Juliaのsort関数 Order.by徹底解説!初心者向けサンプルコード付き
byキーワード引数とは?
by
キーワード引数は、sort
やsort!
関数が要素を比較する際に、要素そのものではなく、要素から計算された「キー」に基づいてソートを行うために使用されます。つまり、「何を基準に並び替えるか」を指定する引数です。
具体的な説明
sort
関数は、与えられたコレクション(配列など)の要素を昇順にソートした新しい配列を返します。sort!
関数は、元のコレクションを直接ソートします。
通常のソートでは、要素そのものの値が比較されます。しかし、by
引数を使うと、各要素に対して指定した関数が適用され、その関数の返り値が比較の基準として使われます。
例を用いて説明
-
文字列の長さでソートする
words = ["apple", "banana", "cat", "dog", "elephant"] sorted_words = sort(words, by = length) println(sorted_words) # 出力: ["cat", "dog", "apple", "banana", "elephant"]
この例では、
by = length
と指定することで、文字列の長さに基づいてソートしています。length
関数は文字列の長さを返すので、短い文字列から順に並びます。 -
タプルの2番目の要素でソートする
data = [(1, 5), (3, 2), (2, 8), (4, 1)] sorted_data = sort(data, by = x -> x[2]) println(sorted_data) # 出力: [(4, 1), (3, 2), (1, 5), (2, 8)]
この例では、
by = x -> x[2]
と指定することで、タプルの2番目の要素に基づいてソートしています。x -> x[2]
は匿名関数で、タプルの2番目の要素を返す関数です。 -
絶対値でソートする
numbers = [-3, 1, -5, 2, -4] sorted_numbers = sort(numbers, by = abs) println(sorted_numbers) # 出力: [1, 2, -3, -4, -5]
この例では、
by = abs
と指定することで、数値の絶対値に基づいてソートしています。abs
関数は数値の絶対値を返すので、絶対値が小さい順に並びます。
- コードの可読性向上
ソートの基準を明確に記述できるため、コードの意図が伝わりやすくなります。 - 複雑なデータ構造のソート
タプルや構造体など、複数の要素を持つデータ構造を特定の要素に基づいてソートできます。 - 柔軟なソート
要素そのものの値ではなく、任意の基準でソートできます。
-
byに渡す関数の型エラー
- エラー
by
に渡す関数が、コレクションの要素を引数として受け取り、比較可能な値を返す関数でない場合、型エラーが発生します。 - 例
data = [1, 2, "3", 4] sort(data, by = x -> length(x)) # エラー: 文字列と整数でlengthが使えない
- トラブルシューティング
by
に渡す関数が、コレクションの要素の型に合った処理を行うか確認します。typeof
関数や@code_warntype
マクロを使って、関数の引数と返り値の型を調べます。- コレクションの要素の型を統一するか、型に応じた処理を行う関数を
by
に渡します。
- エラー
-
比較できない値を返す関数
- エラー
by
に渡す関数が、<
などの比較演算子で比較できない値を返す場合、エラーが発生します。 - 例
data = [1, 2, 3] sort(data, by = x -> println(x)) # エラー: printlnは何も返さないため比較できない
- トラブルシューティング
by
に渡す関数が、数値、文字列、タプルなど、比較可能な値を返すか確認します。println
などの副作用を持つ関数をby
に渡さないようにします。
- エラー
-
ソートの安定性
- 問題
同じキーを持つ要素の順序が、ソート前後で変わることがあります。 - 説明
Juliaのsort
関数はデフォルトで安定ソートではありません。安定ソートとは、同じキーを持つ要素の順序を保持するソートアルゴリズムです。 - トラブルシューティング
- 安定ソートが必要な場合は、
sort
関数にstable = true
キーワード引数を指定します。
data = [(1, "a"), (2, "b"), (1, "c")] sort(data, by = x -> x[1], stable = true) # 安定ソート
- 安定ソートが必要な場合は、
- 問題
-
パフォーマンス
- 問題
by
に複雑な関数を渡すと、ソートのパフォーマンスが低下することがあります。 - トラブルシューティング
by
に渡す関数をできるだけ単純なものにします。- 必要であれば、事前にキーを計算して、キーの配列に基づいてソートします。
@benchmark
マクロを使って、ソートのパフォーマンスを計測します。
- 問題
-
予期しないソート結果
- 問題
by
に渡す関数のロジックが期待通りでなく、予期しないソート結果になることがあります。 - トラブルシューティング
by
に渡す関数のロジックを慎重に確認し、テストケースを作成して動作を確認します。by
に渡す関数が、ソートの基準として意図した値を返すか確認します。by
に渡す関数が、すべての要素に対して一貫した比較基準を提供するか確認します。
- 問題
文字列の長さでソートする (昇順)
words = ["apple", "banana", "cat", "dog", "elephant"]
sorted_words = sort(words, by = length)
println(sorted_words) # 出力: ["cat", "dog", "apple", "banana", "elephant"]
by = length
は、各文字列に対してlength
関数を適用し、その返り値(文字列の長さ)を比較の基準として使用します。words
配列の文字列を、それぞれの文字列の長さに基づいて昇順にソートします。
文字列の長さでソートする (降順)
words = ["apple", "banana", "cat", "dog", "elephant"]
sorted_words = sort(words, by = length, rev = true)
println(sorted_words) # 出力: ["elephant", "banana", "apple", "dog", "cat"]
rev = true
を追加することで、降順にソートします。
タプルの2番目の要素でソートする
data = [(1, 5), (3, 2), (2, 8), (4, 1)]
sorted_data = sort(data, by = x -> x[2])
println(sorted_data) # 出力: [(4, 1), (3, 2), (1, 5), (2, 8)]
by = x -> x[2]
は、匿名関数を使って各タプルの2番目の要素を抽出し、比較の基準として使用します。data
配列の各タプルを、2番目の要素に基づいて昇順にソートします。
構造体のフィールドでソートする
struct Person
name::String
age::Int
end
people = [Person("Alice", 30), Person("Bob", 25), Person("Charlie", 35)]
sorted_people = sort(people, by = person -> person.age)
println(sorted_people)
# 出力: [Person("Bob", 25), Person("Alice", 30), Person("Charlie", 35)]
by = person -> person.age
は、各Person
オブジェクトのage
フィールドを抽出し、比較の基準として使用します。Person
構造体の配列を、age
フィールドに基づいて昇順にソートします。
絶対値でソートする
numbers = [-3, 1, -5, 2, -4]
sorted_numbers = sort(numbers, by = abs)
println(sorted_numbers) # 出力: [1, 2, -3, -4, -5]
by = abs
は、各数値に対してabs
関数(絶対値を返す関数)を適用し、その返り値を比較の基準として使用します。numbers
配列の数値を、絶対値に基づいて昇順にソートします。
複数条件でのソート(タプルの場合)
data = [(1, "b"), (2, "a"), (1, "a"), (2, "b")]
sorted_data = sort(data, by = x -> (x[1], x[2]))
println(sorted_data) # 出力: [(1, "a"), (1, "b"), (2, "a"), (2, "b")]
by = x -> (x[1], x[2])
のようにタプルを返すことで、複数のソート条件を指定できます。- タプルの最初の要素、次に二番目の要素でソートします。
sort!関数を使って元の配列を直接ソートする
numbers = [3, 1, 4, 2]
sort!(numbers)
println(numbers) # 出力: [1, 2, 3, 4]
sort!
関数は、元の配列を直接ソートします。
data = [(1, "a"), (2, "b"), (1, "c")]
sorted_data = sort(data, by = x -> x[1], stable = true)
println(sorted_data) # 出力: [(1, "a"), (1, "c"), (2, "b")]
stable=true
を使うことで、同じキーを持つ要素の順番を保持します。
キーの事前計算とソート
by
に渡す関数が複雑な場合、事前にキーを計算して、キーの配列に基づいてソートすることでパフォーマンスを向上させることができます。
data = [(1, "apple"), (3, "banana"), (2, "cat")]
# キーを事前に計算
keys = [x[2] for x in data] # 文字列の配列を作成
# キーのインデックスでソート
sorted_indices = sortperm(keys)
# ソートされたインデックスに基づいて元のデータを並び替え
sorted_data = data[sorted_indices]
println(sorted_data) # 出力: [(1, "apple"), (3, "banana"), (2, "cat")]
sortperm
はsort
するキーのindexを返すので、並び替えの処理を分けて、複雑な処理を高速化できます。- このインデックスを使って、元の
data
配列を並び替えます。 sortperm(keys)
関数は、keys
配列をソートしたときのインデックスの配列を返します。
複数条件でのソート (タプルを使わない方法)
複数条件でソートする場合、by
にタプルを返す代わりに、複数のソートを組み合わせることもできます。
data = [(1, "b"), (2, "a"), (1, "a"), (2, "b")]
# 最初の条件でソート
sorted_data1 = sort(data, by = x -> x[1])
# 最初の条件が同じ要素を、次の条件でソート
sorted_data2 = sort(sorted_data1, by = x -> x[2])
println(sorted_data2) # 出力: [(1, "a"), (1, "b"), (2, "a"), (2, "b")]
- この方法は、条件が増えるほどコードが複雑になる可能性があります。
- 最初に最初の条件でソートし、次にその結果を次の条件でソートします。
OrderedCollections.jlパッケージのsort関数を使う
OrderedCollections.jl
パッケージには、安定ソートを提供するsort
関数があります。
using OrderedCollections
data = [(1, "a"), (2, "b"), (1, "c")]
sorted_data = sort(data, by = x -> x[1])
println(sorted_data) # 出力: [(1, "a"), (1, "c"), (2, "b")]
- パッケージをインストールする必要があります。
] add OrderedCollections
- 安定ソートが必要な場合に便利です。
OrderedCollections.sort
はデフォルトで安定ソートです。
比較関数を直接定義してソートする
by
に渡す関数が複雑な場合、比較関数を直接定義してsort
関数に渡すこともできます。
data = [(1, "b"), (2, "a"), (1, "a"), (2, "b")]
function compare(x, y)
if x[1] < y[1]
return true
elseif x[1] > y[1]
return false
else
return x[2] < y[2]
end
end
sorted_data = sort(data, lt = compare)
println(sorted_data) # 出力: [(1, "a"), (1, "b"), (2, "a"), (2, "b")]
- 複雑な比較ロジックを実装する場合に便利です。
- 比較関数は、2つの要素を引数として受け取り、最初の要素が2番目の要素より小さい場合に
true
を返し、それ以外の場合はfalse
を返す必要があります。 lt
キーワード引数に比較関数を渡します。
構造体を利用して比較関数を定義する
構造体を利用して、比較関数を構造体内部に定義する事で、可読性を高める事ができます。
struct SortableData
x::Int
y::String
end
function Base.isless(a::SortableData, b::SortableData)
if a.x < b.x
return true
elseif a.x > b.x
return false
else
return a.y < b.y
end
end
data = [SortableData(1, "b"), SortableData(2, "a"), SortableData(1, "a"), SortableData(2, "b")]
sorted_data = sort(data)
println(sorted_data)
- 構造体内部に比較ロジックを定義することで、コードの可読性を向上させることができます。
sort
関数は、構造体の配列をソートする際に、このisless
関数を使用します。Base.isless
関数をオーバーライドすることで、構造体同士の比較ロジックを定義できます。