C++ std::mktimeの代替:chronoライブラリと外部ライブラリ徹底比較
2025-04-26
std::mktime
は、ローカルタイムゾーンに基づいて時間を計算します。- この関数は、
std::tm
構造体のフィールドの値を正規化します。つまり、範囲外の値(例えば、13月や61秒など)を適切な範囲に調整します。 std::mktime
は、std::tm
構造体の内容を解析し、対応するカレンダー時間を計算します。std::time_t
型は、カレンダー時間を表す整数型で、通常は1970年1月1日0時0分0秒からの経過秒数を表します(Unix時間)。std::tm
構造体は、年、月、日、時、分、秒などの時間要素を保持します。
関数の形式
std::time_t mktime(std::tm* time_ptr);
time_ptr
:std::tm
構造体へのポインタです。この構造体には、変換したい時間情報が格納されています。
戻り値
- 変換に失敗した場合、
-1
が返されます。 - 変換に成功した場合、カレンダー時間(
std::time_t
型)が返されます。
std::tm構造体
std::tm
構造体は、以下のようなフィールドを持っています。
tm_isdst
: 夏時間フラグ (正の値は夏時間、0は夏時間でない、負の値は不明)tm_yday
: 年の日 (0-365, 0が1月1日)tm_wday
: 曜日 (0-6, 0が日曜日)tm_year
: 1900年からの年数tm_mon
: 月 (0-11, 0が1月)tm_mday
: 月の日 (1-31)tm_hour
: 時 (0-23)tm_min
: 分 (0-59)tm_sec
: 秒 (0-59)
使用例
#include <iostream>
#include <ctime>
int main() {
std::tm timeinfo = {};
timeinfo.tm_year = 2023 - 1900; // 2023年
timeinfo.tm_mon = 11; // 12月
timeinfo.tm_mday = 25; // 25日
timeinfo.tm_hour = 12; // 12時
timeinfo.tm_min = 30; // 30分
timeinfo.tm_sec = 0; // 0秒
std::time_t time_t_value = std::mktime(&timeinfo);
if (time_t_value != -1) {
std::cout << "カレンダー時間: " << time_t_value << std::endl;
std::cout << std::asctime(&timeinfo) << std::endl;
} else {
std::cout << "変換に失敗しました。" << std::endl;
}
return 0;
}
std::mktime
は、std::tm
構造体内のフィールドを正規化します。例えば、tm_mon
に13を設定すると、tm_year
とtm_mon
の値が調整されます。- ローカルタイムゾーンの設定に注意する必要があります。タイムゾーンが正しく設定されていない場合、結果が期待と異なる可能性があります。
std::mktime
は、std::tm
構造体のtm_wday
とtm_yday
フィールドを計算して設定します。これらのフィールドを自分で設定する必要はありません。tm_mon
は、0から11までの範囲で指定します(0が1月)。tm_year
は、1900年からの年数で指定します。
-
tm_year の誤り
- エラー
tm_year
は1900年からの年数で指定する必要があります。例えば、2023年を指定する場合、tm_year = 2023 - 1900;
とする必要があります。これを誤ってtm_year = 2023;
とすると、1900+2023=3923年として扱われてしまいます。 - トラブルシューティング
年を正しく計算しているか確認してください。現在年数から1900を引いた値をtm_year
に設定します。 - 例
std::tm timeinfo = {}; timeinfo.tm_year = 2023 - 1900; // 正しい // timeinfo.tm_year = 2023; // 間違い
- エラー
-
tm_mon の誤り
- エラー
tm_mon
は0から11の範囲で指定します(0が1月)。これを1から12で指定すると、月がずれてしまいます。 - トラブルシューティング
月を正しく指定しているか確認してください。1月を0、2月を1、...、12月を11として設定します。 - 例
std::tm timeinfo = {}; timeinfo.tm_mon = 11; // 12月(正しい) // timeinfo.tm_mon = 12; // 1月として扱われてしまう(間違い)
- エラー
-
タイムゾーンの問題
- エラー
std::mktime
はローカルタイムゾーンに基づいて時間を計算します。タイムゾーンが正しく設定されていない場合、結果が期待と異なることがあります。特に、夏時間(DST)の扱いに注意が必要です。 - トラブルシューティング
- 環境変数の
TZ
を確認し、タイムゾーンが正しく設定されているか確認します。 std::tm
構造体のtm_isdst
フィールドを適切に設定します。- 正の値: 夏時間
- 0: 夏時間でない
- -1: 不明(
std::mktime
が自動的に判定)
- タイムゾーン関連のライブラリ(
tzdata
など)が最新であることを確認します。
- 環境変数の
- 例
// 例:タイムゾーンの設定 #ifdef _WIN32 _putenv("TZ=JST-9"); // Windowsの場合 #else setenv("TZ", "JST-9", 1); // Unix系の場合 #endif tzset(); // タイムゾーンを更新
- エラー
-
範囲外の値
- エラー
std::tm
構造体のフィールドに範囲外の値を設定すると、std::mktime
は値を正規化しようとしますが、意図しない結果になることがあります。 - トラブルシューティング
各フィールドの値が適切な範囲内にあることを確認します。tm_sec
: 0-59tm_min
: 0-59tm_hour
: 0-23tm_mday
: 1-31tm_mon
: 0-11
- 例
std::tm timeinfo = {}; timeinfo.tm_mon = 13; // 範囲外の値 std::time_t t = std::mktime(&timeinfo); // 正規化されるが、意図しない結果になる可能性
- エラー
-
戻り値の確認
- エラー
std::mktime
は変換に失敗した場合、-1
を返します。戻り値をチェックせずに処理を続けると、予期しない動作を引き起こす可能性があります。 - トラブルシューティング
std::mktime
の戻り値を必ず確認し、-1
の場合はエラー処理を行います。 - 例
std::time_t time_t_value = std::mktime(&timeinfo); if (time_t_value == -1) { std::cerr << "変換に失敗しました。" << std::endl; // エラー処理 }
- エラー
-
tm_wday と tm_yday の扱い
- エラー
これらのフィールドを自分で設定する必要はありません。std::mktime
が自動的に計算して設定します。自分で設定した場合、矛盾が生じる可能性があります。 - トラブルシューティング
これらのフィールドは設定せずに、std::mktime
に任せます。
- エラー
例1: 指定した日時をカレンダー時間 (std::time_t) に変換する
#include <iostream>
#include <ctime>
int main() {
std::tm timeinfo = {};
timeinfo.tm_year = 2023 - 1900; // 2023年
timeinfo.tm_mon = 11; // 12月 (0-11)
timeinfo.tm_mday = 25; // 25日
timeinfo.tm_hour = 12; // 12時
timeinfo.tm_min = 30; // 30分
timeinfo.tm_sec = 0; // 0秒
std::time_t time_t_value = std::mktime(&timeinfo);
if (time_t_value != -1) {
std::cout << "カレンダー時間: " << time_t_value << std::endl;
//ctime関数でtime_tを文字列に変換する。
std::cout << "ctimeによる表示: " << std::ctime(&time_t_value);
//asctime関数でstd::tmを文字列に変換する。
std::cout << "asctimeによる表示: " << std::asctime(&timeinfo);
} else {
std::cerr << "変換に失敗しました。" << std::endl;
}
return 0;
}
説明
std::tm
構造体に、変換したい日時を設定します。tm_year
は1900年からの年数、tm_mon
は0から11までの月で指定することに注意してください。std::mktime
関数を呼び出し、std::tm
構造体へのポインタを渡します。- 戻り値が
-1
でない場合、変換は成功しています。変換されたカレンダー時間 (std::time_t
) を表示します。 ctime
関数でtime_tを文字列に変換して表示します。asctime
関数でstd::tmを文字列に変換して表示します。- 変換に失敗した場合は、エラーメッセージを表示します。
例2: 現在の日時をカレンダー時間から std::tm 構造体に変換する
#include <iostream>
#include <ctime>
int main() {
std::time_t now = std::time(nullptr);
std::tm* local_time = std::localtime(&now);
if (local_time != nullptr) {
std::cout << "現在の日時: " << std::asctime(local_time);
//std::tm構造体の各フィールドにアクセスする
std::cout << "年: " << local_time->tm_year + 1900 << std::endl;
std::cout << "月: " << local_time->tm_mon + 1 << std::endl;
std::cout << "日: " << local_time->tm_mday << std::endl;
std::cout << "時: " << local_time->tm_hour << std::endl;
std::cout << "分: " << local_time->tm_min << std::endl;
std::cout << "秒: " << local_time->tm_sec << std::endl;
} else {
std::cerr << "現在時刻の取得に失敗しました。" << std::endl;
}
return 0;
}
説明
std::time(nullptr)
関数を使用して、現在時刻のカレンダー時間 (std::time_t
) を取得します。std::localtime
関数を呼び出し、取得したカレンダー時間へのポインタを渡します。この関数は、ローカルタイムゾーンに基づいてstd::tm
構造体へのポインタを返します。- 戻り値が
nullptr
でない場合、変換は成功しています。std::asctime
関数を使用して、std::tm
構造体の内容を文字列として表示します。 std::tm
構造体の各フィールドにアクセスし、年、月、日、時、分、秒を個別に出力します。tm_year
とtm_mon
は、それぞれ1900を加算、1を加算して表示します。- 変換に失敗した場合は、エラーメッセージを表示します。
例3: 夏時間 (DST) の考慮
#include <iostream>
#include <ctime>
int main() {
std::tm timeinfo = {};
timeinfo.tm_year = 2023 - 1900;
timeinfo.tm_mon = 6; // 7月
timeinfo.tm_mday = 15;
timeinfo.tm_hour = 12;
timeinfo.tm_min = 0;
timeinfo.tm_sec = 0;
timeinfo.tm_isdst = -1; // 夏時間を自動判定
std::time_t time_t_value = std::mktime(&timeinfo);
if (time_t_value != -1) {
std::cout << "カレンダー時間: " << time_t_value << std::endl;
std::cout << std::asctime(&timeinfo);
} else {
std::cerr << "変換に失敗しました。" << std::endl;
}
return 0;
}
tm_isdst
フィールドを-1
に設定することで、夏時間を自動的に判定します。std::mktime
は、システムのタイムゾーン設定に基づいて夏時間を考慮してカレンダー時間を計算します。
std::chrono ライブラリ
C++11以降で導入された<chrono>
ライブラリは、時間と期間を扱うためのより強力で柔軟なツールを提供します。std::chrono
を使用すると、std::mktime
よりも型安全で直感的なコードを書くことができます。
- 例
- 利点
- 型安全: 時間と期間を明確に区別し、型の不一致によるエラーを防止します。
- 柔軟性: さまざまな時間単位(秒、ミリ秒、マイクロ秒など)やタイムゾーンをサポートします。
- 可読性: コードがより明確で理解しやすくなります。
#include <iostream>
#include <chrono>
#include <iomanip> // std::put_time用
int main() {
// 2023年12月25日12時30分0秒のchrono::system_clock::time_pointを作成
std::tm tm{};
tm.tm_year = 2023 - 1900;
tm.tm_mon = 11; // 12月
tm.tm_mday = 25;
tm.tm_hour = 12;
tm.tm_min = 30;
tm.tm_sec = 0;
std::time_t tt = std::mktime(&tm);
if (tt == -1) {
std::cerr << "mktime error" << std::endl;
return 1;
}
auto tp = std::chrono::system_clock::from_time_t(tt);
// chrono::system_clock::time_pointを文字列に変換して表示
std::time_t time_t_from_tp = std::chrono::system_clock::to_time_t(tp);
std::cout << std::ctime(&time_t_from_tp);
//chronoを用いてフォーマット指定して表示。
auto in_time_t = std::chrono::system_clock::to_time_t(tp);
std::cout << std::put_time(std::localtime(&in_time_t), "%Y-%m-%d %H:%M:%S") << std::endl;
return 0;
}
外部ライブラリ (Boost.Date_Time, ICU)
より複雑な時間処理やタイムゾーン管理が必要な場合は、外部ライブラリの使用を検討できます。
- 注意点
- 外部ライブラリの導入と学習が必要です。
- プロジェクトの依存関係が増加します。
- 利点
- 高度な機能: 複雑な時間処理やタイムゾーン管理を容易にします。
- クロスプラットフォーム: さまざまな環境で一貫した動作を保証します。
- ICU (International Components for Unicode)
- 国際化と地域化のためのライブラリです。
- タイムゾーン、カレンダー、日付と時間のフォーマットなどをサポートします。
- 多言語アプリケーションに適しています。
- Boost.Date_Time
- 広範な日付と時間の処理機能を提供します。
- タイムゾーン、期間、日付演算などをサポートします。
- クロスプラットフォームで動作します。
プラットフォーム固有のAPI
特定のプラットフォーム(Windows、Linuxなど)では、専用の時間処理APIが提供されています。
- 注意点
- プラットフォーム依存のコードになるため、移植性が低下します。
- 利点
- プラットフォームに最適化されたパフォーマンス。
- プラットフォーム固有の機能へのアクセス。
- Linux
timegm
,localtime_r
,gmtime_r
などの関数や、struct timespec
などの構造体を使用できます。 - Windows
SYSTEMTIME
,FILETIME
などの構造体や、GetSystemTime
,FileTimeToSystemTime
などの関数を使用できます。
タイムスタンプを直接操作する
std::time_t
のようなタイムスタンプを直接操作することで、単純な時間計算を行うことができます。
- 注意点
- タイムゾーンや夏時間の処理が複雑になります。
- 計算の際に、秒単位で計算するので、可読性が落ちる場合がある。
- 利点
- シンプルな処理に適しています。
- 依存関係が少ないです。
- コードの可読性と保守性: コードの理解しやすさとメンテナンスの容易さ。
- パフォーマンス: 時間処理のパフォーマンス要件。
- プラットフォームの互換性: クロスプラットフォーム対応が必要かどうか。
- プロジェクトの要件: 必要な時間処理の複雑さや精度。