PowerSGD HookでGo for It!PyTorch DDPで効率的な大規模モデル訓練を叶える
torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks.powerSGD_hook.powerSGD_hook()
は、PyTorch DistributedDataParallel (DDP) における勾配通信を最適化するための Communication Hook です。勾配圧縮とエラーフィードバックメカニズムを用いて、通信効率と精度を向上させることができます。
仕組み
PowerSGD は、以下の2つの主要なステップで動作します。
- 勾配圧縮: 各ワーカーは、自身の勾配を低精度表現 (例:FP16) に圧縮します。圧縮率は、勾配のスパース性や通信帯域幅などを考慮して決定されます。
- エラーフィードバック: 全てのワーカーが圧縮済みの勾配を共有した後、誤差補正ベクトルを計算します。このベクトルは、圧縮による精度損失を補うために使用されます。
これらのステップにより、PowerSGD は通信量を削減しながら、精度を維持することができます。
使用方法
powerSGD_hook()
を使用する場合は、以下の手順に従う必要があります。
torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks
モジュールをインポートします。powerSGD_hook()
関数を呼び出し、必要なオプションを設定します。- DDP モデルの
register_comm_hook()
メソッドを使用して、作成したpowerSGD_hook
インスタンスを登録します。
例
import torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks as ddp_comm_hooks
def train_model(model, optimizer, train_loader):
# DDP モデルを作成
ddp_model = DistributedDataParallel(model)
# PowerSGD Hook を作成
powerSGD_hook = ddp_comm_hooks.powerSGD_hook(
beta=0.9,
warm_up_steps=5000,
lr=optimizer.param_groups[0]["lr"]
)
# DDP モデルに PowerSGD Hook を登録
ddp_model.register_comm_hook(powerSGD_hook)
# 訓練ループ
for epoch in range(num_epochs):
for i, (data, target) in enumerate(train_loader):
# データを GPU に転送
data, target = data.to(device), target.to(device)
# 勾配をゼロ化
optimizer.zero_grad()
# 順伝播
output = ddp_model(data)
# 損失計算
loss = criterion(output, target)
# 逆伝播
loss.backward()
# 最適化
optimizer.step()
# ...
注意点
- PowerSGD は、追加のメモリ要件があります。
- PowerSGD は、Apex AMP と互換性がありません。
- PowerSGD は、大規模なモデルや高精度なトレーニングに特に有効です。
powerSGD_hook()
関数は、以下のオプションをサポートしています。
lr
: 学習率warm_up_steps
: ウォームアップ期間の長さbeta
: 誤差補正ベクトルの更新率
これらのオプションは、訓練タスクやハードウェア構成に応じて調整する必要があります。
import torch
import torch.distributed as dist
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim
import torch.utils.data as data
from torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks import powerSGD_hook
# データセットとモデルを定義
class MyDataset(data.Dataset):
def __init__(self, ...):
...
def __getitem__(self, index):
...
def __len__(self):
...
class MyModel(nn.Module):
def __init__(self):
super().__init__()
# ...
def forward(self, x):
# ...
# データローダーとモデルを作成
train_dataset = MyDataset(...)
train_loader = data.DataLoader(train_dataset, batch_size=64)
model = MyModel()
# DDP モデルを作成
dist.init_process_group(backend='nccl')
ddp_model = DistributedDataParallel(model)
# PowerSGD Hook を作成
powerSGD_hook = powerSGD_hook(
beta=0.9,
warm_up_steps=5000,
lr=optimizer.param_groups[0]["lr"]
)
# DDP モデルに PowerSGD Hook を登録
ddp_model.register_comm_hook(powerSGD_hook)
# 最適化アルゴリズムを作成
optimizer = optim.Adam(ddp_model.parameters())
# 訓練ループ
for epoch in range(num_epochs):
for i, (data, target) in enumerate(train_loader):
# データを GPU に転送
data, target = data.to(device), target.to(device)
# 勾配をゼロ化
optimizer.zero_grad()
# 順伝播
output = ddp_model(data)
# 損失計算
loss = criterion(output, target)
# 逆伝播
loss.backward()
# 最適化
optimizer.step()
# ...
- PowerSGD は、大規模なモデルや高精度なトレーニングに特に有効です。
powerSGD_hook()
のオプションは、訓練タスクやハードウェア構成に応じて調整する必要があります。- このコードは、あくまでも例であり、実際の訓練タスクに合わせて変更する必要があります。
しかし、いくつかの代替方法が存在します。
Gradient compression algorithms
- DeepSpeed ZeRO: 勾配を各ワーカーに分散させ、グローバルパラメーターを保持しません。これは、大規模なモデルのトレーニングに特に有効です。
- BF16: 勾配をブレイン浮動小数点 (BF16) 形式に変換します。これは、FP16 よりも高い精度を維持しながら、通信量を削減することができます。
- FP16: 勾配を半精度浮動小数点 (FP16) 形式に変換します。これは、通信量を半分に削減することができます。
これらの方法は、PowerSGD よりもシンプルで、実装しやすいという利点があります。
Gradient quantization algorithms
- Terminus: 勾配をスパース化して送信します。これは、スパースなモデルのトレーニングに特に有効です。
- QSGD: 勾配を符号化して送信します。これは、通信量を大幅に削減することができます。
これらの方法は、PowerSGD よりも高い通信効率を実現することができますが、精度が低下する可能性があります。
Hybrid approaches
- ZeRO + QSGD: ZeRO と QSGD を組み合わせることで、大規模なモデルのトレーニングにおいて、通信量と精度を大幅に向上させることができます。
- PowerSGD + FP16: PowerSGD と FP16 を組み合わせることで、通信効率と精度をバランス良く向上させることができます。
これらの方法は、個々のニーズに合わせて選択する必要があります。
- ハードウェア: GPU や TPU などのハードウェアによっては、特定のアルゴリズムがより効率的に動作する場合があります。
- 必要な精度: 高精度が要求される場合は、PowerSGD や FP16 などの精度維持ソリューションが適している可能性があります。
- モデルの規模: 大規模なモデルの場合は、ZeRO や DeepSpeed などのスケーラブルなソリューションが適している可能性があります。