PyTorch TorchScriptでモデルをコンパクトに保存!torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer()のサンプルコードと代替方法


torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() は、PyTorch TorchScript における重要な機能の一つで、ScriptFunction オブジェクトをバイナリバッファに保存するためのメソッドです。このメソッドを使用することで、Python コードを記述せずに、モデルをシリアライズし、保存することができます

ScriptFunction とは

ScriptFunction は、TorchScript における関数型オブジェクトです。これは、単一の関数とそれに関連するグラフを表し、属性やパラメータを持たないという特徴があります。ScriptFunction は、モデル推論など、計算タスクを実行するために使用されます。

save_to_buffer() の役割

torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() メソッドは、ScriptFunction オブジェクトをコンパクトなバイナリ形式に変換し、メモリ上のバッファに保存します。このバッファは、ファイルに保存したり、ネットワーク越しに送信したりすることができます。

使用方法

import torch
import torch.jit

def my_function(x):
    # ... モデルの推論を行う処理 ...
    return y

script_function = torch.jit.script(my_function)

# ScriptFunction オブジェクトをバイナリバッファに保存
buffer = script_function.save_to_buffer()

# バッファをファイルに保存
with open('my_model.pt', 'wb') as f:
    f.write(buffer)

利点

torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() を使用することで、以下の利点が得られます。

  • モデル推論の高速化:ScriptFunction は、TorchScript によって最適化されているため、Python コードよりも高速にモデル推論を実行することができます。
  • モデルの配布が容易:保存されたバイナリバッファは、他のユーザーと簡単に共有することができます。
  • モデルのシリアライズと保存が可能:Python コードを記述せずに、モデルをシリアライズし、保存することができます。

torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() は、PyTorch TorchScript における重要な機能であり、モデルのシリアライズ、保存、配布、推論の高速化に役立ちます。

  • ScriptFunction オブジェクトを保存する際には、Python ランタイム環境も一緒に保存する必要があります。これは、torch.jit.save() メソッドを使用して行うことができます。
  • torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() メソッドは、TorchScript 1.1 以降で使用可能です。


例1:単純な線形回帰モデル

この例では、単純な線形回帰モデルを定義し、ScriptFunction にコンパイルし、バイナリバッファに保存します。

import torch
import torch.jit

# 線形回帰モデルを定義
def linear_regression(x):
    w = torch.tensor([0.5])  # モデルのパラメータ
    b = torch.tensor([0.0])
    return w * x + b

# ScriptFunction にコンパイル
script_function = torch.jit.script(linear_regression)

# ScriptFunction オブジェクトをバイナリバッファに保存
buffer = script_function.save_to_buffer()

# バッファをファイルに保存
with open('linear_regression.pt', 'wb') as f:
    f.write(buffer)

例2:畳み込みニューラルネットワーク

この例では、畳み込みニューラルネットワークを定義し、ScriptFunction にコンパイルし、バイナリバッファに保存します。

import torch
import torch.jit
import torch.nn as nn

# 畳み込みニューラルネットワークを定義
class CNN(nn.Module):
    def __init__(self):
        super().__init__()
        self.conv1 = nn.Conv2d(1, 32, kernel_size=3)
        self.pool = nn.MaxPool2d(2)
        self.fc1 = nn.Linear(32 * 5 * 5, 64)
        self.fc2 = nn.Linear(64, 10)

    def forward(self, x):
        x = self.conv1(x)
        x = self.pool(x)
        x = x.view(-1, 32 * 5 * 5)
        x = self.fc1(x)
        x = self.fc2(x)
        return x

# モデルをインスタンス化
model = CNN()

# ScriptFunction にコンパイル
script_function = torch.jit.script(model)

# ScriptFunction オブジェクトをバイナリバッファに保存
buffer = script_function.save_to_buffer()

# バッファをファイルに保存
with open('cnn.pt', 'wb') as f:
    f.write(buffer)

これらの例は、 torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() メソッドの基本的な使用方法を示すものです。** モデルの複雑さや要件に応じて、コードを適宜調整する必要があります。

  • モデルの入出力形状を指定することで、torch.jit.script() 関数の引数を拡張することができます。詳細については、PyTorch の公式ドキュメントを参照してください。
  • 上記の例では、モデルを CPU 上で実行しています。GPU 上でモデルを実行したい場合は、torch.device('cuda') を使用してデバイスを設定する必要があります。


torch.jit.save()

torch.jit.save() は、ScriptFunction オブジェクトだけでなく、モデル全体を保存するためのメソッドです。これは、モデルのパラメータ、状態、および ScriptFunction オブジェクトを含む、モデルの完全な状態を保存します。

利点

  • モデルの推論だけでなく、トレーニングや再初期化も可能
  • モデル全体を保存できる

欠点

  • ScriptFunction オブジェクトのみを保存したい場合は、冗長になる
  • torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() よりもファイルサイズが大きくなる

使用方法

import torch
import torch.jit

# モデルを定義
def my_model(x):
    # ... モデルの定義 ...
    return y

# モデルをインスタンス化
model = MyModel()

# モデルを保存
torch.jit.save(model, 'my_model.pt')

torch.onnx.export()

torch.onnx.export() は、PyTorch モデルを ONNX 形式 にエクスポートするための関数です。ONNX は、様々な機械学習フレームワークで互換性のある オープンフォーマットです。

利点

  • モデルの推論のみを保存できる
  • ONNX 形式で保存できるので、様々なフレームワークで利用可能

欠点

  • 一部のモデルは ONNX 形式で表現できない可能性がある
  • ONNX 形式への変換に時間がかかる場合がある

使用方法

import torch
import torch.onnx

# モデルを定義
def my_model(x):
    # ... モデルの定義 ...
    return y

# モデルをインスタンス化
model = MyModel()

# モデルを ONNX 形式でエクスポート
torch.onnx.export(model, torch.randn(1, 3, 224, 224), 'my_model.onnx')

pickle

pickle は、Python オブジェクトを バイナリ形式 にシリアライズするための標準ライブラリモジュールです。

利点

  • Python コードをそのまま保存できる
  • シンプルで使いやすい

欠点

  • 互換性が限られる
  • TorchScript ほど高速ではない

使用方法

import torch
import pickle

# モデルを定義
def my_model(x):
    # ... モデルの定義 ...
    return y

# モデルをインスタンス化
model = MyModel()

# モデルを pickle 形式で保存
with open('my_model.pkl', 'wb') as f:
    pickle.dump(model, f)

TorchScriptVM

TorchScriptVM は、TorchScript モデルを 仮想マシン上で実行 するためのライブラリです。これは、モデルを軽量で効率的な形式で保存し、実行速度を向上させるのに役立ちます。

利点

  • モデル実行速度が向上する
  • モデルを軽量で効率的な形式で保存できる

欠点

  • 一部のモデルは TorchScriptVM で実行できない可能性がある
  • TorchScriptVM のインストールと設定が必要

使用方法

import torch
import torchscript_vm

# モデルを定義
def my_model(x):
    # ... モデルの定義 ...
    return y

# モデルをインスタンス化
model = MyModel()

# ScriptFunction オブジェクトを取得
script_function = torch.jit.script(model)

# TorchScriptVM モデルを作成
vm_model = torchscript_vm.jit_module_to_source(script_function)

# TorchScriptVM モデルを保存
with open('my_model.vm', 'w') as f:
    f.write(vm_model)

torch.jit.ScriptFunction.save_to_buffer() は、PyTorch TorchScript における重要な機能ですが、状況に応じて最適な代替方法を選択する必要があります。

  • シンプルで使いやすい方法が欲しい場合は、pickle を使用
  • モデルを ONNX 形式で保存したい場合は、torch.onnx.export() を使用します。
  • モデル全体を保存したい場合は、torch.jit.save() を使用します。