Qt GUI開発:中央揃えをマスターする alignWhenCentered の使い方

2025-06-01

より具体的に説明すると:

  1. アンカー (Anchors)
    Qt Quick では、アイテム同士の位置関係を定義するためにアンカーを使用します。例えば、あるアイテムの左端を別のアイテムの右端にアンカーしたり、中央同士をアンカーしたりできます。

  2. 中央へのアンカー
    例えば、アイテム A の anchors.centerIn をアイテム B に設定すると、アイテム A の中心がアイテム B の中心に配置されます。

  3. alignWhenCentered プロパティ
    このような中央揃えが行われている場合に、アイテム A 自身のサイズがアイテム B のサイズよりも小さいと、アイテム A はアイテム B の中央に配置されます。ここで、アイテム A のどの部分を中央に揃えるかを制御するのが alignWhenCentered プロパティです。

    • alignWhenCenteredtrue (デフォルト値) の場合、アイテム A 自身も中央揃えされます。つまり、アイテム A の中心がアイテム B の中心に一致するように配置されます。

    • alignWhenCenteredfalse の場合、アイテム A はそのアンカーポイント(通常はバウンディングボックスの左上隅)を基準に配置されます。中央揃えのアンカーを使用しているにもかかわらず、アイテム A の左上隅がアイテム B の中心に配置されるような挙動になります。これは、多くの場合、意図しないレイアウトになります。

簡単な例

Rectangle {
    id: parentRect
    width: 200
    height: 100
    color: "lightgray"

    Rectangle {
        id: childRect
        width: 50
        height: 50
        color: "lightblue"
        anchors.centerIn: parentRect
        // anchors.alignWhenCentered: false // この行をコメントアウトするとデフォルトの true になります
    }
}

Rectangle {
    id: parentRect2
    width: 200
    height: 100
    color: "lightgray"

    Rectangle {
        id: childRect2
        width: 50
        height: 50
        color: "lightcoral"
        anchors.centerIn: parentRect2
        anchors.alignWhenCentered: false
    }
}

この例では、2つの Rectangle があります。

  • 2番目の childRect2anchors.alignWhenCenteredfalse なので、親 parentRect2 の中央にその左上隅が配置されます。

  • 最初の childRectanchors.alignWhenCentered がデフォルトの true なので、親 parentRect の中央にその中心が揃えられて配置されます。



一般的なエラーとトラブルシューティング

    • 原因
      anchors.alignWhenCenteredfalse に設定されている場合に、中央揃えのアンカー (anchors.centerIn, anchors.horizontalCenter, anchors.verticalCenter) を使用すると、アイテムの左上隅(またはアンカーポイント)が基準に中央に配置され、アイテム全体が中央に揃ったように見えません。
    • トラブルシューティング
      • anchors.alignWhenCentered プロパティが true (デフォルト) になっているか確認してください。中央揃えを意図している場合は、明示的に true に設定するか、このプロパティを省略します。
      • 他のアンカープロパティ (anchors.left, anchors.right, anchors.top, anchors.bottom) が同時に設定されていないか確認してください。これらのアンカーが設定されていると、中央揃えのアンカーの挙動に影響を与える可能性があります。
  1. サイズ変更時のレイアウト崩れ

    • 原因
      親アイテムのサイズが変更された際に、alignWhenCenteredfalse のアイテムは、その左上隅を基準に中央に固定されたままになるため、子アイテムが親アイテムの中央からずれて見えることがあります。
    • トラブルシューティング
      • 通常、中央揃えを維持したい場合は anchors.alignWhenCenteredtrue に保つべきです。
      • もし false に設定する必要がある場合は、親アイテムのサイズ変更に合わせて子アイテムの位置を再調整するロジックを別途実装する必要があるかもしれません(例えば、Component.onCompletedConnections を使用して親のサイズ変更シグナルを監視するなど)。
  2. アンカーの競合

    • 原因
      anchors.centerIn と他の水平方向または垂直方向のアンカー(例: anchors.leftanchors.right)を同時に設定すると、アンカー同士が競合し、予期しないレイアウトになることがあります。
    • トラブルシューティング
      • 中央揃えを行う場合は、anchors.centerInanchors.horizontalCenter、または anchors.verticalCenter のいずれかを使用し、他の位置決めアンカーとの組み合わせは避けるべきです。
      • もし、中央揃えと同時に特定のマージンを設定したい場合は、anchors.leftMarginanchors.rightMarginanchors.topMarginanchors.bottomMargin などのマージンプロパティを使用します。
  3. 親アイテムのサイズが不定

    • 原因
      アンカー先の親アイテムのサイズが動的に変わる場合や、初期サイズが正しく設定されていない場合、alignWhenCentered の挙動が期待通りにならないことがあります。
    • トラブルシューティング
      • アンカー先の親アイテムのサイズが正しく設定されているか確認してください。
      • 親アイテムのサイズが動的に変わる場合は、子アイテムのレイアウトがどのように影響を受けるかを考慮し、必要に応じてバインディングやロジックを追加して調整します。
  4. カスタムアンカーポイントとの混同

    • 原因
      anchors.horizontalCenteranchors.verticalCenter はアイテムのデフォルトの中央を基準にしますが、transformOrigin プロパティなどでカスタムのアンカーポイントを設定している場合、その挙動が直感的でなくなることがあります。
    • トラブルシューティング
      • transformOrigin を使用している場合は、アンカーの動作がそのカスタムアンカーポイントに影響を受けることを理解しておく必要があります。中央揃えが期待通りに動作しない場合は、transformOrigin の設定を見直してください。

トラブルシューティングの一般的なヒント

  • ドキュメントの参照
    Qt の公式ドキュメントは、各プロパティの詳細な挙動や使用例について詳しく解説しています。困った場合は、関連するドキュメントを参照することをお勧めします。
  • シンプルなテストケースの作成
    問題が複雑なレイアウトで発生している場合は、問題を再現する最小限の QML コードを作成してテストすることで、原因の特定が容易になります。
  • QML Inspector の活用
    Qt Creator に付属している QML Inspector を使用すると、実行中のアプリケーションのアイテムのプロパティ値やアンカーの状態をリアルタイムに確認できます。意図しないレイアウトになっているアイテムのアンカー関連のプロパティ (anchors.left, anchors.right, anchors.top, anchors.bottom, anchors.centerIn, anchors.horizontalCenter, anchors.verticalCenter, anchors.alignWhenCentered など) を確認することで、問題の原因を特定しやすくなります。


例1: alignWhenCentered: true (デフォルト)

この例では、親の Rectangle の中央に子の Rectangle を配置します。alignWhenCentered はデフォルトで true なので、子の Rectangle 自身も中央揃えになります。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 400
    height: 200
    visible: true
    title: "alignWhenCentered: true (デフォルト)"

    Rectangle {
        id: parentRect
        width: 200
        height: 100
        color: "lightgray"
        anchors.centerIn: parent

        Rectangle {
            id: childRect
            width: 50
            height: 50
            color: "lightblue"
            anchors.centerIn: parentRect
            // anchors.alignWhenCentered は省略 (デフォルトで true)
            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "alignWhenCentered: true"
            }
        }
    }
}

このコードを実行すると、青い childRect は灰色の parentRect の中央に、その中心が一致するように配置されます。

例2: alignWhenCentered: false

この例では、alignWhenCenteredfalse に設定します。中央揃えのアンカーを使用していますが、子の Rectangle の左上隅が親の Rectangle の中央に配置される点に注目してください。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 400
    height: 200
    visible: true
    title: "alignWhenCentered: false"

    Rectangle {
        id: parentRect
        width: 200
        height: 100
        color: "lightgray"
        anchors.centerIn: parent

        Rectangle {
            id: childRect
            width: 50
            height: 50
            color: "lightcoral"
            anchors.centerIn: parentRect
            anchors.alignWhenCentered: false
            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "alignWhenCentered: false"
            }
        }
    }
}

このコードを実行すると、赤い childRect の左上隅が灰色の parentRect の中央に配置され、全体としては中央揃えになっていないように見えます。

例3: サイズが異なる子アイテム

親アイテムの中央に複数の子アイテムを配置し、それぞれの alignWhenCentered の設定を変えてみます。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 400
    height: 200
    visible: true
    title: "異なるサイズのアイテムと alignWhenCentered"

    Rectangle {
        id: parentRect
        width: 300
        height: 150
        color: "lightgray"
        anchors.centerIn: parent

        Rectangle {
            width: 80
            height: 30
            color: "lightblue"
            anchors.horizontalCenter: parentRect.horizontalCenter
            anchors.verticalCenter: parentRect.verticalCenter
            anchors.verticalCenterOffset: -20 // 少し上にずらす
            // alignWhenCentered はデフォルト (true)
            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "alignWhenCentered: true (上)"
            }
        }

        Rectangle {
            width: 50
            height: 50
            color: "lightcoral"
            anchors.horizontalCenter: parentRect.horizontalCenter
            anchors.verticalCenter: parentRect.verticalCenter
            anchors.verticalCenterOffset: 20 // 少し下にずらす
            anchors.alignWhenCentered: false
            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "alignWhenCentered: false (下)"
            }
        }
    }
}

この例では、2つの子 Rectangle が親の中央に垂直方向に少しオフセットして配置されています。上の青い RectanglealignWhenCenteredtrue (デフォルト) なので、その中心が親の水平中央線と少し上の位置に揃っています。下の赤い RectanglealignWhenCenteredfalse なので、その左上隅が親の水平中央線と少し下の位置に揃っています。

例4: 動的なサイズ変更

親アイテムのサイズが変更されたときに、alignWhenCentered の挙動がどのように影響するかを見てみましょう。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15

Window {
    width: 400
    height: 200
    visible: true
    title: "動的なサイズ変更と alignWhenCentered"

    Rectangle {
        id: parentRect
        width: 200
        height: 100
        color: "lightgray"
        anchors.centerIn: parent

        MouseArea {
            anchors.fill: parentRect
            onClicked: {
                parentRect.width += 20
                parentRect.height += 10
            }
        }

        Rectangle {
            id: childRectTrue
            width: 50
            height: 50
            color: "lightblue"
            anchors.centerIn: parentRect
            // alignWhenCentered: true (デフォルト)
            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "align: true"
            }
        }

        Rectangle {
            id: childRectFalse
            width: 50
            height: 50
            color: "lightcoral"
            anchors.centerIn: parentRect
            anchors.alignWhenCentered: false
            x: parentRect.x + (parentRect.width - width) / 2 // 手動で中央揃えに近い配置
            y: parentRect.y + (parentRect.height - height) / 2 // 手動で中央揃えに近い配置
            Text {
                anchors.centerIn: parent
                text: "align: false"
            }
        }
    }
}

この例では、灰色の親 Rectangle をクリックするとサイズが大きくなります。青い childRectTruealignWhenCentered: true なので、親のサイズが変わっても常に中央にその中心が位置します。赤い childRectFalsealignWhenCentered: false なので、初期配置は手動で中央に近い位置にしていますが、親のサイズが変わると左上隅を基準に中央に配置されるため、見た目上は中央からずれていくように見えます。



明示的な位置計算

anchors.centerIn などの便利なアンカープロパティを使用せず、アイテムの x および y プロパティを明示的に計算して中央に配置する方法です。

Rectangle {
    id: parentRect
    width: 200
    height: 100
    color: "lightgray"

    Rectangle {
        id: childRect
        width: 50
        height: 50
        color: "lightgreen"
        x: parentRect.x + (parentRect.width - width) / 2
        y: parentRect.y + (parentRect.height - height) / 2
    }
}

この方法では、子の Rectanglex 座標を親の x 座標に、親の幅から子の幅を引いた値を 2 で割ったものを加算することで、水平方向の中央に配置しています。同様に、y 座標も垂直方向の中央に配置するように計算しています。

利点

  • より複雑な配置ロジックを実装する柔軟性があります。
  • alignWhenCentered の挙動に依存しないため、常にアイテム自身の中央を基準に配置できます。

欠点

  • 親アイテムの位置やサイズが変更された場合、子アイテムの位置を追従させるためにバインディング (bind) を使用する必要があります。
  • コードが少し冗長になる可能性があります。

バインディングを使用した例

Rectangle {
    id: parentRect
    width: 200
    height: 100
    color: "lightgray"

    Rectangle {
        id: childRect
        width: 50
        height: 50
        color: "lightgreen"
        x: parentRect.x + (parentRect.width - width) / 2
        y: parentRect.y + (parentRect.height - height) / 2
        // 親のサイズ変更時に追従
        Binding on x { value: parentRect.x + (parentRect.width - childRect.width) / 2 }
        Binding on y { value: parentRect.y + (parentRect.height - childRect.height) / 2 }
    }
}

Layout コンポーネントの使用

Qt Quick Layouts モジュールには、アイテムを自動的に配置するための様々なレイアウトコンポーネントが用意されています。RowLayout, ColumnLayout, GridLayout などを使用することで、中央揃えを含む様々なレイアウトを簡単に実現できます。

import QtQuick 2.15
import QtQuick.Window 2.15
import QtQuick.Layouts 1.5

Window {
    width: 200
    height: 100
    visible: true
    title: "Layout を使用した中央揃え"

    Rectangle {
        color: "lightgray"
        anchors.fill: parent

        RowLayout {
            anchors.centerIn: parent
            Rectangle {
                width: 50
                height: 50
                color: "orange"
            }
            Rectangle {
                width: 50
                height: 50
                color: "yellow"
            }
        }
    }
}

この例では、RowLayout を使用して2つのオレンジと黄色の Rectangle を水平方向に並べ、RowLayout 自体を親の Rectangle の中央にアンカーしています。Layout コンポーネントは、含まれるアイテムのサイズや配置を自動的に管理してくれるため、個々のアイテムの位置を明示的に計算する必要がありません。

利点

  • 中央揃えだけでなく、様々な配置方法をサポートしています。
  • アイテムの追加や削除、サイズ変更に対する柔軟性が高いです。
  • 複雑なレイアウトを簡潔に記述できます。

欠点

  • 完全にカスタムなレイアウトを実現するには、Layout コンポーネントの制約を受ける場合があります。
  • 基本的なアンカーベースのレイアウトよりも少しオーバーヘッドがある可能性があります。

transformOrigin と scale の組み合わせ (特殊なケース)

これは中央揃えの直接的な代替方法ではありませんが、アイテムの変形(スケールなど)を行う際に、中央を基準に拡大縮小するために transformOrigin を使用することがあります。anchors.centerIn と組み合わせることで、アイテムの中心を基準とした配置と変形を同時に行うことができます。

Rectangle {
    id: parentRect
    width: 200
    height: 100
    color: "lightgray"

    Rectangle {
        id: childRect
        width: 50
        height: 50
        color: "purple"
        anchors.centerIn: parentRect
        transformOrigin: Item.Center // 変形の中心をアイテムの中央に設定
        scale: 1.5
    }
}

この例では、紫色の Rectangleanchors.centerIn によって親の中央に配置され、transformOrigin: Item.Center によって拡大縮小の中心が自身の中央になります。

利点

  • 変形を伴うアニメーションやインタラクションで、中央を基準とした操作が容易になります。

欠点

  • 直接的な中央揃えの代替方法としては限定的です。

Item.anchors.alignWhenCentered を使用せずに中央揃えを実現するには、主に以下の方法があります。

  • transformOrigin の利用
    変形を伴う場合に、中央を基準とした操作に役立ちます。
  • Layout コンポーネント
    RowLayout, ColumnLayout, GridLayout などのレイアウトコンポーネントを利用します。
  • 明示的な位置計算
    x および y プロパティを計算し、必要に応じてバインディングを使用します。