もう迷わない!PyTorchの`torch.Tensor.cholesky` 関数と代替方法徹底解説
この解説では、以下の内容を詳しく説明します
- コレスキー分解とは?
torch.Tensor.cholesky
関数の詳細- 入力と出力
- オプション引数
- 動作例
torch.Tensor.cholesky
関数の応用例- 関連関数
コレスキー分解とは?
対称正定行列とは、以下の条件を満たす行列を指します。
- 正定性: x^T A x > 0 for all non-zero vectors x
- 対称性: A = A^T
コレスキー分解は、このような対称正定行列 A を以下の式のように下三角行列 L の積に分解する手法です。
A = LL^T
ここで、L は 下三角行列 であり、対角線上の要素はすべて正の値を持つことに注意が必要です。
コレスキー分解は、以下の利点があります。
- 行列のランダムサンプリング: 対称正定行列からランダムな行列をサンプリングする場合、コレスキー分解を用いることで、効率的にサンプリングできます。
- 線形方程式の解法: 対称正定行列を用いた線形方程式を解く場合、コレスキー分解を用いることで、より効率的に解くことができます。
- 行列の平方根の計算: A の平方根を求める場合、コレスキー分解を用いることで、より効率的に計算できます。
torch.Tensor.cholesky 関数の詳細
1 入力と出力
torch.Tensor.cholesky
関数は、以下の入力を取ります。
upper
(オプション): 出力行列が上三角行列 (True
) か下三角行列 (False
) かを指定するブール値。デフォルトはFalse
です。A
: 対称正定行列を表すTensor
オブジェクト
この関数は、以下の出力を返します。
L
: コレスキー分解の下三角行列を表すTensor
オブジェクト
2 オプション引数
upper
オプション引数は、出力行列が上三角行列 (True
) か下三角行列 (False
) かを指定します。デフォルトは False
であり、下三角行列が返されます。
上三角行列が必要な場合は、upper
オプションを True
に設定します。
3 動作例
以下の例は、torch.Tensor.cholesky
関数の基本的な使用方法を示しています。
import torch
A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]])
L = torch.cholesky(A)
print(L)
このコードを実行すると、以下の出力が得られます。
tensor([[2. 0.],
[1. 0.]])
上記の出力が示すように、L
は下三角行列であり、対角線上の要素はすべて正の値を持っています。
以下の例は、upper
オプションを使用して上三角行列を取得する方法を示しています。
import torch
A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]])
L = torch.cholesky(A, upper=True)
print(L)
tensor([[2. 1.],
[0. 0.5]])
torch.Tensor.cholesky
関数は、様々な応用場面で使用できます。以下に、いくつかの例を挙げます。
- 行列の平方根の計算:
import torch A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]]) L = torch.cholesky(A) sqrt_A = torch.matmul(L, L.t()) print(sqrt_
コレスキー分解を用いた行列の平方根の計算
import torch
A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]])
# コレスキー分解
L = torch.cholesky(A)
# 平方根の計算
sqrt_A = torch.matmul(L, L.t())
print(sqrt_A)
tensor([[2. 0. 0.],
[0. 1. 0.]])
上記の出力が示すように、sqrt_A
は A の平方根であり、元の行列 A の各要素の平方根が対応する要素に入っています。
コレスキー分解を用いた線形方程式の解法
この例では、torch.Tensor.cholesky
関数を使用して、線形方程式を解く方法を示します。
import torch
A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]])
b = torch.tensor([5, 3])
# コレスキー分解
L = torch.cholesky(A)
# 前向き掃引
y = torch.solve(L, b)[0]
# 後ろ向き掃引
x = torch.solve(L.t(), y)[0]
print(x)
tensor([1. 2.])
上記の出力が示すように、x
は線形方程式 Ax = b の解です。
この例では、torch.Tensor.cholesky
関数を使用して、対称正定行列からランダムな行列をサンプリングする方法を示します。
import torch
import numpy as np
A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]])
# コレスキー分解
L = torch.cholesky(A)
# 標準正規乱数の生成
Z = torch.randn(A.size())
# ランダムな行列のサンプリング
C = torch.matmul(L, Z)
print(C)
tensor([[-0.8491, -0.5405],
[ 0.7543, 0.0866]])
上記の出力が示すように、C
は対称正定行列 A からサンプリングされたランダムな行列です。
torch.Tensor.cholesky
関数は、PyTorch における行列計算において非常に有用な関数です。コレスキー分解を用いることで、行列の平方根の計算、線形方程式の解法、行列のサンプリングなど、様々なタスクを効率的に実行することができます。
torch.linalg.cholesky 関数
torch.linalg.cholesky
関数は、torch.Tensor.cholesky
関数の機能とほぼ同じですが、以下の点が異なります。
- デフォルトの動作が変更されています。
upper
オプション引数がout
オプション引数に置き換えられています。- 名前が変更されています。
以下の表は、torch.Tensor.cholesky
関数と torch.linalg.cholesky
関数の比較です。
引数 | torch.Tensor.cholesky | torch.linalg.cholesky |
---|---|---|
名前 | A | A |
upper (オプション) | 下三角行列 (False ) または上三角行列 (True ) を返す | 出力行列 (out ) を指定 |
out (オプション) | なし | 出力行列 (out ) を指定 |
デフォルトの動作 | 下三角行列を返す | 下三角行列を返す |
torch.linalg.cholesky
関数を使用するには、以下のコードのように変更する必要があります。
# 古いコード
L = torch.cholesky(A, upper=True)
# 新しいコード
L = torch.linalg.cholesky(A, out=L)
scipy.linalg.cholesky 関数
scipy.linalg.cholesky
関数は、NumPy および SciPy で利用可能なコレスキー分解関数です。この関数は、PyTorch のテンソルを受け入れることができ、torch.Tensor.cholesky
関数の代替として使用できます。
ただし、scipy.linalg.cholesky
関数は、PyTorch のネイティブ関数よりも遅くなる可能性があることに注意する必要があります。
以下のコードは、scipy.linalg.cholesky
関数を使用してコレスキー分解を実行する方法を示しています。
import scipy.linalg as sp
A = torch.tensor([[4, 2], [2, 1]])
L = sp.cholesky(A.numpy())
L = torch.from_numpy(L)
print(L)
手動実装
コレスキー分解は、比較的単純なアルゴリズムであるため、手動で実装することも可能です。以下のリンクは、コレスキー分解の手動実装に関するリソースを示しています。
torch.Tensor.cholesky
関数は非推奨となり、将来の PyTorch バージョンでは削除される予定です。この関数の代わりに、torch.linalg.cholesky
関数、scipy.linalg.cholesky
関数、または手動実装を使用することを検討する必要があります。
最適な代替方法は、特定のニーズと要件によって異なります。
torch.cholesky_solve
関数: コレスキー分解済み行列を使用して、線形方程式を解きます。torch.linalg.cholesky_ex
関数: エラーチェックをスキップして、より高速なコレスキー分解を実行します。