PostgreSQLのnumrange型: 財務、科学、工学におけるデータ分析に最適なツール


numrangeの基礎

numrange型は、下限と上限という2つの境界値で定義される連続的な数値範囲を表します。境界値は、任意の浮動小数点型または固定小数点型で指定できます。

  • 開いた境界
    境界値自身が範囲に含まれません。記号 () で表されます。 例: (1, 10) は、1より大きい、10より小さいすべての値を含む範囲を表します。
  • 閉じた境界
    境界値自身が範囲に含まれます。記号 [] で表されます。 例: [1, 10] は、1から10までのすべての値を含む範囲を表します。

numrangeの操作

numrange型には、範囲の操作、比較、抽出、変換など、様々な操作が用意されています。以下に、その代表的な例をいくつか紹介します。

  • 範囲の変換
    • numrange::text: 範囲を文字列に変換します。
    • text::numrange: 文字列を範囲に変換します。
  • 範囲の抽出
    • lower(range): 範囲の下限を返します。
    • upper(range): 範囲の上限を返します.
    • isEmpty(range): 範囲が空かどうかを判定します。
  • 範囲の演算
    • +, -: 範囲を拡張または縮小します。
    • *, /: 範囲をスケーリングします。
    • |: 2つの範囲の併合を行います。
    • -: 範囲の補完を行います。
  • 範囲の比較
    • <, >, <=, >=: 2つの範囲を比較します。
    • =, <>: 2つの範囲が等しいかどうかを比較します。
  • 範囲の構築
    • numrange(lower, upper, inclusive): 下限と上限、および境界の包含性を指定して範囲を構築します。
    • numrange('lower'::numeric, 'upper'::numeric, 'inclusive'::boolean): 文字列リテラルを使用して範囲を構築します。

numrangeの利点

numrange型を使用する利点は次のとおりです。

  • インデックス可能
    範囲データに対してインデックスを作成することで、クエリのパフォーマンスを向上させることができます。
  • 表現力
    閉じた境界と開いた境界を組み合わせることで、様々な範囲表現を可能にします。
  • 効率性
    範囲データの操作を効率的に処理するための様々な演算と関数を備えています。
  • 簡潔性
    数値範囲を表現するための簡潔で分かりやすい方法を提供します。

以下に、numrange型の使用例をいくつか紹介します。

  • エンジニアリングシミュレーション
    製品設計における許容誤差範囲を指定する。
  • 科学研究データ処理
    実験結果における温度の範囲を記録する。
  • 財務データ分析
    特定の期間における株価の変動範囲を分析する。


範囲の構築

-- 閉じた境界で範囲を構築
SELECT numrange(1, 10, true);

-- 開いた境界で範囲を構築
SELECT numrange(1, 10, false);

-- 文字列リテラルを使用して範囲を構築
SELECT numrange('1'::numeric, '10'::numeric, 'true'::boolean);

範囲の比較

-- 2つの範囲を比較
SELECT [1, 5] < [2, 11];  -- 結果: true
SELECT [1, 5] > [2, 11];  -- 結果: false
SELECT [1, 5] <= [2, 11]; -- 結果: true
SELECT [1, 5] >= [2, 11]; -- 結果: false
SELECT [1, 5] = [1, 5];  -- 結果: true
SELECT [1, 5] <> [1, 5];  -- 結果: false

範囲の演算

-- 範囲を拡張
SELECT [1, 5] + 2;  -- 結果: [3, 7]

-- 範囲を縮小
SELECT [1, 5] - 1;  -- 結果: [0, 4]

-- 範囲をスケーリング
SELECT [1, 5] * 2;  -- 結果: [2, 10]
SELECT [1, 5] / 2;  -- 結果: [0.5, 2.5]

-- 2つの範囲を併合
SELECT [1, 5] | [6, 10]; -- 結果: [1, 10]

-- 範囲の補完
SELECT -[1, 5];  -- 結果: (-∞, 1] ∪ [5, ∞)

範囲の抽出

-- 範囲の下限を抽出
SELECT lower([1, 5]);  -- 結果: 1

-- 範囲の上限を抽出
SELECT upper([1, 5]);  -- 結果: 5

-- 範囲が空かどうかを判定
SELECT isEmpty([1, 5]);  -- 結果: false
SELECT isEmpty([-∞, 0]);  -- 結果: true

範囲の変換

-- 範囲を文字列に変換
SELECT numrange(1, 5, true)::text;  -- 結果: '[1,5]'

-- 文字列を範囲に変換
SELECT text::numrange('[1,5]');  -- 結果: [1, 5]
-- 2023年1月から3月までの株価データを範囲で取得
SELECT *
FROM stock_prices
WHERE price_range >= numrange('2023-01-01'::date, '2023-03-31'::date, true);

科学研究データ処理
実験結果における温度の範囲を記録する

-- 各実験における温度の範囲を記録
INSERT INTO experiment_data (experiment_id, temperature_range)
VALUES
  (1, numrange(20, 25, true)),
  (2, numrange(15, 30, true)),
  (3, numrange(10, 20, true));

エンジニアリングシミュレーション
製品設計における許容誤差範囲を指定する

-- 部品寸法の許容誤差範囲を指定
CREATE TABLE part_tolerances (
  part_id int PRIMARY KEY,
  dimension varchar(20),
  nominal_value numeric,
  tolerance_range numrange
);

INSERT INTO part_tolerances (part_id, dimension, nominal_value, tolerance_range)
VALUES
  (1, 'length', 10.0, numrange(9.8, 10.2, true)),
  (1, 'width', 5.0, numrange(4.9, 5.1, true)),
  (2, 'diameter', 3.0, numrange(2.95, 3.05, true));


浮動小数点型と比較演算子

最も単純な代替方法は、浮動小数点型と比較演算子を使用することです。例えば、以下のように記述できます。

SELECT *
FROM sales
WHERE price BETWEEN 10 AND 20;

この方法はシンプルでわかりやすいですが、範囲境界の値が非常に大きかったり小さかったりする場合、精度が失われる可能性があります。また、範囲演算子には、numrange型のような高度な機能がありません。

ユーザー定義データ型

より柔軟なソリューションが必要な場合は、ユーザー定義データ型(UDT)を作成できます。UDTを使用すると、独自の演算、メソッド、属性を定義することで、numrange型よりも高度な機能を備えた範囲データ型を作成できます。

UDTは、複雑な範囲操作や、numrange型ではサポートされていない特別な属性が必要な場合に適しています。ただし、UDTは開発と保守に時間がかかり、標準ライブラリの一部ではないため、他のユーザーとの共有が困難になる場合があります。

サブクエリ

サブクエリを使用して、範囲条件を表現することもできます。例えば、以下のように記述できます。

SELECT *
FROM sales
WHERE price IN (
  SELECT price
  FROM price_ranges
  WHERE range @> [10, 20]
);

この方法は、範囲データが別のテーブルに格納されている場合に役立ちます。ただし、サブクエリは複雑になりやすく、パフォーマンスが低下する可能性があります。

特殊なライブラリ

特定のユースケース向けに、範囲データの管理を専門としたライブラリが用意されている場合があります。これらのライブラリは、numrange型よりも高度な機能を提供したり、特定のハードウェアやデータベースシステムに最適化されている場合があります。

特殊なライブラリは、複雑な範囲操作や、パフォーマンスが重要なアプリケーションに適しています。ただし、これらのライブラリは、習得と使用が難しく、コミュニティからのサポートが限られている場合があります。

どの代替方法が適切かは、具体的な要件によって異なります。以下の点を考慮する必要があります。

  • 共有可能性
    コードを他のユーザーと共有する必要がありますか?UDTや特殊なライブラリは、共有するのが難しい場合があります。
  • パフォーマンス
    パフォーマンスは重要ですか?複雑なソリューションは、パフォーマンスが低下する可能性があります。
  • 複雑さ
    どのくらいの複雑さを許容できますか?シンプルなソリューションの方が、開発と保守が簡単です。
  • 必要な機能
    必要な機能は何か?numrange型のすべての機能が必要ですか?それとも、より高度な機能が必要ですか?

これらの点を考慮した上で、各代替方法の長所と短所を比較検討し、最適なソリューションを選択してください。