QColor::toHsl()だけじゃない！Qtの色変換代替メソッドを比較解説

2025-05-26

`QColor QColor::toHsl()` とは

QColor QColor::toHsl() は、QtのQColorクラスのメンバ関数で、現在の色をRGB (Red, Green, Blue) 形式からHSL (Hue, Saturation, Lightness) 形式に変換し、新しいQColorオブジェクトとして返すものです。

HSL色空間について

HSLは、色の表現方法の一つで、人間が色を認識する方法により近いと言われています。以下の3つの要素で色を表現します。

L (Lightness - 輝度/明度):
- 色の明るさを表します。
- 0から255の範囲で表現され、0は完全な黒、255は完全な白（またはその色の最も明るい状態）を表します。
- これはHSVの「Value（明度）」とは異なる概念で、HSLのLightnessは色の明るさの度合いを示し、彩度と組み合わせて使われます。
S (Saturation - 彩度):
- 色の鮮やかさや純度を表します。
- 0から255の範囲で表現され、値が大きいほど色が鮮やかになります。
- 0に近いほど灰色がかった色になり、255に近づくほど純粋な色になります。
H (Hue - 色相):
- 色の種類を表します。色の輪（カラーホイール）上の角度で表現され、0度から359度の範囲です。
- 赤が0度、緑が120度、青が240度といったように、色相環に沿って値が変わります。
- 灰色（無彩色）の場合、色相は意味を持ちません。

`toHsl()` の使用目的

QColorオブジェクトは通常、RGB値（赤、緑、青の混合）で色を扱います。しかし、HSL形式は、色の調整（例えば、色の種類を変えずに明るさだけを調整したり、彩度だけを落としたりする）を行う際に直感的で便利です。

toHsl()関数を使用することで、RGBで定義された色をHSL形式に変換し、HSLの各要素（色相、彩度、輝度）を個別に操作した後に、再びRGBに戻すといった処理が可能になります。

使用例

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(255, 100, 50); // 元のRGBカラー (赤みがかったオレンジ)

    qDebug() << "Original RGB:"
             << "R=" << originalColor.red()
             << "G=" << originalColor.green()
             << "B=" << originalColor.blue();

    // RGBからHSLに変換
    QColor hslColor = originalColor.toHsl();

    qDebug() << "Converted HSL:"
             << "H=" << hslColor.hslHue()
             << "S=" << hslColor.hslSaturation()
             << "L=" << hslColor.lightness();

    // HSLの輝度 (Lightness) を変更してみる
    int newLightness = qMin(255, hslColor.lightness() + 50); // 輝度を少し明るくする
    QColor brighterHslColor = QColor::fromHsl(hslColor.hslHue(), hslColor.hslSaturation(), newLightness, hslColor.alpha());

    qDebug() << "Brighter HSL:"
             << "H=" << brighterHslColor.hslHue()
             << "S=" << brighterHslColor.hslSaturation()
             << "L=" << brighterHslColor.lightness();

    // 変更したHSLカラーを再度RGBに戻す (toRgb()はHSLからRGBに戻すわけではないので注意)
    // HSLからQColorを作成しているので、そのままRGB値を取得できます
    qDebug() << "Brighter HSL as RGB:"
             << "R=" << brighterHslColor.red()
             << "G=" << brighterHslColor.green()
             << "B=" << brighterHslColor.blue();

    return 0;
}

この例では、RGBで定義された色をtoHsl()でHSLに変換し、その後、HSLの輝度（Lightness）を調整して、より明るい色を作成しています。

HSL値からQColorオブジェクトを再構築するには、静的関数であるQColor::fromHsl()を使用します。
HSLの各要素は、QColor::hslHue(), QColor::hslSaturation(), QColor::lightness() などの個別のメンバ関数で取得できます。
toHsl()は、現在のQColorオブジェクトのコピーをHSL形式で返します。元のQColorオブジェクト自体は変更されません。

QColor::toHsl() 関数自体は比較的単純な変換関数であり、直接的なエラーが発生することは稀です。しかし、その使い方や、HSL値の解釈、または他の色空間との組み合わせにおいて、意図しない結果や誤解が生じることがあります。

無彩色（灰色、黒、白）の場合の色相（Hue）の値

問題点
QColor::toHsl() で変換した色が無彩色（例：黒、白、さまざまな灰色の濃淡）の場合、QColor::hslHue() が返す値が -1 になることがあります。これはQtのドキュメントにも記載されており、無彩色には「色相」の概念が存在しないためです。

トラブルシューティング

意図的な設定
無彩色を扱う場合、意図的に色相を0（赤）や他の値に設定し、彩度（Saturation）を0にすることで、無彩色として扱いつつも、色相に値を持たせることも可能です。
-1 の処理
HSL値を使って何かをレンダリングしたり、色相に基づいてロジックを組む場合、-1 の値を特別に処理する必要があります。例えば、if (color.hslHue() == -1) のような条件分岐で、無彩色であることを判定し、適切な代替色（例：0度（赤）や、特定の無彩色）を使用するなどの対応が必要です。

HSLとHSVの混同

問題点
HSL (Hue, Saturation, Lightness) と HSV (Hue, Saturation, Value/Brightness) はどちらも色相と彩度を持ちますが、3つ目の要素（Lightness と Value）が異なります。特に「明るさ」に関する概念が異なるため、混同すると期待する色にならないことがあります。

HSVのValue
黒からその色の最大彩度の色へと変化し、Valueが最大の場合が最も明るい状態です。
HSLのLightness
黒からその色の最大彩度の色、そして白へと変化します。

トラブルシューティング

適切な関数を使用
明るさの調整を行う際に、どちらの色空間の「明るさ」を操作したいのかを明確にし、toHsl() と toHsv()、そしてそれぞれの fromHsl()、fromHsv() を適切に使い分けます。
概念の理解
HSLとHSVのそれぞれの色空間がどのように機能するかを正確に理解することが重要です。

浮動小数点精度と整数値の範囲

問題点
QColor のH、S、Lの各成分は、通常0-255（Lightness、Saturation）または0-359（Hue）の整数値で扱われます。しかし、QColor は浮動小数点版の関数（例: hslHueF(), hslSaturationF(), lightnessF()、そして fromHslF()）も提供しており、これらは0.0-1.0の範囲で動作します。誤って異なるスケールを混同すると、色のずれが生じます。

トラブルシューティング

変換時の丸め誤差
整数と浮動小数点を頻繁に変換する場合、丸め誤差により色の情報がわずかに失われる可能性があります。特に精度が求められる場面では注意が必要です。
一貫したスケール
プログラム全体で、整数値（0-255/359）または浮動小数点（0.0-1.0）のどちらかのスケールに一貫して処理を行うようにします。

元のQColorが不正な値の場合

問題点
toHsl() を呼び出す元の QColor オブジェクトが isValid() で false を返すような不正な状態（例：RGB値が0-255の範囲外など）の場合、toHsl() の結果は未定義になる可能性があります。

トラブルシューティング

QColorの初期化
QColor を作成する際に、必ず有効なRGB値や名前付きカラーを使用するようにします。
入力値の検証
toHsl() を呼び出す前に、QColor オブジェクトが有効な色を表しているか isValid() で確認することが推奨されます。

変換後の色の見た目が期待と異なる場合

問題点
HSLに変換し、例えばlightnessだけを変更してRGBに戻したときに、元の色とは全く異なる印象になることがあります。これは、HSLの色空間が人間の知覚に「近い」とは言え、完全に一致するわけではないため、直感と異なる挙動をすることがあるためです。

他の色空間の検討
HSLが目的の色の調整に適さないと感じる場合は、HSVやCMYKなど、他の色空間への変換を検討するのも良い方法です。
試行錯誤
HSLの各成分を調整する際に、期待する見た目になるまで値を調整する試行錯誤が必要になることがあります。

QColor::toHsl() は、主にRGB形式の色をHSL形式に変換し、HSLの各要素（色相、彩度、輝度）を個別に操作したい場合に利用されます。以下にいくつかの典型的な使用例を示します。

色相（Hue）の調整

色の種類を変えずに、明るさや鮮やかさを保ったまま、色合いだけを変えたい場合にHSLが非常に役立ちます。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(255, 0, 0); // 純粋な赤 (RGB)

    qDebug() << "元の色 (RGB): R=" << originalColor.red()
             << ", G=" << originalColor.green()
             << ", B=" << originalColor.blue();

    // HSLに変換
    QColor hslColor = originalColor.toHsl();

    qDebug() << "変換された色 (HSL): H=" << hslColor.hslHue()
             << ", S=" << hslColor.hslSaturation()
             << ", L=" << hslColor.lightness();

    // 色相を120度（緑）に調整
    int newHue = 120; // 0-359 の範囲

    // HSLの要素を使って新しい色を作成
    // 注意: QColor::fromHsl() を使ってH, S, L, Aを渡す
    QColor greenColor = QColor::fromHsl(newHue, hslColor.hslSaturation(),
                                       hslColor.lightness(), hslColor.alpha());

    qDebug() << "色相を変更した色 (HSL): H=" << greenColor.hslHue()
             << ", S=" << greenColor.hslSaturation()
             << ", L=" << greenColor.lightness();
    qDebug() << "色相を変更した色 (RGB): R=" << greenColor.red()
             << ", G=" << greenColor.green()
             << ", B=" << greenColor.blue(); // 緑色のRGB値が表示されるはず

    return 0;
}

解説
元の赤色（RGB: 255, 0, 0）をHSLに変換し、その色相を120度（緑）に変更しています。彩度と輝度は元の色のままなので、鮮やかな緑色が得られます。

彩度（Saturation）の調整

色の鮮やかさだけを変えたい場合に利用します。例えば、彩度を下げてモノクロに近い色にしたり、彩度を上げてより鮮やかな色にしたりできます。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(0, 150, 200); // 青みがかったシアン (RGB)

    qDebug() << "元の色 (RGB): R=" << originalColor.red()
             << ", G=" << originalColor.green()
             << ", B=" << originalColor.blue();

    // HSLに変換
    QColor hslColor = originalColor.toHsl();

    qDebug() << "変換された色 (HSL): H=" << hslColor.hslHue()
             << ", S=" << hslColor.hslSaturation()
             << ", L=" << hslColor.lightness();

    // 彩度を半分に減らす (0-255 の範囲)
    int newSaturation = hslColor.hslSaturation() / 2;

    // HSLの要素を使って新しい色を作成
    QColor desaturatedColor = QColor::fromHsl(hslColor.hslHue(), newSaturation,
                                              hslColor.lightness(), hslColor.alpha());

    qDebug() << "彩度を変更した色 (HSL): H=" << desaturatedColor.hslHue()
             << ", S=" << desaturatedColor.hslSaturation()
             << ", L=" << desaturatedColor.lightness();
    qDebug() << "彩度を変更した色 (RGB): R=" << desaturatedColor.red()
             << ", G=" << desaturatedColor.green()
             << ", B=" << desaturatedColor.blue(); // よりくすんだ色になるはず

    return 0;
}

解説
彩度を半分に減らすことで、元の鮮やかな青みがかったシアンが、よりくすんだ（灰色がかった）色に変化します。

輝度（Lightness）の調整

色の明るさだけを変えたい場合に利用します。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(100, 100, 200); // 薄い紫 (RGB)

    qDebug() << "元の色 (RGB): R=" << originalColor.red()
             << ", G=" << originalColor.green()
             << ", B=" << originalColor.blue();

    // HSLに変換
    QColor hslColor = originalColor.toHsl();

    qDebug() << "変換された色 (HSL): H=" << hslColor.hslHue()
             << ", S=" << hslColor.hslSaturation()
             << ", L=" << hslColor.lightness();

    // 輝度を明るくする (最大255)
    int brighterLightness = qMin(255, hslColor.lightness() + 50);

    // HSLの要素を使って新しい色を作成
    QColor brighterColor = QColor::fromHsl(hslColor.hslHue(), hslColor.hslSaturation(),
                                          brighterLightness, hslColor.alpha());

    qDebug() << "輝度を変更した色 (HSL): H=" << brighterColor.hslHue()
             << ", S=" << brighterColor.hslSaturation()
             << ", L=" << brighterColor.lightness();
    qDebug() << "輝度を変更した色 (RGB): R=" << brighterColor.red()
             << ", G=" << brighterColor.green()
             << ", B=" << brighterColor.blue(); // より明るい色になるはず

    // 輝度を暗くする (最小0)
    int darkerLightness = qMax(0, hslColor.lightness() - 50);

    QColor darkerColor = QColor::fromHsl(hslColor.hslHue(), hslColor.hslSaturation(),
                                        darkerLightness, hslColor.alpha());

    qDebug() << "輝度を変更した色 (HSL): H=" << darkerColor.hslHue()
             << ", S=" << darkerColor.hslSaturation()
             << ", L=" << darkerColor.lightness();
    qDebug() << "輝度を変更した色 (RGB): R=" << darkerColor.red()
             << ", G=" << darkerColor.green()
             << ", B=" << darkerColor.blue(); // より暗い色になるはず

    return 0;
}

解説
輝度を増減させることで、元の薄い紫色を明るくしたり暗くしたりしています。qMinやqMaxを使って、0-255の範囲に値を収めています。

無彩色（灰色など）の処理

toHsl() で無彩色を変換した場合、色相（Hue）が -1 になるという点に注意が必要です。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor grayColor(128, 128, 128); // 中間の灰色
    QColor blackColor(0, 0, 0);       // 黒
    QColor whiteColor(255, 255, 255); // 白

    qDebug() << "灰色 (RGB): H=" << grayColor.toHsl().hslHue()
             << ", S=" << grayColor.toHsl().hslSaturation()
             << ", L=" << grayColor.toHsl().lightness();

    qDebug() << "黒 (RGB): H=" << blackColor.toHsl().hslHue()
             << ", S=" << blackColor.toHsl().hslSaturation()
             << ", L=" << blackColor.toHsl().lightness();

    qDebug() << "白 (RGB): H=" << whiteColor.toHsl().hslHue()
             << ", S=" << whiteColor.toHsl().hslSaturation()
             << ", L=" << whiteColor.toHsl().lightness();

    // HSLで色相が-1の場合の処理例
    QColor testColor = QColor(100, 100, 100).toHsl(); // 灰色

    if (testColor.hslHue() == -1) {
        qDebug() << "この色は無彩色です（色相は定義されていません）。";
        // 必要に応じて、色相を0に設定して彩度を0にするなど、無彩色としての処理を行う
        QColor handledGray = QColor::fromHsl(0, 0, testColor.lightness(), testColor.alpha());
        qDebug() << "処理後の灰色 (HSL): H=" << handledGray.hslHue()
                 << ", S=" << handledGray.hslSaturation()
                 << ", L=" << handledGray.lightness();
    }

    return 0;
}

解説
灰色、黒、白といった無彩色をtoHsl()で変換すると、hslHue()が-1を返します。これは色相が意味を持たないことを示しています。この場合、色相に依存するロジックを組む際には特別なハンドリングが必要です。

`QColor QColor::toHsl()` の代替手段

QColor::toHsl() は、RGBからHSLへの変換を直接提供する便利な関数ですが、HSL色空間での色の操作には、他にもいくつかの方法や、HSLとは異なる色空間を使用するという選択肢があります。

QColor::getHsl() 関数を使用する

QColor::toHsl() は新しい QColor オブジェクトを返しますが、既存の QColor オブジェクトのHSL成分を直接取得したい場合は、ポインタ引数を受け取る getHsl() 関数を使用できます。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor myColor(100, 150, 200); // RGBカラー

    int h, s, l, a;
    myColor.getHsl(&h, &s, &l, &a); // HSL成分を直接取得

    qDebug() << "HSL (getHsl): H=" << h << ", S=" << s << ", L=" << l << ", A=" << a;

    // 取得したHSL値を使って新しい色を作成することも可能
    QColor newColor = QColor::fromHsl(h, s, l, a);
    qDebug() << "New HSL (fromHsl): H=" << newColor.hslHue()
             << ", S=" << newColor.hslSaturation()
             << ", L=" << newColor.lightness();

    return 0;
}

解説
getHsl() は、既存の QColor オブジェクトからHSL成分を抽出する際に、余分なオブジェクトの生成を避けることができます。これは、特にパフォーマンスが重要な場合にわずかな利点となる可能性があります。浮動小数点版の getHslF() もあります。

HSV色空間を使用する (QColor::toHsv() と QColor::fromHsv())

HSLとHSVは似ていますが、その「明るさ」の定義が異なります。HSLのLightnessは黒から白へ、HSVのValue/Brightnessは黒から純粋な色（飽和した明るい色）へと変化します。色の調整の目的によっては、HSLよりもHSVの方が直感的に感じる場合があります。

static QColor QColor::fromHsv(int h, int s, int v, int a = 255): 指定されたHSV値からQColorオブジェクトを作成します。
QColor QColor::toHsv() const: 現在のRGB色をHSV形式に変換し、新しいQColorオブジェクトとして返します。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(255, 128, 0); // オレンジ (RGB)

    qDebug() << "元の色 (RGB): R=" << originalColor.red()
             << ", G=" << originalColor.green()
             << ", B=" << originalColor.blue();

    // HSVに変換
    QColor hsvColor = originalColor.toHsv();

    qDebug() << "変換された色 (HSV): H=" << hsvColor.hsvHue()
             << ", S=" << hsvColor.hsvSaturation()
             << ", V=" << hsvColor.value(); // HSVではValueで明るさを取得

    // 明るさ (Value) を調整
    int newValue = qMin(255, hsvColor.value() + 50); // 輝度を少し明るくする

    // HSLのfromHsl()と同様に、fromHsv()を使用
    QColor brighterHsvColor = QColor::fromHsv(hsvColor.hsvHue(), hsvColor.hsvSaturation(),
                                             newValue, hsvColor.alpha());

    qDebug() << "明るくした色 (HSV): H=" << brighterHsvColor.hsvHue()
             << ", S=" << brighterHsvColor.hsvSaturation()
             << ", V=" << brighterHsvColor.value();
    qDebug() << "明るくした色 (RGB): R=" << brighterHsvColor.red()
             << ", G=" << brighterHsvColor.green()
             << ", B=" << brighterHsvColor.blue();

    return 0;
}

解説
HSLと同様に、HSVも色相、彩度、明るさ（Value）を個別に操作できます。特にグラフィックツールや画像処理において、HSVはしばしばHSLよりも好まれることがあります。

RGB直接操作 (QColor::setRgb(), QColor::lighter(), QColor::darker())

色相や彩度を個別に調整するのではなく、単に色を明るくしたり暗くしたりしたい場合は、RGB値を直接操作するか、QColorの組み込み関数を使用できます。

QColor QColor::darker(int factor = 200) const: 現在の色をより暗くしたコピーを返します。factorは暗さの度合いを制御します（100で変化なし、200で2倍暗く）。
QColor QColor::lighter(int factor = 150) const: 現在の色をより明るくしたコピーを返します。factorは明るさの度合いを制御します（100で変化なし、200で2倍明るく）。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(100, 50, 200); // 紫 (RGB)

    qDebug() << "元の色 (RGB): R=" << originalColor.red()
             << ", G=" << originalColor.green()
             << ", B=" << originalColor.blue();

    // lighter() 関数で明るくする
    QColor lighterColor = originalColor.lighter(150); // 1.5倍明るく

    qDebug() << "明るくした色 (RGB): R=" << lighterColor.red()
             << ", G=" << lighterColor.green()
             << ", B=" << lighterColor.blue();

    // darker() 関数で暗くする
    QColor darkerColor = originalColor.darker(150); // 1.5倍暗く

    qDebug() << "暗くした色 (RGB): R=" << darkerColor.red()
             << ", G=" << darkerColor.green()
             << ", B=" << darkerColor.blue();

    // RGB値を直接変更
    QColor customModifiedColor = originalColor;
    customModifiedColor.setRed(qMin(255, originalColor.red() + 50));
    customModifiedColor.setGreen(qMin(255, originalColor.green() + 20));

    qDebug() << "RGBを直接変更した色: R=" << customModifiedColor.red()
             << ", G=" << customModifiedColor.green()
             << ", B=" << customModifiedColor.blue();

    return 0;
}

解説
lighter() と darker() は、HSL変換を内部的に利用している可能性がありますが、開発者としてはRGBを直接操作するような感覚で利用できます。単純な明るさの調整であれば、これらの関数を使う方が簡潔です。

CMYK色空間を使用する (QColor::toCmyk() と QColor::fromCmyk())

印刷用途など、CMYK（シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック）色空間で色を扱いたい場合は、これらに関連する関数を使用します。

static QColor QColor::fromCmyk(int c, int m, int y, int k, int a = 255): 指定されたCMYK値からQColorオブジェクトを作成します。
QColor QColor::toCmyk() const: 現在のRGB色をCMYK形式に変換し、新しいQColorオブジェクトとして返します。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor(200, 50, 100); // 赤みがかった紫 (RGB)

    qDebug() << "元の色 (RGB): R=" << originalColor.red()
             << ", G=" << originalColor.green()
             << ", B=" << originalColor.blue();

    // CMYKに変換
    QColor cmykColor = originalColor.toCmyk();

    qDebug() << "変換された色 (CMYK): C=" << cmykColor.cyan()
             << ", M=" << cmykColor.magenta()
             << ", Y=" << cmykColor.yellow()
             << ", K=" << cmykColor.black();

    // CMYK値を変更して新しい色を作成
    int newCyan = cmykColor.cyan() + 20;
    QColor newCmykColor = QColor::fromCmyk(newCyan, cmykColor.magenta(),
                                           cmykColor.yellow(), cmykColor.black(),
                                           cmykColor.alpha());

    qDebug() << "CMYKを変更した色 (CMYK): C=" << newCmykColor.cyan()
             << ", M=" << newCmykColor.magenta()
             << ", Y=" << newCmykColor.yellow()
             << ", K=" << newCmykColor.black();
    qDebug() << "CMYKを変更した色 (RGB): R=" << newCmykColor.red()
             << ", G=" << newCmykColor.green()
             << ", B=" << newCmykColor.blue();

    return 0;
}

解説
主に印刷業界で使用されるCMYKは、減法混色に基づいています。Webや画面表示ではRGBが主流ですが、特定のニーズがある場合にCMYK変換も利用できます。

QColor::toCmyk(): 印刷などの特定のCMYK色空間が必要な場合にのみ使用します。
RGB直接操作: 特定のRGB成分を直接制御したい場合や、より低レベルな色操作が必要な場合に利用します。
QColor::lighter() / darker(): 単純に色を明るくしたり暗くしたりしたい場合に最も簡単で直感的な方法です。
QColor::toHsv() / getHsv(): HSLと同様に色相と彩度を操作しますが、明るさの概念がHSLとは異なります。特にグラフィックソフトウェアや画像処理の文脈でよく使用されます。
QColor::toHsl() / getHsl(): 色相、彩度、輝度を個別に、かつ人間に近い直感で調整したい場合に最適です。

QColor::toHsl()だけじゃない！Qtの色変換代替メソッドを比較解説

QColor QColor::toHsl() とは

HSL色空間について

toHsl() の使用目的

使用例

無彩色（灰色、黒、白）の場合の色相（Hue）の値

HSLとHSVの混同

浮動小数点精度と整数値の範囲

元のQColorが不正な値の場合

変換後の色の見た目が期待と異なる場合

色相（Hue）の調整

彩度（Saturation）の調整

輝度（Lightness）の調整

無彩色（灰色など）の処理

QColor QColor::toHsl() の代替手段

QColor::getHsl() 関数を使用する

HSV色空間を使用する (QColor::toHsv() と QColor::fromHsv())

RGB直接操作 (QColor::setRgb(), QColor::lighter(), QColor::darker())

CMYK色空間を使用する (QColor::toCmyk() と QColor::fromCmyk())

`QColor QColor::toHsl()` とは

`toHsl()` の使用目的

`QColor QColor::toHsl()` の代替手段