PyTorch Distributed Elasticでタイマーを操る:`torch.distributed.elastic.timer.TimerClient.release()` の詳細解説
expires()
コンテキストマネージャーは、コードブロックが指定された時間内に完了しなかった場合、ワーカープロセスを終了させるために使用されます。これは、ワーカーがハングアップした場合などに役立ちます。
release()
関数の役割は以下の通りです。
- タイマーの解除
release()
関数は、expires()
コンテキストマネージャー内で取得されたタイマーを解除します。これにより、タイマーが期限切れにならなくてもワーカープロセスが終了するのを防ぎます。 - ワーカーの存続期間延長
release()
関数を呼び出すことで、ワーカープロセスが存続する期間を延長することができます。これは、コードブロックが完了するのに予想よりも時間がかかる場合などに役立ちます。
以下の例は、release()
関数の使用方法を示しています。
import torch.distributed.elastic.timer as timer
def my_function():
with timer.expires(after=60):
# コードを実行
# ...
# コードブロックが完了したら、タイマーを解放する
timer.release()
my_function()
この例では、my_function()
関数は 60 秒以内に完了する必要があります。関数内では、expires()
コンテキストマネージャーを使用してタイマーを取得します。このコンテキストマネージャー内でコードが実行されると、タイマーが開始されます。
コードブロックが 60 秒以内に完了した場合、release()
関数が呼び出され、タイマーが解放されます。これにより、ワーカープロセスが終了するのを防ぎます。
release()
関数は、ワーカープロセスの存続期間を延長するだけで、保証するものではありません。コードブロックが完了する前にワーカープロセスが終了する可能性は常にあります。- タイマーを解放せずに
expires()
コンテキストマネージャーを終了すると、ワーカープロセスが終了する可能性があります。 release()
関数は、expires()
コンテキストマネージャー内で取得されたタイマーのみを解放することができます。
import torch.distributed.elastic.timer as timer
import time
def my_function():
with timer.expires(after=60):
# コードを実行
time.sleep(30) # 30秒間スリープ
# コードブロックが完了したら、タイマーを解放する
timer.release()
# さらに10秒間処理を行う
time.sleep(10)
my_function()
コードブロックは 30 秒後に release()
関数を呼び出し、タイマーを解放します。これにより、ワーカープロセスが 60 秒後に終了するのを防ぎます。
その後、コードブロックはさらに 10 秒間処理を行います。この処理はタイマーの影響を受けません。
この例では、以下の点に注意してください。
- コードブロックは 40 秒後に完了しますが、ワーカープロセスは 60 秒後に終了します。これは、
expires()
コンテキストマネージャーが終了した後も、タイマーが有効であり続けることを示しています。 - タイマーは 30 秒後に解放されますが、コードブロックは 60 秒後に完了します。これは、
release()
関数がタイマーの期限切れをキャンセルするだけで、ワーカープロセスの存続期間を保証するものではないことを示しています。
例 1: タイマーを複数回解放する
import torch.distributed.elastic.timer as timer
import time
def my_function():
with timer.expires(after=60):
# コードを実行
time.sleep(20)
# タイマーを解放する
timer.release()
# さらに10秒間スリープ
time.sleep(10)
# タイマーを再び解放する
timer.release()
# さらに20秒間スリープ
time.sleep(20)
my_function()
import torch.distributed.elastic.timer as timer
import time
def my_function():
try:
with timer.expires(after=60):
# コードを実行
time.sleep(30)
# エラーが発生したら、タイマーを解放する
raise Exception("エラーが発生しました")
except Exception as e:
# エラーが発生したら、タイマーを解放する
timer.release()
print(f"エラーが発生しました: {e}")
my_function()
release() 関数の代替方法
以下の状況では、release()
関数の代わりに他の方法を使用することができます。
タイマーを短時間で設定する
タイマーを短時間で設定することで、ワーカープロセスがハングアップしても、すぐに終了するようにすることができます。
import torch.distributed.elastic.timer as timer
def my_function():
with timer.expires(after=10):
# コードを実行
my_function()
この例では、タイマーは 10 秒後に期限切れになります。ワーカープロセスが 10 秒以内に完了しなければ、自動的に終了されます。
expires() コンテキストマネージャーの外でコードを実行する
expires()
コンテキストマネージャーの外でコードを実行することで、タイマーの影響を受けずにコードを実行することができます。
import torch.distributed.elastic.timer as timer
def my_function():
# タイマーの影響を受けずにコードを実行
time.sleep(30)
# タイマーは必要ないので、解放しない
my_function()
この例では、my_function()
関数は 30 秒後に完了します。expires()
コンテキストマネージャーを使用していないため、タイマーの影響を受けません。
torch.distributed.elastic.timer.NoOpTimer を使用する
torch.distributed.elastic.timer.NoOpTimer
は、何もしないタイマーです。このタイマーを使用することで、ワーカープロセスの存続期間に影響を与えることなく、expires()
コンテキストマネージャーを使用することができます。
import torch.distributed.elastic.timer as timer
def my_function():
with timer.NoOpTimer():
# コードを実行
my_function()
この例では、my_function()
関数は expires()
コンテキストマネージャー内で実行されますが、NoOpTimer
を使用しているため、タイマーの影響を受けません。
注意事項
上記の方法を使用する際には、以下の点に注意してください。
NoOpTimer
を使用すると、ワーカープロセスの存続期間を制御できなくなります。expires()
コンテキストマネージャーの外でコードを実行すると、タイマーによる保護を受けられなくなります。- タイマーを短時間で設定すると、ワーカープロセスが正常に完了する時間が短くなります。