QListWidget::itemChanged()を深く理解する：Qtでのリスト項目管理の極意
Qtプログラミングにおけるvoid QListWidget::itemChanged(QListWidgetItem *item)は、QListWidgetウィジェット内でリストの項目（アイテム）が変更されたときに発生するシグナルです。
QListWidgetとは？
QListWidgetは、リスト形式で項目（テキスト、アイコンなど）を表示し、ユーザーが項目を選択したり、編集したりできるウィジェットです。各項目はQListWidgetItemオブジェクトで表現されます。
itemChangedシグナルの役割
このシグナルは、QListWidget内のいずれかのQListWidgetItemの何らかのプロパティが変更された際に発生します。例えば、以下のような場合にこのシグナルが発せられます。
- 項目のデータが変更された：
QListWidgetItem::setData()で設定されたカスタムデータが変更された場合。 - 項目のフラグが変更された：例えば、項目が編集可能になったり（
Qt::ItemIsEditable）、選択可能になったり（Qt::ItemIsSelectable）するフラグが変更された場合。 - 項目のアイコンが変更された：項目のアイコンがプログラムによって変更された場合。
- 項目のチェック状態が変更された：項目にチェックボックスがあり、それがチェックされたり、チェックが外されたりした場合。
- 項目のテキストが変更された：ユーザーがリストの項目を編集し、テキストが新しくなった場合。
シグナルの引数
itemChangedシグナルは、変更されたQListWidgetItemオブジェクトへのポインタを引数として受け取ります。これにより、どの項目が変更されたのかを特定し、その変更内容に応じて必要な処理を行うことができます。
使用例
例えば、リストの項目が編集されたときに、その新しいテキストをデバッグ出力したい場合、以下のようにitemChangedシグナルをカスタムスロットに接続します。
// MyWidget.h
#ifndef MYWIDGET_H
#define MYWIDGET_H
#include <QWidget>
#include <QListWidget>
#include <QListWidgetItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
class MyWidget : public QWidget
{
Q_OBJECT
public:
MyWidget(QWidget *parent = nullptr);
private slots:
void onItemChanged(QListWidgetItem *item);
private:
QListWidget *listWidget;
};
#endif // MYWIDGET_H
// MyWidget.cpp
#include "MyWidget.h"
MyWidget::MyWidget(QWidget *parent)
: QWidget(parent)
{
listWidget = new QListWidget(this);
listWidget->addItem("Item 1");
listWidget->addItem("Item 2");
listWidget->addItem("Item 3");
// 項目を編集可能にする
for (int i = 0; i < listWidget->count(); ++i) {
QListWidgetItem *item = listWidget->item(i);
item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable);
}
// itemChanged シグナルを onItemChanged スロットに接続
connect(listWidget, &QListWidget::itemChanged, this, &MyWidget::onItemChanged);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(listWidget);
}
void MyWidget::onItemChanged(QListWidgetItem *item)
{
qDebug() << "項目が変更されました: " << item->text();
// ここで変更された項目に対する処理を記述する
}
このコードでは、QListWidgetが作成され、いくつかの項目が追加されます。各項目は編集可能に設定されています。そして、QListWidget::itemChangedシグナルがMyWidget::onItemChangedスロットに接続されています。ユーザーがリストの項目を編集してEnterキーを押したり、フォーカスを外したりすると、onItemChangedスロットが呼び出され、変更された項目のテキストがデバッグ出力されます。
注意点
itemChangedシグナルは、項目が変更されるたびに（テキストの変更だけでなく、チェック状態の変更なども含めて）発生するため、特定の種類（例えばテキストの変更のみ）の変更に反応したい場合は、スロット内で変更された項目のプロパティをチェックする必要があります。
例えば、チェックボックスの状態変化だけを検知したい場合は、スロット内でitem->checkState()を確認します。
void MyWidget::onItemChanged(QListWidgetItem *item)
{
if (item->checkState() == Qt::Checked) {
qDebug() << item->text() << "がチェックされました";
} else {
qDebug() << item->text() << "のチェックが外されました";
}
}
itemChanged() シグナルは、QListWidget 内のQListWidgetItemの何らかのプロパティが変更された際に発生します。この「何らかのプロパティ」という点が、しばしば混乱の原因となります。
意図しないシグナル発生（二重呼び出し、過剰呼び出し）
問題
- プログラムで項目を操作（例:
setText()、setCheckState()、setFlags()など）すると、それも変更として検出され、シグナルが発火してしまう。これにより、無限ループや予期せぬ処理の連鎖が発生することがあります。 - 項目のテキストを変更しただけなのに、シグナルが複数回発生する。
原因
itemChanged() は、テキストの変更だけでなく、チェック状態、アイコン、フラグ、カスタムデータなど、QListWidgetItem のあらゆる変更に対して発火します。そのため、スロット内で項目をさらに変更するような処理を行うと、再度シグナルが発火し、ループに陥ることがあります。
トラブルシューティング/解決策
-
特定の変更のみを検出するより正確な方法 (編集完了時など)
テキスト編集の完了時のみに処理を実行したい場合など、より厳密な制御が必要な場合は、QAbstractItemDelegate::commitDataシグナルを使用することを検討します。QListWidgetは内部でQStyledItemDelegateを使用しており、これにアクセスしてシグナルを接続できます。// connect(ui.pLstItems->itemDelegate(), &QAbstractItemDelegate::commitData, this, &MyWidget::OnLstItemsCommitData); // void MyWidget::OnLstItemsCommitData(QWidget* editor) // { // QLineEdit* lineEdit = qobject_cast<QLineEdit*>(editor); // if (lineEdit) { // QString newText = lineEdit->text(); // int row = listWidget->currentRow(); // 現在編集中の行を取得 // QListWidgetItem* item = listWidget->item(row); // if (item) { // qDebug() << "編集がコミットされました: " << newText; // // ここで新しいテキストに対する処理を行う // } // } // }この方法は、ユーザーがリストアイテムのテキストを編集し、Enterキーを押すかフォーカスを外したときにのみシグナルが発火するため、非常に正確です。
-
シグナルのブロック/アンブロック
プログラムからQListWidgetItemを操作する際に、一時的にQListWidgetのシグナルをブロックすることで、itemChanged()の不要な発火を防ぐことができます。// シグナルをブロック listWidget->blockSignals(true); // ここで QListWidgetItem を操作する（例: setText(), setCheckState() など） QListWidgetItem *newItem = new QListWidgetItem("新しい項目"); newItem->setCheckState(Qt::Checked); listWidget->addItem(newItem); // シグナルをアンブロック listWidget->blockSignals(false);これは、特に初期化時や、大量の項目を一括で操作する際に有効です。ただし、シグナルをブロックしている間は、ユーザー操作による
itemChanged()も発火しなくなるため、必要なタイミングで確実にアンブロックすることが重要です。
QListWidgetItem* item ポインタがNULLになる
問題
itemChanged(QListWidgetItem *item) のスロット内でitemポインタがNULLになっている、または無効なポインタを指している。
原因
- メモリ管理の誤り（例えば、手動で
QListWidgetItemを削除してしまったが、まだシグナルがキューに残っていた場合）。 QListWidgetItemがQListWidgetから削除された後に、そのポインタが参照された場合。
トラブルシューティング/解決策
- 項目の削除とシグナルのタイミング
QListWidget::takeItem()やQListWidget::clear()などで項目を削除する際、その後にitemChangedシグナルが発火する可能性を考慮します。削除前にシグナルをブロックするなどの対策が有効です。 - ポインタの有効性チェック
スロットの冒頭でitemポインタが有効であるかを確認します。void MyWidget::onItemChanged(QListWidgetItem *item) { if (!item) { qWarning() << "itemChanged: 無効な項目ポインタです。"; return; } // ... 通常の処理 }
シグナルが全く発火しない
問題
QListWidgetItemのプロパティを変更しても、itemChanged()シグナルが全く発火しない。
原因
- モデル/ビューの誤解
QListWidgetは便利なクラスですが、内部的にはモデル/ビューアーキテクチャを使用しています。より低レベルなQListViewとカスタムモデルを使用している場合、itemChangedシグナルは直接は存在せず、モデルのdataChangedシグナルを使用する必要があります。 - QListWidgetItemの直接操作
QListWidgetItemのプロパティを直接変更しても、それが必ずしもQListWidgetに伝播され、itemChangedシグナルとして発火するとは限りません。QListWidgetのメソッド（例:listWidget->editItem(item)）を介して変更を行うのが一般的です。 - 変更可能なフラグが設定されていない
QListWidgetItemが編集可能、チェック可能などのフラグ（Qt::ItemIsEditable、Qt::ItemIsUserCheckableなど）を持っていない場合、ユーザーが操作しても変更として認識されず、シグナルが発火しません。 - シグナルとスロットの接続ミス
connect()関数が正しく記述されていない、または接続が切断されている可能性があります。
トラブルシューティング/解決策
- 上位のシグナルを確認
QListWidgetは、currentItemChanged()（現在選択されている項目が変更された時）やcurrentTextChanged()（現在選択されている項目のテキストが変更された時）など、他にも多くのシグナルを提供しています。itemChanged()が意図するものでない場合は、他のシグナルが適切か検討します。 - デバッグ出力
スロットの冒頭にqDebug()などを挿入し、そもそもスロットが呼び出されているかを確認します。 - フラグの確認
QListWidgetItemのflags()に適切なフラグが設定されているか確認します。QListWidgetItem *item = new QListWidgetItem("Editable Item"); item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable | Qt::ItemIsUserCheckable); listWidget->addItem(item); - connect()の確認
connect()の引数（シグナルとスロットのポインタ）が正しいか、スペルミスがないかを確認します。Qt 5以降では、&QListWidget::itemChangedのように関数ポインタ構文を使用するのが推奨されます。
複雑なカスタムアイテムでの問題
問題
QListWidgetItemを継承してカスタムクラスを作成し、そのカスタムプロパティが変更されたときにitemChanged()を発火させたいが、期待通りに動作しない。
原因
QListWidgetは、カスタムアイテムの内部のプロパティ変更を自動的に検出するわけではありません。QListWidgetItemの標準的なプロパティ（テキスト、アイコン、チェック状態など）の変更は検出されますが、カスタムクラスに追加した独自のメンバー変数の変更は、明示的にQListWidgetに通知しない限り検出されません。
トラブルシューティング/解決策
-
カスタムアイテム内でシグナルを定義
カスタムQListWidgetItem内で独自のシグナルを定義し、そのカスタムプロパティが変更されたときにそのシグナルを発火させます。そして、QListWidgetを所有するクラス（例:MyWidget）で、カスタムアイテムのシグナルを自身（またはQListWidget）のスロットに接続します。 この方法はより複雑で、QListWidgetはQListWidgetItemの内部シグナルに直接接続するメカニズムを持っていないため、QListWidgetの代わりにQListViewとカスタムモデル（QAbstractListModel）を使用する方が自然です。 -
setData()とカスタムロールの使用
カスタムデータをQListWidgetItem::setData(value, role)で保存し、QListWidgetItem::data(role)で取得するようにします。setData()を呼び出すことで、itemChanged()シグナルが発火します。// カスタムデータロールを定義（Qt::UserRole から開始） enum CustomRoles { MyCustomDataRole = Qt::UserRole + 1 }; // ... // 項目のカスタムデータを設定 item->setData(myCustomValue, MyCustomDataRole); // ... // スロットでカスタムデータを取得 QVariant data = item->data(MyCustomDataRole);
QListWidget::itemChanged()は、そのシンプルさゆえに多くの用途で便利ですが、その「あらゆる変更に反応する」という特性を理解することが重要です。予期せぬ動作に遭遇した場合は、以下の点を確認すると良いでしょう。
- シグナルが「何」の変更に反応しているのか？ (テキスト、チェック状態、フラグ、データなど)
- スロット内で、変更された項目に対してどのような操作を行っているのか？ (それがさらなるシグナル発火を招いていないか)
- そもそもシグナルが正しく接続されているか？ (構文、生存期間)
- 項目のプロパティ（特にフラグ）が適切に設定されているか？
QtにおけるQListWidget::itemChanged()シグナルは、QListWidget内のいずれかのQListWidgetItemのプロパティが変更された際に発火する非常に便利なシグナルです。ここでは、このシグナルを使ったプログラミング例をいくつかご紹介します。
例1: 項目のテキスト変更を検出する
最も一般的な使用例は、ユーザーがリストの項目を編集してテキストが変更されたときに、何らかの処理を実行することです。
MainWindow.h
#ifndef MAINWINDOW_H
#define MAINWINDOW_H
#include <QMainWindow>
#include <QListWidget>
#include <QListWidgetItem>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
#include <QLabel> // 変更されたテキストを表示するために追加
class MainWindow : public QMainWindow
{
Q_OBJECT
public:
MainWindow(QWidget *parent = nullptr);
~MainWindow();
private slots:
void onItemChanged(QListWidgetItem *item);
private:
QListWidget *listWidget;
QLabel *statusLabel; // 変更されたテキストを表示するラベル
};
#endif // MAINWINDOW_H
MainWindow.cpp
#include "MainWindow.h"
MainWindow::MainWindow(QWidget *parent)
: QMainWindow(parent)
{
QWidget *centralWidget = new QWidget(this);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(centralWidget);
listWidget = new QListWidget(this);
listWidget->addItem("りんご");
listWidget->addItem("バナナ");
listWidget->addItem("オレンジ");
// 各項目を編集可能にする
for (int i = 0; i < listWidget->count(); ++i) {
QListWidgetItem *item = listWidget->item(i);
item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable);
}
// itemChanged シグナルをスロットに接続
// QListWidgetの項目が変更されると、onItemChangedスロットが呼ばれる
connect(listWidget, &QListWidget::itemChanged, this, &MainWindow::onItemChanged);
statusLabel = new QLabel("項目が変更されるのを待機中...", this);
statusLabel->setStyleSheet("font-size: 16px; color: blue;");
layout->addWidget(listWidget);
layout->addWidget(statusLabel); // ラベルをレイアウトに追加
setCentralWidget(centralWidget);
setWindowTitle("QListWidget itemChanged 例");
}
MainWindow::~MainWindow()
{
}
void MainWindow::onItemChanged(QListWidgetItem *item)
{
// 変更された項目が存在するか確認
if (item) {
// 変更された項目の新しいテキストを取得して表示
qDebug() << "項目が変更されました: " << item->text();
statusLabel->setText(QString("変更された項目: %1").arg(item->text()));
}
}
main.cpp
#include <QApplication>
#include "MainWindow.h"
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MainWindow w;
w.show();
return a.exec();
}
実行結果
このコードを実行すると、QListWidgetが表示され、初期値として「りんご」「バナナ」「オレンジ」の3つの項目があります。これらの項目は編集可能です。
いずれかの項目をダブルクリックしてテキストを編集し、Enterキーを押すか、別の項目をクリックすると、onItemChangedスロットが呼び出され、デバッグコンソールに新しいテキストが表示されるとともに、ウィンドウ下部のQLabelにも表示が更新されます。
例2: 項目のチェック状態変更を検出する
項目にチェックボックスを付けて、そのチェック状態の変更を検出することもよくあります。
MainWindow.h (変更なし)
MainWindow.cpp (変更点)
#include "MainWindow.h"
MainWindow::MainWindow(QWidget *parent)
: QMainWindow(parent)
{
QWidget *centralWidget = new QWidget(this);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(centralWidget);
listWidget = new QListWidget(this);
// チェックボックス付きの項目を追加
QListWidgetItem *item1 = new QListWidgetItem("タスクA");
item1->setFlags(item1->flags() | Qt::ItemIsUserCheckable | Qt::ItemIsEditable); // チェック可能かつ編集可能
item1->setCheckState(Qt::Unchecked); // 初期状態は未チェック
listWidget->addItem(item1);
QListWidgetItem *item2 = new QListWidgetItem("タスクB");
item2->setFlags(item2->flags() | Qt::ItemIsUserCheckable | Qt::ItemIsEditable);
item2->setCheckState(Qt::Checked); // 初期状態はチェック済み
listWidget->addItem(item2);
QListWidgetItem *item3 = new QListWidgetItem("タスクC");
item3->setFlags(item3->flags() | Qt::ItemIsUserCheckable | Qt::ItemIsEditable);
item3->setCheckState(Qt::Unchecked);
listWidget->addItem(item3);
// itemChanged シグナルをスロットに接続
connect(listWidget, &QListWidget::itemChanged, this, &MainWindow::onItemChanged);
statusLabel = new QLabel("項目のチェック状態を確認してください...", this);
statusLabel->setStyleSheet("font-size: 16px; color: green;");
layout->addWidget(listWidget);
layout->addWidget(statusLabel);
setCentralWidget(centralWidget);
setWindowTitle("QListWidget チェック状態変更例");
}
MainWindow::~MainWindow()
{
}
void MainWindow::onItemChanged(QListWidgetItem *item)
{
if (item) {
// 項目のチェック状態を確認
if (item->checkState() == Qt::Checked) {
qDebug() << item->text() << "がチェックされました";
statusLabel->setText(QString("「%1」が完了しました！").arg(item->text()));
} else if (item->checkState() == Qt::Unchecked) {
qDebug() << item->text() << "のチェックが外されました";
statusLabel->setText(QString("「%1」が未完了に戻されました。").arg(item->text()));
}
// テキストが変更された場合も検出したいなら追加
// QListWidgetItem::data(Qt::EditRole) を使って以前のテキストと比較するなどが必要
}
}
実行結果
この例では、項目がチェックボックス付きで表示されます。チェックボックスをクリックすると、onItemChangedスロットが呼び出され、その項目のチェック状態に応じて異なるメッセージがデバッグコンソールとQLabelに表示されます。
プログラムによってQListWidgetItemのプロパティを変更する際に、itemChanged()シグナルが不要に発火するのを防ぐ方法です。これは、特に大量の項目を初期化する際や、特定のロジック内で一時的にシグナルを抑制したい場合に役立ちます。
MainWindow.h (変更なし)
MainWindow.cpp (変更点)
#include "MainWindow.h"
MainWindow::MainWindow(QWidget *parent)
: QMainWindow(parent)
{
QWidget *centralWidget = new QWidget(this);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(centralWidget);
listWidget = new QListWidget(this);
// シグナルを一時的にブロック
listWidget->blockSignals(true);
// 大量の項目を追加し、初期設定を行う
for (int i = 0; i < 5; ++i) {
QListWidgetItem *item = new QListWidgetItem(QString("初期項目 %1").arg(i + 1));
item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable | Qt::ItemIsUserCheckable);
if (i % 2 == 0) {
item->setCheckState(Qt::Checked);
} else {
item->setCheckState(Qt::Unchecked);
}
listWidget->addItem(item);
}
// シグナルをアンブロック
listWidget->blockSignals(false);
// itemChanged シグナルをスロットに接続（ブロック中に接続しても問題ない）
connect(listWidget, &QListWidget::itemChanged, this, &MainWindow::onItemChanged);
statusLabel = new QLabel("準備完了。項目を変更してみてください。", this);
statusLabel->setStyleSheet("font-size: 16px; color: purple;");
layout->addWidget(listWidget);
layout->addWidget(statusLabel);
setCentralWidget(centralWidget);
setWindowTitle("QListWidget シグナルブロック例");
}
MainWindow::~MainWindow()
{
}
void MainWindow::onItemChanged(QListWidgetItem *item)
{
if (item) {
qDebug() << "itemChanged シグナルが発火: " << item->text();
if (item->checkState() == Qt::Checked) {
statusLabel->setText(QString("項目 '%1' がチェックされました。").arg(item->text()));
} else if (item->checkState() == Qt::Unchecked) {
statusLabel->setText(QString("項目 '%1' のチェックが外されました。").arg(item->text()));
} else {
statusLabel->setText(QString("項目 '%1' のテキストが変更されました。").arg(item->text()));
}
}
}
実行結果
この例では、プログラムで複数の項目をQListWidgetに追加し、その際にblockSignals(true)でシグナルを一時的にブロックしています。これにより、初期化時にitemChangedシグナルが連続して発火するのを防ぎます。項目が全て追加されてからblockSignals(false)でシグナルが再度有効になり、その後のユーザーによる操作（テキスト編集やチェックボックスのクリック）に対してのみitemChangedが発火します。
itemChanged() は「項目に何らかの変更があった」場合に発火するため、変更の種類を問わず広範囲に反応します。より具体的なイベントに反応したい場合や、パフォーマンスの最適化、またはより柔軟なデータ管理が必要な場合に代替手法を検討します。
より具体的な QListWidget シグナルを使用する
QListWidget は、itemChanged() よりも特定のイベントに特化したシグナルを多数提供しています。これらを活用することで、不要なシグナル発火を防ぎ、コードの意図を明確にできます。
-
void QListWidget::itemDoubleClicked(QListWidgetItem *item)- 説明
項目がダブルクリックされたときに発火します。 - 用途
項目をダブルクリックして編集ダイアログを開く、詳細ビューを表示するなど。 - 例
connect(listWidget, &QListWidget::itemDoubleClicked, this, [](QListWidgetItem *item) { qDebug() << item->text() << "がダブルクリックされました。"; // 例: 編集モードに入る、新しいウィンドウを開くなど item->setFlags(item->flags() | Qt::ItemIsEditable); // 編集可能にする listWidget->editItem(item); // 編集を開始 });
- 説明
-
void QListWidget::currentTextChanged(const QString ¤tText)- 説明
現在の項目（フォーカスがある項目）のテキストが変更されたときに発火します。これはitemChanged()がテキストの変更に反応するサブセットのようなものです。 - 用途
現在選択中の項目のテキスト編集が完了した直後に反応したい場合。 - 例
connect(listWidget, &QListWidget::currentTextChanged, this, [](const QString ¤tText) { qDebug() << "現在の項目のテキストが変更されました: " << currentText; });
- 説明
-
- 説明
選択されている項目が変更されたときに発火します。itemChanged()は項目の内容の変更に反応しますが、これは選択状態の変更にのみ反応します。 - 用途
ユーザーがリストの選択を変更したときに、詳細パネルを更新する、他のウィジェットの状態を変更するなど。 - 例
connect(listWidget, &QListWidget::itemSelectionChanged, this, [this]() { QList<QListWidgetItem*> selectedItems = listWidget->selectedItems(); if (!selectedItems.isEmpty()) { qDebug() << "選択された項目: " << selectedItems.first()->text(); } else { qDebug() << "選択が解除されました。"; } });
- 説明
デリゲート（Delegate）を使用する
QListWidget は、内部的にモデル/ビューアーキテクチャを使用しており、各項目の描画と編集はデリゲート（QStyledItemDelegate など）によって行われます。デリゲートのシグナルを直接利用することで、より詳細な編集イベントに反応できます。
QAbstractItemDelegate::commitData(QWidget *editor)- 説明
編集が完了し、デリゲートがモデルにデータをコミットしたときに発火します。ユーザーがテキストを編集し、Enterキーを押すか、フォーカスを外したときにこのシグナルが送られます。 - 用途
ユーザーによるテキスト編集の完了を正確に捕捉し、その新しい値に基づいて処理を行いたい場合。itemChanged()は編集中にも発火しうるのに対し、こちらは編集が確定したタイミングでのみ発火します。 - 例
// QListWidgetのitemDelegateを取得してシグナルを接続 // デフォルトのデリゲートはQStyledItemDelegateです connect(listWidget->itemDelegate(), &QAbstractItemDelegate::commitData, this, [this](QWidget* editor) { // 編集中のウィジェットがQLineEditの場合 QLineEdit* lineEdit = qobject_cast<QLineEdit*>(editor); if (lineEdit) { QString newText = lineEdit->text(); // どのQListWidgetItemが編集されたかを取得するには、listWidget->currentItem()などを利用 QListWidgetItem* editedItem = listWidget->currentItem(); if (editedItem) { qDebug() << "編集がコミットされました: " << newText << " (項目: " << editedItem->text() << ")"; // ここで新しいテキストに対する処理を行う } } }); // ※注意: commitDataは編集が完了したときにのみ発火するため、 // QListWidgetItemにQt::ItemIsEditableフラグが設定されている必要があります。
- 説明
QListView とカスタムモデルを使用する
QListWidget は便利なウィジェットですが、より複雑なデータ構造や、より詳細な制御が必要な場合は、QListView とカスタムのデータモデル（QAbstractListModel または QStandardItemModel）を使用することを強く推奨します。
QAbstractItemModel::dataChanged(const QModelIndex &topLeft, const QModelIndex &bottomRight, const QVector<int> &roles = QVector<int>())- 説明
モデル内のデータが変更されたときに発火します。QListWidgetのitemChanged()に最も近い概念ですが、モデル/ビューアーキテクチャでは、データと表示が分離されているため、よりクリーンな方法でデータの変更を扱えます。 - 用途
データソースの変更に基づいてビューを更新する、変更されたデータをデータベースに保存するなど。 - 利点
- データの分離
データ（モデル）と表示（ビュー）が完全に分離されるため、大規模なアプリケーションで管理しやすくなります。 - 柔軟性
カスタムモデルを作成することで、任意の複雑なデータ構造を扱うことができます。 - パフォーマンス
大量のデータを扱う場合や、複雑なソート/フィルタリングが必要な場合に優れたパフォーマンスを発揮します。 - 他のビューとの再利用
同じモデルをQTableViewやQTreeViewなど、他のビューウィジェットと共有できます。
- データの分離
- 例（概念）
// MyListModel.h (QAbstractListModel を継承) class MyListModel : public QAbstractListModel { Q_OBJECT public: // ... 必須のメソッドを実装 ... QVariant data(const QModelIndex &index, int role = Qt::DisplayRole) const override; bool setData(const QModelIndex &index, const QVariant &value, int role = Qt::EditRole) override; // ... private: QList<QString> m_data; // データのリスト }; // MyListModel.cpp bool MyListModel::setData(const QModelIndex &index, const QVariant &value, int role) { if (index.isValid() && role == Qt::EditRole) { m_data[index.row()] = value.toString(); emit dataChanged(index, index, {role}); // データが変更されたことを通知 return true; } return false; } // MainWindow.cpp MainWindow::MainWindow(QWidget *parent) : QMainWindow(parent) { QListView *listView = new QListView(this); MyListModel *model = new MyListModel(this); listView->setModel(model); // モデルのdataChangedシグナルを接続 connect(model, &QAbstractListModel::dataChanged, this, [this](const QModelIndex &topLeft, const QModelIndex &bottomRight, const QVector<int> &roles) { qDebug() << "モデルのデータが変更されました: " << topLeft.data().toString(); // 変更されたデータに対する処理 }); // ... レイアウト設定など ... } - QStandardItemModel の場合
QStandardItemModelはQAbstractListModelよりも扱いやすいモデルで、QListWidgetItemに似たQStandardItemを使用します。QStandardItemModel *model = new QStandardItemModel(this); QListView *listView = new QListView(this); listView->setModel(model); QStandardItem *item1 = new QStandardItem("項目A"); item1->setFlags(Qt::ItemIsEditable | Qt::ItemIsUserCheckable | Qt::ItemIsEnabled); model->appendRow(item1); connect(model, &QStandardItemModel::itemChanged, this, [this](QStandardItem *item) { qDebug() << "StandardItemが変更されました: " << item->text(); if (item->isCheckable()) { qDebug() << "チェック状態: " << item->checkState(); } });QStandardItemModel::itemChanged(QStandardItem *item)シグナルは、QListWidget::itemChanged()に非常に似ており、QStandardItemのプロパティが変更されたときに発火します。QListWidgetからQListView+QStandardItemModelへの移行は比較的スムーズです。
- 説明
QListWidget::itemChanged() の代替手法を検討する際のポイントは以下の通りです。
- イベントの粒度
変更の種類を問わず反応するitemChanged()で十分か、それともより具体的なイベント（選択変更、編集完了など）に反応したいか。 - パフォーマンス
大量の項目を扱う場合や、頻繁なデータ更新がある場合に、不要なシグナル発火を抑制したいか。 - アーキテクチャ
単純なリスト表示であればQListWidgetで十分だが、複雑なデータ構造や再利用性を考慮する場合はモデル/ビューアーキテクチャへの移行を検討すべきか。