【C++】std::fwrite をマスター!効率的なバイナリデータ書き込み

2025-05-31

std::fwrite は、C++ (より正確には、Cの標準ライブラリの一部である <cstdio> ヘッダーに含まれる関数) において、指定されたメモリ領域から、指定されたファイルストリームへ、データのブロックを書き込むために使用される関数です。

より具体的には、以下の処理を行います。

  1. 書き込むデータの先頭アドレス (ptr): 書き込みたいデータが格納されているメモリの先頭アドレスを指定します。これは、配列や構造体などのデータの先頭を指すポインタです。
  2. 各要素のサイズ (size): 書き込むデータの各要素のバイト数を指定します。例えば、int 型のデータを書き込む場合は sizeof(int) となります。
  3. 要素数 (count): 書き込む要素の個数を指定します。例えば、10個の int 型のデータを書き込む場合は 10 となります。
  4. 書き込み先のファイルストリーム (stream): データを書き込む先のファイルストリームを指定します。これは、std::fopen (または C++ の std::fstream など) によって正常にオープンされたファイルポインタです。

これらの引数に基づいて、std::fwriteptr から始まるメモリ領域にある size バイトのデータを count 個、stream が指すファイルに連続して書き込もうとします。

戻り値:

std::fwrite は、実際に書き込みに成功した要素の個数を返します。通常、これは引数 count と同じ値になります。しかし、書き込みエラーが発生した場合 (例えば、ディスクの空き容量がないなど)、count よりも小さい値が返されることがあります。エラーが発生したかどうかをより詳細に知るためには、std::ferror 関数を使用することができます。

:

#include <iostream>
#include <cstdio>
#include <vector>

int main() {
    std::vector<int> data = {10, 20, 30, 40, 50};
    const char* filename = "data.bin";

    // バイナリ書き込みモードでファイルを開く
    FILE* file = std::fopen(filename, "wb");
    if (file == nullptr) {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした: " << filename << std::endl;
        return 1;
    }

    // データをファイルに書き込む
    size_t written_count = std::fwrite(data.data(), sizeof(int), data.size(), file);
    if (written_count == data.size()) {
        std::cout << data.size() << " 個の整数をファイルに書き込みました: " << filename << std::endl;
    } else {
        std::cerr << "データの書き込みに失敗しました (書き込み数: " << written_count << ")" << std::endl;
    }

    // ファイルを閉じる
    std::fclose(file);

    return 0;
}

この例では、std::vector<int> 型の data の内容を、バイナリファイル "data.bin" に書き込んでいます。data.data() はベクタの先頭要素へのポインタを返し、sizeof(int) は各整数のバイト数、data.size() は書き込む整数の個数を指定しています。

重要な点:

  • 書き込みエラーが発生する可能性があるため、戻り値をチェックしてエラー処理を行うことが推奨されます。
  • 書き込み先のファイルは、適切なモード ("wb" など、バイナリ書き込みモード) で開かれている必要があります。
  • std::fwrite は、データをバイナリ形式で書き込みます。つまり、メモリ上のデータの表現がそのままファイルに書き込まれます。テキスト形式で書き込みたい場合は、std::fprintf などの別の関数を使用する必要があります。


ファイルストリームが無効 (無効なファイルポインタ)

  • トラブルシューティング:
    • std::fopen の戻り値を必ず確認し、nullptr でないことを確認する。もし nullptr であれば、エラーメッセージ (perror などで出力されることが多い) を確認し、ファイルパスやアクセス権、ディスク容量などを調査する。
    • ファイルの使用が終わったらすぐに std::fclose を呼び出すようにし、それ以降はファイルポインタを使用しないようにする。
    • std::fopen でファイルを開く際のモード ("wb", "ab", "rb+" など) が、実行したい操作に適しているか確認する。書き込みを行う場合は、書き込み可能なモードで開く必要がある。
  • 原因:
    • std::fopen (または C++ のファイルストリームオブジェクトの open() 関数) が失敗し、有効なファイルポインタが返されなかったにもかかわらず、その後の std::fwrite を呼び出している。
    • ファイルがすでに std::fclose (またはファイルストリームオブジェクトの close() 関数) で閉じられているのに、再度 std::fwrite を呼び出している。
    • ファイルを開く際のモードが不適切である (例えば、読み取り専用モードで開いているのに書き込もうとしている)。
  • エラー: std::fwrite に渡されたファイルストリーム (FILE* stream) が nullptr である、または無効な状態になっている。

書き込みサイズまたは要素数の誤り

  • トラブルシューティング:
    • sizeof() を使用する際は、対象となるデータの型を正しく指定しているか確認する。配列全体を書き込む場合は、sizeof(配列の要素型) に配列の要素数を掛けるか、配列の先頭アドレスと要素数を正しく渡す。
    • 書き込むデータのサイズと要素数をプログラム中で正確に管理する。変数の型や配列のサイズなどを再確認する。
  • 原因:
    • sizeof() 演算子の使い方を誤っている。例えば、ポインタに対して sizeof() を使用すると、ポインタ自体のサイズが返されるため、データのサイズとは異なる場合がある。
    • 書き込む要素数を誤って指定している。例えば、配列の要素数と異なる値を count に渡している。
  • エラー: size (各要素のサイズ) または count (要素数) の引数が、実際に書き込みたいデータの構造と一致していない。

書き込みエラー (ディスク容量不足、アクセス権限など)

  • トラブルシューティング:
    • std::fwrite の戻り値を必ず確認し、期待される書き込み数と一致しない場合はエラーが発生したと判断する。
    • エラー発生時に std::ferror(stream) を呼び出して、ファイルストリームのエラーインジケータを確認する。エラーが発生していれば、その原因を調査する (ただし、具体的なエラーの種類はシステム依存である場合が多い)。
    • ディスクの空き容量を確認する。
    • ファイルが保存されているディレクトリのアクセス権限を確認する。
    • より詳細なエラー情報を得るために、システムのエラーログなどを確認する。
  • 原因:
    • ディスクの空き容量が不足している。
    • ファイルシステム上のアクセス権限がないため、ファイルに書き込むことができない。
    • ハードウェア的なエラー (ディスクの故障など) が発生している。
  • エラー: std::fwrite の戻り値が、書き込みを試みた要素数 (count) よりも小さい。

バッファリングによる問題

  • トラブルシューティング:
    • 書き込み直後にファイルの内容を確実に反映させたい場合は、std::fflush(stream) を呼び出して、ファイルストリームのバッファを明示的にフラッシュする。
    • ファイルを閉じる (std::fclose) と、バッファに残っているデータは自動的に書き込まれる。
    • ファイルを開く際に、バッファリングの設定を変更することも可能だが、通常はデフォルトの設定で問題ないことが多い。
  • エラー: std::fwrite を呼び出した直後にファイルの内容を確認しても、書き込んだはずのデータが反映されていない。
  • トラブルシューティング:
    • バイナリデータを書き込む場合は、std::fopen のモード指定で "b" (バイナリ) を含むモード ("wb", "ab+" など) を使用する。
  • 原因:
    • テキストモードでは、改行文字 (\n) などがプラットフォーム依存の形式に変換されることがある。バイナリデータをそのまま書き込みたい場合は、必ずバイナリモード ("wb") でファイルを開く必要がある。
  • エラー: テキストモード ("wt") で開いたファイルにバイナリデータを書き込もうとして、予期しないデータの変換や破損が発生する。


#include <iostream>
#include <fstream>
#include <vector>

int main() {
    std::vector<int> data = {10, 20, 30, 40, 50};
    const char* filename = "integers.bin";

    // バイナリ書き込みモードでファイルを開く (C++のファイルストリームを使用)
    std::ofstream outputFile(filename, std::ios::binary);

    if (outputFile.is_open()) {
        // データの先頭アドレス、各要素のサイズ、要素数、ファイルストリームを指定して書き込む
        outputFile.write(reinterpret_cast<const char*>(data.data()), data.size() * sizeof(int));

        if (outputFile.good()) {
            std::cout << data.size() << " 個の整数をファイルに書き込みました: " << filename << std::endl;
        } else {
            std::cerr << "ファイル書き込み中にエラーが発生しました。" << std::endl;
        }

        outputFile.close();
    } else {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした: " << filename << std::endl;
        return 1;
    }

    return 0;
}

解説

  1. <fstream> ヘッダーをインクルードして、C++ のファイル入出力ストリームを使用します。
  2. std::ofstream オブジェクト outputFile をバイナリ書き込みモード (std::ios::binary) で作成し、ファイルを開きます。
  3. outputFile.write() 関数を使用してデータを書き込みます。
    • 最初の引数は、書き込むデータの先頭アドレスを const char* 型にキャストしたものです。data.data()std::vector の内部配列の先頭ポインタを返します。
    • 2番目の引数は、書き込むバイト数です。これは、要素数 (data.size()) に各要素のサイズ (sizeof(int)) を掛けた値になります。
  4. outputFile.good() は、ストリームの状態がエラーなしであることを確認します。
  5. 最後に outputFile.close() でファイルを閉じます。

この例では、構造体の配列をバイナリファイルに書き込みます。

#include <iostream>
#include <fstream>
#include <vector>

struct Person {
    char name[50];
    int age;
};

int main() {
    std::vector<Person> people = {
        {"太郎", 30},
        {"花子", 25},
        {"一郎", 40}
    };
    const char* filename = "people.bin";

    std::ofstream outputFile(filename, std::ios::binary);

    if (outputFile.is_open()) {
        // 構造体の配列全体を書き込む
        outputFile.write(reinterpret_cast<const char*>(people.data()), people.size() * sizeof(Person));

        if (outputFile.good()) {
            std::cout << people.size() << " 個の Person 構造体をファイルに書き込みました: " << filename << std::endl;
        } else {
            std::cerr << "ファイル書き込み中にエラーが発生しました。" << std::endl;
        }

        outputFile.close();
    } else {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした: " << filename << std::endl;
        return 1;
    }

    return 0;
}

解説

  1. Person という構造体を定義します。
  2. std::vector<Person> 型の people ベクタを作成し、いくつかのデータを格納します。
  3. outputFile.write() 関数を使用して、people ベクタの内容をファイルに書き込みます。
    • 書き込むバイト数は、要素数 (people.size()) に構造体 Person のサイズ (sizeof(Person)) を掛けた値です。

これは、C 標準ライブラリの std::fwrite 関数を C++ で使用する例です。

#include <iostream>
#include <cstdio>
#include <vector>

int main() {
    std::vector<double> data = {3.14, 2.718, 1.618};
    const char* filename = "doubles.bin";

    // C スタイルのファイルオープン
    FILE* file = std::fopen(filename, "wb");

    if (file != nullptr) {
        // std::fwrite を使用してデータを書き込む
        size_t written_count = std::fwrite(data.data(), sizeof(double), data.size(), file);

        if (written_count == data.size()) {
            std::cout << data.size() << " 個の double 型の値をファイルに書き込みました: " << filename << std::endl;
        } else {
            std::cerr << "データの書き込みに失敗しました (書き込み数: " << written_count << ")" << std::endl;
        }

        // C スタイルのファイルクローズ
        std::fclose(file);
    } else {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした: " << filename << std::endl;
        return 1;
    }

    return 0;
}
  1. <cstdio> ヘッダーをインクルードして、C 標準入出力関数を使用します。
  2. std::fopen() 関数を使用して、ファイルをバイナリ書き込みモード ("wb") で開きます。戻り値は FILE* 型のファイルポインタです。
  3. std::fwrite() 関数を使用してデータを書き込みます。
    • 最初の引数は、書き込むデータの先頭アドレスです。
    • 2番目の引数は、各要素のサイズ (sizeof(double))。
    • 3番目の引数は、書き込む要素数 (data.size()).
    • 4番目の引数は、ファイルポインタ (file).
  4. std::fwrite() の戻り値は、実際に書き込みに成功した要素の数です。期待される要素数と一致するかどうかを確認することで、書き込みが成功したかを判断できます。
  5. 最後に std::fclose() 関数でファイルを閉じます。


C++ のファイルストリーム (std::ofstream) の write() メンバ関数

#include <iostream>
#include <fstream>
#include <vector>

int main() {
    std::vector<int> data = {10, 20, 30, 40, 50};
    const char* filename = "integers_ofstream.bin";

    std::ofstream outputFile(filename, std::ios::binary);

    if (outputFile.is_open()) {
        outputFile.write(reinterpret_cast<const char*>(data.data()), data.size() * sizeof(int));
        if (outputFile.good()) {
            std::cout << "std::ofstream::write() でデータを書き込みました。" << std::endl;
        } else {
            std::cerr << "std::ofstream::write() でエラーが発生しました。" << std::endl;
        }
        outputFile.close();
    } else {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした。" << std::endl;
    }

    return 0;
}

利点

  • ストリームの状態をオブジェクトとして扱えるため、より自然なプログラミングが可能です。
  • エラー処理が good(), fail(), bad() などのメンバ関数を通じてより柔軟に行えます。
  • C++ のオブジェクト指向のインターフェースであり、型安全性が向上します。

個々の要素をループで書き込む

バイナリデータであっても、必要であれば各要素を個別にファイルストリームに書き込むことができます。ただし、これは一般的に効率が悪く、構造化されたデータを扱う場合には煩雑になります。

#include <iostream>
#include <fstream>
#include <vector>

int main() {
    std::vector<int> data = {10, 20, 30, 40, 50};
    const char* filename = "integers_loop.bin";

    std::ofstream outputFile(filename, std::ios::binary);

    if (outputFile.is_open()) {
        for (int value : data) {
            outputFile.write(reinterpret_cast<const char*>(&value), sizeof(int));
            if (outputFile.fail()) {
                std::cerr << "書き込み中にエラーが発生しました。" << std::endl;
                break;
            }
        }
        outputFile.close();
        std::cout << "ループでデータを書き込みました。" << std::endl;
    } else {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした。" << std::endl;
    }

    return 0;
}

注意点

  • 構造体などの複合的なデータをこの方法で書き込む場合、メンバ変数を一つずつ書き込む必要があり、データの整合性を保つのが難しくなる可能性があります。

メモリマップドファイル (Memory-Mapped Files)

より高度な手法として、メモリマップドファイルを使用する方法があります。これは、ファイルをメモリ空間にマッピングし、メモリへの書き込み操作が直接ファイルへの書き込みに反映されるようにするものです。OS の機能を利用するため、移植性や扱いには注意が必要です。

#include <iostream>
#include <fstream>
#include <vector>
#include <sys/mman.h> // POSIX システムの場合 (Windows では別のAPIを使用)
#include <fcntl.h>
#include <unistd.h>

int main() {
    std::vector<int> data = {10, 20, 30, 40, 50};
    const char* filename = "integers_mmap.bin";
    size_t dataSize = data.size() * sizeof(int);

    int fd = open(filename, O_RDWR | O_CREAT, 0666);
    if (fd == -1) {
        std::cerr << "ファイルのオープンに失敗しました。" << std::endl;
        return 1;
    }

    if (ftruncate(fd, dataSize) == -1) {
        std::cerr << "ファイルのサイズ変更に失敗しました。" << std::endl;
        close(fd);
        return 1;
    }

    void* mappedMemory = mmap(nullptr, dataSize, PROT_READ | PROT_WRITE, MAP_SHARED, fd, 0);
    if (mappedMemory == MAP_FAILED) {
        std::cerr << "メモリマッピングに失敗しました。" << std::endl;
        close(fd);
        return 1;
    }

    std::memcpy(mappedMemory, data.data(), dataSize);

    if (munmap(mappedMemory, dataSize) == -1) {
        std::cerr << "メモリマッピングの解除に失敗しました。" << std::endl;
    }

    close(fd);
    std::cout << "メモリマップドファイルにデータを書き込みました。" << std::endl;

    return 0;
}

利点

  • ファイルの一部だけをメモリにロードして操作できます。
  • 大規模なファイルを扱う場合に、効率的な読み書きが可能です。

注意点

  • メモリ管理やファイル同期についてより深い理解が必要です。
  • OS 固有の API を使用するため、移植性が低くなる可能性があります。

シリアライゼーションライブラリ

複雑なデータ構造 (クラスオブジェクトなど) を永続化する場合、シリアライゼーションライブラリを使用することが一般的です。これらのライブラリは、オブジェクトの状態をバイトストリームに変換し、ファイルに書き込んだり、ネットワーク経由で送信したりする機能を提供します。

一般的な C++ シリアライゼーションライブラリ

  • Protocol Buffers (protobuf), Apache Thrift, JSON ライブラリ (nlohmann/json など): これらは主に異なるシステム間でのデータ交換や設定ファイルの保存などに使用されますが、広義のシリアライゼーションツールと言えます。
  • Cereal: ヘッダーオンリーの比較的新しいライブラリで、使いやすさとパフォーマンスに優れています。
  • Boost.Serialization: 非常に強力で柔軟なライブラリですが、Boost ライブラリ全体の導入が必要です。

これらのライブラリを使用すると、std::fwrite を直接使用するよりも高レベルな抽象化でデータの永続化を扱うことができます。

例 (Cereal を使用した整数のベクタのシリアライズ)

#include <iostream>
#include <fstream>
#include <vector>
#include <cereal/archives/binary.hpp>
#include <cereal/types/vector.hpp>

int main() {
    std::vector<int> data = {10, 20, 30, 40, 50};
    const char* filename = "integers_cereal.bin";

    std::ofstream os(filename, std::ios::binary);
    if (os.is_open()) {
        cereal::binary_oarchive archive(os);
        archive(data); // ベクタ全体をアーカイブに書き込む
        os.close();
        std::cout << "Cereal を使用してデータを書き込みました。" << std::endl;
    } else {
        std::cerr << "ファイルを開けませんでした。" << std::endl;
    }

    return 0;
}

利点

  • データのバージョン管理や移植性などを考慮した設計がされていることが多いです。
  • 複雑なデータ構造を簡単に保存・復元できます。
  • シリアライズ・デシリアライズの処理オーバーヘッドが発生する可能性があります。
  • 外部ライブラリの導入が必要になる場合があります。