Windows/Unix対応：QFileInfo::groupId()とOS固有APIでファイルグループ情報を取得

2025-05-31

詳細

用途
- 特定のグループに属するファイルかどうかを判断する。
- ファイルのアクセス権限を管理する際に、グループに基づいて処理を分岐させる。
- ファイルシステムの状態を調査・報告するツールを作成する。

具体例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <iostream> // C++ の入出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 調べたいファイルのパスを指定
    QString filePath = "/path/to/your/file.txt"; // 実際のファイルのパスに置き換えてください

    QFileInfo fileInfo(filePath);

    if (fileInfo.exists()) {
        // ファイルが存在する場合
        uint groupId = fileInfo.groupId();
        QString groupName = fileInfo.group(); // グループ名を取得することもできます

        std::cout << "ファイル: " << filePath.toStdString() << std::endl;
        std::cout << "グループID: " << groupId << std::endl;
        std::cout << "グループ名: " << groupName.toStdString() << std::endl;
    } else {
        // ファイルが存在しない場合
        std::cout << "ファイルが見つかりません: " << filePath.toStdString() << std::endl;
    }

    return 0; // Qtアプリケーションではないので通常は0を返す
}

(注: このコードを実行するには、QCoreApplicationを初期化し、適切なQtモジュール（QtCoreなど）をリンクする必要があります。また、/path/to/your/file.txtを実際に存在するファイルのパスに置き換えてください。)

どこで使えるか？ QFileInfoクラスのオブジェクトに対して呼び出します。QFileInfoは、ファイル名、パス、サイズ、最終更新日時、アクセス権限など、ファイルに関する様々な情報を提供するクラスです。
戻り値
通常、符号なし整数（uint）でグループIDを返します。ファイルシステムがグループIDをサポートしていない場合や、ファイル情報が取得できない場合は、通常-1（または無効なIDを示す値）を返します。
何をする関数か？ この関数は、ファイルシステム上のファイルやディレクトリが属するグループの数値ID（GID）を取得するために使用されます。Unix系システム（Linux, macOSなど）では、ファイルには所有者（ユーザー）とグループが関連付けられており、アクセス権限の管理に利用されます。

関連する関数

QFileInfo::permissions(): ファイルの全権限を返します。
QFileInfo::group(): ファイルのグループ名（グループ名）を返します。
QFileInfo::owner(): ファイルの所有者名（ユーザー名）を返します。
QFileInfo::ownerId(): ファイルの所有者ID（UID）を返します。

グループIDが取得できない（uint(-2)や無効な値が返される）

原因

シンボリックリンクの場合
QFileInfoがシンボリックリンクを参照している場合、groupId()は通常、リンクそのもののグループIDを返します。リンク先のファイルのグループIDが必要な場合は、リンクを解決する必要があります（後述）。
ファイルシステムがグループ情報をサポートしていない
まれに、一部のファイルシステムやネットワークファイルシステム（NFSなど）の構成によっては、グループID情報が正しく提供されない場合があります。
非Unix系システムでの実行
Windowsなどの一部のオペレーティングシステムでは、ファイルシステムレベルでUnixのようなグループ所有者の概念がありません。このようなシステムでgroupId()を呼び出すと、通常はuint(-2)（または無効なIDを示す値）が返されます。
ファイルが存在しない、またはアクセスできない
QFileInfoオブジェクトが参照するファイルまたはディレクトリが存在しない場合、あるいはそのファイル/ディレクトリへのアクセス権限がない場合、正確な情報を取得できません。

トラブルシューティング

シンボリックリンクの解決
シンボリックリンクのリンク先のグループIDを取得したい場合は、QFileInfo::symLinkTarget()でリンク先のパスを取得し、そのパスで新しいQFileInfoオブジェクトを作成して情報を取得します。

QFileInfo symlinkInfo("/path/to/symlink");
if (symlinkInfo.isSymLink()) {
    QString targetPath = symlinkInfo.symLinkTarget();
    QFileInfo targetInfo(targetPath);
    if (targetInfo.exists()) {
        uint targetGroupId = targetInfo.groupId();
        qDebug() << "リンク先のグループID:" << targetGroupId;
    } else {
        qDebug() << "リンク先が見つかりません。";
    }
}

OSの確認
実行しているOSがUnix系（Linux, macOSなど）であることを確認してください。WindowsでグループIDが必要な場合は、別の方法（WMIなど）を検討する必要があります。
アクセス権限の確認
アプリケーションが対象のファイルやディレクトリにアクセスする権限を持っていることを確認してください。権限が不足している場合、QFileInfoは正しい情報を取得できません。

QFileInfo::exists()で存在確認
groupId()を呼び出す前に、必ずfileInfo.exists()でファイルやディレクトリが存在するかどうかを確認してください。

QFileInfo fileInfo("path/to/file.txt");
if (fileInfo.exists()) {
    uint groupId = fileInfo.groupId();
    // ...
} else {
    qDebug() << "ファイルが存在しません。";
}

パフォーマンスの問題（Unix系システムで遅い）

原因

システムコールのオーバーヘッド
groupId()（およびownerId()、group()、owner()など、ファイルシステム情報にアクセスするほとんどのQFileInfo関数）は、内部的にオペレーティングシステムのファイルシステム情報を取得するためのシステムコール（例: stat()）を使用します。これらのシステムコールは、特に多数のファイルに対して繰り返し呼び出されると、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。Qtのドキュメントにも「This function can be time consuming under Unix (in the order of milliseconds).」と記載されています。

トラブルシューティング

バッチ処理
もし複数のファイルのグループIDを一度に取得する必要がある場合、OSによってはバッチで情報を取得するAPIがあるかもしれませんが、QtのQFileInfoでは直接サポートされていません。必要であれば、低レベルなシステムコールを直接利用することを検討しますが、これはプラットフォーム依存になり、Qtの利点が失われます。
ファイルシステムの変更通知の利用
リアルタイムでファイルのグループIDの変更を監視する必要がある場合は、QFileSystemWatcherを使用して変更通知を受け取り、必要なファイルの情報のみを更新するようにします。これにより、不要なgroupId()呼び出しを減らせます。
キャッシュの利用
QFileInfoはファイル情報を内部的にキャッシュしますが、ファイルが外部から変更される可能性もあるため、古い情報を保持している場合があります。ただし、明示的にrefresh()を呼び出さない限り、一度取得した情報はキャッシュされます。パフォーマンスが問題になる場合は、ファイル情報を独自にキャッシュするメカニズムを実装することも検討できます。
必要なときにのみ呼び出す
ループ内で大量のファイルに対して毎回groupId()を呼び出すのは避けてください。必要な場合にのみ呼び出すように設計を見直します。

不正確な情報が返される（古い情報など）

原因

ファイル情報の変更
QFileInfoオブジェクトを作成した後に、外部のプロセスや別のコードによってファイルのグループが変更された場合、QFileInfoオブジェクトが持つ情報は古くなる可能性があります。

トラブルシューティング

QFileInfo::refresh()の呼び出し
ファイル情報が最新であることを確認したい場合は、groupId()を呼び出す前にQFileInfo::refresh()を呼び出して、QFileInfoオブジェクトの情報を更新します。
```
QFileInfo fileInfo("/path/to/file.txt");
// 何らかの処理でファイルのグループが変更された可能性
fileInfo.refresh(); // 最新の情報に更新
uint groupId = fileInfo.groupId();
```
ただし、refresh()も内部的にはシステムコールを使用するため、頻繁な呼び出しはパフォーマンスに影響する可能性があります。

原因

ヘッダーのインクルード不足
QFileInfoを使用するには、#include <QFileInfo>が必要です。
必要なモジュールのリンク不足
QFileInfoはQtCoreモジュールの一部です。Qtプロジェクトファイル（.pro）にQT += coreが記述されていない場合、コンパイルエラーやリンクエラーが発生する可能性があります。

ソースファイルに#include <QFileInfo>を追加する。
.proファイルにQT += coreを追加する。

例1: 基本的なグループIDの取得

最も基本的な使用例です。指定したファイルのグループIDとグループ名を取得します。

#include <QCoreApplication> // コンソールアプリケーションの基本クラス
#include <QFileInfo>        // ファイル情報取得のためのクラス
#include <QDebug>           // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    // QCoreApplicationを初期化します。Qtの多くのクラスはこれが必要です。
    QCoreApplication app(argc, argv);

    // 調べたいファイルのパスを指定します。
    // !!注意!! 実際の環境に存在するファイルパスに置き換えてください。
    // 例えば、LinuxやmacOSなら "/etc/passwd" など。
    // WindowsではグループIDの概念が異なるため、この例は期待通りに動作しません。
    QString filePath = "/home/user/my_document.txt"; // 例: Linux/macOSの場合

    QFileInfo fileInfo(filePath); // QFileInfoオブジェクトを作成

    // ファイルが存在するかどうかを確認することが重要です。
    if (fileInfo.exists()) {
        qDebug() << "ファイルパス:" << filePath;

        // QFileInfo::groupId() でグループIDを取得
        uint groupId = fileInfo.groupId();
        qDebug() << "グループID:" << groupId;

        // QFileInfo::group() でグループ名を取得
        QString groupName = fileInfo.group();
        qDebug() << "グループ名:" << groupName;

        // おまけ: ファイルの所有者情報も取得
        uint ownerId = fileInfo.ownerId();
        QString ownerName = fileInfo.owner();
        qDebug() << "所有者ID:" << ownerId;
        qDebug() << "所有者名:" << ownerName;

    } else {
        qDebug() << "エラー: ファイルが見つからないか、アクセスできません:" << filePath;
    }

    return 0; // コンソールアプリケーションなので0を返して終了
}

解説

group()関数を使用すると、数値のIDだけでなく、人間が読めるグループ名も取得できます。
exists()でファイルの存在を確認するのは、エラーハンドリングの基本です。
QFileInfoオブジェクトを生成し、そのインスタンスに対してgroupId()を呼び出します。

例2: 複数のファイルのグループIDをリスト表示

特定のディレクトリ内のすべてのファイルのグループIDとグループ名を取得する例です。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>             // ディレクトリ操作のためのクラス
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication app(argc, argv);

    // 調べたいディレクトリのパスを指定します。
    // !!注意!! 実際の環境に存在するディレクトリパスに置き換えてください。
    // 例: Linux/macOSなら "/tmp" や "/home/user" など。
    QString directoryPath = "/tmp"; // 例: Linux/macOSの場合

    QDir directory(directoryPath);

    // ディレクトリが存在し、読み込み可能か確認
    if (!directory.exists() || !directory.isReadable()) {
        qDebug() << "エラー: ディレクトリが見つからないか、アクセスできません:" << directoryPath;
        return 1;
    }

    qDebug() << "ディレクトリ内のファイルとフォルダのグループ情報:" << directoryPath;

    // ディレクトリ内のすべてのエントリ（ファイルとサブディレクトリ）を取得
    // QDir::NoDotAndDotDot: "." と ".." を除外
    // QDir::AllEntries: ファイル、ディレクトリ、シンボリックリンクを含む
    QFileInfoList entries = directory.entryInfoList(QDir::AllEntries | QDir::NoDotAndDotDot);

    for (const QFileInfo &entryInfo : entries) {
        qDebug() << "------------------------------------------";
        qDebug() << "名前:" << entryInfo.fileName();
        qDebug() << "フルパス:" << entryInfo.filePath();

        // ディレクトリかファイルかを判断
        if (entryInfo.isDir()) {
            qDebug() << "タイプ: ディレクトリ";
        } else if (entryInfo.isFile()) {
            qDebug() << "タイプ: ファイル";
        } else if (entryInfo.isSymLink()) {
            qDebug() << "タイプ: シンボリックリンク";
            qDebug() << "リンク先:" << entryInfo.symLinkTarget(); // シンボリックリンクのリンク先
        } else {
            qDebug() << "タイプ: その他";
        }

        // グループ情報を取得
        // Windowsでは無効な値が返されることに注意
        uint groupId = entryInfo.groupId();
        QString groupName = entryInfo.group();

        if (groupId != static_cast<uint>(-2)) { // 無効なID（通常Windowsで返される）でない場合
            qDebug() << "グループID:" << groupId;
            qDebug() << "グループ名:" << groupName;
        } else {
            qDebug() << "グループ情報: 利用不可 (OSがサポートしていないか、エラー)";
        }
    }

    return 0;
}

解説

groupId() != static_cast<uint>(-2)で、WindowsなどのグループIDをサポートしないシステムで返される可能性のある無効な値を除外しています。
ループで各エントリについてgroupId()とgroup()を呼び出し、情報を表示します。
entryInfoList()はQFileInfoオブジェクトのリストを返します。
QDirクラスを使用して、ディレクトリの内容をリストアップします。

例3: シンボリックリンクのグループIDの取得（リンク先とリンク自体）

シンボリックリンクの場合、QFileInfo::groupId()はデフォルトでシンボリックリンクそのもののグループIDを返します。リンク先のファイルやディレクトリのグループIDを取得したい場合は、リンクを解決する必要があります。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication app(argc, argv);

    // !!注意!!
    // 1. 実際に存在するファイルにリンクするシンボリックリンクを作成してください。
    //    例 (Linux/macOS):
    //    touch /tmp/original_file.txt
    //    ln -s /tmp/original_file.txt /tmp/my_symlink.txt
    // 2. シンボリックリンクのパスに置き換えてください。
    QString symlinkPath = "/tmp/my_symlink.txt"; // 例: シンボリックリンクのパス

    QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);

    if (symlinkInfo.exists()) {
        qDebug() << "シンボリックリンクパス:" << symlinkPath;

        if (symlinkInfo.isSymLink()) {
            qDebug() << "これはシンボリックリンクです。";

            // 1. シンボリックリンクそのもののグループ情報
            qDebug() << "--- リンク自身の情報 ---";
            qDebug() << "グループID (リンク):" << symlinkInfo.groupId();
            qDebug() << "グループ名 (リンク):" << symlinkInfo.group();

            // 2. リンク先のファイルのグループ情報
            QString targetPath = symlinkInfo.symLinkTarget(); // リンク先のパスを取得
            QFileInfo targetInfo(targetPath); // リンク先のQFileInfoを作成

            qDebug() << "--- リンク先の情報 ---";
            qDebug() << "リンク先パス:" << targetPath;
            if (targetInfo.exists()) {
                qDebug() << "グループID (リンク先):" << targetInfo.groupId();
                qDebug() << "グループ名 (リンク先):" << targetInfo.group();
            } else {
                qDebug() << "エラー: リンク先が見つからないか、アクセスできません。";
            }
        } else {
            qDebug() << "これはシンボリックリンクではありません。";
            qDebug() << "グループID:" << symlinkInfo.groupId();
            qDebug() << "グループ名:" << symlinkInfo.group();
        }
    } else {
        qDebug() << "エラー: ファイル/シンボリックリンクが見つからないか、アクセスできません:" << symlinkPath;
    }

    return 0;
}

解説

そのパスを使って新しいQFileInfoオブジェクトを作成し、リンク先の実際のファイル情報を取得します。
symLinkTarget()でシンボリックリンクが指し示す先のパスを取得します。
isSymLink()で、そのQFileInfoがシンボリックリンクを表しているかどうかを確認します。

WindowsとUnix系OSでのgroupId()の動作の違いを考慮した例です。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QOperatingSystemVersion> // OSのバージョン情報を取得

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication app(argc, argv);

    // !!注意!!
    // OSによって適切なパスに置き換えてください。
    // Linux/macOSの場合:
    QString filePath = "/etc/passwd";
    // Windowsの場合 (グループIDの概念は異なる):
    // QString filePath = "C:/Windows/System32/drivers/etc/hosts";

    QFileInfo fileInfo(filePath);

    if (fileInfo.exists()) {
        qDebug() << "ファイルパス:" << filePath;

        // OSがUnix系かどうかを確認
        if (QOperatingSystemVersion::current().type() == QOperatingSystemVersion::Linux ||
            QOperatingSystemVersion::current().type() == QOperatingSystemVersion::MacOS)
        {
            qDebug() << "OS: Unix系 (Linux/macOS)";
            uint groupId = fileInfo.groupId();
            QString groupName = fileInfo.group();

            // QFileInfo::groupId()が返す無効な値 (uint(-2) は通常 -1 として扱われる) をチェック
            // Qt 5.15以降では、QFileInfo::groupId()の戻り値はuintで、無効な場合は (uint)-2 を返す
            // この値は通常、-1 を意味する0xFFFFFFFE として表現される
            if (groupId != static_cast<uint>(-2)) { // 無効なIDでないことを確認
                 qDebug() << "グループID:" << groupId;
                 qDebug() << "グループ名:" << groupName;
            } else {
                 qDebug() << "警告: グループIDが取得できませんでした (OSの制約か、ファイルシステムの問題)。";
            }
        }
        else if (QOperatingSystemVersion::current().type() == QOperatingSystemVersion::Windows)
        {
            qDebug() << "OS: Windows";
            qDebug() << "注意: WindowsではUnixのようなグループIDの概念がありません。";
            qDebug() << "QFileInfo::groupId()は無効な値を返します。";
            uint groupId = fileInfo.groupId();
            qDebug() << "groupId()の戻り値:" << groupId; // 期待通りに無効な値が返される
        }
        else
        {
            qDebug() << "OS: その他のプラットフォーム";
            qDebug() << "グループIDの動作は不明です。";
            uint groupId = fileInfo.groupId();
            qDebug() << "groupId()の戻り値:" << groupId;
        }

    } else {
        qDebug() << "エラー: ファイルが見つからないか、アクセスできません:" << filePath;
    }

    return 0;
}

WindowsではgroupId()が意味のある値を返さないことを明示的に示しています。
OSがUnix系の場合にのみグループIDの情報を取得・表示するように分岐させることで、クロスプラットフォームなコードで不必要な警告や誤解を避けることができます。
QOperatingSystemVersion::current().type()を使って、実行中のOSの種類を判別します。

主な代替方法は、以下のカテゴリに分けられます。

Qtが提供する他の関連関数を利用する
OS固有のAPIを直接呼び出す
より高レベルの抽象化や設計パターンを検討する

Qtが提供する他の関連関数を利用する

QFileInfo::groupId()が直接の目的を果たせない場合でも、Qtの他の関数で目的を達成できることがあります。

QFileInfo::ownerId() や QFileInfo::owner() を使用する (所有者情報が必要な場合)
- 説明
  グループIDではなく、ファイルの所有者（ユーザー）のIDや名前が必要な場合に使用します。
- なぜ代替になるか
  グループIDの代わりに所有者ID/名で同様のロジックを実装できる場合があります。
- 説明
  groupId() が数値IDを返すのに対し、group() は人間が読めるグループ名を返します。多くの場合、ユーザーインターフェースで表示したり、ログに出力したりする際には、IDよりも名前の方が有用です。
- なぜ代替になるか
  特定の処理でグループ名のみが必要な場合、groupId() を呼び出す必要はありません。また、内部的にはgroup()もシステムコールを呼び出して情報を取得しますが、IDから名前へのマッピングをQtが内部で処理してくれます。
- 注意点
  グループ名が取得できない場合（例: IDに対応する名前がない、ファイルシステムがサポートしていない）は空の文字列を返します。

OS固有のAPIを直接呼び出す

クロスプラットフォーム性よりも、特定のOSでの詳細な制御やパフォーマンスが必要な場合に検討します。

Windows OS: GetFileSecurity(), GetSecurityInfo(), LookupAccountSid() など
- 説明
  Windowsでは、ファイルセキュリティはACL (Access Control List) とSID (Security Identifier) という概念で管理されます。グループIDのような単一の数値IDではなく、グループのSIDを取得し、それを名前解決する必要があります。
- なぜ代替になるか
  QFileInfo::groupId() はWindowsでは意味のある値を返さないため、Windows固有のファイルセキュリティ情報を取得するには、これらのAPIを直接呼び出す必要があります。
- 注意点
  - 複雑なAPIであり、セキュリティ記述子（Security Descriptor）の構造を理解する必要があります。
  - 戻り値はGIDのような単純な数値ではなく、SID構造体です。
  - 当然ながら、コードはWindowsに完全に依存します。
  - Windows環境でグループ情報を取得する最も簡単な方法は、WMI (Windows Management Instrumentation) を使用することですが、これはC++で直接行うとさらに複雑になります。

Unix系OS (Linux, macOS, BSDなど): stat() または fstat() システムコール

説明
これらのシステムコールは、ファイルやディレクトリのメタデータ（サイズ、タイムスタンプ、権限、所有者ID、グループIDなど）を取得するための低レベルな関数です。QFileInfoも内部的にこれらを使用しています。
なぜ代替になるか
- QFileInfoが提供しない追加情報が必要な場合。
- パフォーマンスが非常にクリティカルで、Qtのラッパーによるオーバーヘッドを避けたい場合（ただし、これはまれなケースです）。
- 特定の構造体（struct stat）を直接操作したい場合。

使い方 (C++)

#include <sys/stat.h> // stat() のためのヘッダー
#include <unistd.h>   // getgrgid() のためのヘッダー
#include <grp.h>      // struct group のためのヘッダー
#include <string>
#include <iostream>

void getUnixGroupInfo(const std::string& path) {
    struct stat fileStat;
    if (stat(path.c_str(), &fileStat) == 0) {
        // グループIDを取得
        gid_t gid = fileStat.st_gid;
        std::cout << "ファイルパス: " << path << std::endl;
        std::cout << "グループID: " << gid << std::endl;

        // グループ名を取得 (getgrgid() を使用)
        struct group* grp = getgrgid(gid);
        if (grp != nullptr) {
            std::cout << "グループ名: " << grp->gr_name << std::endl;
        } else {
            std::cout << "グループ名: 取得できませんでした" << std::endl;
        }
    } else {
        std::cerr << "エラー: ファイル情報を取得できません (" << path << ")" << std::endl;
    }
}

// main関数などから呼び出す
// getUnixGroupInfo("/etc/passwd");

注意点
コードがプラットフォーム非依存でなくなります。Windowsではこの方法は使用できません。

より高レベルの抽象化や設計パターンを検討する

groupId() が直接必要ではなく、その情報を使って「何をしたいのか」を再考することで、別の設計が見つかることがあります。

ファイル情報オブジェクトの抽象化
- 説明
  QFileInfo のラッパーとなる独自のクラスを作成し、そのクラスが内部でOSごとの適切な方法（QFileInfo、または必要に応じて低レベルAPI）を呼び出してグループ情報を取得するようにします。
- なぜ代替になるか
  アプリケーションの他の部分からは、このカスタムクラスの抽象化されたインターフェースだけが見えるため、OSごとの実装の詳細が隠蔽されます。
ポリシーベースの設計
- 説明
  ファイルのグループIDに基づいて特定の動作を決定するのではなく、「このファイルは承認されたグループに属しているか？」というポリシーを定義し、そのポリシーを評価するクラスや関数を作成します。
- なぜ代替になるか
  groupId() の生の値に依存するのではなく、よりビジネスロジックに近い形で問題を解決できます。異なるOSでポリシーの実装を変えることで、コアロジックは変更せずに対応できます。

アクセス権限の管理が主目的の場合
QFileInfo::permissions() や QFile::setPermissions() で十分なケースが多いです。
Windows OSでグループ情報を取得する必要がある場合
QFileInfo::groupId() は使えません。Windows固有のAPI（GetFileSecurity()など）を呼び出すか、WMIのようなより高レベルなWindows固有の機構を利用する必要があります。これは複雑であり、Qtアプリケーションとしては別の考慮事項が必要になります。
Unix系OSでパフォーマンスが非常に重要、またはQFileInfoが提供しない詳細な情報が必要な場合
stat() などのシステムコールを直接呼び出すことを検討します。ただし、Qtのクロスプラットフォーム性が失われます。
Unix系OSで単にグループ名が必要な場合
QFileInfo::group() を使用するのが最も簡単で推奨される方法です。

Qt開発者必見！QFileInfo::baseName()を使いこなすためのヒントとテクニック

具体的には、QFileInfo オブジェクトが指すファイルのフルパス（ディレクトリを含む完全なパス）から、最後のドット (.) 以降の部分（拡張子）を取り除いた文字列を取得します。もしファイル名にドットが含まれていない場合は、ファイル名全体がそのまま返されます。

Qt QFileInfo::birthTime()徹底解説：ファイルの作成日時を正確に取得する方法

QtプログラミングにおけるQFileInfo::birthTime()は、ファイルが作成された日時（生成日時）を返す関数です。もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。注意点: OSやファイルシステムによる制限: ファイルの作成日時（birth time）は、すべてのオペレーティングシステムやファイルシステムで利用できるわけではありません。例えば、一部のLinuxファイルシステム（EXT2/3など）では、デフォルトで作成日時が記録されない場合があります。このような場合、birthTime()は無効なQDateTimeオブジェクトを返します。 Qtのバージョン: birthTime()関数はQt 5.10で導入されました。それより古いQtのバージョンでは利用できません。 created()との違い: かつてはcreated()という関数もありましたが、これは非推奨（deprecated）となり、birthTime()またはmetadataChangeTime()の使用が推奨されています。created()はファイルのメタデータが最後に変更された時刻を返すことが多かったため、純粋な作成日時とは異なる場合がありました。