ESLint の `block-scoped-var` ルールを活かしたプログラミング


従来の var キーワードによる変数宣言は、関数スコープではなくファイルスコープを持ちます。つまり、ファイル内で一度宣言された変数は、そのファイル内のどこからでもアクセスおよび変更が可能でした。

一方、block-scoped-var ルールを有効にすると、var キーワードで宣言された変数のスコープがブロックレベルに制限されます。これは、let キーワードconst キーワード で宣言された変数と同じスコープ挙動となります。

ブロックレベルスコープ とは、変数が宣言されたブロック内でのみ有効であり、そのブロックの外側からはアクセスできないことを意味します。このルールは、以下の利点を提供します。

  • バグの発見と修正の容易化: 変数のスコープが限定されるため、バグの検出と修正が容易になります。
  • コードの読みやすさ向上: 変数のスコープが明確になり、コード全体を理解しやすくなります。
  • 意図しない変数変更の防止: 誤って別のブロックで宣言された変数を変更してしまう可能性を低減します。

以下のコード例において、block-scoped-var ルールを有効にすると、message 変数は if ブロック内でのみ有効となり、ブロック外側からのアクセスはエラーとなります。

if (true) {
  var message = 'Hello!';
}

console.log(message); // エラー: message は定義されていません

注意点

  • このルールを有効にする場合は、no-redeclare ルールを無効にする必要があります。
  • block-scoped-var ルールは、古いバージョンの JavaScript エンジンでは動作しない可能性があります。

block-scoped-var ルールの有効化

block-scoped-var ルールを有効にするには、 .eslintrc.json ファイルに以下の設定を追加します。

{
  "rules": {
    "block-scoped-var": "error"
  }
}

このルールは、特に大規模なコードベースにおいて、変数のスコープを明確にし、バグを防ぐのに役立ちます。

  • ルールを有効にする前に、古いバージョンの JavaScript エンジンとの互換性と、no-redeclare ルールとの設定について考慮する必要があります。
  • このルールは、意図しない変数変更の防止、コードの読みやすさの向上、バグの発見と修正の容易化などの利点を提供します。
  • block-scoped-var ルールは、var キーワードで宣言された変数のスコープをブロックレベルに制限します。


意図しない変数変更の防止

function doSomething() {
  var i = 0;

  for (var i = 1; i < 10; i++) {
    console.log(i);
  }

  console.log(i); // 0 が出力される
}

doSomething();

このコードにおいて、for ループ内の var i 宣言は、ブロックレベルスコープとなります。そのため、ループ外の i 変数は変更されず、元の値 (0) が保持されます。

一方、block-scoped-var ルールを無効にした場合、ループ内の宣言はファイルスコープとなり、ループ外の i 変数も 1 から 9 までの値に書き換えられてしまいます。

コードの読みやすさの向上

以下のコード例では、block-scoped-var ルールを使用することで、コードの読みやすさを向上させることができます。

function calculateArea(width, height) {
  var area = width * height;
  return area;
}

var width = 5;
var height = 3;

var totalArea = calculateArea(width, height);
console.log(totalArea); // 15 が出力される

このコードにおいて、calculateArea 関数内の var area 宣言はブロックレベルスコープとなります。そのため、関数内の変数 area と、関数外の変数 width および height は明確に区別され、コード全体が読みやすくなります。

一方、block-scoped-var ルールを無効にした場合、var area 宣言はファイルスコープとなり、関数内外で同じ変数名が使われることになり、コードの理解が難しくなります。

以下のコード例では、block-scoped-var ルールを使用することで、バグを発見しやすくなります。

function checkEligibility(age) {
  if (age >= 18) {
    var isEligible = true;
  }

  console.log(isEligible); // エラー: isEligible は定義されていません
}

checkEligibility(20);

このコードにおいて、if ブロック内の var isEligible 宣言はブロックレベルスコープとなります。そのため、ブロック外側からのアクセスはエラーとなり、潜在的なバグを発見することができます。

一方、block-scoped-var ルールを無効にした場合、isEligible 変数はファイルスコープとなり、エラーが発生せず、バグが検出されない可能性があります。



しかし、いくつかの理由で block-scoped-var ルールを使用できない場合もあります。その場合、以下の代替方法を検討することができます。

let キーワードと const キーワードの使用

ESLint の block-scoped ルールを有効にする代わりに、let キーワードと const キーワードを使用することを検討できます。これらのキーワードは、宣言された変数のスコープをブロックレベルに制限し、block-scoped-var ルールと同様の効果をもたらします。

  • const キーワード: 再宣言できないブロックレベルスコープ変数を宣言します。
  • let キーワード: 再宣言が可能なブロックレベルスコープ変数を宣言します。

if (true) {
  let message = 'Hello!';
}

console.log(message); // エラー: message は定義されていません

古いバージョンの JavaScript エンジンとの互換性

block-scoped-var ルールは、古いバージョンの JavaScript エンジンでは動作しない可能性があります。そのような場合、以下の方法を検討できます。

  • 古いバージョンの JavaScript エンジン用のトランスパイラを使用する: Babel などのトランスパイラを使用して、古いバージョンの JavaScript エンジンでも動作するコードに変換します。
  • ESLint の no-var ルールを使用する: var キーワードの使用を完全に禁止し、let キーワードと const キーワードの使用を強制します。

コードの書き換え

上記の代替方法が適用できない場合は、コードを書き換えて、意図しない変数変更を防ぐ必要があります。具体的な方法は、コードの内容によって異なりますが、以下のような方法が考えられます。

  • 変数を関数引数として渡す
  • クロージャを使用する
  • 変数を別のブロックに移動する