Qtでファイルの絶対パスを取得：makeAbsolute()以外の代替メソッドを比較解説

2025-05-31

QFileInfo::makeAbsolute() は、Qt のファイル情報クラスである QFileInfo の便利なメンバ関数です。この関数は、QFileInfo オブジェクトが現在保持しているファイルパスを「絶対パス」に変換するために使用されます。

どのような時に使うのか？

QFileInfo オブジェクトが相対パス（例: "../data/file.txt" や "myimage.png"）を保持している場合、そのファイルが実際にどこにあるのかを特定するには、基準となるディレクトリ（カレントディレクトリなど）の情報が必要になります。makeAbsolute() は、このような相対パスを、システム上で一意に特定できる絶対パスに変換する際に役立ちます。

動作の仕組み

makeAbsolute() が呼び出されると、QFileInfo オブジェクトは以下のロジックに基づいてパスを絶対パスに変換しようとします。

パスが既に絶対パスの場合
もし QFileInfo オブジェクトが既に絶対パス（例: "/home/user/document.pdf" や "C:\Users\Name\report.docx"）を保持している場合、makeAbsolute() を呼び出してもパスは変更されません。
パスが相対パスの場合
パスが相対パスである場合、makeAbsolute() は通常、現在のアプリケーションの作業ディレクトリ（QDir::currentPath() で取得できるパス）を基準として、絶対パスを構築します。例えば、現在の作業ディレクトリが "/home/user/myproject" で、QFileInfo オブジェクトが "data/config.xml" という相対パスを保持している場合、makeAbsolute() を呼び出すとパスは "/home/user/myproject/data/config.xml" に変換されます。

実際の使用例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir> // QDir::currentPath() のために必要

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 1. 相対パスの QFileInfo を作成
    QFileInfo relativeFileInfo("my_data/settings.ini");
    qDebug() << "Original relative path:" << relativeFileInfo.filePath(); // 例: "my_data/settings.ini"

    // 2. makeAbsolute() を呼び出す
    relativeFileInfo.makeAbsolute();
    qDebug() << "Absolute path after makeAbsolute():" << relativeFileInfo.filePath();
    // 出力例 (現在の作業ディレクトリが "/home/user/myproject" の場合):
    // "Absolute path after makeAbsolute():" "/home/user/myproject/my_data/settings.ini"

    qDebug() << "--------------------";

    // 3. 既に絶対パスの QFileInfo を作成
    QFileInfo absoluteFileInfo("/var/log/syslog");
    qDebug() << "Original absolute path:" << absoluteFileInfo.filePath(); // 例: "/var/log/syslog"

    // 4. makeAbsolute() を呼び出す (変更なし)
    absoluteFileInfo.makeAbsolute();
    qDebug() << "Absolute path after makeAbsolute():" << absoluteFileInfo.filePath();
    // 出力例: "Absolute path after makeAbsolute():" "/var/log/syslog"

    return a.exec();
}

上記の例では、"my_data/settings.ini" のような相対パスが、makeAbsolute() を通じて現在の実行環境の作業ディレクトリを基準とした絶対パスに変換される様子がわかります。

注意点

ネットワークパス（UNCパスなど）に対する挙動は、オペレーティングシステムやQtのバージョンによって異なる場合がありますが、基本的には絶対パスとして扱われます。
ファイルシステム上に実際にそのファイルやディレクトリが存在するかどうかはチェックしません。あくまでパスの文字列表現を絶対形式に変換するだけです。
makeAbsolute() は QFileInfo オブジェクトが参照するパスをインプレースで変更します。新しい QFileInfo オブジェクトを返すわけではありません。

想定と異なる基準パスで絶対化される

問題
makeAbsolute() は相対パスを絶対パスに変換しますが、その際の基準となるのは通常、アプリケーションの現在の作業ディレクトリ (current working directory) です。しかし、アプリケーションが起動される方法や環境（IDEからの実行、ターミナルからの実行、スクリプトからの実行、システムサービスからの実行など）によっては、この作業ディレクトリが開発者の意図と異なる場合があります。結果として、makeAbsolute() が生成する絶対パスが期待と異なる場所を指してしまうことがあります。

例
QFileInfo info("data/config.json"); の後 info.makeAbsolute(); を呼び出した際に、

実行時には C:/Windows/System32/data/config.json のようになってしまう。
開発中は C:/MyProject/data/config.json となるはずが、

トラブルシューティング

リソースシステム (:) を利用する
アプリケーションにバンドルしたいファイル（アイコン、設定ファイルなど）の場合、Qtのリソースシステムを使用するのが最も堅牢な方法です。リソースパスは常に絶対パスとして扱われるため、makeAbsolute() の影響を受けず、プラットフォームに依存しません。
```
QFileInfo info(":/images/icon.png"); // リソースパスは最初から絶対パス扱い
info.makeAbsolute(); // 呼び出してもパスは変わらない
qDebug() << "Resource path:" << info.filePath(); // ":/images/icon.png"
```
アプリケーションの作業ディレクトリを明示的に設定する
実行時に常に特定のディレクトリを基準としたい場合は、アプリケーション起動時に QDir::setCurrent() を使用して作業ディレクトリを設定することを検討します。
```
QDir::setCurrent(QCoreApplication::applicationDirPath()); // 実行ファイルのディレクトリを作業ディレクトリにする
QFileInfo info("data/config.json");
info.makeAbsolute();
qDebug() << "Absolute path:" << info.filePath();
```
または、設定ファイルなどでパスを管理し、それらのパスが常に絶対パスになるように調整します。
QDir::currentPath() で確認する
makeAbsolute() を呼び出す前後に QDir::currentPath() を出力し、現在の作業ディレクトリが何になっているかを確認します。
```
qDebug() << "Current working directory:" << QDir::currentPath();
QFileInfo info("data/config.json");
info.makeAbsolute();
qDebug() << "Absolute path:" << info.filePath();
```

空の QFileInfo オブジェクトに対する挙動

問題
空の QFileInfo オブジェクト（コンストラクタでパスを指定しなかった場合や、setFile() で空文字列を設定した場合）に対して makeAbsolute() を呼び出すと、その挙動が未定義になる可能性があります。Qtのドキュメントには、「もし filePath() が空の場合、この関数の挙動は未定義です」という警告が記載されていることがあります。

例

QFileInfo emptyInfo; // パスが空
emptyInfo.makeAbsolute(); // 挙動が未定義になる可能性
qDebug() << emptyInfo.filePath(); // 予期しない結果

トラブルシューティング

コンストラクタで有効なパスを与えるか、setFile() で設定する
QFileInfo を使う際は、常に有効なパスで初期化するか、後からsetFile() で適切なパスを設定するようにします。
パスの有効性を常にチェックする
makeAbsolute() を呼び出す前に、!info.filePath().isEmpty() などでパスが空でないことを確認します。

シンボリックリンクやジャンクションの解釈

問題
makeAbsolute() はパスを絶対化しますが、シンボリックリンク（ショートカット、ジャンクション）の解決までは行いません。つまり、シンボリックリンクのパスが相対パスで与えられた場合、そのリンク自体の絶対パスが生成され、リンクが指す実際のターゲットの絶対パスではありません。ターゲットの絶対パスが必要な場合は、canonicalFilePath() や symLinkTarget() を使用する必要があります。

例
/home/user/link_to_docs が /opt/documents へのシンボリックリンクだとします。

QFileInfo linkInfo("link_to_docs");
linkInfo.makeAbsolute();
qDebug() << "Absolute path of link:" << linkInfo.filePath(); // 例: "/home/user/link_to_docs"
qDebug() << "Symlink target:" << linkInfo.symLinkTarget(); // 例: "/opt/documents"
qDebug() << "Canonical path:" << linkInfo.canonicalFilePath(); // 例: "/opt/documents" (シンボリックリンクを解決した絶対パス)

QFileInfo::makeAbsolute() は、QFileInfo オブジェクトが保持するファイルパスを「絶対パス」に変換する際に使用される関数です。ここでは、その基本的な使い方、よくある問題点、および関連する便利な関数を含めたプログラミング例をいくつか紹介します。

例1: 基本的な使い方 - 相対パスから絶対パスへ

この例では、相対パスを持つ QFileInfo オブジェクトを作成し、makeAbsolute() を呼び出して絶対パスに変換する基本的な流れを示します。

#include <QCoreApplication> // QCoreApplication を含む
#include <QFileInfo>        // QFileInfo を含む
#include <QDebug>           // qDebug() を含む
#include <QDir>             // QDir::currentPath() を含む

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 1. 相対パスを持つ QFileInfo オブジェクトを作成
    //    このパスは、アプリケーションの現在の作業ディレクトリに対する相対パスです。
    QFileInfo relativeFileInfo("data/config.xml");
    qDebug() << "1. 初期パス (相対):" << relativeFileInfo.filePath();

    // 2. makeAbsolute() を呼び出して絶対パスに変換
    //    QFileInfo オブジェクト自体が変更されます。
    relativeFileInfo.makeAbsolute();
    qDebug() << "2. makeAbsolute() 後 (絶対):" << relativeFileInfo.filePath();

    // 出力例: (現在の作業ディレクトリが "/home/user/myproject" の場合)
    // 1. 初期パス (相対): "data/config.xml"
    // 2. makeAbsolute() 後 (絶対): "/home/user/myproject/data/config.xml"

    qDebug() << "---------------------------------";

    // 3. 既に絶対パスを持つ QFileInfo オブジェクトを作成
    QFileInfo absoluteFileInfo("/etc/fstab"); // Linuxの例
    // QFileInfo absoluteFileInfo("C:/Windows/System32/drivers/etc/hosts"); // Windowsの例

    qDebug() << "3. 初期パス (既に絶対):" << absoluteFileInfo.filePath();

    // 4. 既に絶対パスの場合、makeAbsolute() を呼び出してもパスは変わりません。
    absoluteFileInfo.makeAbsolute();
    qDebug() << "4. makeAbsolute() 後 (変化なし):" << absoluteFileInfo.filePath();

    // 出力例:
    // 3. 初期パス (既に絶対): "/etc/fstab"
    // 4. makeAbsolute() 後 (変化なし): "/etc/fstab"

    return a.exec();
}

解説

absoluteFileInfo のように元々絶対パスである場合は、makeAbsolute() を呼び出してもパスは変化しません。
relativeFileInfo.makeAbsolute() を呼び出すことで、このパスはアプリケーションの現在の作業ディレクトリ（QDir::currentPath() で取得できるパス）を基準とした絶対パスに変換されます。
relativeFileInfo は "data/config.xml" という相対パスで初期化されます。

例2: `QDir::currentPath()` との関連性

makeAbsolute() がどのパスを基準に絶対化するのかを理解するために、QDir::currentPath() を使用して確認します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    qDebug() << "現在の作業ディレクトリ:" << QDir::currentPath();

    // 相対パスの QFileInfo を作成
    QFileInfo relativeFile("log/app.log");
    qDebug() << "相対パス:" << relativeFile.filePath();

    // makeAbsolute() を呼び出す
    relativeFile.makeAbsolute();
    qDebug() << "絶対パス (makeAbsolute() 後):" << relativeFile.filePath();

    qDebug() << "---------------------------------";

    // 作業ディレクトリを変更してみる
    // 注意: 実際のアプリケーションでは、QCoreApplication::applicationDirPath() を使うなど、
    //       適切なパスを設定することが多いです。
    //       ここでは動作確認のために適当なパスを設定しています。
    QDir::setCurrent("/tmp"); // Linux/macOS の例
    // QDir::setCurrent("C:/Temp"); // Windows の例

    qDebug() << "作業ディレクトリ変更後:" << QDir::currentPath();

    // 新しい作業ディレクトリで相対パスの QFileInfo を作成
    QFileInfo anotherRelativeFile("temp_output.txt");
    qDebug() << "新しい相対パス:" << anotherRelativeFile.filePath();

    anotherRelativeFile.makeAbsolute();
    qDebug() << "新しい絶対パス (makeAbsolute() 後):" << anotherRelativeFile.filePath();

    return a.exec();
}

解説

この挙動は、makeAbsolute() を使用する上で最も重要な注意点の一つです。アプリケーションの起動方法によって作業ディレクトリが異なる可能性があるため、意図しないパスが生成されることを防ぐために、アプリケーションの初期化時に作業ディレクトリを明示的に設定することを検討すべきです（例: QDir::setCurrent(QCoreApplication::applicationDirPath());）。
QDir::setCurrent() で作業ディレクトリを変更した後、再度 makeAbsolute() を呼び出すと、新しい作業ディレクトリを基準とした絶対パスが生成されることがわかります。
最初の makeAbsolute() は、プログラム実行時の初期の作業ディレクトリを基準とします。

例3: `canonicalFilePath()` との比較 (シンボリックリンクの解決)

makeAbsolute() はパスを絶対化しますが、シンボリックリンクを解決しません。シンボリックリンクを解決して、最終的なファイルの絶対パスを得たい場合は canonicalFilePath() を使用します。

前提
このコードを実行する前に、以下のコマンドなどでシンボリックリンクを作成しておいてください。（例: Linux/macOS の場合）

mkdir /tmp/my_target_dir
touch /tmp/my_target_dir/target_file.txt
ln -s /tmp/my_target_dir /tmp/link_to_target

（例: Windows の場合、管理者権限で実行）

mklink /D C:\Temp\link_to_target C:\Temp\my_target_dir
echo This is a target file. > C:\Temp\my_target_dir\target_file.txt

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 作業ディレクトリを /tmp に設定（シンボリックリンクが作成されていると仮定）
    QDir::setCurrent("/tmp"); // Linux/macOS
    // QDir::setCurrent("C:/Temp"); // Windows

    qDebug() << "現在の作業ディレクトリ:" << QDir::currentPath();

    // シンボリックリンクを指す QFileInfo を作成 (相対パスで)
    // "link_to_target" が /tmp/my_target_dir へのシンボリックリンクだと仮定
    QFileInfo linkInfo("link_to_target/target_file.txt");
    qDebug() << "初期パス (相対):" << linkInfo.filePath();

    // makeAbsolute() を呼び出す
    linkInfo.makeAbsolute();
    qDebug() << "makeAbsolute() 後 (絶対):" << linkInfo.filePath(); // シンボリックリンク自体の絶対パス

    // シンボリックリンクが指す最終的なパス (解決された絶対パス) を取得
    qDebug() << "canonicalFilePath():" << linkInfo.canonicalFilePath();

    // シンボリックリンクのターゲットパスを取得
    qDebug() << "symLinkTarget():" << linkInfo.symLinkTarget();

    // 出力例 (Linuxの場合):
    // 現在の作業ディレクトリ: "/tmp"
    // 初期パス (相対): "link_to_target/target_file.txt"
    // makeAbsolute() 後 (絶対): "/tmp/link_to_target/target_file.txt"
    // canonicalFilePath(): "/tmp/my_target_dir/target_file.txt"
    // symLinkTarget(): "/tmp/my_target_dir"

    return a.exec();
}

解説

symLinkTarget() は、シンボリックリンクが指している直接のターゲットパス (/tmp/my_target_dir) を返します。
canonicalFilePath() は、パス内のシンボリックリンクを解決し、最終的にファイルが実際に存在する場所の絶対パス (/tmp/my_target_dir/target_file.txt) を返します。
makeAbsolute() は、"link_to_target/target_file.txt" という相対パスを、現在の作業ディレクトリ (/tmp) を基準とした絶対パス (/tmp/link_to_target/target_file.txt) に変換します。これはシンボリックリンクそのもののパスです。

QFileInfo::makeAbsolute() は相対パスを絶対パスに変換する便利な関数ですが、他のQtのクラスや関数を使って同様の、あるいはより柔軟なパス操作を行うことができます。主な代替手段は以下の通りです。

QDir::absoluteFilePath() または QDir::absolutePath() を使用する

これは最も直接的で、かつ推奨される代替方法です。QDir クラスは、ディレクトリ操作のための強力な機能を提供しており、ファイルパスを絶対化する際にも非常に役立ちます。

考え方
QFileInfo::makeAbsolute() は、内部的にQDir::currentPath() を基準にパスを絶対化します。QDir::absoluteFilePath() を使うことで、任意のQDirオブジェクトを基準としてファイルパスを絶対化できます。

例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 1. QDir::currentPath() を基準とする場合 (makeAbsolute() と同じ挙動)
    QString relativePath1 = "data/settings.ini";
    QFileInfo fileInfo1(relativePath1);

    // QDir::current() は現在の作業ディレクトリを表す QDir オブジェクトを返します
    QString absolutePath1 = QDir::current().absoluteFilePath(relativePath1);

    qDebug() << "--- QDir::current() を基準 ---";
    qDebug() << "元の相対パス:" << relativePath1;
    qDebug() << "QFileInfo::makeAbsolute() (参考):";
    QFileInfo fiTemp(relativePath1);
    fiTemp.makeAbsolute();
    qDebug() << "  " << fiTemp.filePath();
    qDebug() << "QDir::current().absoluteFilePath():" << absolutePath1;

    qDebug() << "---------------------------------";

    // 2. 特定のディレクトリを基準とする場合 (より柔軟)
    QString basePath = QCoreApplication::applicationDirPath(); // アプリケーション実行ファイルのディレクトリ
    QDir baseDir(basePath);
    QString relativePath2 = "resources/images/logo.png";

    // baseDir を基準として absoluteFilePath() を呼び出す
    QString absolutePath2 = baseDir.absoluteFilePath(relativePath2);

    qDebug() << "--- 特定のディレクトリを基準 ---";
    qDebug() << "基準ディレクトリ:" << basePath;
    qDebug() << "元の相対パス:" << relativePath2;
    qDebug() << "QDir(basePath).absoluteFilePath():" << absolutePath2;

    // この絶対パスで QFileInfo を初期化することもできます
    QFileInfo fileInfo2(absolutePath2);
    qDebug() << "QFileInfo で初期化:" << fileInfo2.filePath();


    qDebug() << "---------------------------------";

    // 3. QDir::absolutePath() (ディレクトリの絶対パスを取得)
    QDir relativeDir("my_subdir/temp");
    qDebug() << "相対ディレクトリパス:" << relativeDir.path();
    // ディレクトリパス自体を絶対化したい場合
    QString absoluteDirPath = relativeDir.absolutePath();
    qDebug() << "QDir::absolutePath():" << absoluteDirPath;

    return a.exec();
}

利点

戻り値
QDir::absoluteFilePath() は新しい QString を返すため、元のパスを破壊しません。
基準ディレクトリの指定
QDir::makeAbsolute() が常に現在の作業ディレクトリを基準とするのに対し、QDir::absoluteFilePath() は任意の QDir オブジェクトを基準としてパスを絶対化できます。これにより、より予測可能で堅牢なパス処理が可能になります。例えば、アプリケーションの実行ファイルのあるディレクトリを基準にしたい場合は QCoreApplication::applicationDirPath() を使って QDir オブジェクトを作成し、それを基準にできます。

QFileInfo::filePath() とパスの連結

手動でベースパスとファイル名を結合して絶対パスを構築する方法です。これは単純なケースで有効ですが、パスの正規化（/ と \ の混在、../ の処理など）を考慮する必要があるため、通常は QDir の関数を使う方が安全です。

例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString baseDir = QDir::currentPath(); // または QCoreApplication::applicationDirPath()
    QString relativeFileName = "logs/app.log";

    // QDir::cleanPath() を使ってパスの正規化を行うことが推奨されます
    QString combinedPath = QDir::cleanPath(baseDir + QDir::separator() + relativeFileName);

    QFileInfo fileInfo(combinedPath);
    qDebug() << "手動結合後の絶対パス:" << fileInfo.filePath();

    return a.exec();
}

利点

明示的なパスの結合ロジックを自分で制御できます。

欠点

../ のような相対パス要素の解決は QDir::cleanPath() が行いますが、それでも QDir::absoluteFilePath() の方が意図が明確で安全です。
QDir::separator() の使用や QDir::cleanPath() による正規化を忘れると、プラットフォーム非依存性や正確性を損なう可能性があります。

QFileInfo::canonicalFilePath() を使用する (シンボリックリンクの解決も含む)

もし単にパスを絶対化するだけでなく、パスに含まれる . や ..、そしてシンボリックリンクを全て解決して、ファイルシステム上の実際の場所を指す正規化された絶対パスが欲しい場合は、QFileInfo::canonicalFilePath() が最適な選択です。

考え方
makeAbsolute() は単に相対パスを絶対パス形式に変換しますが、canonicalFilePath() は「そのパスが最終的にどの実体ファイルを指しているか」を返します。

例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc);

    // 相対パスの QFileInfo を作成
    QFileInfo relativePathInfo("../data/file.txt");
    qDebug() << "元のパス:" << relativePathInfo.filePath();

    // makeAbsolute() の結果
    relativePathInfo.makeAbsolute();
    qDebug() << "makeAbsolute() の結果:" << relativePathInfo.filePath();

    // canonicalFilePath() の結果 (シンボリックリンクも解決される)
    // 注意: ファイルが存在しない場合、canonicalFilePath() は空文字列を返す可能性があります。
    // その場合は QFileInfo::filePath() が絶対パスとして使われます。
    QFileInfo existingFileInfo("existing_file.txt"); // 実行前にこのファイルを作成してください
    // touch existing_file.txt (Linux/macOS)
    // echo "" > existing_file.txt (Windows)

    QString canonicalPath = existingFileInfo.canonicalFilePath();
    if (canonicalPath.isEmpty() && existingFileInfo.exists()) {
        // ファイルが存在するがcanonicalPathが空の場合、それは既に正規化されているか、
        // シンボリックリンクではない場合が多い
        qDebug() << "canonicalFilePath() は空ですが、ファイルは存在します。通常の絶対パス:"
                 << existingFileInfo.absoluteFilePath();
    } else {
         qDebug() << "canonicalFilePath() の結果:" << canonicalPath;
    }


    // シンボリックリンクの例 (前の回答の例を参照してリンクを作成してください)
    QFileInfo symlinkInfo("link_to_target/target_file.txt");
    qDebug() << "シンボリックリンクパス (makeAbsolute() と同じ):" << symlinkInfo.absoluteFilePath();
    qDebug() << "シンボリックリンク解決後 (canonicalFilePath()):" << symlinkInfo.canonicalFilePath();

    return a.exec();
}

利点

ファイルの重複排除や、実際にどのファイルが使われているかを確認するのに非常に有用です。
シンボリックリンクを解決し、最終的なファイルまたはディレクトリの物理的な場所を指します。
パス内の . や .. を解決し、完全に正規化された絶対パスを提供します。

パスが指すファイル/ディレクトリが実際に存在しない場合、空の文字列を返す可能性があります（Qtのバージョンやファイルシステムによって挙動が異なる場合があります）。これは、純粋にパス文字列を絶対化したいだけの目的には不向きな場合があります。

どの代替方法を選ぶべきか？

Qt開発者必見！QFileInfo::baseName()を使いこなすためのヒントとテクニック

具体的には、QFileInfo オブジェクトが指すファイルのフルパス（ディレクトリを含む完全なパス）から、最後のドット (.) 以降の部分（拡張子）を取り除いた文字列を取得します。もしファイル名にドットが含まれていない場合は、ファイル名全体がそのまま返されます。

Qt QFileInfo::birthTime()徹底解説：ファイルの作成日時を正確に取得する方法

QtプログラミングにおけるQFileInfo::birthTime()は、ファイルが作成された日時（生成日時）を返す関数です。もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。注意点: OSやファイルシステムによる制限: ファイルの作成日時（birth time）は、すべてのオペレーティングシステムやファイルシステムで利用できるわけではありません。例えば、一部のLinuxファイルシステム（EXT2/3など）では、デフォルトで作成日時が記録されない場合があります。このような場合、birthTime()は無効なQDateTimeオブジェクトを返します。 Qtのバージョン: birthTime()関数はQt 5.10で導入されました。それより古いQtのバージョンでは利用できません。 created()との違い: かつてはcreated()という関数もありましたが、これは非推奨（deprecated）となり、birthTime()またはmetadataChangeTime()の使用が推奨されています。created()はファイルのメタデータが最後に変更された時刻を返すことが多かったため、純粋な作成日時とは異なる場合がありました。