Qt 正規パス取得の決定版！QFileInfo::filesystemCanonicalPath()の徹底解説

2025-05-31

一方、std::filesystem::path は、C++17 で導入された <filesystem> ヘッダーで定義されているクラスで、ファイルシステム上のパスをオブジェクトとして表現します。このクラスは、パスの操作（結合、分割、名前の取得など）や、ファイルシステムとのインタラクション（存在確認、属性取得など）を行うための機能を提供します。

QFileInfo::filesystemCanonicalPath() の機能に最も近い std::filesystem::path の操作は、以下のようになります。

パスの作成
まず、QFileInfo が扱うパスに対応する std::filesystem::path オブジェクトを作成します。これは、QFileInfo オブジェクトからパス文字列を取得し、std::filesystem::path のコンストラクタに渡すことで行えます。

#include <QFileInfo>
#include <filesystem>
#include <iostream>

int main() {
    QFileInfo fileInfo("my_file.txt"); // 例として相対パスを使用

    // QFileInfo からパス文字列を取得
    QString qtPathString = fileInfo.absoluteFilePath();

    // std::filesystem::path オブジェクトを作成
    std::filesystem::path stdPath(qtPathString.toStdString());

    std::cout << "Qt Path (absolute): " << qtPathString.toStdString() << std::endl;
    std::cout << "std::filesystem::path: " << stdPath << std::endl;

    return 0;
}

正規パスの取得
QFileInfo::filesystemCanonicalPath() が行うように、シンボリックリンクを解決し、絶対パスを取得する操作は、std::filesystem::canonical() 関数を用いて実現できます。この関数は、与えられたパスの正規形（canonical form）を返します。

#include <QFileInfo>
#include <filesystem>
#include <iostream>

int main() {
    QFileInfo fileInfo("my_symlink"); // 例としてシンボリックリンクを使用

    // ... (my_symlink が存在する前提) ...

    // QFileInfo を使った正規パスの取得
    QString qtCanonicalPath = fileInfo.filesystemCanonicalPath();

    // std::filesystem を使った正規パスの取得
    std::filesystem::path stdPath("my_symlink");
    std::error_code ec;
    std::filesystem::path stdCanonicalPath = std::filesystem::canonical(stdPath, ec);

    if (!ec) {
        std::cout << "Qt Canonical Path: " << qtCanonicalPath.toStdString() << std::endl;
        std::cout << "std::filesystem Canonical Path: " << stdCanonicalPath << std::endl;
    } else {
        std::cerr << "Error getting canonical path: " << ec.message() << std::endl;
    }

    return 0;
}

重要なポイント

std::filesystem::path は、プラットフォームに依存しない方法でパスを扱えるように設計されています。
QFileInfo::filesystemCanonicalPath() も同様に、ファイルが存在しない場合などに空の QString を返すことがあります。
std::filesystem::canonical() は、パスが存在しない場合や、アクセス権がない場合などにエラーが発生する可能性があります。そのため、上記のように std::error_code を用いてエラー処理を行うことが推奨されます。

QFileInfo::filesystemCanonicalPath() に関連する一般的なエラーとトラブルシューティング

- エラー
  指定されたパスのファイルやディレクトリが存在しない場合、filesystemCanonicalPath() は空の QString を返します。
- トラブルシューティング
  - まず、QFileInfo オブジェクトが指しているパスが正しいか、ファイルシステム上に実際に存在するかを確認してください。
  - QFileInfo::exists() や QFileInfo::isFile(), QFileInfo::isDir() などを使用して、ファイルやディレクトリの存在を確認してから filesystemCanonicalPath() を呼び出すようにしてください。
権限の問題
- エラー
  プログラムに、指定されたパスへのアクセス権がない場合、正規パスの取得に失敗し、空の QString が返されることがあります。
- トラブルシューティング
  - プログラムを実行しているユーザーが、対象のファイルやディレクトリに対して適切な読み取り権限を持っているか確認してください。
  - 特に、ネットワークドライブや共有フォルダ上のファイルに対して操作を行う場合に、権限の問題が発生しやすいです。
無限ループのシンボリックリンク
- エラー
  シンボリックリンクが無限ループを形成している場合（例：a -> b -> a）、filesystemCanonicalPath() は無限に処理を続け、最終的にエラーとなるか、応答しなくなる可能性があります。
- トラブルシューティング
  - 問題が発生しているパスに関連するシンボリックリンクの設定を確認し、無限ループがないか調査してください。
  - オペレーティングシステムによっては、無限ループを検出してエラーを返す場合があります。
ファイルシステムのエラー
- エラー
  基盤となるファイルシステム自体にエラーがある場合（例：ファイルシステムの破損）、正規パスの取得に失敗することがあります。
- トラブルシューティング
  - 他のアプリケーションで対象のファイルやディレクトリにアクセスできるか確認し、ファイルシステムの状態を調査してください。
  - 必要であれば、ファイルシステムの修復を試みてください。
パスの形式の問題
- エラー
  QFileInfo に渡されたパスの形式が不正である場合、期待通りに動作しないことがあります。
- トラブルシューティング
  - QFileInfo のコンストラクタに渡すパスが、オペレーティングシステムで有効な形式であるか確認してください。
  - 相対パスを使用する場合は、現在のワーキングディレクトリが意図したものであるか確認してください。

std::filesystem::path と std::filesystem::canonical() に関連する一般的なエラーとトラブルシューティング

QFileInfo::filesystemCanonicalPath() の内部実装でも std::filesystem の機能が使われている可能性があります。直接 std::filesystem を使用する場合も、同様のエラーに加えて、以下の点に注意が必要です。

std::filesystem::canonical() の例外
- エラー
  std::filesystem::canonical() は、パスが存在しない、権限がない、無限ループのシンボリックリンクが存在するなど、様々な状況で std::filesystem::filesystem_error 例外をスローします。
- トラブルシューティング
  - try-catch ブロックを使用して例外を捕捉し、適切なエラー処理を行ってください。
  - std::error_code を引数に取るオーバーロードを使用すると、例外をスローせずにエラーコードを取得できます。
```
#include <filesystem>
#include <iostream>
#include <string>

int main() {
    std::filesystem::path path = "non_existent_file.txt";
    std::error_code ec;
    std::filesystem::path canonicalPath = std::filesystem::canonical(path, ec);

    if (ec) {
        std::cerr << "Error getting canonical path for " << path << ": " << ec.message() << std::endl;
    } else {
        std::cout << "Canonical path: " << canonicalPath << std::endl;
    }

    return 0;
}
```
名前空間の衝突
- エラー
  古いバージョンのコンパイラや環境では、<filesystem> ヘッダーが正しくサポートされていない、あるいは他のライブラリとの名前空間の衝突が発生する可能性があります。
- トラブルシューティング
  - C++17 以降に対応したコンパイラを使用しているか確認してください。
  - 他のライブラリとの名前空間の衝突が疑われる場合は、明示的に std::filesystem::path のように名前空間を指定して使用してください。
パスのエンコーディング
- エラー
  ファイルシステムのパスのエンコーディングと、std::filesystem::path が扱うエンコーディングが一致しない場合、予期しない動作をすることがあります。
- トラブルシューティング
  - 一般的に、std::filesystem::path はシステムのネイティブなパスエンコーディングを使用します。異なるエンコーディングのパスを扱う場合は、適切な変換が必要になることがあります。Qt の QString は Unicode を扱うため、toStdString() で変換する際にエンコーディングの問題が発生する可能性があります。必要に応じて、QString::toUtf8() などを使用してエンコーディングを明示的に指定することを検討してください。

Qt と std::filesystem の連携における注意点

Qt のファイル操作関連のクラス (QFile, QDir など) と std::filesystem の機能を混在させる場合は、それぞれのAPIの特性を理解し、整合性を保つように注意してください。

例1: QFileInfo を使ってファイルの正規パスを取得する

この例では、相対パスで指定されたファイルの正規の絶対パスを QFileInfo::filesystemCanonicalPath() を使って取得します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 相対パスで QFileInfo オブジェクトを作成
    QFileInfo fileInfo("my_text_file.txt");

    // ファイルが存在するか確認
    if (fileInfo.exists()) {
        // 正規の絶対パスを取得
        QString canonicalPath = fileInfo.filesystemCanonicalPath();
        qDebug() << "ファイルの正規パス (QFileInfo):" << canonicalPath;
    } else {
        qDebug() << "ファイル 'my_text_file.txt' は存在しません。";
    }

    // ディレクトリの正規パスを取得する例
    QFileInfo dirInfo("."); // 現在のディレクトリ
    QString canonicalDirPath = dirInfo.filesystemCanonicalPath();
    qDebug() << "現在のディレクトリの正規パス (QFileInfo):" << canonicalDirPath;

    return a.exec();
}

解説

QFileInfo fileInfo("my_text_file.txt"); : 相対パス "my_text_file.txt" を持つ QFileInfo オブジェクトを作成します。このファイルが現在のワーキングディレクトリに存在する必要があります。
fileInfo.exists() : ファイルが存在するかどうかを確認します。
fileInfo.filesystemCanonicalPath() : ファイルが存在する場合、その正規の絶対パスを取得し、QString 型で返します。シンボリックリンクがあれば解決され、相対パスは絶対パスに変換されます。
現在のディレクトリ "." の正規パスも同様に取得しています。

注意
このコードを実行する前に、現在のワーキングディレクトリに "my_text_file.txt" という名前のファイルを作成するか、存在するファイル名に変更してください。

例2: std::filesystem::path を使ってファイルの正規パスを取得する

この例では、C++17 の <filesystem> ヘッダーにある std::filesystem::path と std::filesystem::canonical() 関数を使って、ファイルの正規の絶対パスを取得します。

#include <iostream>
#include <filesystem>
#include <string>
#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // 相対パスで std::filesystem::path オブジェクトを作成
    std::filesystem::path filePath = "another_text_file.txt";
    std::error_code ec;
    std::filesystem::path canonicalPath = std::filesystem::canonical(filePath, ec);

    if (!ec) {
        qDebug() << "ファイルの正規パス (std::filesystem):" << QString::fromStdString(canonicalPath.string());
    } else {
        qDebug() << "エラーが発生しました (std::filesystem): " << QString::fromStdString(ec.message());
        qDebug() << "パス:" << QString::fromStdString(filePath.string());
    }

    // ディレクトリの正規パスを取得する例
    std::filesystem::path dirPath = ".";
    std::error_code dirEc;
    std::filesystem::path canonicalDirPath = std::filesystem::canonical(dirPath, dirEc);

    if (!dirEc) {
        qDebug() << "現在のディレクトリの正規パス (std::filesystem):" << QString::fromStdString(canonicalDirPath.string());
    } else {
        qDebug() << "エラーが発生しました (std::filesystem) (ディレクトリ): " << QString::fromStdString(dirEc.message());
        qDebug() << "パス:" << QString::fromStdString(dirPath.string());
    }

    return a.exec();
}

解説

std::filesystem::path filePath = "another_text_file.txt"; : 相対パス "another_text_file.txt" を持つ std::filesystem::path オブジェクトを作成します。
std::filesystem::canonical(filePath, ec) : 指定されたパスの正規形を取得します。エラーが発生した場合、ec にエラーコードが設定され、例外はスローされません。
エラーが発生しなかった場合、canonicalPath に正規の絶対パスが格納されます。
QString::fromStdString(canonicalPath.string()) : std::filesystem::path オブジェクトを QString に変換して qDebug() で出力します。
ディレクトリ "." の正規パスも同様に取得しています。

注意
このコードを実行する前に、現在のワーキングディレクトリに "another_text_file.txt" という名前のファイルを作成するか、存在するファイル名に変更してください。また、C++17 以降のコンパイラでコンパイルする必要があります。プロジェクトの .pro ファイルに CONFIG += c++17 を追加する必要があるかもしれません。

例3: シンボリックリンクの正規パスを取得する

この例では、シンボリックリンクを作成し、QFileInfo::filesystemCanonicalPath() と std::filesystem::canonical() を使ってその正規パスを取得します。

Linux/macOS の場合

ターミナルで以下のようにシンボリックリンクを作成します。

ln -s original_file.txt my_link.txt

Windows の場合 (管理者権限が必要な場合があります)

コマンドプロンプトで以下のようにシンボリックリンクを作成します。

mklink my_link.txt original_file.txt

次に、以下の C++ コードを実行します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDebug>
#include <filesystem>
#include <string>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    // シンボリックリンクの QFileInfo オブジェクトを作成
    QFileInfo linkFileInfo("my_link.txt");

    if (linkFileInfo.exists()) {
        // シンボリックリンクの正規パスを取得 (QFileInfo)
        QString canonicalPathQt = linkFileInfo.filesystemCanonicalPath();
        qDebug() << "シンボリックリンクの正規パス (QFileInfo):" << canonicalPathQt;

        // シンボリックリンクの std::filesystem::path オブジェクトを作成
        std::filesystem::path linkPath = "my_link.txt";
        std::error_code ec;
        std::filesystem::path canonicalPathStd = std::filesystem::canonical(linkPath, ec);

        if (!ec) {
            qDebug() << "シンボリックリンクの正規パス (std::filesystem):" << QString::fromStdString(canonicalPathStd.string());
        } else {
            qDebug() << "エラーが発生しました (std::filesystem): " << QString::fromStdString(ec.message());
        }
    } else {
        qDebug() << "シンボリックリンク 'my_link.txt' は存在しません。";
    }

    return a.exec();
}

事前に作成したシンボリックリンク "my_link.txt" を QFileInfo と std::filesystem::path でそれぞれ扱います。
filesystemCanonicalPath() と std::filesystem::canonical() は、シンボリックリンク "my_link.txt" が指す "original_file.txt" の正規の絶対パスを返します。

QFileInfo::absoluteFilePath() と QDir::canonicalPath() の組み合わせ

QDir::canonicalPath() は、指定されたパスの正規パスを取得します。これは静的関数であり、QDir オブジェクトを作成せずに利用できます。
QFileInfo::absoluteFilePath() は、QFileInfo オブジェクトが持つパスを絶対パスに変換します。ただし、シンボリックリンクは解決しません。

この二つを組み合わせることで、filesystemCanonicalPath() と同様の機能を実現できる場合があります。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QDir>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFileInfo fileInfo("my_relative_file.txt");
    QString absolutePath = fileInfo.absoluteFilePath();
    qDebug() << "絶対パス (absoluteFilePath):" << absolutePath;

    QString canonicalPath = QDir::canonicalPath(fileInfo.filePath());
    qDebug() << "正規パス (QDir::canonicalPath - filePath):" << canonicalPath;

    QString canonicalAbsolutePath = QDir::canonicalPath(absolutePath);
    qDebug() << "正規パス (QDir::canonicalPath - absoluteFilePath):" << canonicalAbsolutePath;

    QFileInfo linkFileInfo("my_symlink"); // シンボリックリンクの例
    QString canonicalLinkPath = QDir::canonicalPath(linkFileInfo.filePath());
    qDebug() << "シンボリックリンクの正規パス (QDir::canonicalPath):" << canonicalLinkPath;

    return a.exec();
}

解説

QDir::canonicalPath() に fileInfo.absoluteFilePath() を渡すと、まず絶対パスに変換された後、正規化が試みられます。シンボリックリンクの解決はオペレーティングシステムの機能に依存します。
QDir::canonicalPath() に fileInfo.filePath() を渡すと、相対パスが現在のワーキングディレクトリに基づいて正規化されますが、シンボリックリンクの解決は保証されません。
QFileInfo::filePath() は、QFileInfo オブジェクトが保持するパス（相対パスの場合もあります）を返します。

QFile::symLinkTarget() と手動でのパス解決

これを利用して、シンボリックリンクかどうかを判断し、手動でリンク先の絶対パスを構築することができます。ただし、複雑なシンボリックリンクの連鎖や相対パスの解決を自力で行う必要があり、移植性や正確性の面で注意が必要です。
QFile::symLinkTarget() は、QFileInfo がシンボリックリンクを指している場合に、そのリンク先のパスを返します。

#include <QCoreApplication>
#include <QFileInfo>
#include <QFile>
#include <QDir>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    QFileInfo fileInfo("my_symlink"); // シンボリックリンクの例

    if (fileInfo.isSymLink()) {
        QString targetPath = QFile::symLinkTarget(fileInfo.filePath());
        qDebug() << "シンボリックリンクのターゲット:" << targetPath;

        QFileInfo targetFileInfo(targetPath);
        QString absoluteTargetPath;
        if (targetFileInfo.isRelative()) {
            absoluteTargetPath = QDir(fileInfo.path()).absoluteFilePath(targetPath);
        } else {
            absoluteTargetPath = targetPath;
        }
        QString canonicalTargetPath = QDir::canonicalPath(absoluteTargetPath);
        qDebug() << "シンボリックリンクの正規ターゲットパス (手動解決):" << canonicalTargetPath;
    } else if (fileInfo.exists()) {
        qDebug() << "ファイルはシンボリックリンクではありません。";
    } else {
        qDebug() << "ファイルは存在しません。";
    }

    return a.exec();
}

解説

最後に QDir::canonicalPath() を用いて正規化を試みます。
リンク先のパスが相対パスの場合、元のシンボリックリンクが存在するディレクトリ (fileInfo.path()) を基準に絶対パスを構築します。
QFile::symLinkTarget() でリンク先のパスを取得します。
QFileInfo::isSymLink() でシンボリックリンクかどうかを判定します。

注意
この方法は、シンボリックリンクの深さや相対パスの複雑さによっては、完全に filesystemCanonicalPath() と同じ結果を得られない可能性があります。

C++17 <filesystem> ライブラリの直接利用 (std::filesystem::canonical())

既に説明しましたが、Qt の機能を使わずに、C++17 標準ライブラリの <filesystem> ヘッダーにある std::filesystem::canonical() 関数を直接利用することも、filesystemCanonicalPath() の代替となります。

#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>
#include <filesystem>
#include <string>
#include <QString>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QCoreApplication a(argc, argv);

    std::filesystem::path filePath = "another_relative_file.txt";
    std::error_code ec;
    std::filesystem::path canonicalPath = std::filesystem::canonical(filePath, ec);

    if (!ec) {
        qDebug() << "正規パス (std::filesystem::canonical):" << QString::fromStdString(canonicalPath.string());
    } else {
        qDebug() << "エラー (std::filesystem::canonical):" << QString::fromStdString(ec.message());
    }

    return a.exec();
}

解説

戻り値は std::filesystem::path 型なので、Qt の QString に変換して使用します。
std::filesystem::canonical() は、指定されたパスの正規形を返します。エラーが発生した場合は、std::error_code オブジェクトに情報が格納されます。

機能の差異
厳密には、QFileInfo::filesystemCanonicalPath() と std::filesystem::canonical() の挙動には、プラットフォームやファイルシステムの種類によって微妙な違いがある可能性があります。
エラー処理
std::filesystem::canonical() は例外をスローする可能性があるため、try-catch ブロックや std::error_code を用いたエラー処理が必要です。QFileInfo::filesystemCanonicalPath() は空の QString を返すことが多いです。
移植性
<filesystem> ライブラリは C++17 で標準化されており、対応するコンパイラであれば比較的高い移植性を持っています。Qt の関数もクロスプラットフォームに対応していますが、内部実装は各プラットフォームのAPIを利用しています。
C++ 標準
より標準的な C++ の機能を利用したい場合や、Qt に依存しないコードを書く必要がある場合は、<filesystem> ライブラリを直接使用するのが適しています。
Qt 依存性
プロジェクト全体で Qt の機能を中心に開発している場合は、QFileInfo や QDir の関数を使用する方が、コードの一貫性を保ちやすいでしょう。

Qt開発者必見！QFileInfo::baseName()を使いこなすためのヒントとテクニック

具体的には、QFileInfo オブジェクトが指すファイルのフルパス（ディレクトリを含む完全なパス）から、最後のドット (.) 以降の部分（拡張子）を取り除いた文字列を取得します。もしファイル名にドットが含まれていない場合は、ファイル名全体がそのまま返されます。

Qt QFileInfo::birthTime()徹底解説：ファイルの作成日時を正確に取得する方法

QtプログラミングにおけるQFileInfo::birthTime()は、ファイルが作成された日時（生成日時）を返す関数です。もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。注意点: OSやファイルシステムによる制限: ファイルの作成日時（birth time）は、すべてのオペレーティングシステムやファイルシステムで利用できるわけではありません。例えば、一部のLinuxファイルシステム（EXT2/3など）では、デフォルトで作成日時が記録されない場合があります。このような場合、birthTime()は無効なQDateTimeオブジェクトを返します。 Qtのバージョン: birthTime()関数はQt 5.10で導入されました。それより古いQtのバージョンでは利用できません。 created()との違い: かつてはcreated()という関数もありましたが、これは非推奨（deprecated）となり、birthTime()またはmetadataChangeTime()の使用が推奨されています。created()はファイルのメタデータが最後に変更された時刻を返すことが多かったため、純粋な作成日時とは異なる場合がありました。