QFileInfo::isSymbolicLink()

2025-05-31

QFileInfo::isSymbolicLink() は、Qtプログラミングにおけるファイルシステム情報の取得クラスである QFileInfo のメンバー関数です。この関数は、指定されたパスがシンボリックリンクであるかどうかを判定するために使用されます。

目的 (Purpose)

この関数の主な目的は、ファイルやディレクトリが実際の物理的なエンティティではなく、他のファイルやディレクトリへの「ショートカット」や「エイリアス」であるシンボリックリンクであるかを確認することです。シンボリックリンクの取り扱いにおいては、それが指し示す元のファイル（ターゲット）と区別する必要がある場面が多々あります。

戻り値 (Return Value)

それ以外の場合（通常のファイル、ディレクトリ、存在しないパスなど）は false を返します。
もし QFileInfo オブジェクトが表すファイルがシンボリックリンクである場合は true を返します。
bool 型の値を返します。

使用例 (Example Usage)

以下に、QFileInfo::isSymbolicLink() の使用例を示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>
#include <QDebug> // for qDebug()

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 作業用ディレクトリの作成
    QDir dir;
    QString testDirPath = dir.tempPath() + "/qt_test_dir";
    if (!dir.mkpath(testDirPath)) {
        qDebug() << "Failed to create directory:" << testDirPath;
        return 1;
    }

    // テスト用のファイルを作成
    QString originalFilePath = testDirPath + "/original_file.txt";
    QFile originalFile(originalFilePath);
    if (originalFile.open(QIODevice::WriteOnly)) {
        originalFile.write("This is the original file content.");
        originalFile.close();
        qDebug() << "Created original file:" << originalFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create original file:" << originalFilePath;
        return 1;
    }

    // シンボリックリンクを作成 (Linux/macOSの場合)
    // Windowsではjunction/shortcutを作成する equivalent なAPIが必要になる場合があります
    // ここではクロスプラットフォームな例として、QtのAPIでシンボリックリンクを作成してみます
    QString symlinkPath = testDirPath + "/my_symlink.txt";
    if (QFile::link(originalFilePath, symlinkPath)) {
        qDebug() << "Created symbolic link:" << symlinkPath << "pointing to" << originalFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create symbolic link (platform might not support or permission issues):" << symlinkPath;
        // シンボリックリンクが作成できなかった場合、isSymbolicLink()はfalseを返すはずです
    }

    // シンボリックリンクのQFileInfoを作成
    QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);
    if (symlinkInfo.exists()) {
        qDebug() << "Path exists:" << symlinkPath;
        if (symlinkInfo.isSymbolicLink()) {
            qDebug() << "SUCCESS: '" << symlinkPath << "' is a symbolic link.";
            qDebug() << "It points to (absolute path):" << symlinkInfo.symLinkTarget();
        } else {
            qDebug() << "FAILURE: '" << symlinkPath << "' is NOT a symbolic link.";
        }
    } else {
        qDebug() << "Path does not exist:" << symlinkPath;
    }

    // オリジナルファイルのQFileInfoを作成
    QFileInfo originalFileInfo(originalFilePath);
    if (originalFileInfo.exists()) {
        qDebug() << "Path exists:" << originalFilePath;
        if (originalFileInfo.isSymbolicLink()) {
            qDebug() << "FAILURE: '" << originalFilePath << "' is a symbolic link.";
        } else {
            qDebug() << "SUCCESS: '" << originalFilePath << "' is NOT a symbolic link (as expected).";
        }
    } else {
        qDebug() << "Path does not exist:" << originalFilePath;
    }

    // 存在しないパスのQFileInfoを作成
    QString nonExistentPath = testDirPath + "/non_existent_file.txt";
    QFileInfo nonExistentInfo(nonExistentPath);
    if (!nonExistentInfo.exists()) {
        qDebug() << "Path does not exist:" << nonExistentPath;
        if (nonExistentInfo.isSymbolicLink()) {
            qDebug() << "FAILURE: '" << nonExistentPath << "' is a symbolic link (unexpected).";
        } else {
            qDebug() << "SUCCESS: '" << nonExistentPath << "' is NOT a symbolic link (as expected for non-existent path).";
        }
    }

    // 後処理 (作成したディレクトリとファイルを削除)
    QFile::remove(originalFilePath);
    QFile::remove(symlinkPath); // シンボリックリンク自体も削除
    dir.rmdir(testDirPath);

    return 0;
}

QFileInfo::symLinkTarget() 関数を使うと、シンボリックリンクが指し示している元のパスを取得できます。
QFileInfo::isSymbolicLink() は、あくまでパスがシンボリックリンクであるかどうかを判定します。シンボリックリンクが指し示す「ターゲット」のファイルが存在するかどうかはチェックしません。ターゲットのファイルが存在するかどうかを確認するには、QFileInfo(symlinkInfo.symLinkTarget()).exists() のように、symLinkTarget() で取得したパスに対して再度 QFileInfo を作成して確認する必要があります。
QFile::link() はシンボリックリンクの作成を試みますが、オペレーティングシステムやファイルシステムの権限によっては作成できない場合があります。特にWindowsでは、シンボリックリンクの作成に管理者権限が必要な場合があります。

シンボリックリンクが存在しない、または無効なパスの場合

エラー/混乱のポイント
QFileInfo オブジェクトが、存在しないファイルやディレクトリ、あるいは壊れた（指し示すターゲットが存在しない）シンボリックリンクを指している場合でも、isSymbolicLink() が true を返すと期待してしまうことがあります。

挙動

シンボリックリンク自体は存在するが、そのリンクが指し示すターゲットファイル/ディレクトリが存在しない（「dangling symlink」と呼ばれる）場合、isSymbolicLink() は true を返しますが、exists() は false を返します。
QFileInfo のコンストラクタに渡されたパスが存在しない場合、QFileInfo::isSymbolicLink() は常に false を返します。exists() も false を返します。

トラブルシューティング

シンボリックリンクのターゲットが存在するかどうかを確認するには、QFileInfo::symLinkTarget() を使用してターゲットパスを取得し、そのターゲットパスに対して新しい QFileInfo オブジェクトを作成し、exists() を呼び出す必要があります。
まず、QFileInfo::exists() を呼び出して、パスが実際に存在するかどうかを確認してください。

QFileInfo fileInfo("path/to/symlink");
if (fileInfo.isSymbolicLink()) {
    qDebug() << "Is a symbolic link.";
    QString targetPath = fileInfo.symLinkTarget();
    QFileInfo targetInfo(targetPath);
    if (targetInfo.exists()) {
        qDebug() << "Target exists:" << targetPath;
    } else {
        qDebug() << "Target does NOT exist (dangling link):" << targetPath;
    }
} else if (fileInfo.exists()) {
    qDebug() << "Is not a symbolic link, but exists.";
} else {
    qDebug() << "Path does not exist.";
}

Windows上のショートカットファイル (.lnk) との混同

エラー/混乱のポイント
Windowsの .lnk ファイル（シェルショートカット）は、Linux/macOSのシンボリックリンクと似た機能を提供しますが、ファイルシステムレベルのシンボリックリンクとは異なります。QFileInfo::isSymbolicLink() は、通常、NTFSシンボリックリンクやジャンクションポイントなど、OSレベルのシンボリックリンクのみを検出します。.lnk ファイルは通常のファイルとして扱われ、isSymbolicLink() は false を返します。

挙動

Qt 6.2以降では、QFileInfo::isJunction() と QFileInfo::junctionTarget() がWindowsのジャンクションポイントを扱うために利用できます。
Qt 6.4以降では、QFileInfo::isAlias() や QFileInfo::isShortcut() が導入され、これらがWindowsのショートカットファイルを検出する可能性があります。
QFileInfo は、Windowsの .lnk ファイルをシンボリックリンクとは認識しません。isSymbolicLink() は false を返します。

トラブルシューティング

Qt 6を使用している場合は、isShortcut() や isJunction() の使用を検討してください。
Windowsの .lnk ファイルを検出したい場合は、ファイル名が .lnk で終わるかどうかをチェックするか、より低レベルのWindows API（例: IShellLinkインターフェース）を使用することを検討する必要があります。

シンボリックリンク作成時のパーミッション問題

エラー/混乱のポイント
テスト環境でシンボリックリンクを作成しようとしたが、QFile::link() が失敗し、isSymbolicLink() のテストができない。

挙動

Linux/macOSでは、ln -s コマンドで作成できる場合でも、Qtアプリケーションから作成する際にパーミッションエラーが発生することがあります。
Windowsでは、通常、シンボリックリンクの作成には管理者権限が必要です。ユーザーアカウント制御 (UAC) の影響を受ける可能性があります。
シンボリックリンクの作成は、オペレーティングシステムやファイルシステムの権限に依存します。

トラブルシューティング

QFile::link() の戻り値を常にチェックし、失敗した場合はエラーメッセージ（Qtには直接的なエラーメッセージは少ないですが、デバッグ出力などで原因を絞り込む）を確認してください。
ファイルシステムがシンボリックリンクをサポートしているか確認してください（例: FAT32など一部のファイルシステムはサポートしていません）。
シンボリックリンクを作成するプログラムを管理者として実行してみてください。

パスの正規化とシンボリックリンクの解決

エラー/混乱のポイント
QFileInfo に相対パスを渡した場合や、../ などを含むパスを渡した場合に、期待通りの結果が得られない。

挙動

シンボリックリンクのターゲットへの「解決済み」のパスが必要な場合は、QFileInfo::canonicalFilePath() または QFileInfo::canonicalPath() を使用する必要があります。ただし、これらの関数は、ターゲットが存在しない場合は空の文字列を返します。
QFileInfo は、内部でパスを正規化しますが、シンボリックリンクを「解決」する（つまり、それが指し示す実際のパスに置き換える）ことはしません。isSymbolicLink() は、あくまで渡されたパス自体がシンボリックリンクであるかどうかを判定します。

トラブルシューティング

シンボリックリンクが指し示す最終的な物理パス（シンボリックリンクを辿ったパス）が必要な場合は、canonicalFilePath() を使用します。
パスがシンボリックリンクであるかどうかの確認には isSymbolicLink() を使います。

// 例えば、/usr/bin/python が /usr/bin/python3 へのシンボリックリンクで、
// /usr/bin/python3 が実際の実行ファイルである場合
QFileInfo pythonLinkInfo("/usr/bin/python");
if (pythonLinkInfo.isSymbolicLink()) {
    qDebug() << "Is a symbolic link:" << pythonLinkInfo.filePath(); // 例: /usr/bin/python
    qDebug() << "Target:" << pythonLinkInfo.symLinkTarget(); // 例: python3 (相対パスの場合あり)
    qDebug() << "Canonical path:" << pythonLinkInfo.canonicalFilePath(); // 例: /usr/bin/python3
}

キャッシュの問題 (稀)

エラー/混乱のポイント
ファイルシステムの状態が変更されたにもかかわらず、QFileInfo の情報が更新されない。

挙動

QFileInfo は、パフォーマンスのためにファイルシステム情報をキャッシュすることがあります。これは通常自動的に処理されますが、非常に動的なファイルシステム環境（例: 頻繁にシンボリックリンクが作成/削除される）では、情報が古くなる可能性があります。

トラブルシューティング

QFileInfo::refresh() を呼び出すことで、キャッシュされた情報を強制的に更新できます。

QFileInfo info("path/to/file_or_symlink");
// 何らかの外部プロセスがシンボリックリンクの状態を変更した可能性
info.refresh(); // 最新の情報を取得
if (info.isSymbolicLink()) {
    // ...
}

QFileInfo::isSymbolicLink() を使用する際は、以下の点を念頭に置くと良いでしょう。

パスの存在確認
常に QFileInfo::exists() と組み合わせて使用し、パス自体が存在するかどうかを確認する。
ターゲットの存在確認
シンボリックリンクの場合、symLinkTarget() を使ってターゲットパスを取得し、そのターゲットの存在も確認する必要がある。
OSごとの違い
Windowsのショートカット (.lnk) との区別を理解し、必要に応じて isShortcut() や isJunction() を利用する。
正規化と解決
isSymbolicLink() は「パスがシンボリックリンクであるか」を判定し、canonicalFilePath() は「シンボリックリンクを解決した最終的なパス」を提供する、という違いを理解する。
権限
シンボリックリンクの作成や情報取得にはOSの権限が関係する場合がある。

QFileInfo::isSymbolicLink() は、指定されたパスがシンボリックリンクであるかどうかを判定するために使用されます。ここでは、様々な状況をカバーするコード例と、それぞれの意図を説明します。

例 1: シンボリックリンクであるかどうかの基本的な判定

これは最も基本的な使用例で、与えられたパスがシンボリックリンクかどうかを単純にチェックします。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // テスト用のパス (実際の環境に合わせて変更してください)
    QString existingFilePath = "/etc/hosts"; // 通常のファイル
    QString symlinkPath = "/usr/bin/python"; // シンボリックリンクである可能性のあるパス (Linux/macOS)
                                           // Windowsの場合、管理者権限で作成したシンボリックリンクのパス
    QString nonExistentPath = "/path/to/non_existent_file"; // 存在しないパス

    // 1. 通常のファイルの場合
    QFileInfo fileInfo(existingFilePath);
    qDebug() << "--- Checking:" << existingFilePath << "---";
    if (fileInfo.exists()) {
        qDebug() << "Exists.";
        if (fileInfo.isSymbolicLink()) {
            qDebug() << "Is a symbolic link.";
        } else {
            qDebug() << "Is NOT a symbolic link.";
        }
    } else {
        qDebug() << "Does not exist.";
    }

    // 2. シンボリックリンクの場合
    QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);
    qDebug() << "\n--- Checking:" << symlinkPath << "---";
    if (symlinkInfo.exists()) {
        qDebug() << "Exists.";
        if (symlinkInfo.isSymbolicLink()) {
            qDebug() << "Is a symbolic link.";
            qDebug() << "Target:" << symlinkInfo.symLinkTarget(); // リンクのターゲットも表示
        } else {
            qDebug() << "Is NOT a symbolic link.";
        }
    } else {
        qDebug() << "Does not exist. (Perhaps '" << symlinkPath << "' is not a symlink on your system, or it does not exist)";
    }

    // 3. 存在しないパスの場合
    QFileInfo nonExistentInfo(nonExistentPath);
    qDebug() << "\n--- Checking:" << nonExistentPath << "---";
    if (nonExistentInfo.exists()) {
        qDebug() << "Exists.";
        if (nonExistentInfo.isSymbolicLink()) {
            qDebug() << "Is a symbolic link.";
        } else {
            qDebug() << "Is NOT a symbolic link.";
        }
    } else {
        qDebug() << "Does not exist. (As expected)";
    }

    return a.exec();
}

説明

シンボリックリンクの場合、symLinkTarget() を使ってそれが指し示す元のパス（ターゲット）を取得できます。
exists() を呼び出すことで、パス自体が存在するかどうかを確認することが重要です。存在しないパスに対して isSymbolicLink() を呼び出しても、常に false が返されます。
QFileInfo オブジェクトを作成し、isSymbolicLink() を呼び出すだけです。

例 2: 壊れたシンボリックリンク (Dangling Symlink) の検出

シンボリックリンク自体は存在するが、それが指し示すターゲットが存在しない状態（壊れたリンク）を検出する方法です。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>
#include <QFile>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QDir tempDir = QDir::temp();
    QString testDirPath = tempDir.absoluteFilePath("qt_symlink_test_" + QDateTime::currentDateTime().toString("yyyyMMddhhmmsszzz"));
    tempDir.mkpath(testDirPath); // テスト用ディレクトリを作成

    QString originalFilePath = testDirPath + "/actual_file.txt";
    QString danglingSymlinkPath = testDirPath + "/dangling_symlink.txt";

    // 1. 実際のファイルをまだ作成せず、先にシンボリックリンクを作成
    // この時点で danglingSymlinkPath は壊れたシンボリックリンクになる
    if (QFile::link(originalFilePath, danglingSymlinkPath)) {
        qDebug() << "Created dangling symlink:" << danglingSymlinkPath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create symlink (perhaps platform not supported or permission denied):" << danglingSymlinkPath;
        // シンボリックリンクが作成できない環境では、以降のテストが期待通りに行われません
        return 1;
    }

    QFileInfo danglingInfo(danglingSymlinkPath);
    qDebug() << "\n--- Checking dangling symlink:" << danglingSymlinkPath << "---";
    if (danglingInfo.isSymbolicLink()) {
        qDebug() << "Is a symbolic link (correct).";
        if (danglingInfo.exists()) {
            qDebug() << "Target exists (unexpected for dangling link).";
        } else {
            qDebug() << "Target does NOT exist (correct for dangling link).";
            qDebug() << "Symbolic link target is:" << danglingInfo.symLinkTarget();
        }
    } else {
        qDebug() << "Is NOT a symbolic link (unexpected if link creation succeeded).";
    }

    // 2. 実際のファイルを作成し、シンボリックリンクを有効にする
    QFile originalFile(originalFilePath);
    if (originalFile.open(QIODevice::WriteOnly)) {
        originalFile.write("This is the original content.");
        originalFile.close();
        qDebug() << "\nCreated original file:" << originalFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create original file.";
        // クリーンアップ
        QFile::remove(danglingSymlinkPath);
        QDir().rmdir(testDirPath);
        return 1;
    }

    // QFileInfo オブジェクトをリフレッシュして最新の状態を取得
    danglingInfo.refresh();
    qDebug() << "\n--- Re-checking symlink after target creation: " << danglingSymlinkPath << "---";
    if (danglingInfo.isSymbolicLink()) {
        qDebug() << "Is a symbolic link (correct).";
        if (danglingInfo.exists()) {
            qDebug() << "Target exists (now correct).";
            qDebug() << "Symbolic link target is:" << danglingInfo.symLinkTarget();
        } else {
            qDebug() << "Target does NOT exist (unexpected, refresh might not have worked or target path issue).";
        }
    } else {
        qDebug() << "Is NOT a symbolic link (unexpected).";
    }

    // クリーンアップ
    QFile::remove(originalFilePath);
    QFile::remove(danglingSymlinkPath);
    tempDir.rmdir(testDirPath);

    return a.exec();
}

説明

QFileInfo::refresh() は、キャッシュされたファイルシステム情報を更新するために重要です。これにより、danglingInfo オブジェクトがターゲットファイルの作成後に正しい状態を反映するようになります。
isSymbolicLink() が true を返し、かつ exists() が false を返す場合、それは「壊れたシンボリックリンク」（dangling symlink）です。
シンボリックリンクは QFile::link() で作成できます。この関数は、最初の引数がターゲットパス、2番目の引数がリンクパスです。

例 3: シンボリックリンクを解決して最終的なパスを取得する

シンボリックリンクがネストしている場合や、シンボリックリンクの指し示す最終的な物理パスが必要な場合に使用します。QFileInfo::canonicalFilePath() を使います。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>
#include <QFile>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QDir tempDir = QDir::temp();
    QString baseDirPath = tempDir.absoluteFilePath("qt_canonical_test_" + QDateTime::currentDateTime().toString("yyyyMMddhhmmsszzz"));
    tempDir.mkpath(baseDirPath);

    QString actualFilePath = baseDirPath + "/actual_file.txt";
    QString firstSymlink = baseDirPath + "/symlink1.txt";
    QString secondSymlink = baseDirPath + "/symlink2.txt";

    // 1. 実際のファイルを作成
    QFile actualFile(actualFilePath);
    if (actualFile.open(QIODevice::WriteOnly)) {
        actualFile.write("This is the actual file.");
        actualFile.close();
        qDebug() << "Created actual file:" << actualFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create actual file.";
        tempDir.rmdir(baseDirPath);
        return 1;
    }

    // 2. 実際のファイルへの最初のシンボリックリンクを作成
    if (QFile::link(actualFilePath, firstSymlink)) {
        qDebug() << "Created first symlink:" << firstSymlink << "-> " << actualFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create first symlink.";
        QFile::remove(actualFilePath);
        tempDir.rmdir(baseDirPath);
        return 1;
    }

    // 3. 最初のシンボリックリンクへの2番目のシンボリックリンクを作成 (ネストされたリンク)
    if (QFile::link(firstSymlink, secondSymlink)) {
        qDebug() << "Created second symlink:" << secondSymlink << "-> " << firstSymlink;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create second symlink.";
        QFile::remove(actualFilePath);
        QFile::remove(firstSymlink);
        tempDir.rmdir(baseDirPath);
        return 1;
    }

    // 各パスの情報を確認
    QFileInfo infoActual(actualFilePath);
    QFileInfo infoSym1(firstSymlink);
    QFileInfo infoSym2(secondSymlink);

    qDebug() << "\n--- Information for actual file ---";
    qDebug() << "Path:" << infoActual.filePath();
    qDebug() << "Is symbolic link?" << infoActual.isSymbolicLink();
    qDebug() << "Canonical path:" << infoActual.canonicalFilePath();

    qDebug() << "\n--- Information for first symlink ---";
    qDebug() << "Path:" << infoSym1.filePath();
    qDebug() << "Is symbolic link?" << infoSym1.isSymbolicLink();
    qDebug() << "Target:" << infoSym1.symLinkTarget(); // symlink1 -> actual_file.txt
    qDebug() << "Canonical path:" << infoSym1.canonicalFilePath(); // 最終的な actual_file.txt の絶対パス

    qDebug() << "\n--- Information for second symlink (nested) ---";
    qDebug() << "Path:" << infoSym2.filePath();
    qDebug() << "Is symbolic link?" << infoSym2.isSymbolicLink();
    qDebug() << "Target:" << infoSym2.symLinkTarget(); // symlink2 -> symlink1.txt
    qDebug() << "Canonical path:" << infoSym2.canonicalFilePath(); // 最終的な actual_file.txt の絶対パス

    // クリーンアップ
    QFile::remove(actualFilePath);
    QFile::remove(firstSymlink);
    QFile::remove(secondSymlink);
    tempDir.rmdir(baseDirPath);

    return a.exec();
}

説明

canonicalFilePath() は、シンボリックリンクのチェーンを解決し、最終的に指し示されるファイルの絶対パスを返します。これが「最終的な物理パス」を特定するのに役立ちます。ターゲットが存在しない場合は空の文字列を返します。
symLinkTarget() は、そのシンボリックリンクが直接指し示すパス（相対パスの場合もあります）を返します。
isSymbolicLink() は、firstSymlink と secondSymlink の両方で true を返します。

例 4: Windowsのジャンクションポイントとショートカット (Qt 6以降の追加機能)

Windows特有の機能で、isSymbolicLink() だけでは対応できない場合があります。Qt 6.2以降では isJunction()、Qt 6.4以降では isAlias() や isShortcut() が利用できます。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>
#include <QFile>
#include <QDebug>

#ifdef Q_OS_WIN // Windows 環境でのみこのコードを有効にする
#include <windows.h> // For CreateSymbolicLink, needs elevated privileges
#endif

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QDir tempDir = QDir::temp();
    QString baseDirPath = tempDir.absoluteFilePath("qt_win_link_test_" + QDateTime::currentDateTime().toString("yyyyMMddhhmmsszzz"));
    tempDir.mkpath(baseDirPath);

    QString targetDir = baseDirPath + "/TargetDir";
    QString junctionPoint = baseDirPath + "/JunctionLink";
    QString targetFile = baseDirPath + "/TargetFile.txt";
    QString symlinkFile = baseDirPath + "/SymlinkFile.txt";
    QString shortcutFile = baseDirPath + "/ShortcutFile.lnk"; // Windows ショートカット

    // ターゲットディレクトリとファイルを作成
    tempDir.mkpath(targetDir);
    QFile file(targetFile);
    file.open(QIODevice::WriteOnly);
    file.write("Hello, Windows links!");
    file.close();

    qDebug() << "Created TargetDir:" << targetDir;
    qDebug() << "Created TargetFile:" << targetFile;

#ifdef Q_OS_WIN
    // --- Windows 固有のリンクタイプ ---

    // 1. ジャンクションポイントの作成 (ディレクトリ用)
    // 通常は管理者権限が必要です
    if (CreateJunction(targetDir.toStdWString().c_str(), junctionPoint.toStdWString().c_str())) {
        qDebug() << "\nCreated Junction Point:" << junctionPoint << "-> " << targetDir;
    } else {
        qDebug() << "\nFailed to create Junction Point (Requires Admin?):" << GetLastError();
    }

    // 2. ファイルシンボリックリンクの作成 (Windows Vista 以降、通常管理者権限が必要です)
    // CreateSymbolicLinkW は Kernel32.lib にあり、windows.h をインクルード
    if (CreateSymbolicLinkW(symlinkFile.toStdWString().c_str(), targetFile.toStdWString().c_str(), 0)) { // 0 for FILE_FLAG_OPEN_REPARSE_POINT (file symlink)
        qDebug() << "Created Windows File Symlink:" << symlinkFile << "-> " << targetFile;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create Windows File Symlink (Requires Admin?):" << GetLastError();
    }

    // 3. Windows ショートカット (.lnk) の作成 (Qt APIでは直接作成が難しいので、QFile::linkは使わない)
    // ここでは手動で作成したと仮定するか、COMインターフェースを使用する必要があります。
    // 例のため、存在すると仮定します。
    qDebug() << "\n(Assuming '" << shortcutFile << "' exists as a .lnk file)";

    // --- 各リンクタイプの情報チェック ---
    QFileInfo junctionInfo(junctionPoint);
    QFileInfo winSymlinkInfo(symlinkFile);
    QFileInfo shortcutInfo(shortcutFile); // 実際にショートカットを作成するか、既存のものを指定してください

    qDebug() << "\n--- Checking Junction Point: " << junctionPoint << "---";
    qDebug() << "isSymbolicLink():" << junctionInfo.isSymbolicLink(); // Qt 6.2以降でtrueになる可能性あり
#if QT_VERSION >= QT_VERSION_CHECK(6, 2, 0)
    qDebug() << "isJunction():" << junctionInfo.isJunction(); // Qt 6.2以降で利用可能
    if (junctionInfo.isJunction()) {
        qDebug() << "Junction Target:" << junctionInfo.junctionTarget();
    }
#endif

    qDebug() << "\n--- Checking Windows File Symlink: " << symlinkFile << "---";
    qDebug() << "isSymbolicLink():" << winSymlinkInfo.isSymbolicLink(); // 通常 true

    qDebug() << "\n--- Checking Windows Shortcut (.lnk): " << shortcutFile << "---";
    qDebug() << "isSymbolicLink():" << shortcutInfo.isSymbolicLink(); // 通常 false
#if QT_VERSION >= QT_VERSION_CHECK(6, 4, 0)
    qDebug() << "isAlias():" << shortcutInfo.isAlias(); // Qt 6.4以降で利用可能 (macOS alias, Windows shortcut)
    qDebug() << "isShortcut():" << shortcutInfo.isShortcut(); // Qt 6.4以降で利用可能 (Windows shortcut)
#endif

    // クリーンアップ
    // ジャンクションとシンボリックリンクはQDir/QFile::removeで削除可能
    QFile::remove(symlinkFile);
    QDir().rmdir(junctionPoint); // ジャンクションはディレクトリなのでrmdir
    QFile::remove(targetFile);
    QDir().rmdir(targetDir);
    tempDir.rmdir(baseDirPath);

#else // Not Windows
    qDebug() << "This example section is for Windows specific link types.";
    qDebug() << "On Linux/macOS, QFileInfo::isSymbolicLink() covers most cases.";

    // クリーンアップ (Windows 以外では作成していないので不要ですが、例として)
    QFile::remove(targetFile);
    QDir().rmdir(targetDir);
    tempDir.rmdir(baseDirPath);

#endif // Q_OS_WIN

    return a.exec();
}

// Windows のジャンクション作成ヘルパー関数 (管理者権限が必要)
#ifdef Q_OS_WIN
bool CreateJunction(const wchar_t* targetPath, const wchar_t* junctionPath)
{
    // Ensure target path exists and is a directory
    DWORD dwAttrib = GetFileAttributesW(targetPath);
    if (!(dwAttrib != INVALID_FILE_ATTRIBUTES && (dwAttrib & FILE_ATTRIBUTE_DIRECTORY))) {
        qDebug() << "Target path for junction is not a directory or does not exist.";
        return false;
    }

    // CreateDirectory for the junction point (as an empty directory first)
    if (!CreateDirectoryW(junctionPath, NULL)) {
        qDebug() << "Failed to create junction point directory:" << GetLastError();
        return false;
    }

    HANDLE hJunction = CreateFileW(
        junctionPath,
        FILE_WRITE_ATTRIBUTES,
        FILE_SHARE_READ | FILE_SHARE_WRITE | FILE_SHARE_DELETE,
        NULL,
        OPEN_EXISTING,
        FILE_FLAG_BACKUP_SEMANTICS | FILE_FLAG_OPEN_REPARSE_POINT,
        NULL
    );

    if (hJunction == INVALID_HANDLE_VALUE) {
        qDebug() << "Failed to open junction point for reparse tag:" << GetLastError();
        RemoveDirectoryW(junctionPath); // Clean up the empty directory
        return false;
    }

    // Construct the REPARSE_DATA_BUFFER
    USHORT targetLen = wcslen(targetPath) * sizeof(WCHAR);
    USHORT printLen = targetLen; // For simplicity, print name is same as target name

    REPARSE_DATA_BUFFER* rdb = (REPARSE_DATA_BUFFER*) new char[
        sizeof(REPARSE_DATA_BUFFER) + targetLen + printLen + 16 // Add some buffer
    ];
    ZeroMemory(rdb, sizeof(REPARSE_DATA_BUFFER) + targetLen + printLen + 16);

    rdb->ReparseTag = IO_REPARSE_TAG_MOUNT_POINT;
    rdb->ReparseDataLength = sizeof(REPARSE_MOUNTPOINT_DATA_BUFFER) - sizeof(REPARSE_DATA_BUFFER) + targetLen + printLen + 16;
    rdb->Reserved = 0;

    REPARSE_MOUNTPOINT_DATA_BUFFER* mountPoint = (REPARSE_MOUNTPOINT_DATA_BUFFER*)rdb->MountPointReparseBuffer;
    mountPoint->SubstituteNameOffset = 0;
    mountPoint->SubstituteNameLength = targetLen;
    mountPoint->PrintNameOffset = targetLen;
    mountPoint->PrintNameLength = printLen;

    wcscpy((wchar_t*)((char*)rdb->MountPointReparseBuffer + mountPoint->SubstituteNameOffset), L"\\??\\");
    wcscat((wchar_t*)((char*)rdb->MountPointReparseBuffer + mountPoint->SubstituteNameOffset), targetPath);

    DWORD bytesReturned;
    bool success = DeviceIoControl(
        hJunction,
        FSCTL_SET_REPARSE_POINT,
        rdb,
        rdb->ReparseDataLength + sizeof(REPARSE_DATA_BUFFER),
        NULL,
        0,
        &bytesReturned,
        NULL
    );

    CloseHandle(hJunction);
    delete[] (char*)rdb;

    if (!success) {
        qDebug() << "Failed to set reparse point:" << GetLastError();
        RemoveDirectoryW(junctionPath); // Clean up
    }
    return success;
}
#endif // Q_OS_WIN

この例では、Windows API CreateSymbolicLinkW とジャンクション作成のための低レベルAPIを使用しています。これらの操作には管理者権限が必要な場合が多いです。管理者として実行しないと、リンク作成が失敗します。
Qt 6.4以降では、プラットフォームに依存しない「エイリアス」 (isAlias()) や、Windowsのショートカット (isShortcut()) を検出する関数が追加されています。
Qt 6.2以降では、ディレクトリに対するジャンクションポイントを isJunction() で検出できます。
QFileInfo::isSymbolicLink() は、Windowsのファイルシステムレベルのシンボリックリンク (CreateSymbolicLinkW で作成されるもの) は true を返しますが、.lnk ショートカットは通常 false を返します。
Windowsのシンボリックリンク、ジャンクションポイント、ショートカットファイルは挙動が異なります。

`QFileInfo::isSymbolicLink()` の代替手段に関するプログラミング

QFileInfo::canonicalFilePath() と QFileInfo::filePath() の比較

シンボリックリンクであるかどうかを直接判定するわけではありませんが、シンボリックリンクである場合に異なる振る舞いをするという点で、間接的にシンボリックリンクの存在を示すことができます。

QFileInfo::canonicalFilePath(): ファイルシステムのシンボリックリンクをすべて解決し、最終的にファイルが物理的に存在する場所の絶対パスを返します。
QFileInfo::filePath(): QFileInfo オブジェクトが初期化された際の、パスの文字列をそのまま返します。シンボリックリンクの場合、そのシンボリックリンク自体のパスを返します。

もし QFileInfo::filePath() と QFileInfo::canonicalFilePath() の返す値が異なる場合、そのパスは少なくとも1つ以上のシンボリックリンクを含んでいる可能性があります。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>
#include <QFile>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QDir tempDir = QDir::temp();
    QString baseDirPath = tempDir.absoluteFilePath("qt_alt_method_test_" + QDateTime::currentDateTime().toString("yyyyMMddhhmmsszzz"));
    tempDir.mkpath(baseDirPath);

    QString actualFilePath = baseDirPath + "/actual_file.txt";
    QString symlinkPath = baseDirPath + "/my_symlink.txt";

    // 実際のファイルを作成
    QFile actualFile(actualFilePath);
    if (actualFile.open(QIODevice::WriteOnly)) {
        actualFile.write("This is the actual content.");
        actualFile.close();
        qDebug() << "Created actual file:" << actualFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create actual file.";
        tempDir.rmdir(baseDirPath);
        return 1;
    }

    // シンボリックリンクを作成
    if (QFile::link(actualFilePath, symlinkPath)) {
        qDebug() << "Created symlink:" << symlinkPath << "-> " << actualFilePath;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create symlink (permission/platform issue).";
        QFile::remove(actualFilePath);
        tempDir.rmdir(baseDirPath);
        return 1;
    }

    // --- 比較による判定 ---
    QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);
    if (symlinkInfo.exists()) {
        qDebug() << "\n--- Comparing paths for symlink: " << symlinkPath << "---";
        qDebug() << "filePath():" << symlinkInfo.filePath();
        qDebug() << "canonicalFilePath():" << symlinkInfo.canonicalFilePath();

        if (symlinkInfo.filePath() != symlinkInfo.canonicalFilePath()) {
            qDebug() << "RESULT: Paths are different, likely a symbolic link or contains symlinks.";
            // さらに QFileInfo::isSymbolicLink() で直接確認する
            if (symlinkInfo.isSymbolicLink()) {
                qDebug() << "Confimed by isSymbolicLink(): Yes, it is a symbolic link.";
            }
        } else {
            qDebug() << "RESULT: Paths are the same, not a symbolic link (or canonical path cannot be resolved).";
        }
    }

    QFileInfo actualFileInfo(actualFilePath);
    if (actualFileInfo.exists()) {
        qDebug() << "\n--- Comparing paths for actual file: " << actualFilePath << "---";
        qDebug() << "filePath():" << actualFileInfo.filePath();
        qDebug() << "canonicalFilePath():" << actualFileInfo.canonicalFilePath();

        if (actualFileInfo.filePath() != actualFileInfo.canonicalFilePath()) {
            qDebug() << "RESULT: Paths are different, likely a symbolic link or contains symlinks.";
        } else {
            qDebug() << "RESULT: Paths are the same, not a symbolic link (as expected).";
        }
    }

    // クリーンアップ
    QFile::remove(actualFilePath);
    QFile::remove(symlinkPath);
    tempDir.rmdir(baseDirPath);

    return a.exec();
}

利点

パスの正規化に関する問題や、ネストされたシンボリックリンクの解決状況を把握するのに役立ちます。
Qtの古いバージョンで isSymbolicLink() が利用できない場合でも使えます。

欠点

シンボリックリンクでなくても、../ や . などを含む複雑なパスの場合もパスが異なることがあります。
canonicalFilePath() が、アクセス権の問題などでターゲットを解決できない場合、誤った結果を返す可能性があります。
これはシンボリックリンクであることを間接的に示唆するものであり、直接的な判定ではありません。

オペレーティングシステム固有のAPIの使用

Qtはクロスプラットフォームライブラリですが、特定のOS機能（特にファイルシステム）に深く関わる場合、ネイティブAPIを直接呼び出すことが最も確実で詳細な情報を提供することがあります。

Linux/macOS: lstat() 関数

LinuxやmacOS (Unix系システム) では、stat() と lstat() の違いを利用してシンボリックリンクを検出できます。

lstat(): パスがシンボリックリンクである場合、シンボリックリンク自体の情報を取得します。
stat(): パスがシンボリックリンクである場合、そのターゲットファイルの情報を取得します。

lstat() を使ってファイルタイプをチェックし、S_ISLNK() マクロでシンボリックリンクかどうかを判定します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>

#include <sys/stat.h> // for stat, lstat
#include <unistd.h>   // for readlink (optional, to get target)
#include <errno.h>    // for errno

#ifdef Q_OS_UNIX // Linux/macOS (Unix-like systems)
bool isSymbolicLink_lstat(const QString &path)
{
    struct stat sb;
    // lstat はシンボリックリンク自体を調べる
    if (lstat(QFile::encodeName(path).constData(), &sb) == -1) {
        // エラー（ファイルが存在しない、パーミッションがないなど）
        qWarning() << "lstat error for" << path << ":" << strerror(errno);
        return false;
    }
    // S_ISLNK マクロでシンボリックリンクかどうかをチェック
    return S_ISLNK(sb.st_mode);
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString testSymlink = "/usr/bin/python"; // シンボリックリンクの可能性のあるパス
    QString testFile = "/etc/hosts";         // 通常のファイルのパス

    qDebug() << "--- Using lstat() on Unix-like systems ---";

    qDebug() << "Path:" << testSymlink;
    if (isSymbolicLink_lstat(testSymlink)) {
        qDebug() << "'" << testSymlink << "' is a symbolic link (via lstat).";
    } else {
        qDebug() << "'" << testSymlink << "' is NOT a symbolic link (via lstat).";
    }

    qDebug() << "\nPath:" << testFile;
    if (isSymbolicLink_lstat(testFile)) {
        qDebug() << "'" << testFile << "' is a symbolic link (via lstat).";
    } else {
        qDebug() << "'" << testFile << "' is NOT a symbolic link (via lstat).";
    }

    // QtのQFileInfoと比較
    QFileInfo qtSymlinkInfo(testSymlink);
    qDebug() << "\n--- Comparing with QFileInfo::isSymbolicLink() ---";
    qDebug() << "'" << testSymlink << "' QFileInfo::isSymbolicLink():" << qtSymlinkInfo.isSymbolicLink();

    QFileInfo qtFileInfo(testFile);
    qDebug() << "'" << testFile << "' QFileInfo::isSymbolicLink():" << qtFileInfo.isSymbolicLink();


    return a.exec();
}
#else
int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);
    qDebug() << "This example uses lstat(), which is specific to Unix-like systems (Linux/macOS).";
    return a.exec();
}
#endif // Q_OS_UNIX

利点

Qtが提供しない詳細なファイル情報（パーミッション、オーナーなど）も同時に取得できます。
低レベルで直接的なOSの機能にアクセスするため、Qtのバージョンに依存しない堅牢なチェックが可能です。

欠点

Qtの便利さを一部失い、Cスタイルのエラーハンドリング (errno) が必要になります。
クロスプラットフォームではありません。OSごとに異なるAPIを記述する必要があります。

Windows: リパースポイントの確認

Windowsでは、シンボリックリンクは「リパースポイント」の一種として実装されています。低レベルでこれらを検出するには、GetFileAttributes() や DeviceIoControl() などのWinAPIを使用します。また、NTFSシンボリックリンク、ジャンクションポイント、ハードリンク、シェルショートカット (.lnk) など、リンクの種類が多岐にわたるため、それぞれ異なるアプローチが必要です。

.lnk ショートカット
これらは通常のファイルであり、ファイルシステムレベルのリンクではありません。ファイル拡張子をチェックするか、COMインターフェース (IShellLink) を使用する必要があります。
ジャンクションポイント
IO_REPARSE_TAG_MOUNT_POINT タグを持つリパースポイントです。
NTFSシンボリックリンク
CreateSymbolicLink で作成され、FILE_ATTRIBUTE_REPARSE_POINT 属性を持ち、そのリパースタグが IO_REPARSE_TAG_SYMLINK であるものを検出します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>

#ifdef Q_OS_WIN
#include <windows.h>
#include <winioctl.h> // For FSCTL_GET_REPARSE_POINT

bool isWindowsSymlinkOrJunction(const QString &path)
{
    // GetFileAttributesEx を使ってファイル属性を取得
    // FILE_ATTRIBUTE_REPARSE_POINT が設定されているか確認
    DWORD attributes = GetFileAttributesW(path.toStdWString().c_str());
    if (attributes == INVALID_FILE_ATTRIBUTES) {
        qWarning() << "GetFileAttributesW error for" << path << ":" << GetLastError();
        return false;
    }

    if (!(attributes & FILE_ATTRIBUTE_REPARSE_POINT)) {
        return false; // リパースポイントではない
    }

    // リパースポイントであれば、さらにタグを検査してシンボリックリンクかジャンクションか判断
    HANDLE hFile = CreateFileW(
        path.toStdWString().c_str(),
        0, // アクセス不要、属性のみ
        FILE_SHARE_READ | FILE_SHARE_WRITE | FILE_SHARE_DELETE,
        NULL,
        OPEN_EXISTING,
        FILE_FLAG_BACKUP_SEMANTICS | FILE_FLAG_OPEN_REPARSE_POINT, // リパースポイントとして開く
        NULL
    );

    if (hFile == INVALID_HANDLE_VALUE) {
        qWarning() << "CreateFileW error for reparse point:" << path << ":" << GetLastError();
        return false;
    }

    BYTE buffer[MAXIMUM_REPARSE_DATA_BUFFER_SIZE];
    REPARSE_DATA_BUFFER* reparseData = (REPARSE_DATA_BUFFER*)buffer;
    DWORD bytesReturned;

    bool success = DeviceIoControl(
        hFile,
        FSCTL_GET_REPARSE_POINT,
        NULL,
        0,
        reparseData,
        sizeof(buffer),
        &bytesReturned,
        NULL
    );

    CloseHandle(hFile);

    if (success) {
        if (reparseData->ReparseTag == IO_REPARSE_TAG_SYMLINK || // NTFS シンボリックリンク
            reparseData->ReparseTag == IO_REPARSE_TAG_MOUNT_POINT) // ジャンクションポイント
        {
            return true;
        }
    } else {
        qWarning() << "DeviceIoControl error:" << GetLastError();
    }
    return false;
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QDir tempDir = QDir::temp();
    QString baseDirPath = tempDir.absoluteFilePath("qt_win_alt_test_" + QDateTime::currentDateTime().toString("yyyyMMddhhmmsszzz"));
    tempDir.mkpath(baseDirPath);

    QString targetFile = baseDirPath + "/TargetFile.txt";
    QString winSymlinkFile = baseDirPath + "/WinSymlink.txt"; // NTFS シンボリックリンク

    QFile file(targetFile);
    file.open(QIODevice::WriteOnly);
    file.write("Hello from Windows target!");
    file.close();

    // NTFSシンボリックリンクの作成 (管理者権限が必要な場合が多い)
    if (CreateSymbolicLinkW(winSymlinkFile.toStdWString().c_str(), targetFile.toStdWString().c_str(), 0)) {
        qDebug() << "Created Windows Symlink:" << winSymlinkFile;
    } else {
        qDebug() << "Failed to create Windows Symlink (Requires Admin?):" << GetLastError();
    }

    qDebug() << "\n--- Using WinAPI to check symlinks ---";
    qDebug() << "Path:" << winSymlinkFile;
    if (isWindowsSymlinkOrJunction(winSymlinkFile)) {
        qDebug() << "'" << winSymlinkFile << "' is a Windows symlink/junction (via WinAPI).";
    } else {
        qDebug() << "'" << winSymlinkFile << "' is NOT a Windows symlink/junction (via WinAPI).";
    }

    qDebug() << "\nPath:" << targetFile;
    if (isWindowsSymlinkOrJunction(targetFile)) {
        qDebug() << "'" << targetFile << "' is a Windows symlink/junction (via WinAPI).";
    } else {
        qDebug() << "'" << targetFile << "' is NOT a Windows symlink/junction (via WinAPI).";
    }

    // QtのQFileInfoと比較
    QFileInfo qtWinSymlinkInfo(winSymlinkFile);
    qDebug() << "\n--- Comparing with QFileInfo::isSymbolicLink() ---";
    qDebug() << "'" << winSymlinkFile << "' QFileInfo::isSymbolicLink():" << qtWinSymlinkInfo.isSymbolicLink();

    // クリーンアップ
    QFile::remove(winSymlinkFile);
    QFile::remove(targetFile);
    tempDir.rmdir(baseDirPath);

    return a.exec();
}
#else
int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);
    qDebug() << "This example uses Windows-specific APIs.";
    return a.exec();
}
#endif // Q_OS_WIN

利点

特定のOSの低レベルな挙動を完全に制御できます。
Qtが提供するよりも詳細な情報（例: Windowsにおける特定のジャンクションタイプなど）を取得できる可能性があります。

欠点

パーミッションの問題に直面しやすくなります。
WinAPIの知識が必要であり、コードが複雑になりがちです。
クロスプラットフォームではありません。OSごとに異なるコードベースを維持する必要があります。

これは既存のシンボリックリンクを検出する方法ではありませんが、もしアプリケーション自身がシンボリックリンクを作成しようとしている場合、QFile::link() の戻り値を利用してその成否を判断できます。成功すればシンボリックリンクが作成されたことになります。

Qt開発者必見！QFileInfo::baseName()を使いこなすためのヒントとテクニック

具体的には、QFileInfo オブジェクトが指すファイルのフルパス（ディレクトリを含む完全なパス）から、最後のドット (.) 以降の部分（拡張子）を取り除いた文字列を取得します。もしファイル名にドットが含まれていない場合は、ファイル名全体がそのまま返されます。

Qt QFileInfo::birthTime()徹底解説：ファイルの作成日時を正確に取得する方法

QtプログラミングにおけるQFileInfo::birthTime()は、ファイルが作成された日時（生成日時）を返す関数です。もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。注意点: OSやファイルシステムによる制限: ファイルの作成日時（birth time）は、すべてのオペレーティングシステムやファイルシステムで利用できるわけではありません。例えば、一部のLinuxファイルシステム（EXT2/3など）では、デフォルトで作成日時が記録されない場合があります。このような場合、birthTime()は無効なQDateTimeオブジェクトを返します。 Qtのバージョン: birthTime()関数はQt 5.10で導入されました。それより古いQtのバージョンでは利用できません。 created()との違い: かつてはcreated()という関数もありましたが、これは非推奨（deprecated）となり、birthTime()またはmetadataChangeTime()の使用が推奨されています。created()はファイルのメタデータが最後に変更された時刻を返すことが多かったため、純粋な作成日時とは異なる場合がありました。

QFileInfo::isSymbolicLink()

目的 (Purpose)

戻り値 (Return Value)

使用例 (Example Usage)

シンボリックリンクが存在しない、または無効なパスの場合

Windows上のショートカットファイル (.lnk) との混同

シンボリックリンク作成時のパーミッション問題

パスの正規化とシンボリックリンクの解決

キャッシュの問題 (稀)

例 1: シンボリックリンクであるかどうかの基本的な判定

例 2: 壊れたシンボリックリンク (Dangling Symlink) の検出

例 3: シンボリックリンクを解決して最終的なパスを取得する

例 4: Windowsのジャンクションポイントとショートカット (Qt 6以降の追加機能)

QFileInfo::isSymbolicLink() の代替手段に関するプログラミング

QFileInfo::canonicalFilePath() と QFileInfo::filePath() の比較

オペレーティングシステム固有のAPIの使用

Linux/macOS: lstat() 関数

Windows: リパースポイントの確認

`QFileInfo::isSymbolicLink()` の代替手段に関するプログラミング