sortperm!()の代替手法を比較:Juliaでのソート順序取得ベストプラクティス

2025-03-16

sortperm!() は、与えられた配列を直接変更せずに、その配列をソートした際の要素の順序(置換)を計算する関数です。sortperm() と似ていますが、! が付いているため、結果を引数として与えられた配列に直接書き込むという点が異なります。

基本的な動作

  1. 入力
    sortperm!() は、ソートしたい配列と、結果を格納する整数の配列(置換ベクトル)を受け取ります。
  2. 計算
    入力配列をソートした際の、元の配列における要素のインデックスの順序を計算します。
  3. 出力
    計算されたインデックスの順序を、引数として与えられた整数の配列に直接書き込みます。


julia> arr = [3, 1, 4, 2];
julia> perm = zeros(Int, length(arr)); # 結果を格納する配列を初期化
julia> sortperm!(perm, arr);
julia> perm
4-element Vector{Int64}:
 2
 4
 1
 3

この例では、以下の処理が行われています。

  1. arr という配列 [3, 1, 4, 2] を定義します。
  2. perm という arr と同じ長さの整数の配列を、ゼロで初期化します。これが結果を格納する配列です。
  3. sortperm!(perm, arr) を呼び出し、arr をソートした際のインデックスの順序を perm に書き込みます。
  4. 結果として、perm[2, 4, 1, 3] となります。これは、arr をソートすると [1, 2, 3, 4] となり、それぞれの要素の元のインデックスが 2, 4, 1, 3 であることを意味します。

sortperm!() の利点

  • 速度
    sortperm!() は、sortperm() よりも一般的に高速です。
  • メモリ効率
    sortperm!() は、新しい配列を生成せずに結果を直接書き込むため、メモリ使用量を削減できます。特に大きな配列を扱う場合に有効です。
  • パフォーマンスが重要な場面。
  • ソートされた配列のインデックスの順序が必要な場合。
  • 大きな配列をソートする際に、メモリ使用量を抑えたい場合。


一般的なエラーとトラブルシューティング

    • エラー
      sortperm!() は、第一引数に整数の配列(置換ベクトル)、第二引数にソートしたい配列を受け取ります。これらの引数の型が一致しない場合、エラーが発生します。
    • トラブルシューティング
      • 第一引数の配列が Int 型の配列であることを確認してください。
      • 第一引数の配列の長さが、第二引数の配列の長さと一致していることを確認してください。
      • 第二引数の配列がソート可能な型(数値、文字列など)であることを確認してください。

    • arr = [3.1, 1.2, 4.3, 2.4];
      perm = ["a", "b", "c", "d"]; # Int型ではない
      sortperm!(perm, arr) # エラーが発生
      
  1. 第一引数の配列の初期化忘れ

    • エラー
      sortperm!() は、第一引数の配列に結果を直接書き込みます。初期化されていない配列を渡すと、予期しない結果になる可能性があります。
    • トラブルシューティング
      • 第一引数の配列を zeros(Int, length(arr)) などで初期化してください。

    • arr = [3, 1, 4, 2];
      perm = Vector{Int}(); # 初期化されていない
      sortperm!(perm, arr) # エラーが発生するか、予期しない結果になる
      
  2. ! (感嘆符) の付け忘れ

    • エラー
      sortperm()sortperm!() は異なる関数です。! を付け忘れると、結果が直接書き込まれず、新しい配列が返されます。
    • トラブルシューティング
      • 直接書き込みたい場合は、必ず sortperm!() を使用してください。

    • arr = [3, 1, 4, 2];
      perm = zeros(Int, length(arr));
      sortperm(perm, arr); # !がないので、permに結果が書き込まれない
      println(perm) # 結果は初期化されたままの[0,0,0,0]となる
      
  3. パフォーマンスの問題

    • 問題
      非常に大きな配列を扱う場合、sortperm!() の処理に時間がかかることがあります。
    • トラブルシューティング
      • 配列のサイズを小さくできる場合は、小さくしてください。
      • 必要に応じて、並列処理を検討してください。
      • 配列の型が適切であることを確認してください。例えば、Int64 よりも Int32 の方がメモリ使用量が少なく、高速な場合があります。
      • 配列の中身のデータ型が、ソートしやすいデータ型であるか確認してください。例えば、文字列より数値の方が一般的にソートが早いです。
  4. 予期しないソート順序

    • 問題
      浮動小数点数の配列をソートする場合、NaN(非数)やInf(無限大)の扱いによって、予期しないソート順序になることがあります。
    • トラブルシューティング
      • NaNやInfの扱いを明示的に指定したい場合は、sortperm!(perm, arr, alg=...) のように、alg キーワード引数を使用してください。
      • 必要に応じて、NaNやInfを事前に処理してください。

デバッグのヒント

  • Juliaのドキュメントやコミュニティフォーラムで情報を探してください。
  • 配列のサイズや内容を小さくして、問題が再現するかどうかを確認してください。
  • @show マクロを使用して、変数の値を確認してください。
  • エラーメッセージをよく読んで、問題の原因を特定してください。


例1: 基本的な使用例

# 配列の定義
arr = [3, 1, 4, 2]

# 結果を格納する配列を初期化
perm = zeros(Int, length(arr))

# sortperm!() を実行
sortperm!(perm, arr)

# 結果の表示
println("元の配列: ", arr)
println("置換ベクトル: ", perm)

# perm を使って、ソートされた配列を再構成
sorted_arr = arr[perm]
println("ソートされた配列: ", sorted_arr)

説明

  1. arr という配列を定義します。
  2. perm という arr と同じ長さの整数の配列をゼロで初期化します。
  3. sortperm!(perm, arr) を呼び出し、arr をソートした際のインデックスの順序を perm に書き込みます。
  4. 元の配列と置換ベクトルを表示します。
  5. perm を使って、元の配列 arr からソートされた配列 sorted_arr を再構成します。

例2: 文字列の配列のソート

# 文字列の配列の定義
str_arr = ["apple", "banana", "cherry", "date"]

# 結果を格納する配列を初期化
perm_str = zeros(Int, length(str_arr))

# sortperm!() を実行
sortperm!(perm_str, str_arr)

# 結果の表示
println("元の文字列配列: ", str_arr)
println("置換ベクトル: ", perm_str)

# perm_str を使って、ソートされた配列を再構成
sorted_str_arr = str_arr[perm_str]
println("ソートされた文字列配列: ", sorted_str_arr)

説明

  1. str_arr という文字列の配列を定義します。
  2. perm_str という str_arr と同じ長さの整数の配列をゼロで初期化します。
  3. sortperm!(perm_str, str_arr) を呼び出し、str_arr をソートした際のインデックスの順序を perm_str に書き込みます。
  4. 元の文字列配列と置換ベクトルを表示します。
  5. perm_str を使って、元の配列 str_arr からソートされた配列 sorted_str_arr を再構成します。

例3: 降順ソート

# 配列の定義
arr_desc = [5, 2, 8, 1, 9]

# 結果を格納する配列を初期化
perm_desc = zeros(Int, length(arr_desc))

# sortperm!() を実行し、降順にソート
sortperm!(perm_desc, arr_desc, rev=true)

# 結果の表示
println("元の配列: ", arr_desc)
println("降順の置換ベクトル: ", perm_desc)

# perm_desc を使って、降順にソートされた配列を再構成
sorted_desc_arr = arr_desc[perm_desc]
println("降順にソートされた配列: ", sorted_desc_arr)

説明

  1. arr_desc という配列を定義します。
  2. perm_desc という arr_desc と同じ長さの整数の配列をゼロで初期化します。
  3. sortperm!(perm_desc, arr_desc, rev=true) を呼び出し、arr_desc を降順にソートした際のインデックスの順序を perm_desc に書き込みます。rev=true で降順を指定します。
  4. 元の配列と降順の置換ベクトルを表示します。
  5. perm_desc を使って、元の配列 arr_desc から降順にソートされた配列 sorted_desc_arr を再構成します。

例4: 構造体の配列のソート

# 構造体の定義
struct Person
    name::String
    age::Int
end

# 構造体の配列の定義
people = [Person("Alice", 30), Person("Bob", 25), Person("Charlie", 35)]

# 結果を格納する配列を初期化
perm_people = zeros(Int, length(people))

# ageに基づいてソート
sortperm!(perm_people, people, by=p -> p.age)

# 結果の表示
println("元の構造体配列: ", people)
println("年齢に基づいてソートされた置換ベクトル: ", perm_people)

# perm_people を使って、ソートされた配列を再構成
sorted_people = people[perm_people]
println("年齢に基づいてソートされた構造体配列: ", sorted_people)
  1. Person という構造体を定義します。
  2. people という Person 型の構造体の配列を定義します。
  3. perm_people という people と同じ長さの整数の配列をゼロで初期化します。
  4. sortperm!(perm_people, people, by=p -> p.age) を呼び出し、peopleage フィールドに基づいてソートした際のインデックスの順序を perm_people に書き込みます。by=p -> p.age でソートの基準を指定します。
  5. 元の構造体配列と年齢に基づいてソートされた置換ベクトルを表示します。
  6. perm_people を使って、元の配列 people から年齢に基づいてソートされた配列 sorted_people を再構成します。


sortperm() 関数を使用する (直接書き込みなし)

  • メモリ効率は sortperm!() に劣りますが、元の配列を変更しないため安全です。
  • sortperm!() と似ていますが、! が付いていないため、結果を直接書き込まずに新しい配列として返します。
arr = [3, 1, 4, 2]
perm = sortperm(arr) # 新しい配列を返す
println("置換ベクトル: ", perm)
sorted_arr = arr[perm]
println("ソートされた配列: ", sorted_arr)

sort() 関数と indexin() 関数を組み合わせる

  • sortperm!() よりもステップが多く、効率は劣る場合があります。
  • sort() 関数でソートされた配列を取得し、indexin() 関数で元の配列における各要素のインデックスを取得します。
arr = [3, 1, 4, 2]
sorted_arr = sort(arr)
perm = indexin(sorted_arr, arr)
println("置換ベクトル: ", perm)
println("ソートされた配列: ", sorted_arr)

enumerate() 関数と sort() 関数を組み合わせる

  • 構造体の配列をソートする場合などに便利です。
  • ソートされたペアからインデックスを取り出すことで、置換ベクトルを作成します。
  • enumerate() 関数で要素とそのインデックスのペアを作成し、sort() 関数で要素に基づいてソートします。
arr = [3, 1, 4, 2]
indexed_arr = collect(enumerate(arr))
sorted_indexed_arr = sort(indexed_arr, by = x -> x[2])
perm = [x[1] for x in sorted_indexed_arr]
println("置換ベクトル: ", perm)
sorted_arr = arr[perm]
println("ソートされた配列: ", sorted_arr)

mapslices() 関数と sortperm() 関数を組み合わせる(多次元配列の場合)

  • 多次元配列の特定の次元に対してソート順序を取得する場合、mapslices() 関数と sortperm() 関数を組み合わせます。
arr = [3 1 4; 2 5 1] # 2x3の行列
perm = mapslices(sortperm, arr, dims=2) # 各行に対してソート順序を取得
println("置換ベクトル: ", perm)

sorted_arr = similar(arr)
for i in 1:size(arr, 1)
    sorted_arr[i, :] = arr[i, perm[i, :]]
end
println("ソートされた配列: ", sorted_arr)

OrderedCollections.sortperm() 関数を使用する (OrderedCollectionsパッケージ)

  • 安定ソートが必要な場合に便利です。
  • OrderedCollections パッケージの sortperm() 関数は、安定ソート(同じ値を持つ要素の順序を保持するソート)を提供します。
using OrderedCollections

arr = [3, 1, 4, 2, 1]
perm = sortperm(arr, alg=StableSort)
println("置換ベクトル: ", perm)
sorted_arr = arr[perm]
println("ソートされた配列: ", sorted_arr)
  • 安定ソートが必要な場合は、OrderedCollections.sortperm() を使用します。
  • 多次元配列の特定次元に対してソートする場合は、mapslices()sortperm() を組み合わせます。
  • 構造体の配列をソートする場合は、enumerate()sort() を組み合わせます。
  • ソートされた配列と元の配列のインデックスを同時に取得したい場合は、sort()indexin() を組み合わせます。
  • 元の配列を変更したくない場合は、sortperm() を使用します。
  • メモリ効率と速度を重視する場合は、sortperm!() を使用します。