ニューラルネットワークの再現性向上に役立つ!PyTorch CUDAの`torch.cuda.set_rng_state_all` 関数


  • デバッグや再現性の検証においても有用です。
  • 複数のGPUデバイスを使用する分散学習環境において、ランダム性の同期に役立ちます。
  • デフォルトでは、現在のCUDAデバイスの状態を設定します。
  • すべてのGPUデバイスの乱数ジェネレータ状態を、指定された状態に設定します。

引数

  • device (torch.device or int, optional): 状態を設定したいGPUデバイスを指定します。デフォルトは 'cuda' で、現在のCUDAデバイスを意味します。
  • new_state (torch.ByteTensor): 設定したい乱数ジェネレータ状態を表すByteTensor。この状態は、torch.cuda.get_rng_state 関数を使用して取得できます。

import torch

# 現在のCUDAデバイスの乱数ジェネレータ状態を取得
current_state = torch.cuda.get_rng_state()

# すべてのGPUデバイスで同じ乱数シードを使用
torch.cuda.set_rng_state_all(current_state)

# 特定のGPUデバイスの状態を設定
target_device = torch.device('cuda:1')
specific_state = torch.randn(20, dtype=torch.uint8)
torch.cuda.set_rng_state(specific_state, device=target_device)
  • この関数は、CUDAランタイムのみで使用できます。CPU上での乱数生成には影響を与えません。
  • torch.cuda.set_rng_state_all 関数は、すべてのGPUデバイスの状態を更新するため、マルチプロセス環境では注意が必要です。各プロセスで個別に状態を設定する必要がある場合があります。


すべてのGPUデバイスで同じ乱数シードを使用する

この例では、現在のCUDAデバイスの乱数ジェネレータ状態をすべてのGPUデバイスに複製します。これにより、すべてのデバイスで同じランダムな結果が得られます。

import torch

# 現在のCUDAデバイスの乱数ジェネレータ状態を取得
current_state = torch.cuda.get_rng_state()

# すべてのGPUデバイスで同じ乱数シードを使用
torch.cuda.set_rng_state_all(current_state)

# 各デバイスで乱数を生成して確認
for device_id in range(torch.cuda.device_count()):
    with torch.device(f'cuda:{device_id}'):
        random_tensor = torch.randn(10)
        print(f'Device {device_id}: {random_tensor}')

特定のGPUデバイスに個別の乱数状態を設定する

この例では、特定のGPUデバイスに個別の乱数状態を設定します。これにより、異なるデバイスで異なるランダムな結果を得ることができます。

import torch

# 乱数状態を生成
specific_state = torch.randn(20, dtype=torch.uint8)

# 特定のGPUデバイスに状態を設定
target_device = torch.device('cuda:1')
torch.cuda.set_rng_state(specific_state, device=target_device)

# デバイス上の乱数を生成して確認
with torch.device(target_device):
    random_tensor = torch.randn(10)
    print(f'Device {target_device}: {random_tensor}')

マルチプロセス環境における torch.cuda.set_rng_state_all の使用

この例では、マルチプロセス環境で torch.cuda.set_rng_state_all 関数を使用する方法を示します。各プロセスで個別に状態を設定する必要があることに注意してください。

import torch
import multiprocessing

def worker(device_id):
    # 現在のCUDAデバイスの乱数ジェネレータ状態を取得
    current_state = torch.cuda.get_rng_state(device=device_id)

    # 各プロセスで個別に状態を設定
    torch.cuda.set_rng_state(current_state, device=device_id)

    # デバイス上の乱数を生成して確認
    with torch.device(f'cuda:{device_id}'):
        random_tensor = torch.randn(10)
        print(f'Process {os.getpid()} Device {device_id}: {random_tensor}')

if __name__ == '__main__':
    # 利用可能なGPUデバイスの数を確認
    device_count = torch.cuda.device_count()

    # 各デバイスでワーカープロセスを起動
    processes = []
    for device_id in range(device_count):
        process = multiprocessing.Process(target=worker, args=(device_id,))
        processes.append(process)
        process.start()

    # すべてのプロセスを終了
    for process in processes:
        process.join()
  • これは、各プロセスが独自の乱数状態を維持し、互いに干渉しないようにするためです。
  • マルチプロセス環境では、各プロセスで個別に torch.cuda.set_rng_state_all 関数を呼び出すことが重要です。
  • 上記のコードは、各GPUデバイスで個別の乱数シーケンスを生成することを示しています。
  • torch.cuda.set_rng_state_all 関数の詳細については、PyTorchのドキュメントを参照してください。
  • これらの例はあくまで基本的な使用方法を示すものです。具体的な使用方法は、状況に応じて調整する必要があります。


代替方法

以下に、torch.cuda.set_rng_state_all 関数の代替方法として検討すべきいくつかの方法を紹介します。

個別の乱数ジェネレータを使用する

各ランダム操作に対して個別の乱数ジェネレータオブジェクトを作成して使用することができます。これは、以下の方法で行うことができます。

import torch

# 乱数ジェネレータを作成
generator = torch.Generator()

# デバイスに割り当てる
generator = generator.cuda()

# ランダムなテンソルを生成
random_tensor = torch.randn(10, generator=generator)

この方法の利点は、柔軟性と制御性に優れていることです。各操作に対して個別のシードを設定したり、異なる分布からのサンプリングを行ったりすることができます。

欠点は、コードが煩雑になる可能性があることです。特に、多くのランダム操作を行う場合は、多くのジェネレータオブジェクトを管理する必要が生じる可能性があります。

torch.manual_seed と torch.cuda.manual_seed_all を使用する

torch.manual_seedtorch.cuda.manual_seed_all 関数は、CPU と GPU 上のすべての乱数ジェネレータの状態をシード値に基づいて初期化するために使用できます。これは、以下の方法で行うことができます。

import torch

# シード値を設定
seed = 1234

# CPU 上のすべての乱数ジェネレータを初期化
torch.manual_seed(seed)

# GPU 上のすべての乱数ジェネレータを初期化
torch.cuda.manual_seed_all(seed)

# ランダムなテンソルを生成
random_tensor = torch.randn(10)

この方法の利点は、シンプルで使いやすいことです。

欠点は、すべての乱数ジェネレータが同じシード値に基づいて初期化されるため、柔軟性が制限されることです。異なる操作に対して異なるランダムな結果を得る必要がある場合は、適切ではありません。

torch.distributions モジュールを使用する

torch.distributions モジュールは、さまざまな確率分布からのサンプリングのための機能を提供しています。これらの分布は、乱数ジェネレータオブジェクトとは独立して使用することができます。

import torch
import torch.distributions as distributions

# ベータ分布を作成
beta_distribution = distributions.Beta(alpha=2.0, beta=3.0)

# ランダムなテンソルを生成
random_tensor = beta_distribution.sample(10)

この方法の利点は、コードが簡潔で読みやすいことです。また、さまざまな確率分布からのサンプリングを簡単に実行することができます。

欠点は、torch.cuda.set_rng_state_all 関数ほど汎用性がないことです。すべてのランダム操作に使用できるわけではありません。

最適な方法の選択

どの代替方法が最適かは、具体的な状況によって異なります。以下の要素を考慮する必要があります。

  • 必要な分布: torch.distributions モジュールは、さまざまな確率分布からのサンプリングに最適ですが、torch.cuda.set_rng_state_all 関数ほど汎用性がない可能性があります。
  • 簡潔性: torch.manual_seedtorch.cuda.manual_seed_all 関数は最もシンプルですが、柔軟性が制限されます。
  • 必要な柔軟性と制御性: 個別の乱数ジェネレータを使用すると、最も柔軟性と制御性がありますが、コードが煩雑になる可能性があります。

torch.cuda.set_rng_state_all 関数は、PyTorch CUDA ランタイムで乱数ジェネレータの状態を設定するための強力なツールですが、いくつかの制約があります。状況によっては、上記の代替方法の方が適している場合があります。