PostgreSQL CALL コマンド徹底解説:初心者から上級者まで役立つ情報
2025-04-07
"CALL"コマンドの基本的な構文
CALL procedure_name(argument1, argument2, ...);
argument1, argument2, ...
: プロシージャに渡す引数です。引数は、定数、変数、または式で指定できます。procedure_name
: 呼び出したいストアドプロシージャの名前です。
"CALL"コマンドの役割と利点
- コードの再利用性
頻繁に使用する一連のSQL文をプロシージャとして定義することで、同じコードを何度も記述する必要がなくなります。 - パフォーマンス向上
プロシージャはデータベースサーバーに保存され、コンパイル済みの状態で実行されるため、ネットワーク経由でのSQL文のやり取りが減り、パフォーマンスが向上する場合があります。 - セキュリティ
データベース管理者は、特定のプロシージャへのアクセス権限を制御することで、データのセキュリティを強化できます。 - トランザクション管理
プロシージャ内でトランザクションを管理することで、データの整合性を保つことができます。
例
例えば、add_numbers
という名前のストアドプロシージャがあり、2つの整数を受け取り、その合計を計算するとします。
CREATE OR REPLACE PROCEDURE add_numbers(a INTEGER, b INTEGER, OUT sum INTEGER) AS $$
BEGIN
sum := a + b;
END;
$$ LANGUAGE plpgsql;
このプロシージャを呼び出すには、次のように"CALL"コマンドを使用します。
CALL add_numbers(5, 10, NULL);
または、結果を受け取る変数を使用します。
DO $$
DECLARE
result INTEGER;
BEGIN
CALL add_numbers(5, 10, result);
RAISE NOTICE 'Sum: %', result;
END $$;
この例では、add_numbers
プロシージャを呼び出し、結果をresult
変数に格納し、RAISE NOTICE
で結果を出力しています。
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- エラーメッセージ
ERROR: procedure procedure_name(argument_types) does not exist
- 原因
指定したプロシージャ名が間違っているか、データベースに存在しない可能性があります。 - トラブルシューティング
- プロシージャ名を再確認してください。
\df procedure_name
コマンドを使用して、プロシージャが実際に存在するかどうかを確認してください。- スキーマ(schema)が異なる場合は、スキーマ名を指定して呼び出してください(例:
CALL schema_name.procedure_name(...)
). - プロシージャを再作成または修正する必要があるかもしれません。
- エラーメッセージ
-
引数の型が一致しない (Argument type mismatch)
- エラーメッセージ
ERROR: function procedure_name(argument_types) does not exist
またはERROR: invalid input syntax for type data_type: value
- 原因
"CALL"コマンドで渡された引数の型が、プロシージャ定義で期待される型と一致しません。 - トラブルシューティング
- プロシージャの定義 (
\df procedure_name
) を確認し、引数の型を確認してください。 - 引数の型を明示的にキャストしてください(例:
CALL procedure_name(argument::data_type)
)。 - 引数の値を修正して、適切な型にしてください。
- プロシージャの定義 (
- エラーメッセージ
-
引数の数が一致しない (Argument count mismatch)
- エラーメッセージ
ERROR: function procedure_name(argument_types) does not exist
- 原因
"CALL"コマンドで渡された引数の数が、プロシージャ定義で期待される数と一致しません。 - トラブルシューティング
- プロシージャの定義 (
\df procedure_name
) を確認し、引数の数を確認してください。 - 必要な引数をすべて指定してください。
- デフォルト値を持つ引数を使用する場合は、省略可能です。
- プロシージャの定義 (
- エラーメッセージ
-
権限不足 (Insufficient privileges)
- エラーメッセージ
ERROR: permission denied for procedure procedure_name
- 原因
プロシージャを実行する権限がありません。 - トラブルシューティング
- データベース管理者に連絡し、プロシージャを実行する権限を付与してもらってください(
GRANT EXECUTE ON PROCEDURE procedure_name TO user_name;
)。 - 適切なロール(role)に所属しているか確認してください。
- データベース管理者に連絡し、プロシージャを実行する権限を付与してもらってください(
- エラーメッセージ
-
プロシージャ内のエラー (Errors within the procedure)
- エラーメッセージ
プロシージャ内で発生したエラーメッセージ(例:ERROR: division by zero
)。 - 原因
プロシージャ内のSQL文でエラーが発生しました。 - トラブルシューティング
- プロシージャのコードを注意深く確認し、エラーの原因となるSQL文を特定してください。
RAISE NOTICE
やRAISE EXCEPTION
を使用して、プロシージャ内の変数の値や状態をデバッグしてください。- プロシージャ内でトランザクションを使用している場合は、トランザクションのロールバックやコミットが適切に行われているか確認してください。
- ログファイルを確認してください。
- エラーメッセージ
-
OUTパラメータの扱い (Handling OUT parameters)
- エラー
NULL
や期待しない値がOUTパラメータに入っている。 - 原因
OUTパラメータの受け取り方の間違いや、プロシージャ内での値の代入ミス。 - トラブルシューティング
- プロシージャの定義を確認し、OUTパラメータの型と使用方法を確認してください。
- DOブロック内で変数を宣言し、CALLコマンドでOUTパラメータに代入してください。
- プロシージャ内でOUTパラメータに正しい値を代入しているか確認してください。
- エラー
デバッグのヒント
- トランザクションの適切な管理(ロールバック、コミット)を徹底してください。
- PostgreSQLのログファイルを確認し、エラーメッセージや警告メッセージを調べます。
EXPLAIN
コマンドを使用して、プロシージャ内のSQLクエリの実行計画を確認します。RAISE NOTICE
またはRAISE EXCEPTION
を使用して、プロシージャ内の変数の値や状態を出力します。\df procedure_name
コマンドを使用して、プロシージャの定義を確認します。
基本的なストアドプロシージャの作成と呼び出し
-- ストアドプロシージャの作成
CREATE OR REPLACE PROCEDURE greet(name VARCHAR) AS $$
BEGIN
RAISE NOTICE 'こんにちは, %!', name;
END;
$$ LANGUAGE plpgsql;
-- ストアドプロシージャの呼び出し
CALL greet('田中');
説明
CALL greet('田中');
:greet
プロシージャを呼び出し、'田中'
という引数を渡します。RAISE NOTICE 'こんにちは, %!', name;
:引数name
を使用してメッセージを出力します。CREATE OR REPLACE PROCEDURE greet(name VARCHAR) AS $$ ... $$ LANGUAGE plpgsql;
:greet
という名前のストアドプロシージャを作成します。name
というVARCHAR型の引数を受け取り、plpgsql言語で記述されています。
OUTパラメータを使用した値の取得
-- ストアドプロシージャの作成(OUTパラメータを使用)
CREATE OR REPLACE PROCEDURE add_numbers(a INTEGER, b INTEGER, OUT sum INTEGER) AS $$
BEGIN
sum := a + b;
END;
$$ LANGUAGE plpgsql;
-- ストアドプロシージャの呼び出しと結果の取得
DO $$
DECLARE
result INTEGER;
BEGIN
CALL add_numbers(10, 20, result);
RAISE NOTICE '合計: %', result;
END;
$$;
説明
DO $$ DECLARE result INTEGER; BEGIN CALL add_numbers(10, 20, result); RAISE NOTICE '合計: %', result; END; $$;
:DOブロック内でresult
変数を宣言し、add_numbers
プロシージャを呼び出し、結果をresult
に格納し、出力します。sum := a + b;
:a
とb
の合計をsum
に格納します。CREATE OR REPLACE PROCEDURE add_numbers(a INTEGER, b INTEGER, OUT sum INTEGER) AS $$ ... $$ LANGUAGE plpgsql;
:add_numbers
という名前のストアドプロシージャを作成します。a
とb
というINTEGER型の引数と、sum
というOUTパラメータを受け取ります。
トランザクションを使用したストアドプロシージャ
-- ストアドプロシージャの作成(トランザクションを使用)
CREATE OR REPLACE PROCEDURE transfer_funds(sender_id INTEGER, receiver_id INTEGER, amount DECIMAL) AS $$
BEGIN
-- トランザクション開始
BEGIN
UPDATE accounts SET balance = balance - amount WHERE id = sender_id;
UPDATE accounts SET balance = balance + amount WHERE id = receiver_id;
-- トランザクション成功
COMMIT;
RAISE NOTICE '送金成功';
EXCEPTION WHEN OTHERS THEN
-- エラー発生時、トランザクションをロールバック
ROLLBACK;
RAISE NOTICE '送金失敗: %', SQLERRM;
END;
END;
$$ LANGUAGE plpgsql;
-- サンプルテーブルの作成
CREATE TABLE accounts (id INTEGER PRIMARY KEY, balance DECIMAL);
INSERT INTO accounts VALUES (1, 1000), (2, 500);
-- ストアドプロシージャの呼び出し
CALL transfer_funds(1, 2, 200);
-- 結果の確認
SELECT * FROM accounts;
説明
- サンプルテーブルの作成とデータの挿入を行い、
transfer_funds
プロシージャの呼び出しを行い結果を確認します。 SQLERRM
:発生したエラーメッセージを取得します。ROLLBACK;
:エラーが発生した場合、トランザクションをロールバックします。COMMIT;
:トランザクションをコミットします。UPDATE accounts SET balance = balance - amount WHERE id = sender_id;
とUPDATE accounts SET balance = balance + amount WHERE id = receiver_id;
:送金処理を行います。BEGIN ... EXCEPTION WHEN OTHERS THEN ... END;
:トランザクションを開始し、エラーハンドリングを行います。CREATE OR REPLACE PROCEDURE transfer_funds(sender_id INTEGER, receiver_id INTEGER, amount DECIMAL) AS $$ ... $$ LANGUAGE plpgsql;
:transfer_funds
という名前のストアドプロシージャを作成します。
複数の結果セットを返すストアドプロシージャ(カーソルを使用)
-- ストアドプロシージャの作成(カーソルを使用)
CREATE OR REPLACE PROCEDURE get_all_products(INOUT refcursor)
LANGUAGE plpgsql
AS $$
BEGIN
OPEN refcursor FOR SELECT * FROM products;
END;
$$;
-- サンプルテーブルの作成
CREATE TABLE products (id INTEGER PRIMARY KEY, name VARCHAR, price DECIMAL);
INSERT INTO products VALUES (1, 'りんご', 100), (2, 'みかん', 80), (3, 'バナナ', 120);
-- ストアドプロシージャの呼び出しと結果の取得
DO $$
DECLARE
my_cursor refcursor;
product_row products%ROWTYPE;
BEGIN
CALL get_all_products('my_cursor');
LOOP
FETCH my_cursor INTO product_row;
EXIT WHEN NOT FOUND;
RAISE NOTICE '商品名: %, 価格: %', product_row.name, product_row.price;
END LOOP;
CLOSE my_cursor;
END;
$$;
- サンプルテーブルを作成し、プロシージャを呼び出し、結果をループ処理で取得、出力します。
CLOSE my_cursor;
:カーソルを閉じます。FETCH my_cursor INTO product_row;
:カーソルから1行ずつデータを取得します。OPEN refcursor FOR SELECT * FROM products;
:カーソルを開き、products
テーブルの全レコードを返します。CREATE OR REPLACE PROCEDURE get_all_products(INOUT refcursor) ...
:カーソルを引数に取るプロシージャを作成します。
関数 (Functions) の利用
- 例
-- 関数の作成
CREATE OR REPLACE FUNCTION calculate_total(price DECIMAL, quantity INTEGER) RETURNS DECIMAL AS $$
BEGIN
RETURN price * quantity;
END;
$$ LANGUAGE plpgsql;
-- 関数の呼び出し
SELECT calculate_total(10.50, 5);
-- SELECT文内で使用
SELECT product_name, calculate_total(price, quantity) AS total_price FROM orders;
- 説明
calculate_total
関数は、価格と数量を受け取り、合計金額を返します。- 関数は、通常のSELECT文の中で使用できます。
- 関数は値を返す必要があるため、OUTパラメーターの代わりにRETURNを使います。
DOブロックの利用
- 例
DO $$
DECLARE
product_count INTEGER;
BEGIN
SELECT COUNT(*) INTO product_count FROM products;
IF product_count > 10 THEN
RAISE NOTICE '商品数が10を超えています。';
ELSE
RAISE NOTICE '商品数は10以下です。';
END IF;
END;
$$;
- 説明
- DOブロック内で
product_count
変数を宣言し、products
テーブルのレコード数を取得します。 - IF文を使用して、商品数に応じてメッセージを出力します。
- DOブロック内で
クエリの組み合わせ
- 例
-- CTEを使用した例
WITH average_prices AS (
SELECT category, AVG(price) AS avg_price FROM products GROUP BY category
)
SELECT p.product_name, a.avg_price FROM products p JOIN average_prices a ON p.category = a.category WHERE p.price > a.avg_price;
- 説明
- CTE
average_prices
でカテゴリごとの平均価格を計算し、メインのクエリで平均価格より高い商品を選択します。 - 複雑な処理を分解し、可読性を向上させます。
- CTE
外部プログラミング言語との連携
- 例
-- Pythonを使用した例
CREATE OR REPLACE FUNCTION python_function(input_text TEXT) RETURNS TEXT AS $$
return input_text.upper()
$$ LANGUAGE plpython3u;
SELECT python_function('hello');
- 説明
- pythonで大文字に変換する関数を作成します。
- 外部言語を使用するとより複雑な処理も可能になります。
- 高度な処理や外部ライブラリの利用
外部プログラミング言語との連携を使用します。 - 複雑なデータ操作
クエリの組み合わせ(CTE、サブクエリ)を使用します。 - 一時的な処理や制御構造
DOブロックを使用します。 - 単純な値の取得や計算
関数を使用します。