PyTorchでCUDAメモリ不足に悩まされない開発へ:torch.cuda.set_per_process_memory_fractionの使い方と代替方法


  • 設定方法:fractionパラメータで制限割合を指定
  • 制御対象:CUDAデバイス上のメモリ使用量
  • 対象:PyTorchプロセス

詳細

    • fractionパラメータ:0.0~1.0の範囲でメモリ使用量の制限割合を指定
      • 例:0.5を設定すると、プロセスはCUDAデバイス全体のメモリ容量の半分しか使用できなくなります。
    • デフォルト値:None。この場合、制限は設定されず、デバイスの全メモリを使用できます。
  1. デバイス指定

    • deviceパラメータ:オプションで、制限対象のCUDAデバイスを指定できます。
      • 複数存在する場合は、torch.device("cuda", device_id)でデバイスIDを指定します。
      • デフォルト値:None。この場合、デフォルトのCUDAデバイスが使用されます。
  2. 動作メカニズム

    • プロセスがメモリを割り当てようとすると、torch.cuda.set_per_process_memory_fractionで設定された制限割合に基づいて許可される量をチェックします。
    • 制限を超えたメモリ割り当て要求はエラーとなり、処理が中断されます。


import torch

# デフォルトのCUDAデバイスで、メモリ使用量を全体の70%に制限
torch.cuda.set_per_process_memory_fraction(0.7)

# 特定のCUDAデバイス(device_id=1)で、メモリ使用量を全体の50%に制限
torch.cuda.set_per_process_memory_fraction(0.5, device=torch.device("cuda", 1))

注意事項

  • メモリ不足エラーが発生した場合は、制限割合を調整するか、別のGPUを使用することを検討してください。
  • 制限を設定しても、実際に使用されるメモリ量は、モデルやデータセットのサイズ、計算の種類などによって異なります。
  • 複数のプロセスが同じGPUを使用する場合、それぞれのプロセスがこの関数で制限を設定する必要があります。
  • torch.cuda.set_per_process_memory_fractionは、各プロセスごとにメモリ制限を設定します。


単一GPUでメモリ制限を設定

import torch

# デフォルトのCUDAデバイスで、メモリ使用量を全体の50%に制限
torch.cuda.set_per_process_memory_fraction(0.5)

# モデルの訓練・推論を実行
model = ...  # モデル定義
device = torch.device("cuda")  # デバイス設定
model.to(device)  # モデルをGPUに転送

# ... 訓練・推論処理 ...

複数GPUでメモリ制限を設定

import torch

# それぞれのGPUでメモリ使用量を全体の70%に制限
for i in range(torch.cuda.device_count()):
    torch.cuda.set_per_process_memory_fraction(0.7, device=torch.device("cuda", i))

# モデルを並列化して訓練
model = ...  # モデル定義
model = torch.nn.DataParallel(model)  # モデルを並列化
device = torch.device("cuda")  # デバイス設定
model.to(device)  # モデルをGPUに転送

# ... 訓練処理 ...
import torch
import contextlib

# デフォルトのCUDAデバイスで、メモリ使用量を全体の50%に制限
with torch.cuda.set_per_process_memory_fraction(0.5):
    # メモリ制限を適用したい処理を実行
    model = ...  # モデル定義
    device = torch.device("cuda")  # デバイス設定
    model.to(device)  # モデルをGPUに転送

    # ... 訓練・推論処理 ...

# 制限を解除
  • メモリ不足エラーが発生した場合は、制限割合を調整するか、別のGPUを使用することを検討してください。
  • メモリ制限を設定しても、実際に使用されるメモリ量は、モデルやデータセットのサイズ、計算の種類などによって異なります。
  • 上記コードはあくまでも例であり、具体的な状況に合わせて調整する必要があります。


代替方法

  1. torch.cuda.manual_memory_management コンテキストマネージャー

    • メモリ割り当てと解放を明示的に制御することで、よりきめ細かなメモリ管理が可能になります。
    • メモリ使用量の追跡と、不要なメモリの解放が必要となります。
    • コードが複雑になり、バグが発生しやすい可能性があります。

    例:

    import torch
    
    with torch.cuda.manual_memory_management():
        # メモリ割り当てと解放を明示的に記述
        tensor = torch.cuda.FloatTensor(1024, 1024)
        # ... 処理 ...
        del tensor
    
    # コンテキストマネージャーを終了すると、明示的に解放されていないメモリは自動的に解放されます。
    
    • 計算グラフを無効化することで、中間的なテンソルが自動的に解放されるのを防ぎ、メモリ使用量を削減できます。
    • 推論時のみ有効で、訓練時には使用できません。
    • モデルの精度に影響を与える可能性があります。
    import torch
    
    with torch.autograd.set_grad_enabled(False):
        # 計算グラフを無効化
        output = model(input)
    
    # 中間的なテンソルは自動的に解放されます。
    
  2. gc.collect() 関数

    • Python のガベージコレクターを手動で呼び出し、不要なオブジェクトを解放することで、メモリ使用量を削減できます。
    • メモリ使用量の追跡が難しく、パフォーマンスへの影響も大きくなります。
    • プログラム全体の動作に影響を与える可能性があります。
    import gc
    
    # メモリ使用量が多い場合は、ガベージコレクターを手動で呼び出す
    gc.collect()
    
  3. 別のGPUを使用する

    • 使用可能なメモリ容量が十分な別の GPU にタスクを割り当てることで、メモリ不足を回避できます。
    • 複数の GPU が利用可能でない場合や、タスクが特定の GPU に依存している場合は使用できません。
    • データ転送によるオーバーヘッドが発生する可能性があります。

最適な代替方法の選択

  • 複数の GPU が利用可能で、タスクが依存していない場合は、別の GPU を使用するのが最善です。
  • メモリ不足が稀に発生する場合は、gc.collect() を手動で呼び出すことで十分な場合もあります。
  • 推論時のメモリ使用量削減のみが必要な場合は、torch.autograd.set_grad_enabled が適している可能性があります。
  • 複雑なメモリ管理が必要な場合は、torch.cuda.manual_memory_management が適している可能性があります。
  • 使用状況、メモリ使用量、パフォーマンス要件などを考慮する必要があります。