std::filesystem::path QFileInfo::filesystemSymLinkTarget()

2025-05-31

Qt 6.0 以降で導入された関数で、以前の QFileInfo::symLinkTarget() が QString を返していたのに対し、この関数は C++17 で導入された std::filesystem::path 型を返します。これにより、ファイルシステムパスの操作がより標準的かつ効率的に行えるようになります。

機能

この関数は、QFileInfo オブジェクトが表すファイルがシンボリックリンクである場合、そのシンボリックリンクが指す実際のファイルまたはディレクトリのパスを返します。もしファイルがシンボリックリンクでない場合は、空の std::filesystem::path オブジェクトを返します。

戻り値

空の std::filesystem::path オブジェクト: QFileInfo オブジェクトがシンボリックリンクでない場合、またはターゲットが見つからない場合。
std::filesystem::path: シンボリックリンクのターゲットパス。

使用例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <filesystem> // std::filesystem を使用するために必要

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 既存のシンボリックリンクのパス（例: /path/to/my_symlink）
    // 実際には存在するシンボリックリンクのパスに置き換えてください
    QString symlinkPath = "/path/to/my_symlink"; 

    QFileInfo fileInfo(symlinkPath);

    if (fileInfo.isSymLink()) {
        std::filesystem::path targetPath = fileInfo.filesystemSymLinkTarget();
        if (!targetPath.empty()) {
            qDebug() << "シンボリックリンクのターゲット:" << QString::fromStdWString(targetPath.native());
        } else {
            qDebug() << "シンボリックリンクのターゲットが見つかりません。";
        }
    } else {
        qDebug() << "これはシンボリックリンクではありません。";
    }

    return a.exec();
}

上記のコードを実行する際には、symlinkPath を実際に存在するシンボリックリンクのパスに置き換える必要があります。テスト用のシンボリックリンクを作成してから実行することをお勧めします。
QString::fromStdWString(targetPath.native()) は、std::filesystem::path を QString に変換してデバッグ出力するために使用しています。std::filesystem::path は環境によってはワイド文字（wchar_t）を使用するため、native() メンバー関数でプラットフォームネイティブな表現を取得し、それを QString::fromStdWString で変換するのが一般的です。

QFileInfo::filesystemSymLinkTarget() は std::filesystem::path を返すため、C++17 のファイルシステムライブラリの機能（パスの結合、正規化など）を直接利用でき、よりタイプセーフで効率的なパス操作が可能です。
QFileInfo::symLinkTarget() は QString を返すため、文字列としてパスを扱うことになります。

シンボリックリンクが存在しない、または無効な場合

エラー/問題
filesystemSymLinkTarget() が空の std::filesystem::path を返す、または期待するパスを返さない。

原因

シンボリックリンクが指すターゲットが存在しない（いわゆる「壊れたシンボリックリンク」）。
シンボリックリンクが存在しない。
QFileInfo オブジェクトが指すパスが、そもそもシンボリックリンクではない。

トラブルシューティング

QFileInfo::isSymLink() で確認する
まず、対象のパスがシンボリックリンクであるかどうかを isSymLink() で確認することが重要です。

QFileInfo fileInfo(symlinkPath);
if (fileInfo.isSymLink()) {
    std::filesystem::path target = fileInfo.filesystemSymLinkTarget();
    if (!target.empty()) {
        // ターゲットが取得できた
    } else {
        qDebug() << "エラー: シンボリックリンクのターゲットが見つからないか、壊れています。";
    }
} else {
    qDebug() << "エラー: 指定されたパスはシンボリックリンクではありません。";
}

パスの存在を確認する
QFileInfo::exists() や QFileInfo::isReadable() などを使用して、シンボリックリンク自体の存在や読み取り権限を確認します。
シンボリックリンクのターゲットを確認する
ターゲットパスを取得した後、そのターゲットパスが存在するかどうかを std::filesystem::exists(target) などで確認すると良いでしょう。

パスエンコーディングの問題

エラー/問題
取得した std::filesystem::path を QString や他の文字列型に変換した際に、文字化けが発生する。

原因

ファイルシステムが使用する文字エンコーディングと、プログラムが仮定するエンコーディングが一致しない。

トラブルシューティング

std::filesystem::path::native() を使用する
std::filesystem::path は、プラットフォームネイティブな文字エンコーディングでパスを内部的に保持しています。native() メンバー関数は、このネイティブな表現を返します。
- Windows: wchar_t ベースの文字列
- Linux/macOS: char ベースの文字列 (UTF-8が一般的)
QString に変換する際は、この native() 結果を適切に変換します。
- Windows
  QString::fromStdWString(targetPath.native())
- Linux/macOS
  QString::fromUtf8(targetPath.native().string().c_str()) （通常はこれで問題ないが、環境によっては異なる場合も）または、より一般的な方法として QString::fromLocal8Bit() を使用することも検討できますが、UTF-8が推奨されます。
Qt のファイルシステムエンコーディング設定
QTextCodec::setCodecForLocale() などで、Qt アプリケーション全体のエンコーディング設定を調整することも可能ですが、std::filesystem と連携する場合は native() を介した変換がより堅牢です。

権限の問題

エラー/問題
シンボリックリンクが存在し、有効であるにもかかわらず、filesystemSymLinkTarget() が空を返す、またはアクセスエラーが発生する。

原因

シンボリックリンクのターゲットに対する読み取り権限がない。
シンボリックリンク自体に対する読み取り権限がない。

トラブルシューティング

ファイル権限の確認
オペレーティングシステムレベルで、シンボリックリンクファイルとそのターゲットファイルの権限を確認します。
- Linux/macOS: ls -l コマンド
- Windows: ファイルのプロパティのセキュリティタブ
アプリケーションの実行権限
アプリケーションが管理者権限（または十分な権限）で実行されているか確認します。特にシステムディレクトリや他のユーザーのファイルにアクセスする場合に重要です。

エラー/問題
filesystemSymLinkTarget() が未定義エラーになる、または期待通りに動作しない。

原因

ビルド設定に std::filesystem のサポートが適切に含まれていない。
Qt のバージョンが 6.0 未満である（この関数は Qt 6.0 で導入されました）。

トラブルシューティング

Qt バージョンの確認
使用している Qt のバージョンが 6.0 以降であることを確認します。
- .pro ファイル: QT += core のみで通常は十分ですが、Qt 6.0 以降を使用していることを確認してください。
- CMakeLists.txt: find_package(Qt6 COMPONENTS Core REQUIRED) などで Qt 6 を使用していることを確認します。
C++標準の確認
std::filesystem は C++17 の機能です。コンパイラが C++17 以上をサポートしていることを確認し、プロジェクトのビルド設定で C++17 以降が有効になっていることを確認します。
- .pro ファイル: QMAKE_CXXFLAGS += -std=c++17 または CONFIG += c++17
- CMakeLists.txt: set(CMAKE_CXX_STANDARD 17)

std::filesystem::path QFileInfo::filesystemSymLinkTarget() を使用する際は、以下の点に注意すると良いでしょう。

Qt のバージョンと C++標準設定が適切であることを確認する。
ファイルシステム権限を確認する。
パスのエンコーディングに注意し、native() を適切に使用して変換する。
シンボリックリンクの存在と有効性を常に確認する。 (isSymLink(), exists())

以下に、いくつかの使用例とその解説を示します。

例1: 基本的な使用方法 - シンボリックリンクのターゲットを取得する

この例では、既存のシンボリックリンクを作成し、そのターゲットパスをプログラムで取得する方法を示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>        // ディレクトリ操作用
#include <QFile>       // ファイル操作用
#include <filesystem>  // std::filesystem を使用するために必要

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 作業用ディレクトリを作成
    QString testDir = QDir::tempPath() + "/qt_symlink_test";
    QDir().mkpath(testDir); // ディレクトリが存在しない場合は作成
    qDebug() << "テストディレクトリ:" << testDir;

    // 1. ターゲットとなるファイルを作成
    QString targetFilePath = testDir + "/original_file.txt";
    QFile originalFile(targetFilePath);
    if (originalFile.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
        originalFile.write("これは元のファイルの内容です。\n");
        originalFile.close();
        qDebug() << "ターゲットファイルを作成:" << targetFilePath;
    } else {
        qDebug() << "エラー: ターゲットファイルを作成できませんでした。";
        return -1;
    }

    // 2. シンボリックリンクを作成
    QString symlinkPath = testDir + "/my_symlink.txt";
    if (QFile::link(targetFilePath, symlinkPath)) {
        qDebug() << "シンボリックリンクを作成:" << symlinkPath << " -> " << targetFilePath;
    } else {
        qDebug() << "エラー: シンボリックリンクを作成できませんでした。";
        // Windowsでは管理者権限が必要な場合があります
        return -1;
    }

    // 3. QFileInfo を使ってシンボリックリンクの情報を取得
    QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);

    // 4. シンボリックリンクであるか確認し、ターゲットを取得
    if (symlinkInfo.isSymLink()) {
        std::filesystem::path target = symlinkInfo.filesystemSymLinkTarget();

        if (!target.empty()) {
            qDebug() << "取得したターゲットパス (std::filesystem::path):" << QString::fromStdWString(target.native());

            // 取得したターゲットパスが存在するか確認
            if (std::filesystem::exists(target)) {
                qDebug() << "ターゲットファイルは存在します。";
            } else {
                qDebug() << "警告: ターゲットファイルは存在しません (壊れたシンボリックリンク)。";
            }
        } else {
            qDebug() << "エラー: シンボリックリンクのターゲットを取得できませんでした。";
        }
    } else {
        qDebug() << "エラー: 指定されたパスはシンボリックリンクではありません。";
    }

    // 5. 後処理: 作成したファイルとディレクトリを削除 (オプション)
    QFile::remove(targetFilePath);
    QFile::remove(symlinkPath);
    QDir(testDir).removeRecursively();
    qDebug() << "テストファイルをクリーンアップしました。";

    return 0; // a.exec() はイベントループが必要なGUIアプリケーションなどで使用します。
              // この例ではコンソールアプリケーションなので不要です。
}

解説

QDir::tempPath() と QDir().mkpath()
一時ディレクトリを作成し、その中にテスト用のファイルとシンボリックリンクを作成します。
QFile::link()
シンボリックリンクを作成する Qt の便利な関数です。original_file.txt をターゲットとして my_symlink.txt という名前のシンボリックリンクを作成します。
QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);
作成したシンボリックリンクのパスを QFileInfo オブジェクトに渡します。
symlinkInfo.isSymLink()
まず、このファイル情報がシンボリックリンクを指しているかを確認します。これは非常に重要です。シンボリックリンクでない場合は filesystemSymLinkTarget() を呼び出しても意味がありません。
std::filesystem::path target = symlinkInfo.filesystemSymLinkTarget();
ここが本題の関数呼び出しです。シンボリックリンクのターゲットパスを std::filesystem::path 型で取得します。
!target.empty()
ターゲットが取得できたかどうかをチェックします。取得できなかった場合（例: 壊れたシンボリックリンク、または関数が失敗した場合）は空の std::filesystem::path が返されます。
QString::fromStdWString(target.native())
std::filesystem::path はプラットフォームに応じて内部的に char または wchar_t を使用します。native() 関数は、そのプラットフォームネイティブな表現を返します。Windowsでは std::wstring に相当するものを返すため、QString::fromStdWString() を使用して QString に変換しています。Linux/macOS では std::string に相当するものを返すため、QString::fromUtf8(target.string().c_str()) などを使用することもできますが、クロスプラットフォームで安全に扱う場合は native() の結果を適切な QString コンストラクタに渡すのが一般的です。
std::filesystem::exists(target)
取得したターゲットパスが実際に存在するかどうかを std::filesystem ライブラリの関数を使って確認しています。これにより、「壊れたシンボリックリンク」であるかを検出できます。

この例では、シンボリックリンクが存在しない場合や、シンボリックリンクが指すターゲットが存在しない（壊れたシンボリックリンク）場合の挙動を示します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>
#include <QFile>
#include <filesystem>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString testDir = QDir::tempPath() + "/qt_symlink_error_test";
    QDir().mkpath(testDir);

    // 1. 存在しないシンボリックリンク
    QString nonExistentSymlink = testDir + "/non_existent_symlink.txt";
    QFileInfo nonExistentInfo(nonExistentSymlink);

    qDebug() << "\n--- 存在しないシンボリックリンクのテスト ---";
    if (nonExistentInfo.isSymLink()) {
        // ここには来ないはず
        qDebug() << "誤検出: 存在しないパスがシンボリックリンクとして認識されました。";
    } else {
        qDebug() << "期待通り: 存在しないパスはシンボリックリンクではありません。";
    }
    // 存在しないので、filesystemSymLinkTarget() は空を返す
    std::filesystem::path targetNonExistent = nonExistentInfo.filesystemSymLinkTarget();
    qDebug() << "ターゲットパス (存在しないシンボリックリンク):" << (targetNonExistent.empty() ? "空" : QString::fromStdWString(targetNonExistent.native()));


    // 2. 壊れたシンボリックリンク (ターゲットが存在しない)
    QString originalBrokenTarget = testDir + "/target_that_does_not_exist.txt";
    QString brokenSymlink = testDir + "/broken_symlink.txt";

    // ダミーのシンボリックリンクを作成 (ターゲットは後で削除)
    if (QFile::link(originalBrokenTarget, brokenSymlink)) {
        qDebug() << "一時的な壊れたシンボリックリンクを作成:" << brokenSymlink;
    } else {
        qDebug() << "エラー: 一時的なシンボリックリンクを作成できませんでした。";
        return -1;
    }
    QFile::remove(originalBrokenTarget); // ターゲットを削除して壊れた状態にする

    QFileInfo brokenSymlinkInfo(brokenSymlink);

    qDebug() << "\n--- 壊れたシンボリックリンクのテスト ---";
    if (brokenSymlinkInfo.isSymLink()) {
        qDebug() << "期待通り: 壊れたシンボリックリンクもシンボリックリンクとして認識されます。";
        std::filesystem::path targetBroken = brokenSymlinkInfo.filesystemSymLinkTarget();
        if (!targetBroken.empty()) {
            qDebug() << "取得したターゲットパス (壊れたシンボリックリンク):" << QString::fromStdWString(targetBroken.native());
            if (std::filesystem::exists(targetBroken)) {
                qDebug() << "警告: ターゲットファイルが存在すると認識されましたが、これはおかしいです。";
            } else {
                qDebug() << "期待通り: ターゲットファイルは存在しません。";
            }
        } else {
            qDebug() << "エラー: 壊れたシンボリックリンクのターゲットを取得できませんでした。";
        }
    } else {
        qDebug() << "エラー: 壊れたシンボリックリンクが認識されませんでした。";
    }

    // 後処理
    QFile::remove(brokenSymlink);
    QDir(testDir).removeRecursively();

    return 0;
}

壊れたシンボリックリンク
シンボリックリンク自体は存在するが、それが指すターゲットファイル/ディレクトリが存在しない場合でも、isSymLink() は true を返します。filesystemSymLinkTarget() はターゲットの「パス」自体は返しますが、そのパスが実際に存在するかどうかは別途 std::filesystem::exists() などで確認する必要があります。
存在しないシンボリックリンク
QFileInfo に存在しないパスを渡した場合、isSymLink() は false を返します。filesystemSymLinkTarget() は空のパスを返します。

主な代替手段は以下の2つです。

QString QFileInfo::symLinkTarget() (Qt 5 および Qt 6 でも利用可能)
プラットフォームネイティブな API の直接使用

それぞれについて詳しく説明します。

QString QFileInfo::symLinkTarget()

これは std::filesystem::path QFileInfo::filesystemSymLinkTarget() の「前身」とも言える関数で、Qt 5 から存在し、Qt 6 でも引き続き利用できます。最も一般的な代替手段です。

機能
シンボリックリンクが指すターゲットパスを QString 型で返します。

利点

クロスプラットフォーム
Qt が提供するため、プラットフォームの違いを意識する必要がありません。
シンプル
QString でパスが返されるため、Qt の他の文字列ベースのパス操作関数と簡単に連携できます。
Qt 5 でも利用可能
古い Qt プロジェクトで std::filesystem を使用できない場合に最適です。

欠点

エンコーディング
QString は内部的に Unicode を使用しますが、ファイルシステムのネイティブなエンコーディングと QString の間の変換で問題が発生する可能性がゼロではありません（ただし、Qt が内部でうまく処理してくれることが多いです）。
QString 型
std::filesystem::path の持つ型安全性や、C++17 のファイルシステムライブラリの豊富な機能（パスの結合、正規化など）を直接利用できません。これらの操作を行うには、QString から std::filesystem::path への変換、または Qt の QDir や QFile のパス操作関数を使用する必要があります。

使用例

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QFile>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString testDir = QDir::tempPath() + "/qt_symlink_qstring_test";
    QDir().mkpath(testDir);

    QString targetFilePath = testDir + "/original_file_qstring.txt";
    QFile originalFile(targetFilePath);
    if (originalFile.open(QIODevice::WriteOnly)) {
        originalFile.write("QString版の元のファイルです。");
        originalFile.close();
    } else {
        qDebug() << "エラー: ターゲットファイルを作成できませんでした。";
        return -1;
    }

    QString symlinkPath = testDir + "/my_symlink_qstring.txt";
    if (QFile::link(targetFilePath, symlinkPath)) {
        qDebug() << "シンボリックリンクを作成:" << symlinkPath << " -> " << targetFilePath;
    } else {
        qDebug() << "エラー: シンボリックリンクを作成できませんでした。";
        return -1;
    }

    QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);

    if (symlinkInfo.isSymLink()) {
        QString targetString = symlinkInfo.symLinkTarget(); // ここが代替手段

        if (!targetString.isEmpty()) {
            qDebug() << "取得したターゲットパス (QString):" << targetString;

            // ターゲットが存在するか確認 (QString版)
            QFileInfo targetFileInfo(targetString);
            if (targetFileInfo.exists()) {
                qDebug() << "ターゲットファイルは存在します。";
            } else {
                qDebug() << "警告: ターゲットファイルは存在しません (壊れたシンボリックリンク)。";
            }
        } else {
            qDebug() << "エラー: シンボリックリンクのターゲットを取得できませんでした。";
        }
    } else {
        qDebug() << "エラー: 指定されたパスはシンボリックリンクではありません。";
    }

    // 後処理
    QFile::remove(targetFilePath);
    QFile::remove(symlinkPath);
    QDir(testDir).removeRecursively();

    return 0;
}

より低レベルな制御が必要な場合や、Qt 以外のライブラリとの連携を重視する場合に、OS が提供するシンボリックリンク関連の API を直接使用することが考えられます。ただし、この方法はコードがプラットフォームに依存することになるため、クロスプラットフォームアプリケーションでは条件付きコンパイル（#ifdef Q_OS_WIN など）が必要になります。

主な API

Linux/Unix系 (macOSを含む)
- readlink(): シンボリックリンクのターゲットパスを読み取るための標準的な POSIX 関数です。
Windows
- CreateFile() と GetFinalPathNameByHandle(): シンボリックリンク（やジャンクション、マウントポイントなど）の最終的なターゲットパスを取得するために使用できます。複雑な処理が必要です。
- GetFileAttributes() と GetFileInformationByHandleEx() (Windows Vista以降): これらもシンボリックリンクの情報を取得するのに役立ちますが、直接ターゲットパスを取得する関数ではありません。

利点

Qt への依存なし
Qt が必要ない、または非常に限定的な使用の場合に有効です。
最大限の制御
OS のネイティブな動作に直接アクセスできます。

欠点

パスのエンコーディング
ネイティブ API は通常、OS のネイティブなエンコーディング（Windows では UTF-16、Linux では通常 UTF-8）でパスを扱います。これを Qt の QString に変換するには、適切な変換処理（例: QString::fromWCharArray() や QString::fromUtf8()）が必要です。
エラー処理が複雑
ネイティブ API のエラーコードや errno を適切に処理する必要があります。
プラットフォーム依存
Windows、Linux、macOS など、OS ごとに異なるコードを書く必要があります。これが最大の欠点です。

使用例 (Linux/macOS の readlink)

#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>
#include <QFile>
#include <QDir>

// Linux/Unix系 (macOSを含む) のみ
#ifdef Q_OS_UNIX
#include <unistd.h> // readlink, symlink 用
#include <errno.h>  // errno 用
#include <string.h> // strerror 用
#endif

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QString testDir = QDir::tempPath() + "/qt_symlink_native_test";
    QDir().mkpath(testDir);

    QString targetFilePath = testDir + "/original_file_native.txt";
    QFile originalFile(targetFilePath);
    if (originalFile.open(QIODevice::WriteOnly)) {
        originalFile.write("ネイティブAPI版の元のファイルです。");
        originalFile.close();
    } else {
        qDebug() << "エラー: ターゲットファイルを作成できませんでした。";
        return -1;
    }

    QString symlinkPath = testDir + "/my_symlink_native.txt";

#ifdef Q_OS_UNIX
    // symlink() を使用してシンボリックリンクを作成 (Linux/Unix系)
    if (::symlink(targetFilePath.toUtf8().constData(), symlinkPath.toUtf8().constData()) == 0) {
        qDebug() << "シンボリックリンクを作成 (Native):" << symlinkPath << " -> " << targetFilePath;

        // readlink() を使用してターゲットを取得
        char buf[PATH_MAX]; // PATH_MAX は <limits.h> または <linux/limits.h> に定義
        ssize_t len = ::readlink(symlinkPath.toUtf8().constData(), buf, sizeof(buf) - 1);
        if (len != -1) {
            buf[len] = '\0'; // ヌル終端
            QString nativeTargetPath = QString::fromUtf8(buf); // UTF-8として解釈
            qDebug() << "取得したターゲットパス (Native readlink):" << nativeTargetPath;

            QFileInfo targetInfo(nativeTargetPath);
            if (targetInfo.exists()) {
                qDebug() << "ターゲットファイルは存在します。";
            } else {
                qDebug() << "警告: ターゲットファイルは存在しません (壊れたシンボリックリンク)。";
            }
        } else {
            qDebug() << "エラー: readlink() 失敗:" << strerror(errno);
        }
    } else {
        qDebug() << "エラー: symlink() 失敗:" << strerror(errno);
    }
#else
    qDebug() << "このプラットフォームではネイティブAPIの例は実行できません。";
    // Windowsの場合は、QFile::link() を使用するか、Windows API を呼び出す
    if (QFile::link(targetFilePath, symlinkPath)) {
         qDebug() << "シンボリックリンクを作成 (QFile::link):" << symlinkPath << " -> " << targetFilePath;
         // QFileInfo::symLinkTarget() を使うなど
         QFileInfo symlinkInfo(symlinkPath);
         if (symlinkInfo.isSymLink()) {
             qDebug() << "取得したターゲットパス (QFileInfo::symLinkTarget):" << symlinkInfo.symLinkTarget();
         }
    } else {
        qDebug() << "エラー: QFile::link() を使用したシンボリックリンクの作成に失敗しました。";
    }

#endif // Q_OS_UNIX

    // 後処理
    QFile::remove(targetFilePath);
    QFile::remove(symlinkPath);
    QDir(testDir).removeRecursively();

    return 0;
}

PATH_MAX: パスの最大長を定義する定数です。
errno と strerror(): エラーが発生した場合に、その理由を診断するために使用します。
::readlink(): シンボリックリンクが指すパスを読み取る POSIX 標準関数です。バッファのサイズ管理とヌル終端に注意が必要です。
::symlink(): シンボリックリンクを作成する POSIX 標準関数です。
#ifdef Q_OS_UNIX: Qt が提供するマクロで、ビルドターゲットが Unix 系 OS (Linux, macOS など) の場合にのみコードをコンパイルします。

非常に特殊なケース（OS レベルでの詳細な制御、Qt 以外の依存を最小限にしたいなど）でなければ、プラットフォームネイティブ API を直接使用することは避けるべきです。コードの複雑性、メンテナンス性、クロスプラットフォーム対応の難しさが大幅に増します。
Qt 5 互換性が必要な場合や、std::filesystem への依存を避けたい場合は、QString QFileInfo::symLinkTarget() が良い代替手段です。
最も推奨されるのは std::filesystem::path QFileInfo::filesystemSymLinkTarget() です。 特に Qt 6.0 以降を使用しており、C++17 を利用できる場合は、これを使用すべきです。型安全性、C++標準ライブラリとの統合、そしてクロスプラットフォームの容易さが最大の利点です。

Qt開発者必見！QFileInfo::baseName()を使いこなすためのヒントとテクニック

具体的には、QFileInfo オブジェクトが指すファイルのフルパス（ディレクトリを含む完全なパス）から、最後のドット (.) 以降の部分（拡張子）を取り除いた文字列を取得します。もしファイル名にドットが含まれていない場合は、ファイル名全体がそのまま返されます。

Qt QFileInfo::birthTime()徹底解説：ファイルの作成日時を正確に取得する方法

QtプログラミングにおけるQFileInfo::birthTime()は、ファイルが作成された日時（生成日時）を返す関数です。もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。注意点: OSやファイルシステムによる制限: ファイルの作成日時（birth time）は、すべてのオペレーティングシステムやファイルシステムで利用できるわけではありません。例えば、一部のLinuxファイルシステム（EXT2/3など）では、デフォルトで作成日時が記録されない場合があります。このような場合、birthTime()は無効なQDateTimeオブジェクトを返します。 Qtのバージョン: birthTime()関数はQt 5.10で導入されました。それより古いQtのバージョンでは利用できません。 created()との違い: かつてはcreated()という関数もありましたが、これは非推奨（deprecated）となり、birthTime()またはmetadataChangeTime()の使用が推奨されています。created()はファイルのメタデータが最後に変更された時刻を返すことが多かったため、純粋な作成日時とは異なる場合がありました。