。

  1. モデルトレース
    モデルがダミーデータセットで実行され、その実行中に生成される計算グラフが記録されます。
  2. グラフ分析
    記録されたグラフが分析され、ONNX形式に変換するために必要な情報が抽出されます。
  3. グラフ変換
    分析されたグラフが、ONNX規格に準拠した新しいグラフに変換されます。
  4. エクスポート
    変換されたグラフとモデルのパラメータが、ONNXファイルに保存されます。

使用方法

TorchDynamoバックエンドを使用するには、以下の手順に従います。

  1. PyTorch 2.0以降をインストールします。
  2. モデルをトレーニングして評価します。
  3. 以下のコードを使用して、モデルをONNXに変換します。
import torch
import torch.onnx

model = # 訓練済みのモデルをロード
dummy_input = # ダミーデータを作成
torch.onnx.export(model, dummy_input, "model.onnx", opset_version=13)


import torch
import torch.onnx

# モデル定義
class LinearRegression(torch.nn.Module):
    def __init__(self, in_features, out_features):
        super(LinearRegression, self).__init__()
        self.linear = torch.nn.Linear(in_features, out_features)

    def forward(self, x):
        return self.linear(x)

# モデルを作成
model = LinearRegression(2, 1)

# ダミーデータを作成
dummy_input = torch.randn(2, 2)

# モデルをONNXに変換
torch.onnx.export(model, dummy_input, "linear_regression.onnx", opset_version=13)

以下のコードは、畳み込みニューラルネットワーク (CNN) をONNXに変換します。

import torch
import torch.onnx

# モデル定義
class CNN(torch.nn.Module):
    def __init__(self):
        super(CNN, self).__init__()
        self.conv1 = torch.nn.Conv2d(1, 32, kernel_size=3)
        self.pool1 = torch.nn.MaxPool2d(2)
        self.conv2 = torch.nn.Conv2d(32, 64, kernel_size=3)
        self.pool2 = torch.nn.MaxPool2d(2)
        self.fc = torch.nn.Linear(1600, 10)

    def forward(self, x):
        x = self.conv1(x)
        x = self.pool1(x)
        x = self.conv2(x)
        x = self.pool2(x)
        x = x.view(-1, 1600)
        x = self.fc(x)
        return x

# モデルを作成
model = CNN()

# ダミーデータを作成
dummy_input = torch.randn(1, 1, 28, 28)

# モデルをONNXに変換
torch.onnx.export(model, dummy_input, "cnn.onnx", opset_version=13)

説明

これらのコード例は、TorchDynamoバックエンドを使用してPyTorchモデルをONNXに変換する方法を基本的な例で示しています。実際のモデルでは、より複雑なアーキテクチャとデータ処理を使用する可能性があります。

  • opset_version 引数は、ONNX規格のバージョンを指定します。モデルが実行されるランタイム環境でサポートされているバージョンを選択してください。
  • ダミーデータは、モデルの入力形状とデータ型に一致する必要があります。
  • モデルをONNXに変換する前に、モデルがトレーニング済みで評価済みであることを確認してください。


TorchScriptベースのエクスポーター

TorchScriptは、PyTorchモデルを静的なグラフ表現に変換するためのツールです。このグラフ表現は、その後、ONNX形式にエクスポートすることができます。TorchScriptベースのエクスポーターは、TorchDynamoバックエンドよりも古い方法ですが、多くのモデルで依然として有効なオプションです。

利点

  • TorchDynamoよりも成熟したツール
  • 多くのPyTorchモデルで安定して動作

欠点

  • 複雑なモデルの変換で問題が発生する可能性がある
  • TorchDynamoほど汎用性がない

MMdnn

MMdnnは、様々な深層学習フレームワークのモデルをONNXに変換するためのオープンソースツールです。MMdnnは、TorchScript以外にも、Keras、MXNet、TensorFlowなどのフレームワークをサポートしています。

利点

  • 複雑なモデルの変換を処理できる可能性が高い
  • 幅広いフレームワークのモデルをサポート

欠点

  • 一部のモデルで問題が発生する可能性がある
  • TorchDynamoやTorchScriptほど成熟していない

ONNX Runtime

ONNX Runtimeは、Microsoftが開発したONNXモデルを実行するためのランタイム環境です。ONNX Runtimeには、PyTorchモデルをONNXに変換するためのツールも含まれています。

利点

  • Microsoft製品との緊密な統合
  • ONNX Runtimeでネイティブに実行されるモデルを効率的に変換

欠点

  • 一部のモデルで問題が発生する可能性がある
  • 他のオプションほど汎用性がない

カスタムエクスポーター

独自の要件を満たすために、カスタムのONNXエクスポーターを作成することもできます。これは、複雑なモデルや、標準的なツールで変換できないモデルを処理する必要がある場合に役立ちます。

利点

  • 複雑なモデルの変換が可能
  • 特定のニーズに合わせた変換ロジックを定義できる

欠点

  • 専門知識が必要
  • 開発とメンテナンスに時間がかかる

最適な代替方法の選択

最適な代替方法は、個々のニーズによって異なります。以下の要素を考慮して選択してください。

  • 開発者の専門知識
  • 必要な機能
  • モデルの複雑性