NumPy C-APIでシグナル処理を行う:NPY_SIGJMP_BUFの使い方と代替方法
NumPy C-API とシグナルハンドラー
NumPy C-API は、C 言語から NumPy 関数を呼び出すためのインターフェースです。NumPy 関数は内部的にシグナルを受け取る可能性があり、その場合、シグナルハンドラーに処理を委ねる必要があります。
シグナルハンドラーは、シグナル発生時に実行される関数のことを指します。シグナルハンドラーは、シグナルの種類を特定し、適切な処理を実行する必要があります。
NPY_SIGJMP_BUF の役割
NPY_SIGJMP_BUF
は、NumPy 関数からシグナルハンドラーにシグナルを伝達するための情報を格納する構造体です。具体的には、以下の情報が含まれます。
- シグナルハンドラーから NumPy 関数に戻るための復帰情報
- シグナルハンドラーに渡されるコンテキスト情報
- シグナルの種類
NPY_SIGJMP_BUF の使用方法
NPY_SIGJMP_BUF
を使用するには、以下の手順が必要です。
NPY_SIGJMP_BUF
構造体を宣言します。sigsetjmp()
関数を使用して、NPY_SIGJMP_BUF
構造体にシグナルハンドラーのコンテキスト情報を格納します。- NumPy 関数を呼び出します。
- シグナルハンドラー内で、
siglongjmp()
関数を使用して、NPY_SIGJMP_BUF
構造体に格納された復帰情報を使用して NumPy 関数に戻ります。
例
#include <numpy/ndarray.h>
void my_signal_handler(int sig) {
// シグナルの種類を処理
// ...
// NumPy 関数に戻る
siglongjmp(jmpbuf, 1);
}
int main() {
// NPY_SIGJMP_BUF 構造体を宣言
NPY_SIGJMP_BUF jmpbuf;
// シグナルハンドラーを設定
signal(SIGINT, my_signal_handler);
// NumPy 関数を呼び出す
npy_array *arr = PyArray_ZEROS(10, NPY_INT32);
// ...
// NumPy 配列を解放
PyArray_DECREF(arr);
return 0;
}
NPY_SIGJMP_BUF
は NumPy 内部で使用される構造体であり、アプリケーション側で直接変更することはできません。NPY_SIGJMP_BUF
はスレッドセーフではありません。マルチスレッド環境で使用する場合は、スレッドごとに個別のNPY_SIGJMP_BUF
構造体を使用する必要があります。
#include <numpy/ndarray.h>
#include <signal.h>
void my_signal_handler(int sig) {
// シグナルの種類を処理
printf("シグナル %d が発生しました\n", sig);
// NumPy 配列を解放
npy_array *arr = PyArray_ZEROS(10, NPY_INT32);
PyArray_DECREF(arr);
// シグナルハンドラーから抜ける
exit(1);
}
int main() {
// NPY_SIGJMP_BUF 構造体を宣言
NPY_SIGJMP_BUF jmpbuf;
// シグナルハンドラーを設定
signal(SIGINT, my_signal_handler);
// NumPy 関数を呼び出す
npy_array *arr = PyArray_ZEROS(10, NPY_INT32);
// ...
// NumPy 配列を解放
PyArray_DECREF(arr);
return 0;
}
解説
my_signal_handler()
関数:sig
引数で受け取ったシグナルの種類を出力します。PyArray_ZEROS()
関数を使用して、10 個の要素を持つNPY_INT32
型の NumPy 配列を作成します。PyArray_DECREF()
関数を使用して、作成した NumPy 配列を解放します。exit(1)
関数を使用して、シグナルハンドラーから抜け、プログラムを終了します。
main()
関数:NPY_SIGJMP_BUF
構造体を宣言します。signal()
関数を使用して、SIGINT
シグナル (Ctrl+C
キー) に対してmy_signal_handler()
関数を設定します。PyArray_ZEROS()
関数を使用して、10 個の要素を持つNPY_INT32
型の NumPy 配列を作成します。...
の部分は、NumPy 配列に対する処理を記述する場所です。- 作成した NumPy 配列を
PyArray_DECREF()
関数を使用して解放します。
NPY_SIGJMP_BUF
はスレッドセーフではありません。マルチスレッド環境で使用する場合は、スレッドごとに個別のNPY_SIGJMP_BUF
構造体を使用する必要があります。- このコードはあくまでサンプルであり、実際のアプリケーションでは必要に応じて変更する必要があります。
- シグナル処理は、オペレーティングシステムによって異なる場合があります。詳細については、オペレーティングシステムのマニュアルを参照してください。
- NumPy C-API は複雑な API であり、理解するには時間がかかる場合があります。詳細については、NumPy C-API リファレンスを参照してください。
スレッド
NumPy 関数を別スレッドで実行し、メインスレッドでシグナルハンドラーを設定することで、NPY_SIGJMP_BUF
を使用せずにシグナル処理を行うことができます。
利点
- スレッド間通信を使用して、シグナルハンドラーから NumPy 関数に情報を渡すことができる
NPY_SIGJMP_BUF
の制限を回避できる
欠点
- コードが複雑になる
- スレッド間通信のオーバーヘッドが発生する
セマフォア
NumPy 関数はセマフォアを使用して、シグナルハンドラーから NumPy 関数へのシグナル伝達を同期することができます。
利点
- スレッド間通信よりも軽量
NPY_SIGJMP_BUF
の制限を回避できる
欠点
- コードが複雑になる
- セマフォアの使用方法を理解する必要がある
カスタムシグナル
NumPy 関数は、カスタムシグナルを使用して、シグナルハンドラーから NumPy 関数へのシグナル伝達を行うことができます。
利点
- セマフォアよりもシンプル
NPY_SIGJMP_BUF
の制限を回避できる
欠点
- オペレーティングシステムによっては、カスタムシグナルがサポートされていない場合がある
- カスタムシグナルの使用方法を理解する必要がある
シグナルマスク
NumPy 関数は、シグナルマスクを使用して、シグナル処理を一時的に無効にすることができます。
利点
- シンプルで軽量
- 短時間のみの使用に適している
- シグナル処理を完全に無効にするため、他のシグナルも処理されなくなる