PowerSGD HookでGo for It!PyTorch DDPで効率的な大規模モデル訓練を叶える


torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks.powerSGD_hook.powerSGD_hook() は、PyTorch DistributedDataParallel (DDP) における勾配通信を最適化するための Communication Hook です。勾配圧縮とエラーフィードバックメカニズムを用いて、通信効率と精度を向上させることができます。

仕組み

PowerSGD は、以下の2つの主要なステップで動作します。

  1. 勾配圧縮: 各ワーカーは、自身の勾配を低精度表現 (例:FP16) に圧縮します。圧縮率は、勾配のスパース性や通信帯域幅などを考慮して決定されます。
  2. エラーフィードバック: 全てのワーカーが圧縮済みの勾配を共有した後、誤差補正ベクトルを計算します。このベクトルは、圧縮による精度損失を補うために使用されます。

これらのステップにより、PowerSGD は通信量を削減しながら、精度を維持することができます。

使用方法

powerSGD_hook() を使用する場合は、以下の手順に従う必要があります。

  1. torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks モジュールをインポートします。
  2. powerSGD_hook() 関数を呼び出し、必要なオプションを設定します。
  3. DDP モデルの register_comm_hook() メソッドを使用して、作成した powerSGD_hook インスタンスを登録します。

import torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks as ddp_comm_hooks

def train_model(model, optimizer, train_loader):
    # DDP モデルを作成
    ddp_model = DistributedDataParallel(model)

    # PowerSGD Hook を作成
    powerSGD_hook = ddp_comm_hooks.powerSGD_hook(
        beta=0.9,
        warm_up_steps=5000,
        lr=optimizer.param_groups[0]["lr"]
    )

    # DDP モデルに PowerSGD Hook を登録
    ddp_model.register_comm_hook(powerSGD_hook)

    # 訓練ループ
    for epoch in range(num_epochs):
        for i, (data, target) in enumerate(train_loader):
            # データを GPU に転送
            data, target = data.to(device), target.to(device)

            # 勾配をゼロ化
            optimizer.zero_grad()

            # 順伝播
            output = ddp_model(data)

            # 損失計算
            loss = criterion(output, target)

            # 逆伝播
            loss.backward()

            # 最適化
            optimizer.step()

            # ...

注意点

  • PowerSGD は、追加のメモリ要件があります。
  • PowerSGD は、Apex AMP と互換性がありません。
  • PowerSGD は、大規模なモデルや高精度なトレーニングに特に有効です。

powerSGD_hook() 関数は、以下のオプションをサポートしています。

  • lr: 学習率
  • warm_up_steps: ウォームアップ期間の長さ
  • beta: 誤差補正ベクトルの更新率

これらのオプションは、訓練タスクやハードウェア構成に応じて調整する必要があります。



import torch
import torch.distributed as dist
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim
import torch.utils.data as data
from torch.distributed.algorithms.ddp_comm_hooks import powerSGD_hook

# データセットとモデルを定義
class MyDataset(data.Dataset):
    def __init__(self, ...):
        ...

    def __getitem__(self, index):
        ...

    def __len__(self):
        ...

class MyModel(nn.Module):
    def __init__(self):
        super().__init__()
        # ...

    def forward(self, x):
        # ...

# データローダーとモデルを作成
train_dataset = MyDataset(...)
train_loader = data.DataLoader(train_dataset, batch_size=64)
model = MyModel()

# DDP モデルを作成
dist.init_process_group(backend='nccl')
ddp_model = DistributedDataParallel(model)

# PowerSGD Hook を作成
powerSGD_hook = powerSGD_hook(
    beta=0.9,
    warm_up_steps=5000,
    lr=optimizer.param_groups[0]["lr"]
)

# DDP モデルに PowerSGD Hook を登録
ddp_model.register_comm_hook(powerSGD_hook)

# 最適化アルゴリズムを作成
optimizer = optim.Adam(ddp_model.parameters())

# 訓練ループ
for epoch in range(num_epochs):
    for i, (data, target) in enumerate(train_loader):
        # データを GPU に転送
        data, target = data.to(device), target.to(device)

        # 勾配をゼロ化
        optimizer.zero_grad()

        # 順伝播
        output = ddp_model(data)

        # 損失計算
        loss = criterion(output, target)

        # 逆伝播
        loss.backward()

        # 最適化
        optimizer.step()

        # ...
  • PowerSGD は、大規模なモデルや高精度なトレーニングに特に有効です。
  • powerSGD_hook() のオプションは、訓練タスクやハードウェア構成に応じて調整する必要があります。
  • このコードは、あくまでも例であり、実際の訓練タスクに合わせて変更する必要があります。


しかし、いくつかの代替方法が存在します。

Gradient compression algorithms

  • DeepSpeed ZeRO: 勾配を各ワーカーに分散させ、グローバルパラメーターを保持しません。これは、大規模なモデルのトレーニングに特に有効です。
  • BF16: 勾配をブレイン浮動小数点 (BF16) 形式に変換します。これは、FP16 よりも高い精度を維持しながら、通信量を削減することができます。
  • FP16: 勾配を半精度浮動小数点 (FP16) 形式に変換します。これは、通信量を半分に削減することができます。

これらの方法は、PowerSGD よりもシンプルで、実装しやすいという利点があります。

Gradient quantization algorithms

  • Terminus: 勾配をスパース化して送信します。これは、スパースなモデルのトレーニングに特に有効です。
  • QSGD: 勾配を符号化して送信します。これは、通信量を大幅に削減することができます。

これらの方法は、PowerSGD よりも高い通信効率を実現することができますが、精度が低下する可能性があります。

Hybrid approaches

  • ZeRO + QSGD: ZeRO と QSGD を組み合わせることで、大規模なモデルのトレーニングにおいて、通信量と精度を大幅に向上させることができます。
  • PowerSGD + FP16: PowerSGD と FP16 を組み合わせることで、通信効率と精度をバランス良く向上させることができます。

これらの方法は、個々のニーズに合わせて選択する必要があります。

  • ハードウェア: GPU や TPU などのハードウェアによっては、特定のアルゴリズムがより効率的に動作する場合があります。
  • 必要な精度: 高精度が要求される場合は、PowerSGD や FP16 などの精度維持ソリューションが適している可能性があります。
  • モデルの規模: 大規模なモデルの場合は、ZeRO や DeepSpeed などのスケーラブルなソリューションが適している可能性があります。