Qt QListWidgetの表示を究める：openPersistentEditor()代替手法とカスタム化

2025-05-31

`QListWidget::openPersistentEditor()` とは？

QListWidget::openPersistentEditor() は、Qtの QListWidget クラスのメンバ関数で、指定されたアイテムに対して「永続的なエディタ」を開くために使用されます。

通常、QListWidget のアイテムは、ダブルクリックなどの特定の操作によって一時的に編集可能になります。編集が完了すると、エディタは閉じられ、表示は元の状態に戻ります。しかし、openPersistentEditor() を使うと、ユーザーが他のアイテムを選択したり、ウィジェットからフォーカスを外したりしても、そのアイテムのエディタが開いたままになります。

どのようなときに使うか？

この関数は、以下のような状況で役立ちます。

データ入力フォームのようなインターフェースを作成したい場合
リストの各行がデータ入力フィールドとして機能し、ユーザーが複数のフィールドを同時に編集できるようにしたい場合に便利です。
カスタムデリゲートと組み合わせて複雑なエディタを表示したい場合
QAbstractItemDelegate を継承したカスタムデリゲートを使用することで、チェックボックス、コンボボックス、スライダーなど、より複雑なカスタムウィジェットをアイテムのエディタとして表示できます。openPersistentEditor() を使うことで、これらのカスタムウィジェットを常に表示させておくことが可能になります。
常に特定のアイテムを編集可能にしておきたい場合
例えば、ユーザーが常に入力し続ける必要のあるリスト内の項目がある場合などです。

使い方

openPersistentEditor() メソッドは、引数として編集を開きたい QListWidgetItem のポインタを受け取ります。

// 例: QListWidget の最初のアイテムに対して永続的なエディタを開く
QListWidgetItem* item = listWidget->item(0); // 最初のアイテムを取得
if (item) {
    listWidget->openPersistentEditor(item);
}

カスタムデリゲートとの連携
ほとんどの場合、openPersistentEditor() は、アイテムの表示と編集ロジックを制御するために QAbstractItemDelegate を継承したカスタムデリゲートと組み合わせて使用されます。デリゲートの createEditor() メソッドで、表示したいカスタムエディタウィジェットを返します。
エディタの閉じ方
永続的なエディタを閉じるには、QListWidget::closePersistentEditor() メソッドを使用します。
リソースの消費
永続的なエディタは、ウィジェットが常にメモリ上に存在するため、通常の編集（一時的なエディタ）よりも多くのリソースを消費する可能性があります。多数のアイテムに対して永続的なエディタを開くと、パフォーマンスに影響が出る可能性があるため、注意が必要です。

`QListWidget::openPersistentEditor()` のよくあるエラーとトラブルシューティング

QListWidget::openPersistentEditor() は非常に便利な機能ですが、正しく使用しないと予期せぬ挙動やエラーが発生することがあります。

エディタが表示されない、または期待通りに動作しない

原因

openPersistentEditor() を呼び出すタイミングの問題
デリゲートを設定する前に openPersistentEditor() を呼び出している場合、期待通りに動作しないことがあります。デリゲートは、アイテムの作成やウィジェットへの追加よりも前に設定することが推奨されます。
デリゲートが設定されていない
QListWidget にカスタムデリゲートを設定していない場合、デフォルトの QStyledItemDelegate が使用されます。この場合、シンプルな QLineEdit などがエディタとして表示されますが、カスタムのエディタを期待している場合はデリゲートの設定が必要です。
カスタムデリゲートが正しく実装されていない
QAbstractItemDelegate または QStyledItemDelegate を継承してカスタムエディタを使用している場合、createEditor()、setEditorData()、setModelData()、updateEditorGeometry() などのメソッドが適切に実装されていないと、エディタが正しく表示されなかったり、データのやり取りがうまくいかなかったりします。
アイテムが編集可能になっていない
QListWidgetItem はデフォルトでは編集可能ではありません。openPersistentEditor() を呼び出す前に、アイテムのフラグに Qt::ItemIsEditable を設定する必要があります。

トラブルシューティング

qDebug() を使ったデバッグ
デリゲートの createEditor() や setEditorData() などが呼び出されているか、期待するデータが渡されているかを qDebug() で出力して確認します。

デリゲートの設定順序

MyCustomDelegate* delegate = new MyCustomDelegate(this);
listWidget->setItemDelegate(delegate); // まずデリゲートを設定

QListWidgetItem* item = new QListWidgetItem("アイテム");
item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable);
listWidget->addItem(item);
listWidget->openPersistentEditor(item); // その後エディタを開く

カスタムデリゲートの実装を確認
各メソッドの役割を理解し、正しくデータがやり取りされているかを確認してください。特に createEditor() で新しいウィジェットが作成され、その親が正しく設定されているか (parent 引数を使用) が重要です。

Qt::ItemIsEditable フラグの確認

QListWidgetItem* item = new QListWidgetItem("編集可能なアイテム");
item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable); // 編集可能フラグを追加
listWidget->addItem(item);
listWidget->openPersistentEditor(item);

パフォーマンスの低下

原因

多数のアイテムに対して永続的なエディタを開いている
openPersistentEditor() は、エディタ用のウィジェットを実際に作成し、メモリ上に保持します。リスト内の多くのアイテムに対して永続的なエディタを開くと、大量のウィジェットが生成され、メモリ消費が増え、描画処理が重くなるため、アプリケーションのパフォーマンスが著しく低下する可能性があります。

トラブルシューティング

カスタムデリゲートの paint() メソッドを活用する
永続的なエディタは、ウィジェットを実際に作成・表示するためリソースを消費します。もし単に表示内容をカスタマイズしたいだけで、複雑なユーザーインタラクションが不要であれば、デリゲートの paint() メソッドをオーバーライドして、直接アイテムを描画する方法を検討してください。これは、openPersistentEditor() よりもはるかに軽量です。
```
// MyCustomDelegate::paint() の例
void MyCustomDelegate::paint(QPainter *painter, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const {
    // ここでカスタムの描画ロジックを実装する
    // 例: テキストとアイコンを描画し、必要に応じてチェックボックスやプログレスバーを「描画」する
    // QStyledItemDelegate::paint(painter, option, index); // デフォルトの描画も残す場合
}
```
表示するエディタの数を制限する
例えば、現在画面に表示されている範囲のアイテムのみに永続的なエディタを開くようにするなど、必要最低限のアイテムに絞ります。スクロールに応じて動的にエディタを開閉するロジックを実装することも考えられます。
本当に永続的なエディタが必要か再検討する
常に表示する必要があるアイテムはごく一部に限定できないか、設計を見直します。

メモリリークやクラッシュ

原因

openPersistentEditor() と closePersistentEditor() の不整合
openPersistentEditor() で開いたエディタを、対応する closePersistentEditor() で閉じずに、アイテムを削除したり、ウィジェットを破棄したりすると問題が発生します。
エディタウィジェットのライフサイクル管理の誤り
createEditor() で作成したエディタウィジェットが、QListWidget やデリゲートによって適切に所有・破棄されていない場合、メモリリークやダングリングポインタによるクラッシュが発生する可能性があります。

トラブルシューティング

closePersistentEditor() の適切な呼び出し
- アイテムを削除する前に、そのアイテムに対して開かれている永続的なエディタを閉じるようにします。
- QListWidget が破棄される際（例: 親ウィジェットが閉じられる際）には、Qtのオブジェクトツリーが自動的にエディタも破棄しますが、明示的に closePersistentEditor() を呼び出すことで、より安全にリソースを解放できます。
- 全ての永続エディタの状態を追跡し、必要に応じて closePersistentEditor() を呼び出すロジックを実装します。
エディタウィジェットの親の設定
createEditor() でウィジェットを生成する際、parent 引数に正しく親ウィジェット (通常はビューポート) を渡すことで、Qtのオブジェクトツリーによる自動的なメモリ管理に任せることができます。
```
// デリゲートの createEditor() メソッド内で
QWidget* editor = new MyEditorWidget(parent); // parent を指定
return editor;
```

TypeError (Python/PyQt の場合)

原因

openPersistentEditor() に渡す引数の型が間違っている
PyQtを使用している場合、openPersistentEditor() は QListWidgetItem オブジェクトを引数として期待しますが、誤って QModelIndex や他の型のオブジェクトを渡してしまうことがあります。

正しい引数を渡すことを確認

# 間違った例: QModelIndex を渡している
# modelItem = self.listWidget.model().index(0, 0)
# self.listWidget.openPersistentEditor(modelItem) # TypeError!

# 正しい例: QListWidgetItem を渡す
item = self.listWidget.item(0) # QListWidgetItem を取得
if item:
    self.listWidget.openPersistentEditor(item)

イベントフィルタの使用
特定のイベント（例: マウスイベント、キーイベント）がエディタやリストウィジェットでどのように処理されているかを理解するために、イベントフィルタを使用することも有効です。
最小限の再現コードを作成する
問題が発生した場合は、その問題を再現できる最小限のコードスニペットを作成してみましょう。これにより、問題の特定と解決が容易になります。
Qtのドキュメントを参照する
QListWidget::openPersistentEditor()、QAbstractItemDelegate、QStyledItemDelegate などの公式ドキュメントを詳細に確認し、各関数の役割と引数、戻り値の型を理解することが重要です。

QListWidget::openPersistentEditor() の基本的な使い方 (C++)

この例では、QListWidget を作成し、いくつかのアイテムを追加します。そして、最初のアイテムに対して openPersistentEditor() を呼び出し、常に編集可能な状態にします。

#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QListWidgetItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);

    QListWidget *listWidget = new QListWidget(&window);
    layout->addWidget(listWidget);

    // アイテム1: 永続的なエディタを開く
    QListWidgetItem *item1 = new QListWidgetItem("永続編集可能なアイテム");
    // アイテムを編集可能にするフラグを設定することが重要
    item1->setFlags(item1->flags() | Qt::ItemIsEditable);
    listWidget->addItem(item1);

    // アイテム2: 通常のアイテム（ダブルクリックで編集可能）
    QListWidgetItem *item2 = new QListWidgetItem("ダブルクリックで編集可能");
    item2->setFlags(item2->flags() | Qt::ItemIsEditable);
    listWidget->addItem(item2);

    // アイテム3: 編集不可のアイテム
    QListWidgetItem *item3 = new QListWidgetItem("編集不可のアイテム");
    listWidget->addItem(item3);

    // 最初のアイテムに対して永続的なエディタを開く
    // これにより、アプリケーション起動時からこのアイテムが編集可能な状態になる
    listWidget->openPersistentEditor(item1);

    window.setWindowTitle("QListWidget Persistent Editor Example (C++)");
    window.resize(400, 300);
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

QListWidget のインスタンスを作成します。
QListWidgetItem を作成し、リストに追加します。
item1->setFlags(item1->flags() | Qt::ItemIsEditable);: これが最も重要なポイントです。QListWidgetItem はデフォルトでは編集可能ではないため、Qt::ItemIsEditable フラグを追加して編集可能にする必要があります。このフラグがないと、openPersistentEditor() を呼び出してもエディタは表示されません。
listWidget->openPersistentEditor(item1);: openPersistentEditor() を呼び出すことで、item1 に対応するエディタ（この場合はデフォルトの QLineEdit）が永続的に表示されます。

カスタムデリゲートを使用した永続エディタの例 (C++)

openPersistentEditor() の真価は、QStyledItemDelegate などのカスタムデリゲートと組み合わせたときに発揮されます。ここでは、アイテムに QSpinBox を永続的に表示する例を示します。

まず、カスタムデリゲートクラスを作成します。

// customdelegate.h
#ifndef CUSTOMDELEGATE_H
#define CUSTOMDELEGATE_H

#include <QStyledItemDelegate>
#include <QSpinBox>

class CustomSpinBoxDelegate : public QStyledItemDelegate
{
    Q_OBJECT
public:
    explicit CustomSpinBoxDelegate(QObject *parent = nullptr);

    // エディタウィジェットを作成する
    QWidget *createEditor(QWidget *parent, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override;
    // モデルからエディタにデータを設定する
    void setEditorData(QWidget *editor, const QModelIndex &index) const override;
    // エディタからモデルにデータを設定する
    void setModelData(QWidget *editor, QAbstractItemModel *model, const QModelIndex &index) const override;
    // エディタのジオメトリを更新する
    void updateEditorGeometry(QWidget *editor, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const override;
};

#endif // CUSTOMDELEGATE_H

// customdelegate.cpp
#include "customdelegate.h"

CustomSpinBoxDelegate::CustomSpinBoxDelegate(QObject *parent)
    : QStyledItemDelegate(parent)
{
}

QWidget *CustomSpinBoxDelegate::createEditor(QWidget *parent, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
{
    // QSpinBox をエディタとして作成
    QSpinBox *editor = new QSpinBox(parent);
    editor->setFrame(false); // フレームを非表示にして、リストアイテムに馴染ませる
    editor->setMinimum(0);
    editor->setMaximum(100);
    return editor;
}

void CustomSpinBoxDelegate::setEditorData(QWidget *editor, const QModelIndex &index) const
{
    // モデルから現在の値を取得し、エディタ（QSpinBox）に設定
    int value = index.model()->data(index, Qt::EditRole).toInt();
    QSpinBox *spinBox = static_cast<QSpinBox*>(editor);
    spinBox->setValue(value);
}

void CustomSpinBoxDelegate::setModelData(QWidget *editor, QAbstractItemModel *model, const QModelIndex &index) const
{
    // エディタ（QSpinBox）から値を取得し、モデルに設定
    QSpinBox *spinBox = static_cast<QSpinBox*>(editor);
    spinBox->interpretText(); // 入力されたテキストを数値に変換
    model->setData(index, spinBox->value(), Qt::EditRole);
}

void CustomSpinBoxDelegate::updateEditorGeometry(QWidget *editor, const QStyleOptionViewItem &option, const QModelIndex &index) const
{
    // エディタのサイズと位置をアイテムの矩形に合わせる
    editor->setGeometry(option.rect);
}

メインアプリケーションのコード:

#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QListWidgetItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include "customdelegate.h" // 作成したカスタムデリゲートをインクルード

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);

    QListWidget *listWidget = new QListWidget(&window);
    layout->addWidget(listWidget);

    // カスタムデリゲートを設定
    // このデリゲートがQListWidgetの全アイテムに影響を与える
    CustomSpinBoxDelegate *delegate = new CustomSpinBoxDelegate(&listWidget);
    listWidget->setItemDelegate(delegate);

    // アイテム1: 永続的なエディタ（QSpinBox）を開く
    QListWidgetItem *item1 = new QListWidgetItem("数値設定:");
    item1->setData(Qt::EditRole, 25); // 初期値を設定
    item1->setFlags(item1->flags() | Qt::ItemIsEditable); // 編集可能フラグ
    listWidget->addItem(item1);
    listWidget->openPersistentEditor(item1);

    // アイテム2: ダブルクリックで編集可能（QSpinBoxが表示される）
    QListWidgetItem *item2 = new QListWidgetItem("別の数値:");
    item2->setData(Qt::EditRole, 50);
    item2->setFlags(item2->flags() | Qt::ItemIsEditable);
    listWidget->addItem(item2);

    // アイテム3: 通常のテキストアイテム（編集不可）
    QListWidgetItem *item3 = new QListWidgetItem("ただのテキスト");
    listWidget->addItem(item3);


    window.setWindowTitle("QListWidget Custom Persistent Editor (C++)");
    window.resize(400, 300);
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

CustomSpinBoxDelegate は QStyledItemDelegate を継承し、createEditor, setEditorData, setModelData, updateEditorGeometry の4つの重要な仮想関数をオーバーライドしています。
- createEditor(): アイテムの編集時に表示されるウィジェット（ここでは QSpinBox）を作成して返します。
- setEditorData(): モデルから取得したデータをエディタウィジェットに設定します。
- setModelData(): エディタウィジェットで編集されたデータをモデルに保存します。
- updateEditorGeometry(): エディタウィジェットのサイズと位置を調整します。
listWidget->setItemDelegate(delegate);: QListWidget にカスタムデリゲートを設定します。これにより、このリストウィジェットのアイテムの表示と編集がデリゲートによって制御されるようになります。
item1->setData(Qt::EditRole, 25); でアイテムの初期値を設定しています。setEditorData() と setModelData() は Qt::EditRole を使用してデータのやり取りを行います。
openPersistentEditor(item1); を呼び出すことで、item1 に QSpinBox が常に表示され、値を編集できるようになります。

QListWidget::openPersistentEditor() の基本的な使い方 (Python / PyQt)

import sys
from PyQt5.QtWidgets import QApplication, QListWidget, QListWidgetItem, QVBoxLayout, QWidget
from PyQt5.QtCore import Qt

if __name__ == '__main__':
    app = QApplication(sys.argv)

    window = QWidget()
    layout = QVBoxLayout(window)

    list_widget = QListWidget(window)
    layout.addWidget(list_widget)

    # アイテム1: 永続的なエディタを開く
    item1 = QListWidgetItem("永続編集可能なアイテム")
    # アイテムを編集可能にするフラグを設定することが重要
    item1.setFlags(item1.flags() | Qt.ItemIsEditable)
    list_widget.addItem(item1)

    # アイテム2: 通常のアイテム（ダブルクリックで編集可能）
    item2 = QListWidgetItem("ダブルクリックで編集可能")
    item2.setFlags(item2.flags() | Qt.ItemIsEditable)
    list_widget.addItem(item2)

    # アイテム3: 編集不可のアイテム
    item3 = QListWidgetItem("編集不可のアイテム")
    list_widget.addItem(item3)

    # 最初のアイテムに対して永続的なエディタを開く
    list_widget.openPersistentEditor(item1)

    window.setWindowTitle("QListWidget Persistent Editor Example (PyQt)")
    window.resize(400, 300)
    window.show()

    sys.exit(app.exec_())

解説

基本的な考え方はC++と同じです。PyQt5.QtCore.Qt.ItemIsEditable フラグをセットして、QListWidgetItem を編集可能にする必要があります。

import sys
from PyQt5.QtWidgets import QApplication, QListWidget, QListWidgetItem, QVBoxLayout, QWidget, QStyledItemDelegate, QSpinBox
from PyQt5.QtCore import Qt, QModelIndex

class CustomSpinBoxDelegate(QStyledItemDelegate):
    def __init__(self, parent=None):
        super().__init__(parent)

    def createEditor(self, parent: QWidget, option, index: QModelIndex) -> QWidget:
        # QSpinBox をエディタとして作成
        editor = QSpinBox(parent)
        editor.setFrame(False)
        editor.setMinimum(0)
        editor.setMaximum(100)
        return editor

    def setEditorData(self, editor: QWidget, index: QModelIndex):
        # モデルから現在の値を取得し、エディタ（QSpinBox）に設定
        value = index.model().data(index, Qt.EditRole)
        editor.setValue(value)

    def setModelData(self, editor: QWidget, model, index: QModelIndex):
        # エディタ（QSpinBox）から値を取得し、モデルに設定
        editor.interpretText() # 入力されたテキストを数値に変換
        model.setData(index, editor.value(), Qt.EditRole)

    def updateEditorGeometry(self, editor: QWidget, option, index: QModelIndex):
        # エディタのサイズと位置をアイテムの矩形に合わせる
        editor.setGeometry(option.rect)


if __name__ == '__main__':
    app = QApplication(sys.argv)

    window = QWidget()
    layout = QVBoxLayout(window)

    list_widget = QListWidget(window)
    layout.addWidget(list_widget)

    # カスタムデリゲートを設定
    delegate = CustomSpinBoxDelegate(list_widget)
    list_widget.setItemDelegate(delegate)

    # アイテム1: 永続的なエディタ（QSpinBox）を開く
    item1 = QListWidgetItem("数値設定:")
    item1.setData(Qt.EditRole, 25) # 初期値を設定
    item1.setFlags(item1.flags() | Qt.ItemIsEditable) # 編集可能フラグ
    list_widget.addItem(item1)
    list_widget.openPersistentEditor(item1)

    # アイテム2: ダブルクリックで編集可能（QSpinBoxが表示される）
    item2 = QListWidgetItem("別の数値:")
    item2.setData(Qt.EditRole, 50)
    item2.setFlags(item2.flags() | Qt.ItemIsEditable)
    list_widget.addItem(item2)

    # アイテム3: 通常のテキストアイテム（編集不可）
    item3 = QListWidgetItem("ただのテキスト")
    list_widget.addItem(item3)

    window.setWindowTitle("QListWidget Custom Persistent Editor (PyQt)")
    window.resize(400, 300)
    window.show()

    sys.exit(app.exec_())

解説

Python (PyQt) でも、C++ と同様に QStyledItemDelegate を継承し、必要なメソッドをオーバーライドします。それぞれのメソッドの役割とデータのやり取りはC++版と同じです。

QListWidget::setItemWidget() を使用する

これは QListWidget の各アイテムに任意の QWidget を直接埋め込むための最も簡単な方法です。openPersistentEditor() とは異なり、これは「エディタ」としてではなく、常にアイテムの「表示」としてウィジェットが表示されます。

特徴

パフォーマンスへの影響
各アイテムに独自のウィジェットインスタンスが作成されるため、アイテム数が多い場合にパフォーマンスが低下する可能性があります。特に、スクロール時にウィジェットが大量に作成・破棄される可能性があります。
データ管理の責任
アイテムウィジェット内のデータの読み書きは、プログラマが明示的に管理する必要があります。モデル/ビューアーキテクチャのような自動的なデータ同期はありません。
永続的表示
ウィジェットは常にアイテム内に表示され、編集モードの切り替えは関係ありません。
シンプル
QListWidgetItem を作成し、そのアイテムに対して setItemWidget() を呼び出すだけで、カスタムウィジェットを埋め込むことができます。

使用例 (C++)

#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QListWidgetItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QHBoxLayout>
#include <QPushButton>
#include <QLabel>
#include <QLineEdit>
#include <QWidget>

// カスタムアイテムウィジェットのクラス
class CustomItemWidget : public QWidget {
    Q_OBJECT
public:
    explicit CustomItemWidget(const QString &text, QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent) {
        QHBoxLayout *layout = new QHBoxLayout(this);
        layout->setContentsMargins(0, 0, 0, 0); // マージンをなくす
        
        QLabel *label = new QLabel(text, this);
        lineEdit = new QLineEdit(this);
        QPushButton *button = new QPushButton("Action", this);

        layout->addWidget(label);
        layout->addWidget(lineEdit);
        layout->addWidget(button);

        // シグナル・スロット接続で内部の状態を外部に通知することも可能
        connect(button, &QPushButton::clicked, this, [=]() {
            qDebug() << "Button clicked for item with text: " << label->text();
        });
    }

    // lineEditのテキストを取得するメソッド
    QString lineEditText() const {
        return lineEdit->text();
    }

    // lineEditのテキストを設定するメソッド
    void setLineEditText(const QString& text) {
        lineEdit->setText(text);
    }

private:
    QLineEdit *lineEdit;
};

int main(int argc, char *argv[]) {
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout *mainLayout = new QVBoxLayout(&window);

    QListWidget *listWidget = new QListWidget(&window);
    mainLayout->addWidget(listWidget);

    for (int i = 0; i < 5; ++i) {
        QListWidgetItem *item = new QListWidgetItem(listWidget); // 親をlistWidgetに設定
        CustomItemWidget *customWidget = new CustomItemWidget(QString("Item %1").arg(i), listWidget);
        
        // itemのサイズヒントをカスタムウィジェットのサイズヒントに合わせる
        item->setSizeHint(customWidget->sizeHint()); 
        
        listWidget->setItemWidget(item, customWidget);
    }
    
    // アイテムウィジェット内のデータにアクセスする例 (最初のアイテム)
    if (listWidget->count() > 0) {
        QListWidgetItem *firstItem = listWidget->item(0);
        CustomItemWidget *firstCustomWidget = static_cast<CustomItemWidget*>(listWidget->itemWidget(firstItem));
        if (firstCustomWidget) {
            firstCustomWidget->setLineEditText("Updated text!");
        }
    }

    window.setWindowTitle("QListWidget setItemWidget Example");
    window.resize(400, 300);
    window.show();

    return app.exec();
}

QListView とカスタムデリゲートを使用する

QListWidget は QListView のラッパーであり、内部的に QStandardItemModel のようなシンプルなモデルを使用しています。より柔軟なコントロールや、モデル/ビューアーキテクチャの利点を最大限に活用したい場合は、直接 QListView とカスタムデリゲート (QStyledItemDelegate を継承) を使用するのが最適な方法です。

特徴

複雑さの増加
QListWidget に比べて、モデル、ビュー、デリゲートという複数のコンポーネントを扱うため、学習曲線が少し高くなります。
パフォーマンス
setItemWidget() とは異なり、アイテムウィジェットを直接埋め込むのではなく、デリゲートは必要に応じてエディタを作成・破棄するため、通常はより効率的です。しかし、常にエディタが表示されるわけではありません。
高いカスタマイズ性
paint() メソッドをオーバーライドしてアイテムの表示を自由に描画したり、createEditor() で複雑なエディタウィジェットを提供したりできます。
モデル/ビューアーキテクチャの利点
データと表示を分離し、大規模なデータセットや複雑なデータ構造を効率的に管理できます。

主な用途

モデルとビューを完全に分離して、再利用性やテスト容易性を高めたい場合
アイテムの表示が非常に複雑で、かつ編集が頻繁に行われるわけではない場合
データ量が非常に多いリスト

例 (概念)
openPersistentEditor() を使用しないデリゲートの例は、createEditor() メソッドが通常、ユーザーがアイテムをダブルクリックしたり editItem() を呼び出したりしたときにのみエディタウィジェットを返します。この場合、エディタは永続的ではありません。

// 以前のCustomSpinBoxDelegateの例で、openPersistentEditor()を呼び出さなければ、
// デフォルトではダブルクリックした時だけQSpinBoxが表示され、フォーカスが外れると閉じられます。
// これが、openPersistentEditor()を使わない標準的なカスタムデリゲートの挙動です。

QTableWidget や QTreeWidget などの他の項目ベースのウィジェット

もしリストの各項目が複数のプロパティを持つ場合や、階層構造を持つ場合は、QListWidget よりも QTableWidget や QTreeWidget を検討するべきです。これらも QListWidget と同様に、setItemWidget() やデリゲートを使ったカスタマイズが可能です。

QTreeWidget
階層構造のデータを表示するのに適しています。各ノードにウィジェットを埋め込んだり、カスタムデリゲートを設定したりできます。
QTableWidget
表形式のデータを表示するのに適しています。各セルにウィジェットを埋め込んだり、カスタムデリゲートを設定したりできます。

データが表形式または階層的である場合
- QTableWidget / QTableView または QTreeWidget / QTreeView を検討します。
アイテムの表示を高度にカスタマイズしたいが、常にエディタを表示する必要はない、またはパフォーマンスを重視する場合
- QListView とカスタムデリゲート（paint() メソッドをオーバーライド）を使用します。これにより、ウィジェットを実際に作成する代わりに、描画ロジックで自由に表示をカスタマイズできます。編集は、ユーザーがアイテムをアクティベートしたときのみ発生します。
アイテムに常に編集可能なウィジェットを表示し、かつモデル/ビューアーキテクチャの恩恵を受けたい、または複雑なエディタを提供したい場合
- QListWidget または QListView とカスタムデリゲートの組み合わせで、openPersistentEditor() を使用します。これにより、データとエディタの同期がデリゲートによって管理されます。
シンプルで、各アイテムに常に特定の入力ウィジェット（ボタン、チェックボックス、シンプルなQLineEditなど）を表示したいが、リストのアイテム数がそれほど多くない場合
- QListWidget::setItemWidget() が最も簡単で直接的な選択肢です。ただし、アイテム内のウィジェットの状態管理は手動で行う必要があります。

QListWidget::count による効率的なリスト操作

Qt プログラミングにおける QListWidget::count は、QListWidget オブジェクト内のアイテムの数を取得するための関数です。具体的には戻り値は、リスト内のアイテムの数を表す整数値です。QListWidget オブジェクトのインスタンスに対して count() 関数を呼び出します。

Qt QListWidget: currentItem() の使い方とよくある落とし穴

QListWidget::currentItem() は、QListWidget ウィジェット内でユーザーが選択している（クリックまたはキーボードでハイライト表示されている）QListWidgetItem オブジェクトへのポインタを返す関数です。

QListWidget::currentItemChanged() の代替手法

Qt プログラミングにおける QListWidget::currentItemChanged() シグナルは、QListWidget 内の選択された項目が変更されたときに発動されます。このシグナルは、ユーザーがリスト内の項目をクリックしたり、キーボードを使用して選択を変更したりしたときにトリガーされます。

QListWidgetの現在行番号currentRowの取得・設定方法【Qt GUI】

「QListWidget::currentRow」は、QtのクラスであるQListWidgetにおいて、現在選択されている項目の行番号を取得または設定するために使用されるプロパティ（正確には、それに関連するメソッド群）です。より具体的に説明すると以下のようになります。

Qt QListWidget currentRowChanged() の一般的なエラーと解決策

Qtプログラミングにおけるvoid QListWidget::currentRowChanged(int currentRow)は、QListWidgetというリスト表示ウィジェットで、現在選択されている行が変更されたときに発生するシグナルです。

Qtプログラミング: QListWidgetのアイテム選択・データ変更を検知する代替シグナル徹底比較

void QListWidget::currentTextChanged() は、Qt の QListWidget クラスが提供するシグナル（signal）の一つです。これは何をするシグナルか？このシグナルは、QListWidget 内で現在選択されているアイテムのテキストが変更されたときに発せられます。より正確に言うと、選択されているアイテムが変わり、それに伴って現在のテキストが変わった場合に発せられるシグナルです。

QListWidget dropEvent エラー解決！Qt ドラッグ＆ドロップのトラブルシューティング

ドロップイベントの処理この関数は、実際にドロップ操作が行われた瞬間に発生する QDropEvent を引数として受け取ります。このイベントオブジェクトには、ドロップされたデータに関する様々な情報が含まれています。ドロップされたデータの種類 (event->mimeData()) ドロップされたデータがどのような形式（テキスト、URL、画像など）であるかを知ることができます。QMimeData オブジェクトを通じて、これらのデータにアクセスできます。ドロップされた位置 (event->pos()) QListWidget のどの座標にドロップされたかを知ることができます。これにより、新しい項目を挿入する位置などを決定できます。ドロップ操作の種類 (event->dropAction()) ユーザーがどのようなドロップ操作を行ったか（コピー、移動、リンクなど）を知ることができます。これは、ドロップ操作中に押されていた修飾キー（Ctrl キー、Shift キーなど）によって変わることがあります。

Qt QListWidgetの表示を究める：openPersistentEditor()代替手法とカスタム化

QListWidget::openPersistentEditor() とは？

どのようなときに使うか？

使い方

QListWidget::openPersistentEditor() のよくあるエラーとトラブルシューティング

エディタが表示されない、または期待通りに動作しない

パフォーマンスの低下

メモリリークやクラッシュ

TypeError (Python/PyQt の場合)

QListWidget::openPersistentEditor() の基本的な使い方 (C++)

カスタムデリゲートを使用した永続エディタの例 (C++)

QListWidget::openPersistentEditor() の基本的な使い方 (Python / PyQt)

QListWidget::setItemWidget() を使用する

QListView とカスタムデリゲートを使用する

QTableWidget や QTreeWidget などの他の項目ベースのウィジェット

`QListWidget::openPersistentEditor()` とは？

`QListWidget::openPersistentEditor()` のよくあるエラーとトラブルシューティング