QMap::constKeyValueBegin()の代替手段 - Qtイテレーションの選び方

2025-05-27

`QMap::const_key_value_iterator QMap::constKeyValueBegin()` とは

この関数は、Qt のコンテナクラスである QMap のメンバ関数です。QMap はキーと値のペアを格納し、キーに基づいて値を高速に検索できるデータ構造です。

constKeyValueBegin(): この関数は、QMap の最初の要素を指す const_key_value_iterator を返します。
const_key_value_iterator: これは QMap の内部で定義されている型で、QMap 内の要素（キーと値のペア）を巡回するための「定数イテレータ」です。定数イテレータであるため、参照する要素の値を変更することはできません。
QMap<Key, T>: Key 型のキーと T 型の値を格納する QMap を表します。

QMap::constKeyValueBegin() の主な役割は、QMap に格納されているすべてのキーと値のペアを順次処理（イテレーション）するための開始点を提供することです。

従来の QMap::constBegin() や QMap::begin() といったイテレータは、*iterator で値（T）を直接取得し、iterator.key() でキーを取得する形でした。それに対し、const_key_value_iterator は operator*() をオーバーロードしており、キーと値のペア（std::pair<const Key, T> または QPair<const Key, T>) を直接返します。これにより、C++11以降で導入された範囲ベースforループ (range-based for loop) や C++17の構造化束縛 (structured bindings) と組み合わせて、より簡潔でイディオマティックな方法で QMap の要素をイテレーションできるようになります。

使用例 (Qt 5.10 以降)

#include <QMap>
#include <QDebug>

int main() {
    QMap<QString, int> map;
    map["one"] = 1;
    map["two"] = 2;
    map["three"] = 3;

    // constKeyValueBegin() と constKeyValueEnd() を使用したイテレーション
    // Qt 5.10 から 6.3 の推奨される方法
    for (auto it = map.constKeyValueBegin(); it != map.constKeyValueEnd(); ++it) {
        qDebug() << "Key:" << it->first << ", Value:" << it->second;
    }

    qDebug() << "---";

    // Qt 6.4 以降で推奨される asKeyValueRange() を使用した範囲ベースforループ（内部で constKeyValueBegin() を利用）
    // より現代的なC++の記述方法
    for (auto [key, value] : map.asKeyValueRange()) {
        qDebug() << "Key:" << key << ", Value:" << value;
    }

    return 0;
}

この例では、constKeyValueBegin() が返すイテレータを使って QMap のすべての要素を巡回し、各要素のキーと値を出力しています。const_key_value_iterator は定数イテレータなので、ループ内で it->second = 4; のように値を変更することはできません。

`QMap::constKeyValueBegin()` とは何かのおさらい

QMap::constKeyValueBegin() は、QMap の要素（キーと値のペア）を読み取り専用でイテレーションするための定数イテレータを返します。Qt 5.10で導入され、特にC++11以降の範囲ベースforループやC++17の構造化束縛と組み合わせることで、より簡潔でモダンなコードを記述できます。

コンパイルエラー: 'const class QMap<Key, T>' has no member named 'constKeyValueBegin'

原因
このエラーは、主に以下のいずれかの理由で発生します。

ヘッダーのインクルード忘れ
QMap を使用するファイルで <QMap> ヘッダーをインクルードしていない場合。
Qtのバージョンが古い
constKeyValueBegin() および constKeyValueEnd() は Qt 5.10 で導入されました。それ以前のQtバージョンを使用している場合、これらの関数は存在しません。

トラブルシューティング

ヘッダーのインクルードを確認する
コードの先頭に #include <QMap> があることを確認してください。
Qtのバージョンを確認する
使用しているQtのバージョンが 5.10 以上であることを確認してください。もし古いバージョンを使用している場合は、Qtをアップグレードするか、QMap::constBegin() / QMap::constEnd() を使用してください。
- Qt 5.9 以前の場合
```
QMap<QString, int> map;
// ...
for (auto it = map.constBegin(); it != map.constEnd(); ++it) {
    qDebug() << "Key:" << it.key() << ", Value:" << it.value();
}
```

イテレーション中にQMapを誤って変更しようとする (コンパイルエラーまたは実行時エラー)

原因
constKeyValueBegin() が返す const_key_value_iterator は、参照する要素の値を変更することを許可しません。もしループ内で要素の値を変更しようとすると、コンパイルエラーになるか、未定義の動作を引き起こす可能性があります。

例 (誤ったコード)

QMap<QString, int> map;
map["one"] = 1;

for (auto it = map.constKeyValueBegin(); it != map.constKeyValueEnd(); ++it) {
    // it->second = 10; // コンパイルエラー: assignment of read-only member 'std::pair<const QString, int>::second'
}

トラブルシューティング

constなQMapオブジェクトをイテレーションする場合
constなQMapオブジェクトに対しては、constKeyValueBegin() しか呼び出せません。この場合、そのQMapの内容を変更することはできません。これはC++のconst安全性に基づいています。

値を変更したい場合

QMap::keyValueBegin() (非constバージョン) を使用します。これにより、返されるイテレータは要素の値を変更できます。
もしくは、キーを使って再度 QMap から要素を取得し、その値を変更します。

QMap<QString, int> map;
map["one"] = 1;
map["two"] = 2;

// 値を変更したい場合
for (auto it = map.keyValueBegin(); it != map.keyValueEnd(); ++it) {
    if (it->first == "one") {
        it->second = 10; // OK
    }
}
// または、キーを使って変更
for (auto [key, value] : map.asKeyValueRange()) { // Qt 6.4以降
    if (key == "two") {
        map[key] = 20; // OK
    }
}

構造化束縛 (auto [key, value]) での注意点 (Qt 5.x)

原因
Qt 5.x系列の QMap::const_key_value_iterator は operator*() が QPair<const Key, T> を返すため、C++17の構造化束縛 auto [key, value] を直接使用すると、一時オブジェクトの寿命に関する問題で未定義動作やクラッシュが発生する可能性があります。これは QMap が std::pair ではなく QPair を返すためです。

トラブルシューティング

Qt 6.4 以降にアップグレードする
Qt 6.4以降では、QMap::asKeyValueRange() という関数が導入され、これがQMapのイテレーションをよりC++17の構造化束縛と互換性のある形で行えるようにします。
```
// Qt 6.4 以降の推奨される方法
QMap<QString, int> map;
map["apple"] = 1;
map["banana"] = 2;
for (auto [key, value] : map.asKeyValueRange()) {
    qDebug() << "Key:" << key << ", Value:" << value;
}
```

イテレーション中にマップの構造を変更する

原因
QMap をイテレーションしている最中に、その QMap に対して要素の追加、削除、クリアなどの構造変更を行うと、イテレータが無効になり、未定義動作やクラッシュを引き起こす可能性があります。これはSTLコンテナの一般的なルールです。

イテレータを適切に更新する (要素の削除時)
要素を削除する場合、QMap::erase() は次の有効なイテレータを返します。

QMap<QString, int> map = {{"a", 1}, {"b", 2}, {"c", 3}, {"d", 4}};
auto it = map.keyValueBegin(); // const ではないイテレータを使用

while (it != map.keyValueEnd()) {
    if (it->second % 2 == 0) {
        it = map.erase(it); // 削除し、次の有効なイテレータを取得
    } else {
        ++it; // 次の要素へ進む
    }
}

この場合、constKeyValueBegin() は使用できません。keyValueBegin() を使用する必要があります。

変更が必要な要素をマークし、イテレーション後に処理する

QMap<QString, int> map = {{"a", 1}, {"b", 2}, {"c", 3}};
QList<QString> keysToRemove;

for (auto it = map.constKeyValueBegin(); it != map.constKeyValueEnd(); ++it) {
    if (it->second % 2 == 0) { // 偶数の値を削除したい
        keysToRemove.append(it->first);
    }
}

for (const QString& key : keysToRemove) {
    map.remove(key);
}

ドキュメントの参照
Qtの公式ドキュメントは非常に詳細で有用です。QMap やイテレータに関する最新の情報や推奨される使用方法を確認できます。
const 正しさの理解
C++における const の意味を理解することは、イテレータやコンテナを安全に扱う上で非常に重要です。const_key_value_iterator は、コンテナの内容を変更しないことを保証します。
デバッグ出力の活用
qDebug() を使ってキーや値、イテレータの状態を途中で出力することで、問題の特定に役立ちます。

ここでは、いくつかの具体的なプログラミング例とその解説を通じて、QMap::constKeyValueBegin() の使い方を深く理解していきます。

例1: 基本的なイテレーション (Qt 5.10 以降の標準的な方法)

この例は、QMap::constKeyValueBegin() と QMap::constKeyValueEnd() を使用して、QMap のすべての要素を順に処理する最も基本的な方法を示しています。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // QMap を作成し、キーと値のペアを追加
    QMap<QString, int> ages;
    ages["Alice"] = 30;
    ages["Bob"] = 25;
    ages["Charlie"] = 35;
    ages["David"] = 28;

    qDebug() << "--- QMap の要素をイテレーション (constKeyValueBegin/End) ---";

    // constKeyValueBegin() と constKeyValueEnd() を使用したイテレーション
    // Qt 5.10 から 6.3 までの一般的な推奨方法
    for (auto it = ages.constKeyValueBegin(); it != ages.constKeyValueEnd(); ++it) {
        // it->first でキーにアクセス
        // it->second で値にアクセス
        qDebug() << "名前:" << it->first << ", 年齢:" << it->second;
    }

    // 注意: const_key_value_iterator は読み取り専用なので、値の変更はできません。
    // 例: it->second = 31; // これはコンパイルエラーになります。

    return a.exec();
}

解説

it->second: 現在イテレータが指すペアの値にアクセスします。
it->first: 現在イテレータが指すペアのキーにアクセスします。
for (auto it = ages.constKeyValueBegin(); it != ages.constKeyValueEnd(); ++it):
- ages.constKeyValueBegin(): QMap の最初のキーと値のペアを指す定数イテレータを返します。
- ages.constKeyValueEnd(): QMap の最後の要素の「次」を指す定数イテレータを返します。ループの終了条件として使われます。
- ++it: イテレータを次の要素に進めます。
QMap<QString, int> ages;: QString をキー、int を値とする QMap を宣言しています。

この方法は、Qt 5.10 から Qt 6.3 までの間、QMap をイテレーションする際に広く使われてきました。

例2: 特定の条件を満たす要素の検索

constKeyValueBegin() を使用して、QMap 内から特定の条件に合致する要素を探す例です。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QMap<QString, double> products;
    products["Laptop"] = 1200.50;
    products["Mouse"] = 25.99;
    products["Keyboard"] = 75.00;
    products["Monitor"] = 300.75;
    products["Webcam"] = 50.00;

    qDebug() << "--- 価格が $100 を超える製品 ---";

    for (auto it = products.constKeyValueBegin(); it != products.constKeyValueEnd(); ++it) {
        if (it->second > 100.00) { // 価格が $100 を超えるかチェック
            qDebug() << "製品名:" << it->first << ", 価格:$" << QString::number(it->second, 'f', 2);
        }
    }

    qDebug() << "--- 特定の製品を見つける ---";

    QString targetProduct = "Keyboard";
    bool found = false;
    for (auto it = products.constKeyValueBegin(); it != products.constKeyValueEnd(); ++it) {
        if (it->first == targetProduct) {
            qDebug() << targetProduct << "の価格: $" << QString::number(it->second, 'f', 2);
            found = true;
            break; // 見つかったのでループを終了
        }
    }
    if (!found) {
        qDebug() << targetProduct << "は見つかりませんでした。";
    }

    return a.exec();
}

解説

2番目のループでは、it->first を使ってキーを比較し、特定の製品が見つかったら break でループを抜けています。
最初のループでは、it->second を使って価格を比較し、条件に合う製品のみを出力しています。

Qt 6.4 以降では、QMap::asKeyValueRange() というヘルパー関数が導入され、constKeyValueBegin() / constKeyValueEnd() を内部的に利用しながら、よりC++17の構造化束縛と相性の良いイテレーション方法を提供します。これは最も推奨される現代的なアプローチです。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QMap<int, QString> errorCodes;
    errorCodes[200] = "OK";
    errorCodes[404] = "Not Found";
    errorCodes[500] = "Internal Server Error";
    errorCodes[403] = "Forbidden";

    qDebug() << "--- エラーコードとメッセージ (asKeyValueRange と構造化束縛) ---";

    // Qt 6.4 以降で推奨される方法
    // 構造化束縛 `auto [code, message]` を使用
    for (auto [code, message] : errorCodes.asKeyValueRange()) {
        qDebug() << "コード:" << code << ", メッセージ:" << message;
    }

    // 注意: asKeyValueRange() も const_key_value_iterator を返すため、
    // ループ内で値を変更することはできません。
    // 例: message = "新しいメッセージ"; // コンパイルエラー

    return a.exec();
}

解説

for (auto [code, message] : errorCodes.asKeyValueRange()):
- errorCodes.asKeyValueRange(): QMap の要素をイテレーションするための「レンジ」オブジェクトを返します。このレンジは、内部的に constKeyValueBegin() と constKeyValueEnd() を使用しています。
- auto [code, message]: C++17 の構造化束縛です。イテレータが返すキーと値のペアを、それぞれ code と message という名前の変数に直接「束縛」します。これにより、it->first や it->second のようにアクセスする必要がなくなり、コードが非常に読みやすくなります。

この方法は、const_key_value_iterator のメリットを最大限に活かしつつ、C++の最新の機能と組み合わせて最も簡潔で効率的なイテレーションを実現します。もし Qt 6.4 以降を使用している場合は、この asKeyValueRange() の使用が強く推奨されます。

QMap::constBegin() と QMap::constEnd() を使用する方法 (伝統的かつ汎用的な方法)

これは constKeyValueBegin() が導入される以前から存在する、QMap をイテレーションする最も伝統的な方法です。const_iterator を使用するため、要素の読み取り専用アクセスが可能です。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QMap<QString, int> studentScores;
    studentScores["Alice"] = 95;
    studentScores["Bob"] = 88;
    studentScores["Charlie"] = 72;

    qDebug() << "--- constBegin/constEnd を使用したイテレーション ---";

    // constBegin() と constEnd() を使用
    for (QMap<QString, int>::const_iterator it = studentScores.constBegin();
         it != studentScores.constEnd();
         ++it)
    {
        // it.key() でキーにアクセス
        // it.value() で値にアクセス
        qDebug() << "生徒名:" << it.key() << ", スコア:" << it.value();
    }

    // 注意: it.value() で返される値はコピーされるか、非const参照になる場合があります。
    // QMap::value() のドキュメントを確認してください。
    // しかし、it.key() と it.value() はconstなので、このイテレータを通してマップ自体を変更することはできません。

    return a.exec();
}

利点

キーと値を明示的に key() と value() で取得するため、理解しやすい。
ほぼ全てのQtバージョンで利用可能。

欠点

constKeyValueBegin() と比較して、わずかに冗長な記述になることがある。
it->first / it->second スタイルのアクセスはできない。

QMap::keys() と QMap::values() を使用する方法 (キーまたは値のみを処理する場合)

もし QMap のキーだけ、または値だけを処理したい場合は、keys() や values() を使って QList を取得し、それをイテレーションすることができます。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>
#include <QList> // QList をインクルード

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QMap<int, QString> statusMessages;
    statusMessages[200] = "OK";
    statusMessages[400] = "Bad Request";
    statusMessages[404] = "Not Found";
    statusMessages[500] = "Internal Server Error";

    qDebug() << "--- キーのみをイテレーション ---";
    QList<int> codes = statusMessages.keys();
    for (int code : codes) { // 範囲ベースforループを使用
        qDebug() << "ステータスコード:" << code;
    }

    qDebug() << "--- 値のみをイテレーション ---";
    QList<QString> messages = statusMessages.values();
    for (const QString& msg : messages) { // 範囲ベースforループを使用
        qDebug() << "メッセージ:" << msg;
    }

    // 両方を結合してイテレーションすることはできないため、通常は QMap 自体をイテレーションします。
    // しかし、特定のキーの値を取得する場合は、QMap::value() を使用できます。
    qDebug() << "--- キーから値を取得 ---";
    for (int code : codes) {
        qDebug() << "コード:" << code << ", メッセージ:" << statusMessages.value(code);
    }

    return a.exec();
}

利点

範囲ベースforループと非常に相性が良い。
キーや値のリストを個別に扱う場合にコードが簡潔になる。

欠点

QList を作成するため、追加のメモリと処理時間が必要になる。
キーと値を同時に処理したい場合には不向き（キーから再度値を検索する必要があるため、パフォーマンスが低下する可能性がある）。

QMap::begin() と QMap::end() を使用する方法 (要素の変更も考慮する場合)

QMap::constKeyValueBegin() が読み取り専用のイテレータであるのに対し、QMap::begin() と QMap::end() は非constイテレータを返します。これにより、イテレーション中に QMap の要素の値を変更することが可能になります。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QMap<QString, double> itemPrices;
    itemPrices["Apple"] = 1.00;
    itemPrices["Banana"] = 0.50;
    itemPrices["Orange"] = 1.20;

    qDebug() << "--- 値を変更しながらイテレーション (begin/end) ---";

    // begin() と end() を使用
    // 値を2倍にする例
    for (QMap<QString, double>::iterator it = itemPrices.begin();
         it != itemPrices.end();
         ++it)
    {
        qDebug() << "変更前:" << it.key() << "=" << it.value();
        it.value() *= 2.0; // 値を2倍にする（非const参照を返す）
        qDebug() << "変更後:" << it.key() << "=" << it.value();
    }

    qDebug() << "--- 最終的な価格 ---";
    for (auto it = itemPrices.constBegin(); it != itemPrices.constEnd(); ++it) {
        qDebug() << it.key() << "=" << it.value();
    }

    return a.exec();
}

利点

QMap の要素（値）をイテレーション中に変更できる。

欠点

キーと値のペアを直接 it->first / it->second の形式でアクセスすることはできない（これは const_key_value_iterator の特徴）。
it.value() は const ではないので注意が必要。

QMap::keyValueBegin() と QMap::keyValueEnd() を使用する方法 (Qt 5.10 以降で値を変更する場合)

これは constKeyValueBegin() の非const版です。Qt 5.10 以降で導入され、it->first と it->second の形式でアクセスしながら、second (値) を変更したい場合に非常に便利です。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc);

    QMap<QString, int> counts;
    counts["A"] = 10;
    counts["B"] = 20;
    counts["C"] = 30;

    qDebug() << "--- keyValueBegin/End を使用して値を更新 ---";

    // keyValueBegin() と keyValueEnd() を使用
    for (auto it = counts.keyValueBegin(); it != counts.keyValueEnd(); ++it) {
        qDebug() << "更新前: Key:" << it->first << ", Value:" << it->second;
        if (it->first == "B") {
            it->second = 200; // 値を変更可能
        }
    }

    qDebug() << "--- 更新後の QMap ---";
    for (auto [key, value] : counts.asKeyValueRange()) { // Qt 6.4以降推奨
        qDebug() << "Key:" << key << ", Value:" << value;
    }

    return a.exec();
}

利点

値を直接変更できる。
it->first / it->second の形式でキーと値にアクセスできる。

欠点

Qt 5.10 以降でしか利用できない。

これは constKeyValueBegin() の最も現代的な代替であり、かつ推奨される方法です。内部的には constKeyValueBegin() と constKeyValueEnd() を利用しますが、C++17の構造化束縛と組み合わせることで、最も簡潔で安全なイテレーションコードを書くことができます。

#include <QCoreApplication>
#include <QMap>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QMap<QString, QString> settings;
    settings["theme"] = "dark";
    settings["language"] = "en_US";
    settings["fontsize"] = "12pt";

    qDebug() << "--- asKeyValueRange と構造化束縛でイテレーション (Qt 6.4以降) ---";

    for (auto [key, value] : settings.asKeyValueRange()) {
        qDebug() << "設定:" << key << "=" << value;
    }

    // 注意: asKeyValueRange() は読み取り専用のレンジを返すため、
    // ループ内で `value = "light";` のように値を変更することはできません。
    // 値を変更したい場合は、QMap::asKeyValueRange() を使用せず、
    // QMap::keyValueBegin()/End() を明示的に使うか、キーでアクセスし直す必要があります。

    return a.exec();
}

利点

内部的に constKeyValueBegin() を使用するため、パフォーマンスは同等。
C++の最新機能 (std::pair のような構造化束縛) との相性が良い。
最も簡潔で読みやすいコード。

欠点

読み取り専用アクセスのみ。
Qt 6.4 以降でのみ利用可能。

どの代替方法を選択するかは、使用しているQtのバージョン、コードの読みやすさ、そしてイテレーション中に要素を変更する必要があるかどうかによって異なります。

キーまたは値のみを処理する場合
QMap::keys() または QMap::values()。
値を変更しながらイテレーションする場合 (全Qtバージョン)
QMap::begin() と QMap::end()。
値を変更しながらイテレーションする場合 (Qt 5.10以降)
QMap::keyValueBegin() と QMap::keyValueEnd()。
読み取り専用で最も互換性のある方法 (全Qtバージョン)
QMap::constBegin() と QMap::constEnd()。
読み取り専用で汎用的な方法 (Qt 5.10以降)
QMap::constKeyValueBegin() と QMap::constKeyValueEnd()。
読み取り専用で最もモダンな方法 (Qt 6.4以降)
QMap::asKeyValueRange() と構造化束縛。

QMap::clear()

もう少し詳しく説明します。注意点: clear()を呼び出した後、そのマップに対するイテレータ（QMap::iteratorなど）はすべて無効になります。マップ内の値がポインタである場合、clear()はポインタ自体は削除しますが、ポインタが指す先のメモリは自動的には解放しません。その場合は、clear()を呼び出す前に、各ポインタが指すオブジェクトを自分で削除する必要があります。

【Qt】QMap::constBegin()徹底解説：読み取り専用イテレータの基本と活用法

QMap::constBegin() は、Qtのコンテナクラスである QMap のメンバ関数で、QMap の最初の要素を指す定数イテレータを返します。QMap<Key, T> は、キー (Key) と値 (Value) のペアを格納する連想コンテナです。キーによって要素が自動的にソートされるのが特徴です。C++標準ライブラリの std::map に似ています。

Qt QMap::constEnd()徹底解説：イテレータの基本と安全な使い方

QMap<Key, T>::constEnd() は、Qtのコンテナクラスである QMap が提供するメンバー関数で、定数イテレータを返します。このイテレータは、QMap 内の「最後の要素の次の位置」を指します。QMap::constEnd(): この関数は、QMap オブジェクトのメソッドとして呼び出されます。返されるイテレータは、マップの最後の要素の直後の架空の場所を指します。これは、C++のSTLコンテナにおける end() イテレータと同じ概念です。

Qt QMap: constFind() 徹底解説 - 使い方、エラー、代替メソッド

この関数は、QtフレームワークのコンテナクラスであるQMapに属するメンバー関数です。QMapは、キーと値のペアを格納し、キーに基づいて値を効率的に検索できるデータ構造です（C++のstd::mapに似ています）。この関数は、特定のキーを持つ要素をQMap内で検索し、その要素を指す「定数イテレータ」を返します。

QMap::constKeyValueBegin()の代替手段 - Qtイテレーションの選び方

この関数は、Qt のコンテナクラスである QMap のメンバ関数です。QMap はキーと値のペアを格納し、キーに基づいて値を高速に検索できるデータ構造です。constKeyValueBegin(): この関数は、QMap の最初の要素を指す const_key_value_iterator を返します。

QMapの要素処理をマスター：constKeyValueEnd()から最新C++11まで

QMapとは何か？ QMap<Key, T> は、Qtが提供するジェネリックなコンテナクラスの一つです。キーと値のペア（Key と T）を格納し、キーを使って値を高速に検索できる辞書のようなものです。std::map と似ていますが、Qt独自の機能や最適化が含まれています。QMap はキーの順序を保持します。

Qt QMapイテレーションの秘訣：const_key_value_iteratorの実践的コード例

QMap::const_key_value_iterator は、Qtのコンテナクラスである QMap を走査（イテレート）するためのイテレータの一種です。特に、これはキーと値のペアを両方とも取得できる、読み取り専用（const）のイテレータとして機能します。

QMap::contains() の使い方と注意点：Qtプログラミングでの効率的なキー検索

使い方: QMap<QString, int> myMap; myMap. insert("apple", 1); myMap. insert("banana", 2); if (myMap. contains("apple")) { // "apple"というキーが存在する場合の処理 qDebug() << "appleは存在します。"; }

もう迷わない！Qt QMapのcount()とsize()、contains()の使い分け

QMapはQtが提供するジェネリックコンテナクラスの一つで、キーと値のペア（連想配列や辞書のようなもの）を格納し、キーによる高速な検索を提供します。QMap::count()には、2つのオーバーロードがあります。このオーバーロードは、引数を取りません。機能: QMapに現在格納されている全要素の数（キーと値のペアの総数）を返します。 C++標準ライブラリのstd::map::size()と同じ機能を提供します。戻り値の型: QMap::size_typeは、マップのサイズを表現するための符号なし整数型です。通常はintやsize_tと同等です。

QMap::difference_type

具体的には、QMap::difference_typeは通常、ptrdiff_tのtypedefとして定義されています。ptrdiff_tは、2つのポインタ間の差を格納できる符号付き整数型であり、イテレータの距離（要素数）を表現するのに適しています。

QMap::constKeyValueBegin()の代替手段 - Qtイテレーションの選び方

QMap::const_key_value_iterator QMap::constKeyValueBegin() とは

QMap::constKeyValueBegin() とは何かのおさらい

コンパイルエラー: 'const class QMap<Key, T>' has no member named 'constKeyValueBegin'

イテレーション中にQMapを誤って変更しようとする (コンパイルエラーまたは実行時エラー)

構造化束縛 (auto [key, value]) での注意点 (Qt 5.x)

イテレーション中にマップの構造を変更する

例1: 基本的なイテレーション (Qt 5.10 以降の標準的な方法)

例2: 特定の条件を満たす要素の検索

QMap::constBegin() と QMap::constEnd() を使用する方法 (伝統的かつ汎用的な方法)

QMap::keys() と QMap::values() を使用する方法 (キーまたは値のみを処理する場合)

QMap::begin() と QMap::end() を使用する方法 (要素の変更も考慮する場合)

QMap::keyValueBegin() と QMap::keyValueEnd() を使用する方法 (Qt 5.10 以降で値を変更する場合)

`QMap::const_key_value_iterator QMap::constKeyValueBegin()` とは

`QMap::constKeyValueBegin()` とは何かのおさらい