QtファイルダイアログのMIMEタイプフィルタとは?setNameFiltersとの違いを解説

2025-05-27

どのような機能か?

この関数を使うと、ユーザーがファイルを開いたり保存したりする際に表示されるファイル選択ダイアログで、特定の種類のファイルのみを表示するように制限できます。例えば、「画像ファイル(*.png *.jpg)」や「テキストファイル(*.txt)」のように、ファイルの種類を絞り込むための選択肢をユーザーに提供することができます。

使い方

QFileDialog::setNameFilters()は、QStringList(文字列のリスト)を引数として受け取ります。このQStringListの各要素が、ファイルフィルタの1つを表します。

各フィルタ文字列の形式は以下のようになります。

"表示名 (パターン1 パターン2 ...)"

  • パターン: ファイル名に一致させるためのワイルドカードパターンです。一般的には*.拡張子の形式で指定します。複数のパターンを指定する場合は、スペースで区切ります。
  • 表示名: ファイルダイアログの「ファイルの種類」ドロップダウンリストに表示される、ユーザーにとってわかりやすい名前です。

複数のフィルタを設定する場合は、QStringListに複数のフィルタ文字列を追加します。

#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QFileDialog dialog;

    // フィルタのリストを作成
    QStringList filters;
    filters << "画像ファイル (*.png *.jpg *.jpeg *.bmp)"; // 画像ファイル
    filters << "テキストファイル (*.txt)";              // テキストファイル
    filters << "すべてのファイル (*.*)";               // すべてのファイル

    // ファイルダイアログにフィルタを設定
    dialog.setNameFilters(filters);

    // ダイアログを表示
    dialog.exec();

    return app.exec();
}

このコードを実行すると、ファイルダイアログが表示され、「ファイルの種類」のドロップダウンリストに「画像ファイル」、「テキストファイル」、「すべてのファイル」という選択肢が表示されます。ユーザーが「画像ファイル」を選択すると、拡張子が.png, .jpg, .jpeg, .bmpのファイルのみがリストに表示されます。

setNameFilter()との違い

setNameFilters()が複数のフィルタを設定できるのに対し、QFileDialog::setNameFilter()は単一のフィルタを設定するために使用されます。複数のフィルタを提供したい場合はsetNameFilters()を使います。



QFileDialog::setNameFilters() は、ファイルダイアログに表示されるファイルの種類をフィルタリングするための便利な機能ですが、設定方法によっては意図しない動作をすることがあります。ここでは、よくあるエラーとそれに対するトラブルシューティングを説明します。

フィルタが正しく表示されない、または機能しない

考えられる原因

  • QFileDialog の種類とフィルタの関連性
    QFileDialog::getOpenFileName()getSaveFileName() のような静的関数を使用している場合、setNameFilters() を呼び出す前にフィルタを設定する必要があります。インスタンスを作成して使用する場合、exec() の前に設定します。
  • QStringList が空である
    setNameFilters() に渡す QStringList が空の場合、フィルタは適用されません。
  • パターンに誤りがある
    ワイルドカード (*) の使い方や、拡張子指定に誤りがある場合、意図したファイルがフィルタリングされません。
    • 例(誤り)
      "テキストファイル (*.txt*)" (余分なワイルドカード)
  • フィルタ文字列のフォーマット間違い
    フィルタ文字列は "表示名 (パターン1 パターン2 ...)" の形式である必要があります。このフォーマットが崩れていると、フィルタが正しく認識されません。
    • 例(誤り)
      "画像ファイル *.png *.jpg" (表示名とパターンがスペースで区切られていない)
    • 例(誤り)
      "画像ファイル (*.png, *.jpg)" (パターンがカンマで区切られている)
    • 例(誤り)
      "*.png" (表示名がない)

トラブルシューティング

  1. フィルタ文字列の厳密な確認
    上記「例(誤り)」のような間違いがないか、各フィルタ文字列を注意深く確認してください。特に、表示名とパターンの間には半角スペースが一つパターンは丸括弧で囲み、複数のパターンは半角スペースで区切る、というルールを守っているか確認します。

    // 良い例
    QStringList filters;
    filters << "画像ファイル (*.png *.jpg)"; // 表示名 (パターン1 パターン2)
    filters << "テキストファイル (*.txt)";
    dialog.setNameFilters(filters);
    
  2. パターンの一致確認
    実際のファイル名とフィルタのパターンが正しく一致するか確認してください。例えば、.TXT のような大文字小文字の違いでフィルタリングされない場合は、両方のパターンを含めることも検討します(例: *.txt *.TXT)。ただし、Qt のファイルシステム操作は通常、OS の設定に依存するため、大文字小文字を区別しないOSでは問題にならないことが多いです。

  3. QStringList の内容デバッグ
    qDebug() を使って、setNameFilters() に渡す QStringList の内容が期待通りになっているか出力して確認します。

    QStringList filters;
    filters << "画像ファイル (*.png *.jpg)";
    qDebug() << "Filters being set:" << filters; // デバッグ出力
    dialog.setNameFilters(filters);
    
  4. コードの実行順序
    QFileDialog のインスタンスを作成している場合は、setNameFilters()exec() の前に呼ばれていることを確認してください。静的関数を使用する場合は、引数としてフィルタ文字列を渡す必要があります。

    // 静的関数の場合
    QString selectedFile = QFileDialog::getOpenFileName(
        this,
        tr("ファイルを開く"),
        QDir::homePath(),
        "画像ファイル (*.png *.jpg);;テキストファイル (*.txt);;すべてのファイル (*.*)" // ここでフィルタを設定
    );
    

    静的関数では、フィルタはセミコロン ;; で区切られます。

QFileDialog::selectedNameFilter() の戻り値が期待と異なる

考えられる原因

  • フィルタ文字列と完全に一致していない
    selectedNameFilter() は、setNameFilters() で設定した完全なフィルタ文字列を返します。例えば、"画像ファイル (*.png *.jpg)" を設定した場合、選択されるとこの文字列がそのまま返されます。パターンの部分だけを期待していると、意図と異なる結果になります。
  • フィルタ選択後の取得タイミング
    selectedNameFilter() は、ユーザーがダイアログを閉じた後に、ユーザーが選択したフィルタ文字列(表示名を含む)を返します。ダイアログが開いている最中や、フィルタが選択されていない状態で呼び出すと、空の文字列や初期値が返されることがあります。

トラブルシューティング

  1. 取得タイミングの確認
    QFileDialog::exec()QDialog::Accepted を返した後(つまりユーザーがOKボタンを押してダイアログを閉じた後)に selectedNameFilter() を呼び出していることを確認します。

    if (dialog.exec() == QDialog::Accepted) {
        QString selectedFilter = dialog.selectedNameFilter();
        qDebug() << "Selected filter:" << selectedFilter;
        // ここで selectedFilter を処理する
    }
    
  2. 戻り値の形式を理解する
    selectedNameFilter() は、setNameFilters() に渡した文字列そのものを返します。必要な情報(例えば拡張子パターンのみ)を抽出するには、文字列処理を行う必要があります。

    QString selectedFilter = dialog.selectedNameFilter(); // 例: "画像ファイル (*.png *.jpg)"
    if (selectedFilter.contains("(*.png")) {
        // PNGファイルが選択されたと判断
    }
    

フィルタの並び順が期待と異なる

考えられる原因

  • QStringList の追加順序
    setNameFilters() に渡す QStringList の要素の順序が、そのままファイルダイアログのドロップダウンリストの順序になります。

トラブルシューティング

  1. QStringList への追加順序の調整
    filters << "フィルタ1" のように QStringList に追加する順序を、ダイアログに表示したい順序に合わせるだけです。

    QStringList filters;
    filters << "最もよく使うフィルタ (*.ext)"; // 先頭に表示される
    filters << "二番目によく使うフィルタ (*.other_ext)";
    filters << "すべてのファイル (*.*)"; // 最後尾に表示される
    dialog.setNameFilters(filters);
    


QFileDialog::setNameFilters() は、ファイル選択ダイアログに表示されるファイルのフィルタを設定するために使われます。ユーザーが特定の種類のファイルだけを表示・選択できるようにする際に非常に役立ちます。

基本的なファイルオープンダイアログでの使用例

最も一般的な使用例は、ファイルをオープンするダイアログで特定の種類のファイルをフィルタリングすることです。

コード

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>
#include <QVBoxLayout>
#include <QLabel>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    window.setWindowTitle("QFileDialog::setNameFilters 例");

    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    QLabel *statusLabel = new QLabel("ファイルはまだ選択されていません。", &window);
    QPushButton *openFileButton = new QPushButton("ファイルを開く", &window);

    layout->addWidget(statusLabel);
    layout->addWidget(openFileButton);

    QObject::connect(openFileButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
        QFileDialog dialog(&window, "ファイルを開く"); // 親ウィジェットを指定

        // フィルタのリストを作成
        QStringList filters;
        filters << "画像ファイル (*.png *.jpg *.jpeg *.gif)"; // 複数の拡張子
        filters << "テキストファイル (*.txt)";              // 単一の拡張子
        filters << "C++ ソースファイル (*.cpp *.h)";     // 複数の拡張子 (異なる種類)
        filters << "すべてのファイル (*.*)";               // すべてのファイルを表示

        // ファイルダイアログにフィルタを設定
        dialog.setNameFilters(filters);

        // デフォルトで選択されるフィルタを設定することも可能 (オプション)
        // dialog.selectNameFilter("テキストファイル (*.txt)");

        // ダイアログを実行
        if (dialog.exec() == QDialog::Accepted) {
            QString selectedFile = dialog.selectedFiles().first();
            QString selectedFilter = dialog.selectedNameFilter(); // 選択されたフィルタを取得

            statusLabel->setText("選択されたファイル: " + selectedFile + "\n"
                                 "選択されたフィルタ: " + selectedFilter);
            qDebug() << "Selected File:" << selectedFile;
            qDebug() << "Selected Filter:" << selectedFilter;
        } else {
            statusLabel->setText("ファイル選択がキャンセルされました。");
            qDebug() << "File selection cancelled.";
        }
    });

    window.resize(400, 200);
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

  1. QStringList filters;: QStringList オブジェクトを作成し、ここにフィルタ文字列を追加していきます。
  2. filters << "表示名 (パターン1 パターン2 ...)": 各フィルタ文字列は、"表示名 (パターン1 パターン2 ...)" の形式で定義されます。
    • 表示名: ファイルダイアログの「ファイルの種類」ドロップダウンに表示される、ユーザーに分かりやすい名前です(例: "画像ファイル")。
    • パターン: ファイル名に一致させるワイルドカードパターンです。* は任意の文字列を表し、.ext は特定の拡張子を指定します。複数のパターンはスペースで区切ります。
  3. dialog.setNameFilters(filters);: 作成した QStringListQFileDialog オブジェクトの setNameFilters() メソッドに渡すことで、フィルタが設定されます。
  4. dialog.selectNameFilter("...") (オプション): setNameFilters() で設定されたフィルタの中から、初期状態で選択されるフィルタを指定できます。
  5. if (dialog.exec() == QDialog::Accepted): ダイアログがユーザーによって「開く」または「保存」ボタンで閉じられた場合(Accepted)、選択されたファイルパスやフィルタを取得できます。
  6. dialog.selectedFiles().first(): 選択されたファイルパスのリストを取得し、最初の要素を取り出します。
  7. dialog.selectedNameFilter(): ユーザーがダイアログで最終的に選択したフィルタの表示名とパターンを含む文字列を取得します。これは、アプリケーションがユーザーの選択に基づいて後続の処理を変えたい場合に役立ちます。

ファイル保存ダイアログでの使用例

ファイルを保存するダイアログでも同様にフィルタを設定できます。この場合、ユーザーは指定された拡張子のファイル名で保存するよう促されます。

コード

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>
#include <QVBoxLayout>
#include <QLabel>
#include <QDebug>
#include <QFile> // ファイル操作用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    window.setWindowTitle("QFileDialog::setNameFilters 保存例");

    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    QLabel *statusLabel = new QLabel("ファイルを保存してください。", &window);
    QPushButton *saveFileButton = new QPushButton("ファイルを保存", &window);

    layout->addWidget(statusLabel);
    layout->addWidget(saveFileButton);

    QObject::connect(saveFileButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
        QFileDialog dialog(&window, "ファイルを保存");
        dialog.setAcceptMode(QFileDialog::AcceptSave); // 保存モードに設定

        QStringList filters;
        filters << "テキストドキュメント (*.txt)";
        filters << "XMLファイル (*.xml)";
        filters << "すべてのファイル (*.*)";

        dialog.setNameFilters(filters);

        // デフォルトのファイル名を設定 (オプション)
        dialog.selectFile("新しいドキュメント.txt");

        if (dialog.exec() == QDialog::Accepted) {
            QString filePath = dialog.selectedFiles().first();
            QString selectedFilter = dialog.selectedNameFilter();

            // 選択されたフィルタに基づいて拡張子を自動付加するロジック (オプション)
            if (!filePath.contains('.')) { // ユーザーが拡張子を入力しなかった場合
                if (selectedFilter.contains("(*.txt)")) {
                    filePath += ".txt";
                } else if (selectedFilter.contains("(*.xml)")) {
                    filePath += ".xml";
                }
                // 他のフィルタに対する処理もここに追加
            }

            // ファイルへの書き込み処理の例
            QFile file(filePath);
            if (file.open(QIODevice::WriteOnly | QIODevice::Text)) {
                QTextStream out(&file);
                out << "これはサンプルデータです。\n";
                out << "ファイルパス: " << filePath << "\n";
                out << "選択されたフィルタ: " << selectedFilter << "\n";
                file.close();
                statusLabel->setText("ファイルを保存しました: " + filePath + "\n"
                                     "選択されたフィルタ: " + selectedFilter);
                qDebug() << "File saved to:" << filePath;
            } else {
                statusLabel->setText("ファイルの保存に失敗しました: " + file.errorString());
                qDebug() << "Failed to save file:" << file.errorString();
            }
        } else {
            statusLabel->setText("ファイル保存がキャンセルされました。");
            qDebug() << "File save cancelled.";
        }
    });

    window.resize(400, 250);
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

  1. dialog.setAcceptMode(QFileDialog::AcceptSave);: ファイルダイアログを保存モードに設定します。これにより、ダイアログのボタンが「保存」などになります。
  2. dialog.selectFile("新しいドキュメント.txt");: 保存ダイアログを開いたときに、デフォルトで表示されるファイル名を指定できます。
  3. 拡張子の自動付加ロジック (オプション): QFileDialog はユーザーがファイル名に拡張子を入力しなかった場合でも、選択されたフィルタに基づいて自動的に拡張子を付加する機能を持っています(ただし、OSやQtのバージョンによって挙動が異なる場合があります)。上記の例では、ユーザーが拡張子を入力しなかった場合に、選択されたフィルタから適切な拡張子を判断して付加する簡単なロジックが示されています。

静的関数での使用例

QFileDialog は、インスタンスを作成せずに直接呼び出せる静的関数も提供しています。これらは手軽にダイアログを表示したい場合に便利です。静的関数を使用する場合、フィルタは引数として直接渡します。

コード

#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QFileDialog>
#include <QVBoxLayout>
#include <QLabel>
#include <QDebug>
#include <QDir> // QDir::homePath() 用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    window.setWindowTitle("QFileDialog 静的関数例");

    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    QLabel *statusLabel = new QLabel("ファイルはまだ選択されていません。", &window);
    QPushButton *openFileButton = new QPushButton("静的関数でファイルを開く", &window);

    layout->addWidget(statusLabel);
    layout->addWidget(openFileButton);

    QObject::connect(openFileButton, &QPushButton::clicked, [&]() {
        // QFileDialog::getOpenFileName の使用
        // フィルタはセミコロン(;;)で区切られた文字列として渡す
        QString filterString = "画像ファイル (*.png *.jpg *.jpeg *.gif);;"
                               "テキストファイル (*.txt);;"
                               "すべてのファイル (*.*)";

        QString selectedFile = QFileDialog::getOpenFileName(
            &window,                    // 親ウィジェット
            "ファイルを開く (静的)",    // ダイアログタイトル
            QDir::homePath(),           // 初期ディレクトリ
            filterString                // フィルタ文字列
        );

        if (!selectedFile.isEmpty()) { // ユーザーがファイルを選択した場合
            statusLabel->setText("選択されたファイル: " + selectedFile);
            qDebug() << "Selected File (Static):" << selectedFile;
        } else {
            statusLabel->setText("ファイル選択がキャンセルされました。");
            qDebug() << "File selection cancelled (Static).";
        }
    });

    window.resize(400, 200);
    window.show();

    return app.exec();
}
  1. QString filterString = "...;;...": 静的関数では、複数のフィルタを1つの文字列として渡します。各フィルタはセミコロンと2つのコロン (;;) で区切られます。これは QFileDialog::setNameFilters() で使う QStringList の各要素が結合されたような形式です。
  2. QFileDialog::getOpenFileName(...): フィルタ文字列を直接引数として渡します。戻り値は選択されたファイルのパス(キャンセルされた場合は空文字列)です。


静的関数 QFileDialog::getOpenFileName() や getSaveFileName() の直接引数

setNameFilters()QFileDialog のインスタンスに対してメソッドとして呼び出しますが、Qt はより簡潔な静的関数も提供しています。これらの関数は、フィルタ文字列を直接引数として受け取ります。

特徴

  • フィルタは単一の QString オブジェクトとして、各フィルタが ;; (セミコロン2つ) で区切られた形式で渡されます。
  • 最も一般的なファイル選択・保存のシナリオでよく使われます。
  • QFileDialog のインスタンスを明示的に作成する必要がないため、コードが簡潔になります。


#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QFileDialog>
#include <QLabel>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
#include <QDir> // QDir::homePath() のため

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc);
    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    QLabel *label = new QLabel("ファイルを選択してください。", &window);
    QPushButton *button = new QPushButton("ファイルを開く (静的関数)", &window);

    layout->addWidget(label);
    layout->addWidget(button);

    QObject::connect(button, &QPushButton::clicked, [&]() {
        QString filePath = QFileDialog::getOpenFileName(
            &window,                      // 親ウィジェット
            tr("ファイルを開く"),         // ダイアログのタイトル
            QDir::homePath(),             // 初期ディレクトリ
            "画像ファイル (*.png *.jpg *.jpeg);;テキストファイル (*.txt);;すべてのファイル (*.*)" // フィルタ文字列
        );

        if (!filePath.isEmpty()) {
            label->setText("選択されたファイル: " + filePath);
            qDebug() << "Selected file (static):" << filePath;
        } else {
            label->setText("ファイル選択がキャンセルされました。");
        }
    });

    window.show();
    return app.exec();
}

setNameFilters() との違い

  • 静的関数では、フィルタの区切り文字が ;; である点に注意が必要です。
  • setNameFilters()QStringList を受け取るのに対し、静的関数は QString を受け取ります。

QFileDialog::setMimeTypeFilters() を利用する (Qt 5.1 以降推奨)

現代のアプリケーションでは、ファイルの拡張子だけでなく、MIME タイプ(Multipurpose Internet Mail Extensions)に基づいてファイルをフィルタリングすることが推奨されます。MIME タイプは、ファイルの内容の種類をより厳密に識別するための標準的な方法です。

特徴

  • QStringList に MIME タイプ文字列(例: image/png, text/plain)を指定します。
  • オペレーティングシステムやデスクトップ環境(GNOME, KDE など)のMIMEタイプデータベースを利用できるため、より堅牢なフィルタリングが可能です。
  • ファイルタイプをより正確に識別できます(例:.htm.html を区別しない、.txt でもエンコーディングが異なるものを区別するなど)。


#include <QApplication>
#include <QPushButton>
#include <QFileDialog>
#include <QLabel>
#include <QVBoxLayout>
#include <QDebug>
#include <QDir>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc);
    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);
    QLabel *label = new QLabel("ファイルを選択してください。", &window);
    QPushButton *button = new QPushButton("ファイルを開く (MIME タイプ)", &window);

    layout->addWidget(label);
    layout->addWidget(button);

    QObject::connect(button, &QPushButton::clicked, [&]() {
        QFileDialog dialog(&window, tr("MIME タイプでファイルを開く"));

        QStringList mimeFilters;
        mimeFilters << "image/png"; // PNG 画像
        mimeFilters << "image/jpeg"; // JPEG 画像
        mimeFilters << "text/plain"; // プレーンテキスト
        mimeFilters << "application/pdf"; // PDF ドキュメント

        dialog.setMimeTypeFilters(mimeFilters);

        // 必要に応じて、すべてのファイルを許可するオプションも追加
        // dialog.setNameFilter("すべてのファイル (*.*)"); // 従来のフィルタと併用可能

        if (dialog.exec() == QDialog::Accepted) {
            QString filePath = dialog.selectedFiles().first();
            QString selectedMimeFilter = dialog.selectedMimeTypeFilter(); // 選択された MIME タイプを取得

            label->setText("選択されたファイル: " + filePath + "\n"
                           "選択されたMIMEフィルタ: " + selectedMimeFilter);
            qDebug() << "Selected file (MIME):" << filePath;
            qDebug() << "Selected MIME filter:" << selectedMimeFilter;
        } else {
            label->setText("ファイル選択がキャンセルされました。");
        }
    });

    window.show();
    return app.exec();
}

setNameFilters() との違い

  • MIME タイプに加えて、従来の setNameFilters()setNameFilter() を併用することも可能です。
  • ユーザーインターフェース上では、MIME タイプがそのMIMEタイプに関連付けられた表示名(例: "PNG Image")として表示されます。
  • setMimeTypeFilters() は MIME タイプに基づいてフィルタリングするため、よりセマンティックなファイル識別が可能です。

フィルタを動的に変更する

これは代替というよりは setNameFilters() の応用ですが、ユーザーの操作やアプリケーションの状態に応じて、表示されるフィルタを動的に変更するシナリオです。

特徴

  • QFileDialog インスタンスを再利用し、setNameFilters() を再度呼び出すことで実現します。
  • 例えば、ユーザーが「画像モード」を選択したら画像ファイルのみを表示し、「テキストモード」を選択したらテキストファイルのみを表示する、といった柔軟なUIを提供できます。

例 (概念)

// ユーザーがボタンAをクリックした場合
void MyWidget::onButtonAClicked() {
    QFileDialog dialog;
    QStringList imageFilters;
    imageFilters << "画像ファイル (*.png *.jpg)";
    dialog.setNameFilters(imageFilters);
    // ... dialog.exec()
}

// ユーザーがボタンBをクリックした場合
void MyWidget::onButtonBClicked() {
    QFileDialog dialog;
    QStringList textFilters;
    textFilters << "テキストファイル (*.txt)";
    dialog.setNameFilters(textFilters);
    // ... dialog.exec()
}

カスタムのファイルフィルタリングロジック(あまり推奨されないが、高度な要件で)

非常に特殊なフィルタリング要件がある場合(例:ファイル名に特定のキーワードが含まれている、ファイル内容を一部解析してフィルタリングするなど)、Qt の標準フィルタリング機能では不足することがあります。この場合、ファイルシステムの反復処理とカスタムロジックを組み合わせる必要があります。

特徴

  • 通常は QFileSystemModelQDirIterator と組み合わせて使用します。
  • パフォーマンスへの影響を考慮する必要があります(特に大量のファイルがあるディレクトリの場合)。
  • 非常に柔軟ですが、実装が複雑になりがちです。
// この方法は QFileDialog のフィルタ機能の代替ではありません。
// 独自のファイルブラウザウィジェットを作成する際の、ファイルフィルタリングの概念です。
QStringList filesInDirectory; // QDir::entryList などで取得したファイルリスト
QStringList customFilteredFiles;

foreach (const QString &fileName, filesInDirectory) {
    if (fileName.contains("report") && fileName.endsWith(".pdf")) {
        customFilteredFiles << fileName;
    }
}
// この customFilteredFiles をリストビューなどで表示する