aligned_alloc関数を使いこなしてパフォーマンスとメモリ使用効率を最適化


そこで、C11規格から aligned_alloc() 関数が導入されました。この関数は、メモリブロックの配置境界を指定してメモリを動的に確保することができます。

aligned_alloc関数のプロトタイプ

void *aligned_alloc(size_t alignment, size_t size);

引数

  • size: メモリブロックのサイズ(バイト単位)。
  • alignment: メモリブロックの配置境界。2のべき乗でなければならず、alignof(max_align_t) 以下である必要があります。

戻り値

  • メモリブロックの先頭アドレス。確保に失敗した場合は NULL を返します。

aligned_alloc関数の動作

aligned_alloc() 関数は、指定された alignment に従ってメモリブロックを配置します。alignment が 2 のべき乗の場合は、malloc() 関数を内部的に呼び出すだけで済む場合があります。

aligned_alloc関数の例

#include <stdlib.h>

int main() {
  // SSE 命令で最適化された浮動小数点数を格納するためのメモリブロックを確保
  double *d = aligned_alloc(32, sizeof(double));

  // メモリ使用...

  free(d);

  return 0;
}

この例では、aligned_alloc() 関数は 32 バイト境界に配置されたメモリブロックを確保します。これは、SSE 命令で最適化された浮動小数点数 (double) を格納するために必要な配置境界です。

aligned_alloc関数の利点

  • キャッシュライン境界に配置されたメモリブロックを使用することで、キャッシュアクセス効率を向上させることができます。
  • ハードウェアによっては、特定の境界に配置されていないメモリへのアクセスが著しく遅くなる場合があります。aligned_alloc() 関数を使用することで、このようなパフォーマンスの低下を回避することができます。

aligned_alloc関数の注意点

  • alignment が大きすぎると、メモリ使用効率が低下する可能性があります。
  • aligned_alloc() 関数は malloc() 関数よりも低速である可能性があります。

aligned_alloc関数の使用例

  • キャッシュアクセス効率を critical とするアプリケーション
  • SSE 命令や AVX 命令などのベクター演算を効率的に使用するアプリケーション

aligned_alloc() 関数は、メモリブロックの配置境界を指定してメモリを動的に確保することができます。ハードウェアによっては、特定の境界に配置されていないメモリへのアクセスが著しく遅くなる場合があります。このようなパフォーマンスの低下を回避するために、aligned_alloc() 関数を使用することができます。



例 1: SSE 命令で最適化された浮動小数点数を格納するためのメモリブロックを確保

#include <stdlib.h>

int main() {
  // SSE 命令で最適化された浮動小数点数を格納するためのメモリブロックを確保
  double *d = aligned_alloc(32, sizeof(double));

  if (!d) {
    perror("aligned_alloc failed");
    exit(1);
  }

  // メモリ使用...

  free(d);

  return 0;
}

例 2: キャッシュライン境界に配置されたメモリブロックを確保

#include <stdlib.h>

int main() {
  // キャッシュライン境界に配置されたメモリブロックを確保
  void *p = aligned_alloc(CACHE_LINE_SIZE, 1);

  if (!p) {
    perror("aligned_alloc failed");
    exit(1);
  }

  // メモリ使用...

  free(p);

  return 0;
}

この例では、aligned_alloc() 関数は CACHE_LINE_SIZE バイト境界に配置されたメモリブロックを確保します。CACHE_LINE_SIZE は、キャッシュラインのサイズを表すマクロです。キャッシュライン境界に配置されたメモリブロックを使用することで、キャッシュアクセス効率を向上させることができます。

例 3: 構造体のメンバーをアライメント境界に配置

#include <stdlib.h>

typedef struct {
  int x;
  double y;
} data_t;

int main() {
  // 構造体のメンバーをアライメント境界に配置
  data_t *data = aligned_alloc(alignof(double), sizeof(data_t));

  if (!data) {
    perror("aligned_alloc failed");
    exit(1);
  }

  // メモリ使用...

  free(data);

  return 0;
}

この例では、aligned_alloc() 関数は alignof(double) バイト境界に配置されたメモリブロックを確保します。これは、構造体 data_t のメンバー y (double 型) のアライメント境界です。構造体のメンバーをアライメント境界に配置することで、データ構造体へのアクセス効率を向上させることができます。

これらの例は、aligned_alloc 関数の基本的な使用方法を示すものです。具体的な使用方法については、アプリケーションの要件に応じて調整する必要があります。

  • alignment が大きすぎると、メモリ使用効率が低下する可能性があります。メモリ使用量が critical な場合は、alignment の値を適切に設定する必要があります。
  • aligned_alloc() 関数は、malloc() 関数よりも低速である可能性があります。パフォーマンスが critical な場合は、malloc() 関数の代わりに aligned_alloc() 関数を使用するかどうかを慎重に検討する必要があります。


malloc と valgrind の使用

valgrind は、メモリ使用をデバッグするためのメモリチェッカーツールです。valgrind を使用して、malloc で割り当てられたメモリブロックの配置境界を確認することができます。

#include <stdlib.h>

int main() {
  // メモリブロックを確保
  void *p = malloc(sizeof(int));

  // valgrind を使用して配置境界を確認
  void *q = VALGRIND_MALLOC_BLOAT(p, 0);
  printf("配置境界: %p\n", q);

  // メモリ使用...

  free(p);

  return 0;
}

この例では、malloc で割り当てられたメモリブロック p の配置境界を VALGRIND_MALLOC_BLOAT マクロを使用して確認しています。

カスタムアロケータの使用

カスタムアロケータは、独自のメモリ管理ロジックを実装するメモリ管理関数です。カスタムアロケータを使用することで、aligned_alloc 関数と同等の機能を提供することができます。

#include <stdlib.h>

void *my_aligned_alloc(size_t alignment, size_t size) {
  // カスタムのメモリ管理ロジックを実装
  void *p = malloc(size + alignment - 1);
  if (!p) {
    return NULL;
  }

  uintptr_t addr = (uintptr_t)p;
  uintptr_t offset = addr % alignment;

  if (offset) {
    p = (void *)(addr + alignment - offset);
  }

  return p;
}

int main() {
  // カスタムアロケータを使用してメモリブロックを確保
  void *p = my_aligned_alloc(32, sizeof(double));

  if (!p) {
    perror("my_aligned_alloc failed");
    exit(1);
  }

  // メモリ使用...

  free(p);

  return 0;
}

この例では、my_aligned_alloc というカスタムアロケータ関数を実装しています。この関数は、malloc で割り当てられたメモリブロックを alignment バイト境界に配置します。

ハードウェア固有の機能の使用

一部のハードウェアプラットフォームでは、特定の境界に配置されたメモリへのアクセスを効率化するハードウェア固有の機能が提供されています。これらの機能を使用することで、aligned_alloc 関数と同等の機能を提供することができます。

例えば、x86 アーキテクチャでは、_mm_malloc インリンシン関数を使用して、SSE 命令で最適化された浮動小数点数を格納するためのメモリブロックを確保することができます。

#include <xmmintrin.h>

int main() {
  // SSE 命令で最適化された浮動小数点数を格納するためのメモリブロックを確保
  double *d = (double *)_mm_malloc(sizeof(double), 32);

  if (!d) {
    perror("_mm_malloc failed");
    exit(1);
  }

  // メモリ使用...

  _mm_free(d);

  return 0;
}

この例では、_mm_malloc インリンシン関数を使用して、32 バイト境界に配置されたメモリブロックを確保しています。

aligned_alloc 関数は、メモリブロックの配置境界を指定してメモリを動的に確保できる便利な関数ですが、いくつかの代替方法があります。

  • ハードウェア固有の機能の使用
  • カスタムアロケータの使用
  • mallocvalgrind の使用