Qt QSettingsでカスタム設定を扱う:ReadFunc徹底解説

2025-05-27

より詳しく説明すると、QSettings クラスは、アプリケーションの設定を永続的に保存および読み込むための便利な機能を提供します。通常、Windows ではレジストリ、macOS では CFPreferences、Unix/Linux ではINIファイルのようなプラットフォーム固有の形式を使用します。しかし、QSettings は、これらの標準フォーマット以外にも、独自のカスタムフォーマットをサポートする機能を持っています。

このカスタムフォーマットをサポートするために、QSettings::registerFormat() という静的関数を使用します。この関数に、カスタムフォーマットを読み込むための関数と書き込むための関数をそれぞれ指定します。この「読み込むための関数」の型が QSettings::ReadFunc です。

QSettings::ReadFunc は、以下のシグネチャを持つ関数へのポインタとして定義されています。

bool myReadFunc(QIODevice &device, QSettings::SettingsMap &map);

各引数の意味は以下の通りです。

  • QSettings::SettingsMap &map: 読み込んだキーと値のペアを格納するためのマップ。QSettings::SettingsMapQMap<QString, QVariant> の型定義です。
  • QIODevice &device: 設定データを読み込むためのデバイス(通常はファイル)。

この myReadFunc (カスタムの読み込み関数)は、device から設定データを読み込み、それをキーと値のペアの形式で map に格納する責任があります。読み込みが成功した場合は true を返し、失敗した場合は false を返します。map は関数が呼び出された時点では空です。



データの読み込み不足または過剰読み込み

エラー: ReadFunc の実装が、設定ファイル内のすべてのデータを正しく読み込まない、あるいは存在しないデータを読み込もうとしてしまう。これにより、一部の設定が失われたり、不正なデータが QSettings::SettingsMap に格納されたりする可能性があります。

トラブルシューティング:

  • エラーチェック: QIODevice::read()QTextStream などの読み込み関数がエラーを返さないか、常にチェックしてください。エラーが発生した場合は、ReadFuncfalse を返し、エラーログを出力するなどしてデバッグを容易にしてください。
  • フォーマットの厳密な解析: カスタムフォーマットの仕様を厳密に解析し、すべてのキーと値のペアを確実に読み込むように実装します。グループや配列構造がある場合は、それらも正しく処理する必要があります。
  • 完全なデータ読み込みの確認: QIODevice から読み込む際に、ファイルの終端(device.atEnd())に達するまで、または特定のフォーマットの終端マーカーに達するまでデータを読み込むようにしてください。

QSettings::SettingsMap への不正なデータ格納

エラー: 読み込んだデータを QVariant に変換する際に型変換エラーが発生したり、キー名が重複したり、無効なキー名(例えば、ヌル文字列やスラッシュを含む)を使用したりすることで、SettingsMap が正しく構築されない。

トラブルシューティング:

  • データ型変換の失敗: QVariant に格納する前に、データの型が適切であることを確認してください。例えば、数値として読み込むべき文字列が実際には数値ではない場合、toInt() などは 0 を返す可能性があります。
  • スラッシュの使用: キー名やグループ名にスラッシュ (/ または \) を使用しないようにしてください。これは QSettings が内部でグループの区切り文字として使用するため、予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。
  • キー名の一貫性: QSettings は、キー名の大文字・小文字を区別するプラットフォームと区別しないプラットフォームがあるため、ポータビリティのために常に同じ大文字・小文字でキーを参照することが推奨されます。カスタムフォーマットでもこの規則に従うべきです。
  • QVariant の適切な使用: 読み込んだデータ型(文字列、整数、ブール値など)に応じて、QVariant の適切なコンストラクタや変換メソッド(例: toInt(), toString(), toBool())を使用してください。

ファイルアクセス権の問題

エラー: QIODevice が開けなかったり、読み込み権限がなかったりして、設定ファイルにアクセスできない。

トラブルシューティング:

  • 権限の確認: アプリケーションが実行されているユーザーアカウントが、設定ファイルを読み込むための適切な権限を持っていることを確認してください。
  • ファイルパスの確認: QSettings オブジェクトが使用するファイルパスが正しいことを確認してください。特に、カスタムフォーマットを登録する際に QSettings のコンストラクタでファイル名を指定している場合、そのパスが存在し、アクセス可能であることを確認します。
  • QIODevice::open() の戻り値の確認: device.open() が成功したかどうかを必ずチェックし、失敗した場合は適切なエラー処理を行ってください。

QSettings::registerFormat() の呼び出しタイミング

エラー: QSettings::registerFormat() が、カスタムフォーマットを使用する QSettings オブジェクトが作成される前に呼び出されていない。

トラブルシューティング:

  • 複数登録の回避: 同じ拡張子に対して複数回 registerFormat() を呼び出すと、予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。一度登録すれば十分です。
  • アプリケーション初期化時: QSettings::registerFormat() は、アプリケーションの起動時(main() 関数内など)で、かつ最初の QSettings オブジェクトが作成される前に呼び出すのが最も安全です。これは静的関数であり、一度登録すればアプリケーション全体で有効になります。

ReadFunc の戻り値

エラー: ReadFunc が、読み込みが成功したにもかかわらず false を返したり、失敗したにもかかわらず true を返したりする。

トラブルシューティング:

  • エラーログの出力: false を返す際には、何が問題だったのかを示す詳細なエラーメッセージをデバッグ出力やログファイルに出力すると、デバッグが非常に楽になります。
  • 成功/失敗の正確な判断: ReadFunc は、設定データの読み込みと SettingsMap への格納が完全に成功した場合にのみ true を返すべきです。途中でエラーが発生したり、一部のデータしか読み込めなかったりした場合は false を返すべきです。

シリアライゼーション/デシリアライゼーションの不一致

エラー: ReadFunc(読み込み)と WriteFunc(書き込み)の間で、データのシリアライゼーション(直列化)とデシリアライゼーション(逆直列化)のロジックに不整合がある。これにより、書き込んだ設定が正しく読み込めない、またはその逆の現象が発生します。

トラブルシューティング:

  • 厳密なフォーマット定義: カスタムフォーマットの仕様を厳密に定義し、それに従って読み書き関数を実装します。
  • バージョン管理: 設定フォーマットのバージョンをファイル内に含めることを検討してください。これにより、将来的にフォーマットが変更された場合でも、古いフォーマットを新しい ReadFunc で読み込めるように(またはその逆)対応することができます。
  • ペアでのテスト: ReadFuncWriteFunc は常にペアでテストし、あるバージョンで書き込んだ設定が、同じバージョンの ReadFunc で正しく読み込めることを確認します。


ここでは、非常にシンプルなカスタムフォーマット(例として、各行が キー=値 の形式になっているテキストファイル)を読み込むための QSettings::ReadFunc の例を挙げます。

この例では、以下のようなフォーマットのテキストファイルを読み込むことを想定します。

settings.txt

username=Alice
theme=dark
fontSize=12
windowGeometry=QRect(10,20,800,600)

このフォーマットを読み込むための ReadFunc と、それを QSettings に登録し、使用するコードを示します。

カスタムの読み込み関数 (myReadFunc) の実装

#include <QIODevice>
#include <QSettings>
#include <QTextStream>
#include <QStringList>
#include <QVariant>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

// カスタム設定フォーマットを読み込む関数
bool myReadFunc(QIODevice &device, QSettings::SettingsMap &map)
{
    qDebug() << "カスタム設定ファイルを読み込み中...";

    // QIODeviceからテキストを読み込むためにQTextStreamを使用
    QTextStream in(&device);
    in.setCodec("UTF-8"); // エンコーディングを設定 (必要に応じて変更)

    // ファイルの終端まで1行ずつ読み込む
    while (!in.atEnd()) {
        QString line = in.readLine().trimmed(); // 行を読み込み、前後の空白を削除
        if (line.isEmpty() || line.startsWith("#")) {
            // 空行またはコメント行 (# で始まる行) はスキップ
            continue;
        }

        // キーと値を '=' で分割
        int equalsIndex = line.indexOf('=');
        if (equalsIndex == -1) {
            // '=' が見つからない場合は不正な行としてスキップ (またはエラー処理)
            qWarning() << "不正な設定行をスキップしました:" << line;
            continue;
        }

        QString key = line.left(equalsIndex).trimmed();
        QString valueString = line.mid(equalsIndex + 1).trimmed();

        // QVariant に値を格納
        // ここでは、文字列として格納していますが、
        // 必要に応じてQVariant::fromValue()やQVariant::toType()を使用して
        // 特定の型に変換することも可能です。
        // 例: if (key == "fontSize") map[key] = valueString.toInt();
        // 例: if (key == "windowGeometry") map[key] = QVariant::fromValue(QRect::fromString(valueString));
        map[key] = valueString;

        qDebug() << "  キー:" << key << ", 値:" << valueString;
    }

    // 読み込みが成功したことを示す
    return true;
}

カスタムの書き込み関数 (myWriteFunc) の実装

ReadFunc と同様に、設定を保存するための WriteFunc も必要です。これは QSettings::registerFormat() に渡す必要があります。

// カスタム設定フォーマットに書き込む関数
bool myWriteFunc(QIODevice &device, const QSettings::SettingsMap &map)
{
    qDebug() << "カスタム設定ファイルを書き込み中...";

    QTextStream out(&device);
    out.setCodec("UTF-8");

    // QSettings::SettingsMap のすべてのキーと値を書き込む
    QSettings::SettingsMap::const_iterator it;
    for (it = map.constBegin(); it != map.constEnd(); ++it) {
        out << it.key() << "=" << it.value().toString() << "\n";
        qDebug() << "  書き込み済み:" << it.key() << "=" << it.value().toString();
    }

    // 書き込みが成功したことを示す
    return true;
}

QSettings へのカスタムフォーマットの登録と使用

main 関数など、アプリケーションの初期化段階でカスタムフォーマットを登録します。

#include <QCoreApplication>
#include <QSettings>
#include <QDebug>
#include <QFile>

// main.cpp

// 前述のmyReadFuncとmyWriteFuncをここに含めるか、
// 別途ヘッダーファイルで宣言し、ここでインクルードする。

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // QSettings にカスタムフォーマットを登録
    // "txt" はファイル拡張子として使用される
    // Qt::CaseSensitive はキーの大文字・小文字を区別するかどうか
    QSettings::Format customFormat = QSettings::registerFormat(
        "txt",       // 関連付けるファイル拡張子
        myReadFunc,  // 読み込み関数へのポインタ
        myWriteFunc, // 書き込み関数へのポインタ
        Qt::CaseSensitive // キーの大文字・小文字を区別するかどうか
    );

    if (customFormat == QSettings::InvalidFormat) {
        qCritical() << "カスタム設定フォーマットの登録に失敗しました!";
        return -1;
    }

    // カスタムフォーマットを使用してQSettingsオブジェクトを作成
    // ファイル名として "app_settings.txt" を指定
    QSettings settings("app_settings.txt", customFormat);

    // 設定値を書き込む
    qDebug() << "\n設定を書き込み中...";
    settings.setValue("username", "John Doe");
    settings.setValue("theme", "light");
    settings.setValue("fontSize", 14);
    settings.setValue("windowGeometry", QRect(50, 50, 1024, 768)); // QRectをQVariantに格納

    // QSettings は通常、設定変更を即座にファイルに書き込まないことがあるため、
    // 明示的に sync() を呼び出して書き込みを強制する
    settings.sync();
    qDebug() << "設定の書き込みが完了しました。";

    // 設定値を読み込む
    qDebug() << "\n設定を読み込み中...";
    QString username = settings.value("username").toString();
    QString theme = settings.value("theme").toString();
    int fontSize = settings.value("fontSize").toInt();
    QRect windowGeometry = settings.value("windowGeometry").toRect(); // QRectとして読み込む

    qDebug() << "ユーザー名:" << username;
    qDebug() << "テーマ:" << theme;
    qDebug() << "フォントサイズ:" << fontSize;
    qDebug() << "ウィンドウジオメトリ:" << windowGeometry;

    // ファイルが存在するか確認
    QFile file("app_settings.txt");
    if (file.exists()) {
        qDebug() << "\n設定ファイル 'app_settings.txt' が正常に作成されました。";
    } else {
        qCritical() << "\n設定ファイル 'app_settings.txt' の作成に失敗しました。";
    }

    // ファイルの内容を表示 (デバッグ目的)
    if (file.open(QFile::ReadOnly | QFile::Text)) {
        qDebug() << "\n--- app_settings.txt の内容 ---";
        QTextStream stream(&file);
        qDebug().noquote() << stream.readAll();
        qDebug() << "---------------------------------";
        file.close();
    } else {
        qWarning() << "app_settings.txt を開けませんでした。";
    }

    // 存在しないキーを読み込む場合
    qDebug() << "\n存在しないキーの読み込み:";
    QString unknownKey = settings.value("nonExistentKey", "defaultValue").toString();
    qDebug() << "非既存キーの値:" << unknownKey;

    return a.exec();
}
  1. myWriteFunc(QIODevice &device, const QSettings::SettingsMap &map):

    • const QSettings::SettingsMap &map: 書き込むべきすべての設定値が含まれるマップです。
    • この関数は map の内容を device に書き込みます。
    • こちらも、成功した場合は true を、失敗した場合は false を返します。
  2. QSettings::registerFormat():

    • この静的関数は、カスタムフォーマットを QSettings システムに登録します。
    • 第1引数 ("txt") は、QSettings のコンストラクタでファイル名にこの拡張子が付いている場合、カスタムフォーマットを使用するように指示します。
    • 第2引数と第3引数は、それぞれ読み込み関数と書き込み関数への関数ポインタです。
    • 第4引数 (Qt::CaseSensitive) は、キー名の大文字・小文字を区別するかどうかを指定します。
  3. QSettings settings("app_settings.txt", customFormat);:

    • QSettings オブジェクトを作成する際に、登録したカスタムフォーマット (customFormat) を指定します。これにより、app_settings.txt というファイルがこのカスタムフォーマットで読み書きされるようになります。


QSettings の標準フォーマット(INI、レジストリなど)を使用する

説明: これは最も一般的で推奨されるアプローチです。QSettings は、プラットフォームネイティブな設定保存メカニズム(Windows のレジストリ、macOS の CFPreferences、Unix/Linux の INI ファイルなど)を抽象化し、簡単に利用できるAPIを提供します。開発者が独自のフォーマットを定義する必要がほとんどありません。

利点:

  • 標準的な場所: OSの標準的な場所に設定が保存されるため、ユーザーやシステム管理者が設定を見つけやすくなります。
  • 堅牢性: Qt がテスト済みの信頼性の高い実装を提供します。
  • シンプルさ: 独自の読み書き関数を実装する必要がなく、setValue()value() を直接使用できます。
  • ポータビリティ: コードを変更することなく、異なるプラットフォームで動作します。

欠点:

  • バイナリデータの保存: 画像データなど、生のバイナリデータを効率的に保存するには不向きな場合があります(QByteArray として保存は可能ですが、ファイル形式によっては不自然になります)。
  • 複雑なデータ構造の制限: 階層的な構造(ネストされたオブジェクトや配列など)を表現するのに、QSettings のグループ機能だけでは限界がある場合があります。特にINIファイル形式では、これはさらに顕著です。
  • フォーマットの制御不能: 設定ファイルの物理的なフォーマットを厳密に制御することはできません。

コード例:

#include <QCoreApplication>
#include <QSettings>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // アプリケーション情報の設定 (QSettingsがどの設定を使うか決定するために必要)
    QCoreApplication::setOrganizationName("MyCompany");
    QCoreApplication::setApplicationName("MyApp");

    // デフォルトのコンストラクタは、プラットフォームのネイティブフォーマットを使用
    QSettings settings;

    // 設定を書き込む
    settings.setValue("user/name", "Alice");
    settings.setValue("ui/theme", "dark");
    settings.setValue("app/lastRunTime", QDateTime::currentDateTime());

    // 設定を読み込む
    QString userName = settings.value("user/name", "Guest").toString();
    QString theme = settings.value("ui/theme", "light").toString();
    QDateTime lastRunTime = settings.value("app/lastRunTime").toDateTime();

    qDebug() << "ユーザー名:" << userName;
    qDebug() << "テーマ:" << theme;
    qDebug() << "最終実行日時:" << lastRunTime;

    return a.exec();
}

独自のシリアライゼーション/デシリアライゼーションを伴うファイルI/O

説明: QSettings を全く使わず、QFileQTextStreamQDataStream、またはサードパーティのライブラリ(例: JSONパーサー、XMLパーサー)を使用して、直接設定ファイルを読み書きする方法です。

利点:

  • サードパーティライブラリの活用: 既存のJSON/XMLライブラリなどを活用し、複雑な解析ロジックを自分で書く手間を省けます。
  • 複雑なデータ構造: JSONやXMLなどの構造化されたフォーマットを使用することで、任意の複雑なデータ構造を簡単に表現できます。
  • 完全な制御: 設定ファイルのフォーマットを完全に自由に設計できます。

欠点:

  • 冗長なコード: 各設定項目に対して個別に読み書きのコードを書く必要があり、コードが冗長になりがちです。
  • ポータビリティの考慮: ファイルパスの決定、エラーハンドリング、ファイルアクセス権限などを、プラットフォームごとに考慮する必要があります。
  • 手動での実装: シリアライゼーションとデシリアライゼーションのロジックをすべて自分で実装する必要があります。

コード例 (JSONファイルの読み書き):

#include <QCoreApplication>
#include <QFile>
#include <QJsonDocument>
#include <QJsonObject>
#include <QDebug>

// 設定をJSONファイルに保存する関数
bool saveSettingsToJson(const QString &filePath, const QJsonObject &settingsObject) {
    QFile file(filePath);
    if (!file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text | QIODevice::Truncate)) {
        qWarning() << "設定ファイルを保存できません:" << filePath;
        return false;
    }

    QJsonDocument doc(settingsObject);
    file.write(doc.toJson(QJsonDocument::Indented)); // 整形されたJSONを書き込む
    file.close();
    qDebug() << "設定を" << filePath << "に保存しました。";
    return true;
}

// JSONファイルから設定を読み込む関数
QJsonObject loadSettingsFromJson(const QString &filePath) {
    QFile file(filePath);
    if (!file.open(QIODevice::ReadOnly | QIODevice::Text)) {
        qWarning() << "設定ファイルを読み込めません:" << filePath;
        return QJsonObject();
    }

    QByteArray data = file.readAll();
    QJsonDocument doc = QJsonDocument::fromJson(data);
    file.close();

    if (doc.isNull() || !doc.isObject()) {
        qWarning() << "不正なJSONフォーマットです:" << filePath;
        return QJsonObject();
    }
    qDebug() << "設定を" << filePath << "から読み込みました。";
    return doc.object();
}

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString settingsFilePath = "app_custom_settings.json";

    // 設定データを作成
    QJsonObject settingsObject;
    settingsObject["username"] = "Bob";
    settingsObject["theme"] = "dark";
    settingsObject["fontSize"] = 16;
    settingsObject["window"] = QJsonObject({
        {"x", 100},
        {"y", 100},
        {"width", 1280},
        {"height", 720}
    });

    // 設定を保存
    saveSettingsToJson(settingsFilePath, settingsObject);

    // 設定を読み込む
    QJsonObject loadedSettings = loadSettingsFromJson(settingsFilePath);

    if (!loadedSettings.isEmpty()) {
        qDebug() << "ユーザー名:" << loadedSettings["username"].toString();
        qDebug() << "テーマ:" << loadedSettings["theme"].toString();
        qDebug() << "フォントサイズ:" << loadedSettings["fontSize"].toInt();

        QJsonObject windowObject = loadedSettings["window"].toObject();
        qDebug() << "ウィンドウ位置: (" << windowObject["x"].toInt() << "," << windowObject["y"].toInt() << ")";
        qDebug() << "ウィンドウサイズ: " << windowObject["width"].toInt() << "x" << windowObject["height"].toInt();
    }

    return a.exec();
}

プロパティシステムとシリアライゼーション

説明: Qt のプロパティシステム (Q_PROPERTY) を利用し、QObject のサブクラスに設定項目をプロパティとして定義します。その後、QDataStreamQJsonDocument などを使って、そのオブジェクト全体をシリアライズ(保存)およびデシリアライズ(読み込み)します。これにより、設定項目が増えても、比較的少ないコードで管理できます。

利点:

  • 反射メカニズム: Qt のメタオブジェクトシステムを利用して、動的にプロパティを列挙・アクセスできます。
  • 型の安全性: プロパティの型が定義されているため、型変換エラーを減らせます。
  • 構造化された設定: 設定項目を論理的なオブジェクトとしてグループ化できます。

欠点:

  • シリアライゼーションロジックは依然として自分で実装する必要があります。
  • QObject を継承する必要があるため、少しオーバーヘッドがあります。

コード例 (Q_PROPERTY と QDataStream):

#include <QCoreApplication>
#include <QObject>
#include <QFile>
#include <QDataStream>
#include <QDebug>
#include <QMetaProperty> // Q_PROPERTYにアクセスするため

// 設定を保持するクラス
class AppSettings : public QObject {
    Q_OBJECT
    Q_PROPERTY(QString username READ username WRITE setUsername NOTIFY usernameChanged)
    Q_PROPERTY(QString theme READ theme WRITE setTheme NOTIFY themeChanged)
    Q_PROPERTY(int fontSize READ fontSize WRITE setFontSize NOTIFY fontSizeChanged)

public:
    explicit AppSettings(QObject *parent = nullptr) : QObject(parent), m_fontSize(0) {}

    QString username() const { return m_username; }
    void setUsername(const QString &username) {
        if (m_username != username) {
            m_username = username;
            emit usernameChanged();
        }
    }

    QString theme() const { return m_theme; }
    void setTheme(const QString &theme) {
        if (m_theme != theme) {
            m_theme = theme;
            emit themeChanged();
        }
    }

    int fontSize() const { return m_fontSize; }
    void setFontSize(int fontSize) {
        if (m_fontSize != fontSize) {
            m_fontSize = fontSize;
            emit fontSizeChanged();
        }
    }

    // 設定をファイルに保存
    bool save(const QString &filePath) {
        QFile file(filePath);
        if (!file.open(QIODevice::WriteOnly)) {
            qWarning() << "設定を保存できません:" << filePath;
            return false;
        }
        QDataStream out(&file);
        // 各プロパティをシリアライズ
        const QMetaObject *meta = metaObject();
        for (int i = 0; i < meta->propertyCount(); ++i) {
            QMetaProperty property = meta->property(i);
            if (property.isStored()) { // isStored は Q_PROPERTY のオプションで、通常 true
                out << property.read(this);
            }
        }
        file.close();
        qDebug() << "設定を" << filePath << "に保存しました。";
        return true;
    }

    // ファイルから設定を読み込み
    bool load(const QString &filePath) {
        QFile file(filePath);
        if (!file.open(QIODevice::ReadOnly)) {
            qWarning() << "設定を読み込めません:" << filePath;
            return false;
        }
        QDataStream in(&file);
        // 各プロパティをデシリアライズ
        const QMetaObject *meta = metaObject();
        for (int i = 0; i < meta->propertyCount(); ++i) {
            QMetaProperty property = meta->property(i);
            if (property.isStored() && property.isWritable()) {
                QVariant value;
                in >> value;
                property.write(this, value);
            }
        }
        file.close();
        qDebug() << "設定を" << filePath << "から読み込みました。";
        return true;
    }

signals:
    void usernameChanged();
    void themeChanged();
    void fontSizeChanged();

private:
    QString m_username;
    QString m_theme;
    int m_fontSize;
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QCoreApplication a(argc, argv);

    AppSettings settings;
    QString settingsFilePath = "app_qproperty_settings.dat";

    // 設定値を設定
    settings.setUsername("Charlie");
    settings.setTheme("blue");
    settings.setFontSize(18);

    // 設定を保存
    settings.save(settingsFilePath);

    // 新しい設定オブジェクトを作成し、読み込む
    AppSettings loadedSettings;
    if (loadedSettings.load(settingsFilePath)) {
        qDebug() << "読み込まれたユーザー名:" << loadedSettings.username();
        qDebug() << "読み込まれたテーマ:" << loadedSettings.theme();
        qDebug() << "読み込まれたフォントサイズ:" << loadedSettings.fontSize();
    }

    return a.exec();
}
#include "main.moc" // mocファイルを含める
  • カスタムフォーマットが必要な場合:
    • QSettings::ReadFunc: 既存の QSettings API を利用しつつ、独自のストレージ形式をサポートしたい場合に適しています。APIの一貫性を保ちたいが、ストレージの柔軟性も欲しい場合に有用です。
    • 独自のファイルI/O: 設定ファイルのフォーマットを完全に制御したい、またはJSON/XMLなどの特定の構造化データ形式を直接扱いたい場合に適しています。特に、設定が複雑で、他のデータとの共有が必要な場合(例:設定ファイルをウェブサービスと共有する場合など)に強力です。
    • プロパティシステムとシリアライゼーション: 設定をよりオブジェクト指向的に管理したい場合に適しています。設定項目が増えても、プロパティを追加するだけで管理がしやすくなります。
  • 最もシンプルで推奨される方法: ほとんどのアプリケーションでは、QSettings のデフォルトのフォーマットを使用するのが最善です。プラットフォームの慣例に従い、メンテナンスが容易です。