Qt開発者必見!itemActivated()シグナルのエラーと解決策
void QListWidget::itemActivated()
とは何か
QListWidget::itemActivated()
は、QtのQListWidget
クラスが持つシグナルです。
シグナルとは、特定のイベントが発生したときにQListWidget
オブジェクト自身が発信するメッセージのようなものです。他のオブジェクト(例えば、あなたの書いたカスタムスロット関数など)はこのシグナルに接続(connect)することで、そのイベント発生時に特定の処理を実行することができます。
itemActivated()
シグナルは、リストウィジェット内のアイテムが「アクティベートされた」ときに発せられます。ここでいう「アクティベート」とは、通常、以下のいずれかの操作を指します。
- ダブルクリック: ユーザーがリスト内のアイテムをダブルクリックした場合。
- Enterキーの押下: アイテムが選択されている状態で、ユーザーがEnterキーを押した場合。
このシグナルは、アクティベートされたアイテムへのポインタ(QListWidgetItem*
型)を引数として渡します。これにより、シグナルを受け取った側で、どのアイテムがアクティベートされたのかを識別し、そのアイテムに対する処理を行うことができます。
使用例(コンセプト)
具体的なQt C++コードで考えると、以下のようなイメージになります。
// MyWidget.h
#include <QListWidget>
#include <QWidget>
class MyWidget : public QWidget
{
Q_OBJECT
public:
MyWidget(QWidget *parent = nullptr);
private slots:
void onItemActivated(QListWidgetItem *item); // このスロット関数でアイテムのアクティベートイベントを処理します
private:
QListWidget *listWidget;
};
// MyWidget.cpp
#include "MyWidget.h"
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug> // デバッグ出力用
MyWidget::MyWidget(QWidget *parent) : QWidget(parent)
{
listWidget = new QListWidget(this);
listWidget->addItem("アイテム 1");
listWidget->addItem("アイテム 2");
listWidget->addItem("アイテム 3");
// itemActivated シグナルを onItemActivated スロットに接続
// アイテムがアクティベートされると、onItemActivated 関数が呼び出されます
connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated,
this, &MyWidget::onItemActivated);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(listWidget);
}
void MyWidget::onItemActivated(QListWidgetItem *item)
{
// ここにアイテムがアクティベートされたときの処理を書きます
qDebug() << "アイテムがアクティベートされました: " << item->text();
// 例えば、選択されたアイテムに基づいて詳細情報を表示する、
// 別のウィンドウを開くなどの処理が考えられます。
}
上記の例では、MyWidget
クラスがQListWidget
を持ち、そのitemActivated()
シグナルをMyWidget::onItemActivated()
スロットに接続しています。ユーザーがリストのアイテムをダブルクリックしたりEnterキーを押したりすると、onItemActivated()
関数が呼び出され、どのアイテムがアクティベートされたか(item->text()
でアイテムのテキストを取得)をデバッグ出力しています。
QListWidget
には他にも似たようなシグナルがありますが、itemActivated()
は以下のような違いがあります。
currentItemChanged(QListWidgetItem *current, QListWidgetItem *previous)
: 現在選択されているアイテムが変更されたときに発せられます。これはクリックだけでなく、キーボードの上下移動でも発動します。itemDoubleClicked(QListWidgetItem *item)
: アイテムがダブルクリックされたときに発せられます。itemClicked(QListWidgetItem *item)
: アイテムがクリックされたときに発せられます。シングルクリックで発動します。
itemActivated()
シグナルは、リストウィジェットのアイテムがダブルクリックされたり、選択された状態で Enter キーが押されたりしたときに発生する便利なシグナルですが、使用方法や環境によっては問題が発生することがあります。
シグナルが発せられない/スロットが呼び出されない
これが最も一般的な問題です。
考えられる原因と解決策
- イベントフィルタが影響している
- 原因
アプリケーションや親ウィジェットにイベントフィルタがインストールされており、itemActivated
に必要なマウスイベントやキーイベントが消費されてしまっている可能性があります。 - 解決策
- インストールされているイベントフィルタを確認し、必要であればデバッグ出力などでイベントがどこで消費されているかを追跡してください。
- 原因
- QListWidget がイベントを受け取っていない
- 原因
他のウィジェットがイベントをブロックしている、またはQListWidget
のfocusPolicy
が不適切である可能性があります。 - 解決策
listWidget->setFocusPolicy(Qt::StrongFocus);
またはQt::WheelFocus
など、適切なフォーカスポリシーが設定されていることを確認してください。これにより、キーボードイベントを受け取れるようになります。QToolBox
やQStackedWidget
のようなコンテナウィジェット内にQListWidget
がある場合、そのコンテナの設定が影響している可能性も考慮してください。
- 原因
- アイテムがそもそも存在しない、または表示されていない
- 原因
QListWidget
にアイテムが追加されていない、または何らかの理由でアイテムが正しく表示されていない(レイアウトの問題、ウィジェットが非表示など)。 - 解決策
listWidget->addItem(...)
などで確実にアイテムを追加しているか確認してください。QListWidget
自体が、親ウィジェットのレイアウトによって表示領域を確保されているか、setVisible(true)
などで表示されているかを確認してください。
- 原因
- connect の間違い
- 原因
シグナルとスロットの接続(connect
)が正しく行われていない。スペルミス、引数の型不一致、または間違ったオブジェクトに接続している可能性があります。 - 解決策
connect
文を注意深く確認してください。特に、Qt 5 以降の新しいシグナル・スロット記法を使用している場合、コンパイル時に型チェックが行われるため、型が合わないとエラーになります。
// 正しい例 connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated, this, &MyWidget::onItemActivated); // 間違った例 (引数の型が異なる、またはスペルミス) // connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated, // this, &MyWidget::onItemActivated_wrong_name); // connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated, // this, &MyWidget::onItemActivated(QString)); // 引数にQListWidgetItem* が必要
- レガシーな
SIGNAL
/SLOT
マクロを使用している場合、コンパイル時にはエラーが出なくても、実行時に接続に失敗する可能性があります。Qt 5 以降では新しい記法を使用することを強く推奨します。
- 原因
QListWidgetItem* item が nullptr になる、または意図しないアイテムを指す
itemActivated
シグナルはアクティベートされたアイテムへのポインタを渡しますが、稀にこれが問題になることがあります。
考えられる原因と解決策
- ソートされたリストでの挙動の不確定性
- 原因
QListWidget::item()
メソッドなどでアイテムをインデックスで取得している場合、リストがソートされていると、意図しないアイテムを指してしまう可能性があります。itemActivated
シグナル自体はポインタを渡すので直接の問題にはなりにくいですが、そのシグナルを受けて別の場所でインデックスを使ってアイテムにアクセスしようとした際に問題になることがあります。 - 解決策
itemActivated
シグナルから渡されるQListWidgetItem*
を直接利用するのが最も安全で確実な方法です。
- 原因
- アイテムが削除された後にシグナルが発せられた(稀なケース)
- 原因
ユーザーがアイテムをアクティベートする操作をしたが、その直前に別のスレッドや別のイベントによってそのアイテムがリストから削除されてしまった場合など、非常にタイミングがシビアな場合に起こりえます。 - 解決策
スロット関数内で受け取ったQListWidgetItem* item
がnullptr
でないことを常にチェックする習慣をつけることが重要です。
void MyWidget::onItemActivated(QListWidgetItem *item) { if (item) { // nullptr チェック qDebug() << "アイテムがアクティベートされました: " << item->text(); // ... 処理 ... } else { qDebug() << "エラー: アクティベートされたアイテムがnullptrです。"; } }
- 原因
パフォーマンスの問題(大量のアイテムを扱う場合)
itemActivated()
シグナル自体が直接パフォーマンスに影響を与えることは少ないですが、そのスロット内で重い処理を行うと、アプリケーションの応答性が低下することがあります。
考えられる原因と解決策
- 大量のアイテムの追加/更新による描画ボトルネック
- 原因
itemActivated()
とは直接関係ありませんが、大量のアイテムをQListWidget
に追加したり更新したりする際に、itemActivated()
が発せられる前の準備段階でパフォーマンスが低下することがあります。 - 解決策
listWidget->setUpdatesEnabled(false);
で更新を一時停止し、処理後にtrue
に戻してlistWidget->update();
を呼び出す。listWidget->setUniformItemSizes(true);
を設定して、全てのアイテムが同じサイズであることをQtに伝え、描画計算のオーバーヘッドを減らす。- 非常に大量のデータを扱う場合は、
QListWidget
の代わりにQListView
とカスタムモデル(QAbstractListModel
を継承)を使用することを検討してください。これはより柔軟で高性能なソリューションを提供します。
- 原因
- スロット内の処理が重すぎる
- 原因
アクティベートされたアイテムに基づいて、データベースクエリ、ファイルI/O、複雑なGUI更新など、時間がかかる処理を実行している場合。 - 解決策
- 処理の軽量化
スロット内の処理をできるだけ高速化することを検討してください。 - 非同期処理
時間のかかる処理は、QtConcurrent
や別のスレッド(QThread
)にオフロードすることを検討してください。これにより、GUIスレッドがブロックされず、アプリケーションの応答性を保つことができます。 - プログレス表示
処理に時間がかかる場合は、QProgressDialog
などでユーザーに進捗を表示することで、アプリケーションがフリーズしていると誤解されるのを防ぎます。
- 処理の軽量化
- 原因
デバッグのヒント
問題が発生した場合の一般的なデバッグ方法です。
- 公式ドキュメントを参照する
QListWidget
やitemActivated()
の公式ドキュメントには、詳細な情報や使用例が記載されています。最新のQtバージョンでの変更点も確認してください。 - QObject::dumpObjectInfo() / dumpObjectTree()
複雑なウィジェット階層の場合、listWidget->dumpObjectInfo()
やlistWidget->dumpObjectTree()
を呼び出して、オブジェクトの状態や親子関係を確認します。 - ブレークポイントを設定する
デバッガを使用して、connect
文の行とスロット関数の先頭にブレークポイントを設定し、実行フローを確認します。 - qDebug() を使う
スロット関数の先頭にqDebug() << "onItemActivated called!";
などのメッセージを追加し、実際にスロットが呼び出されているかを確認します。
QListWidget::itemActivated()
シグナルは、リストウィジェット内のアイテムが「アクティベート」されたときに発生します。この「アクティベート」とは、通常、ユーザーがアイテムをダブルクリックしたり、選択した状態でEnterキーを押したりすることを指します。このシグナルは、アクティベートされたQListWidgetItem
へのポインタを引数として渡すため、どのアイテムが操作されたかを特定し、それに応じた処理を実行できます。
以下に、基本的な使用例と、より実践的な例をいくつか示します。
例1: 最も基本的な使用法 (テキストの表示)
この例では、QListWidget
を作成し、いくつかのアイテムを追加します。ユーザーがアイテムをアクティベートすると、そのアイテムのテキストをデバッグ出力に表示します。
main.cpp
#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug> // デバッグ出力用
// カスタムウィジェットのクラス定義
class MyListWidgetApp : public QWidget
{
Q_OBJECT // シグナル・スロットを使用するために必要
public:
MyListWidgetApp(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
{
// QListWidgetの作成
listWidget = new QListWidget(this);
// アイテムの追加
listWidget->addItem("りんご");
listWidget->addItem("バナナ");
listWidget->addItem("オレンジ");
listWidget->addItem("ぶどう");
// itemActivated シグナルをカスタムスロットに接続
// アイテムがアクティベートされると、onItemActivated スロットが呼び出される
connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated,
this, &MyListWidgetApp::onItemActivated);
// レイアウトの設定
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(listWidget);
setLayout(layout);
setWindowTitle("QListWidget itemActivated 例");
resize(300, 200);
}
private slots:
// itemActivated シグナルが発せられたときに呼び出されるスロット関数
void onItemActivated(QListWidgetItem *item)
{
if (item) { // アイテムがnullptrでないかチェック
qDebug() << "アイテムがアクティベートされました: " << item->text();
// ここで、アクティベートされたアイテムに対する具体的な処理を記述
// 例: そのアイテムのテキストをダイアログで表示する
// QMessageBox::information(this, "アイテムアクティベート", "選択されたアイテム: " + item->text());
} else {
qDebug() << "エラー: アクティベートされたアイテムがnullptrです。";
}
}
private:
QListWidget *listWidget;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MyListWidgetApp window;
window.show();
return a.exec();
}
#include "main.moc" // MOC (Meta-Object Compiler) が生成するファイル
解説
MyListWidgetApp
クラスはQWidget
を継承し、Q_OBJECT
マクロを含んでいます。これは、シグナル・スロットメカニズムを使用するために必須です。- コンストラクタ内で
QListWidget
のインスタンスを作成し、addItem()
メソッドでいくつかの文字列アイテムを追加しています。 - 最も重要な部分は
connect
文です。connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated, this, &MyListWidgetApp::onItemActivated);
これは、「listWidget
からitemActivated
シグナルが発せられたら、MyListWidgetApp
オブジェクトのonItemActivated
スロット関数を呼び出しなさい」という意味です。 Qt 5以降の新しい記法では、シグナルとスロットのポインタを直接指定するため、コンパイル時に型チェックが行われ、安全性が高まります。 onItemActivated(QListWidgetItem *item)
スロット関数は、アクティベートされたアイテムのポインタを受け取ります。このポインタを使って、item->text()
でアイテムの表示テキストを取得し、qDebug()
でコンソールに出力しています。main.moc
は、Qtのビルドシステム(qmakeやCMake)によって自動的に生成されるファイルで、シグナル・スロットのメカニニズムを機能させるために必要です。通常、ソースファイルの最後に#include "moc_ファイル名.cpp"
のように記述します。(この例ではmain.moc
としていますが、プロジェクトによってはmoc_MyListWidgetApp.cpp
などとなります)
例2: アイテムにカスタムデータを格納し、それを利用する
QListWidgetItem
は、表示テキスト以外にも任意のデータを格納できます。これは setData()
メソッドを使って行い、data()
メソッドで取得します。Qt::UserRole
以上のカスタムロールを使って、独自のデータを格納するのが一般的です。
この例では、リストのアイテムにURLを関連付け、アイテムがアクティベートされたときにそのURLを既定のWebブラウザで開きます。
#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>
#include <QDesktopServices> // URLを開くために必要
#include <QUrl> // URLを扱うために必要
class MyUrlListApp : public QWidget
{
Q_OBJECT
public:
MyUrlListApp(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
{
listWidget = new QListWidget(this);
// アイテムとカスタムデータを追加
// Qt::UserRole を使用してURLデータを格納
QListWidgetItem *item1 = new QListWidgetItem("Google");
item1->setData(Qt::UserRole, QUrl("https://www.google.com"));
listWidget->addItem(item1);
QListWidgetItem *item2 = new QListWidgetItem("Qt Project");
item2->setData(Qt::UserRole, QUrl("https://www.qt.io"));
listWidget->addItem(item2);
QListWidgetItem *item3 = new QListWidgetItem("Wikipedia");
item3->setData(Qt::UserRole, QUrl("https://ja.wikipedia.org/wiki/メインページ"));
listWidget->addItem(item3);
connect(listWidget, &QListWidget::itemActivated,
this, &MyUrlListApp::onItemActivated);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(listWidget);
setLayout(layout);
setWindowTitle("URLリスト");
resize(400, 250);
}
private slots:
void onItemActivated(QListWidgetItem *item)
{
if (item) {
// 格納されたURLデータを取得
QVariant data = item->data(Qt::UserRole);
if (data.isValid() && data.canConvert<QUrl>()) {
QUrl url = data.toUrl();
qDebug() << "URLを開きます: " << url.toString();
QDesktopServices::openUrl(url); // 既定のWebブラウザでURLを開く
} else {
qDebug() << "エラー: アイテムに有効なURLデータがありません。";
}
}
}
private:
QListWidget *listWidget;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MyUrlListApp window;
window.show();
return a.exec();
}
#include "main.moc" // もしくは MyUrlListApp.moc
QListWidgetItem::setData(int role, const QVariant &value)
を使って、各アイテムにQUrl
オブジェクトをQt::UserRole
というカスタムロールで関連付けています。onItemActivated
スロットでは、item->data(Qt::UserRole)
で格納されたデータを取り出します。QVariant
はQtの汎用データ型で、さまざまな種類のデータを格納できます。data.isValid()
とdata.canConvert<QUrl>()
でデータの有効性と型をチェックし、data.toUrl()
でQUrl
に変換しています。QDesktopServices::openUrl(url)
は、与えられたURLをシステムの既定のアプリケーション(通常はWebブラウザ)で開く便利な関数です。
itemActivated()
は「アイテムがユーザーによって実行された」というイベントを捕捉するのに適していますが、ユーザーのインタラクションの細かさや、リストの動作要件によっては、他のシグナルを組み合わせたり、より低レベルなイベントを処理したりする方が適切です。
itemClicked(QListWidgetItem *item) シグナル
用途
アイテムがシングルクリックされたときに処理を実行したい場合に最適です。itemActivated()
はダブルクリックやEnterキーに反応しますが、itemClicked()
はマウスのクリックのみに反応します。
メリット
- ユーザーがアイテムを一度クリックしただけで何らかのアクションをトリガーしたい場合に適しています(例: 詳細パネルの表示、選択状態の切り替え)。
- 最も単純で直感的なクリックイベントの処理。
デメリット
- ダブルクリックやEnterキーでの「実行」操作には反応しません。
使用例
// ... (MyListWidgetApp クラスの定義は itemActivated と同様)
// connect 文
connect(listWidget, &QListWidget::itemClicked,
this, &MyListWidgetApp::onItemClicked);
// スロット関数
void MyListWidgetApp::onItemClicked(QListWidgetItem *item)
{
if (item) {
qDebug() << "アイテムがクリックされました: " << item->text();
// 例: アイテムを選択状態にする(QListWidgetのデフォルト動作ですが、
// 独自のロジックを追加したい場合)
}
}
itemDoubleClicked(QListWidgetItem *item) シグナル
用途
アイテムがダブルクリックされたときにのみ処理を実行したい場合に最適です。itemActivated()
がEnterキーでも発火するのに対し、こちらはダブルクリックのみに特化しています。
メリット
itemActivated()
よりもイベントの発生条件を限定できます。- ダブルクリックによる明確な「実行」操作を捕捉できます。
デメリット
- Enterキーによるアクティベート操作には反応しません。
使用例
// ... (MyListWidgetApp クラスの定義は itemActivated と同様)
// connect 文
connect(listWidget, &QListWidget::itemDoubleClicked,
this, &MyListWidgetApp::onItemDoubleClicked);
// スロット関数
void MyListWidgetApp::onItemDoubleClicked(QListWidgetItem *item)
{
if (item) {
qDebug() << "アイテムがダブルクリックされました: " << item->text();
// 例: ファイルを開く、詳細編集ダイアログを表示するなど
}
}
currentItemChanged(QListWidgetItem *current, QListWidgetItem *previous) シグナル
用途
リストの「現在選択されているアイテム(カレントアイテム)」が変更されたときに処理を実行したい場合に最適です。ユーザーがマウスでクリックするだけでなく、キーボードの上下矢印キーで選択を移動した場合にも発せられます。
メリット
- キーボードナビゲーションにも対応できるため、アクセシビリティが向上します。
- 選択状態の変更を広範囲に捕捉できます。
デメリット
- プログラムによる
setCurrentItem()
やsetCurrentRow()
の呼び出しでも発火します。 - アイテムが「アクティベート」された、あるいは「実行」されたという明確な意図を直接は示しません。単に選択が変わっただけなので、その後の処理は慎重に設計する必要があります。
使用例
// ... (MyListWidgetApp クラスの定義は itemActivated と同様)
// connect 文
connect(listWidget, &QListWidget::currentItemChanged,
this, &MyListWidgetApp::onCurrentItemChanged);
// スロット関数
void MyListWidgetApp::onCurrentItemChanged(QListWidgetItem *current, QListWidgetItem *previous)
{
if (current) {
qDebug() << "現在のアイテムが変更されました: " << current->text();
// 例: 選択されたアイテムのプロパティを別の場所(プロパティエディタなど)に表示する
}
if (previous) {
qDebug() << "以前のアイテム: " << previous->text();
} else {
qDebug() << "以前のアイテムはありませんでした。";
}
}
itemSelectionChanged() シグナル
用途
リストの選択状態が変更されたときに処理を実行したい場合に最適です。currentItemChanged()
が「カレントアイテム」の変更を捕捉するのに対し、こちらは複数選択モードで複数のアイテムが選択・非選択になった場合など、選択されているアイテムの集合全体が変化したときに発せられます。
メリット
- 選択されたアイテムの総数を更新したり、特定の条件を満たすアイテムのみを処理したりするのに使えます。
- 複数選択を扱うアプリケーションで非常に役立ちます。
デメリット
使用例
#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>
#include <QListWidgetItem> // QListWidgetItem が必要
class MySelectionApp : public QWidget
{
Q_OBJECT
public:
MySelectionApp(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
{
listWidget = new QListWidget(this);
listWidget->setSelectionMode(QAbstractItemView::ExtendedSelection); // 複数選択を有効にする
listWidget->addItem("アイテム A");
listWidget->addItem("アイテム B");
listWidget->addItem("アイテム C");
listWidget->addItem("アイテム D");
connect(listWidget, &QListWidget::itemSelectionChanged,
this, &MySelectionApp::onItemSelectionChanged);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(listWidget);
setLayout(layout);
setWindowTitle("QListWidget itemSelectionChanged 例");
resize(300, 200);
}
private slots:
void onItemSelectionChanged()
{
qDebug() << "選択が変更されました。";
QList<QListWidgetItem*> selectedItems = listWidget->selectedItems();
qDebug() << "現在選択されているアイテム数: " << selectedItems.count();
for (QListWidgetItem *item : selectedItems) {
qDebug() << "- " << item->text();
}
}
private:
QListWidget *listWidget;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MySelectionApp window;
window.show();
return a.exec();
}
#include "main.moc" // または MySelectionApp.moc
QListWidget のイベントをオーバーライドする (より高度な制御)
まれなケースですが、特定のキーイベントやマウスイベントをより低レベルで処理したい場合は、QListWidget
を継承し、関連するイベントハンドラをオーバーライドすることができます。
例: keyPressEvent
をオーバーライドして特定のキーでカスタム動作をさせる
#include <QApplication>
#include <QListWidget>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug>
#include <QKeyEvent> // QKeyEvent を使うために必要
class MyCustomListWidget : public QListWidget
{
Q_OBJECT
public:
MyCustomListWidget(QWidget *parent = nullptr) : QListWidget(parent) {}
protected:
void keyPressEvent(QKeyEvent *event) override
{
if (event->key() == Qt::Key_Delete) {
// Deleteキーが押されたら選択中のアイテムを削除
QList<QListWidgetItem*> selected = selectedItems();
for (QListWidgetItem *item : selected) {
// takeItem はアイテムをリストから削除するが、メモリは解放しない
// delete item; でメモリを解放する必要がある
delete takeItem(row(item));
}
qDebug() << "選択されたアイテムが削除されました。";
event->accept(); // イベントを処理済みとしてマーク
} else if (event->key() == Qt::Key_F2) {
// F2キーでアイテムを編集可能にする
QListWidgetItem *current = currentItem();
if (current) {
editItem(current); // アイテムの編集を開始
qDebug() << "F2キーでアイテムの編集を開始しました: " << current->text();
}
event->accept();
}
else {
// 他のキーイベントは基底クラスに任せる
QListWidget::keyPressEvent(event);
}
}
};
class MyEventApp : public QWidget
{
Q_OBJECT
public:
MyEventApp(QWidget *parent = nullptr) : QWidget(parent)
{
myListWidget = new MyCustomListWidget(this);
myListWidget->addItem("項目 1");
myListWidget->addItem("項目 2");
myListWidget->addItem("項目 3");
myListWidget->addItem("項目 4");
// itemActivated シグナルはそのまま利用可能
connect(myListWidget, &MyCustomListWidget::itemActivated,
this, &MyEventApp::onItemActivated);
QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(this);
layout->addWidget(myListWidget);
setLayout(layout);
setWindowTitle("QListWidget イベントオーバーライド例");
resize(300, 200);
}
private slots:
void onItemActivated(QListWidgetItem *item)
{
if (item) {
qDebug() << "アイテムがアクティベートされました (イベントオーバーライド): " << item->text();
}
}
private:
MyCustomListWidget *myListWidget;
};
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
MyEventApp window;
window.show();
return a.exec();
}
#include "main.moc" // または MyCustomListWidget.moc と MyEventApp.moc
解説
- それ以外のキーイベントは、基底クラスの
QListWidget::keyPressEvent(event)
を呼び出すことで、標準のリストウィジェットの動作(例: 上下移動)を維持します。 event->accept()
を呼び出すことで、イベントが処理済みであることをQtに伝え、それ以上伝播させないようにします。Qt::Key_Delete
やQt::Key_F2
といった特定のキーが押された場合に、独自の処理(アイテムの削除、アイテムの編集開始)を実行しています。MyCustomListWidget
クラスをQListWidget
から継承し、keyPressEvent()
メソッドをオーバーライドしています。
いつこの方法を使うか
- 既存のシグナルでは実現できない、より低レベルな制御が必要な場合。
- 非常に特定のユーザーインタラクション(特定のキー操作、複雑なドラッグ&ドロップ動作など)を捕捉・変更したい場合。
QListWidget::itemActivated()
は非常に便利ですが、要件に応じて以下のような代替シグナルや方法を検討することで、より適切なユーザー体験やプログラムの構造を実現できます。
- 特定のキー操作や複雑な挙動
イベントハンドラ (keyPressEvent
など) のオーバーライド、またはイベントフィルタの使用。 - 選択変更時にアクション
currentItemChanged()
(カレントアイテムの変更)、itemSelectionChanged()
(選択アイテム集合の変更) - ダブルクリックでアクション
itemDoubleClicked()
- 単一クリックでアクション
itemClicked()