Qt開発者必見！QColor::spec()のエラーと解決策、代替アプローチ

2025-05-27

`QColor::Spec QColor::spec()` とは

QColor::spec() メソッドは、QColor オブジェクトがどのように指定されたか（初期化されたか）を示す QColor::Spec 型の値を返します。

QColor クラスは、色を表現するための様々な方法を提供しています。例えば、RGB (赤、緑、青) 値、HSV (色相、彩度、明度) 値、CMYK (シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック) 値、または名前（例: "red"、"#FF0000"）で色を指定できます。spec() メソッドは、現在保持している色がこれらのどの方法で指定されたかを知るために使われます。

`QColor::Spec` 列挙型

QColor::Spec は、QColor クラス内で定義されている列挙型 (enum) で、以下の値をとります。

QColor::Invalid: 色が無効であることを示します（例: 無効な値で初期化された場合）。
QColor::NamedColor: 色が名前（例: "blue"、"#RRGGBB"形式の文字列）で指定されたことを示します。
QColor::Cmyk: 色がCMYK値で指定されたことを示します。
QColor::Hsv: 色がHSV値で指定されたことを示します。
QColor::Rgb: 色がRGB値で指定されたことを示します。

使用例

#include <QColor>
#include <QDebug>

int main() {
    QColor color1(255, 0, 0);       // RGBで赤を指定
    QColor color2 = QColor::fromHsv(0, 255, 255); // HSVで赤を指定
    QColor color3("blue");          // 名前で青を指定
    QColor color4(999, 0, 0);       // 無効なRGB値

    qDebug() << "Color1 spec:" << color1.spec(); // QColor::Rgb
    qDebug() << "Color2 spec:" << color2.spec(); // QColor::Hsv
    qDebug() << "Color3 spec:" << color3.spec(); // QColor::NamedColor
    qDebug() << "Color4 spec:" << color4.spec(); // QColor::Invalid

    return 0;
}

上記のコードを実行すると、以下のような出力が得られます。

Color1 spec: QColor::Rgb
Color2 spec: QColor::Hsv
Color3 spec: QColor::NamedColor
Color4 spec: QColor::Invalid

QColor オブジェクトは内部で色情報をRGB、HSV、CMYKなどの形式で保持することができますが、ある色をどの形式で初期化したか（または設定したか）は、その色を扱う上で重要な情報となる場合があります。

例えば、ユーザーがHSV形式で色を指定した後に、その色を再度HSV形式で表示したい場合など、元の指定方法を保持していると便利です。spec() メソッドは、このように色の「出所」や「表現方法」を確認するために使用されます。

QColor::spec() メソッド自体が直接エラーを引き起こすことは稀ですが、このメソッドが返す QColor::Spec の値が、プログラマーの意図と異なる場合に問題が発生することがあります。これは主に、QColor オブジェクトの初期化や色の設定方法に関する誤解から生じます。

エラー: spec() が常に QColor::Rgb を返す

問題: HSVやCMYKで色を設定したはずなのに、spec() を呼び出すと常に QColor::Rgb が返される。

原因: QColor オブジェクトを初期化する際に、RGB形式のコンストラクタが使用されたか、または setRgb() などのRGB形式のセッターメソッドが最後に呼び出されたためです。QColor は、内部で色情報を複数の形式で保持できますが、spec() はその色が「最後にどのように設定されたか」を示します。

例:

QColor color;
color.setHsv(120, 255, 255); // HSVで緑を設定
qDebug() << color.spec();    // QColor::Hsv を返すはず

color.setRgb(0, 255, 0);     // RGBで緑を再設定
qDebug() << color.spec();    // ここで QColor::Rgb が返される

トラブルシューティング:

QColor のコンストラクタやセッターメソッドが、実際にどのような形式で色を設定しているかを理解します。例えば、QColor(int r, int g, int b) は QColor::Rgb として設定し、QColor::fromHsv(int h, int s, int v) は QColor::Hsv として設定します。
QColor オブジェクトの色を 設定した直後 に spec() を確認し、意図した Spec が返されているかを確認します。

エラー: spec() が QColor::Invalid を返す

問題: 色を設定したはずなのに、spec() が QColor::Invalid を返す。

原因:

無効な値での初期化: QColor コンストラクタやセッターメソッドに、範囲外の不正な値が渡された場合。例えば、RGB値が0-255の範囲を超えている、または無効な色名が指定された場合などです。
デフォルトコンストラクタ使用後の未設定: QColor color; のようにデフォルトコンストラクタで初期化された場合、その時点では色が設定されていないため Invalid となります。

例:

QColor color1(300, 0, 0); // RGB値が範囲外 (0-255)
qDebug() << color1.spec(); // QColor::Invalid

QColor color2("invalid_color_name"); // 存在しない色名
qDebug() << color2.spec(); // QColor::Invalid

QColor color3; // デフォルトコンストラクタ
qDebug() << color3.spec(); // QColor::Invalid

トラブルシューティング:

QColor::isValid() メソッドを使用して、色が有効であるかを確認することを習慣にします。

QColor myColor("nonExistentColor");
if (!myColor.isValid()) {
    qWarning() << "Warning: Invalid color specified.";
    // エラー処理、またはデフォルトの色を設定する
    myColor = Qt::black;
}

色を設定する際に渡している引数の値が、その色モデルの有効な範囲内にあるかを確認します。Qtのドキュメントで各コンストラクタやセッターの引数範囲を確認してください。

誤解: spec() が色の変換履歴を示すと誤解する

問題: ある形式で色を設定し、その後別の形式でその色情報を取得した場合でも、spec() が元の設定形式を保持すると誤解している。

原因: spec() は、QColor オブジェクトが「現在」どのような形式で指定されているかを示すものであり、色の変換履歴を追跡するものではありません。setRgb() や setHsv() などのメソッドを呼び出すと、そのメソッドで指定された形式に spec() が更新されます。

例:

QColor color;
color.setRgb(255, 0, 0); // spec() は QColor::Rgb
qDebug() << "Initial spec:" << color.spec();

// RGB値を取得する
int r, g, b;
color.getRgb(&r, &g, &b);
qDebug() << "RGB values:" << r << g << b;

// HSV値を取得する (spec() は変わらない)
int h, s, v;
color.getHsv(&h, &s, &v);
qDebug() << "HSV values:" << h << s << v;
qDebug() << "Spec after getHsv():" << color.spec(); // まだ QColor::Rgb のまま

// 明示的にHSVで色を設定し直す
color.setHsv(0, 255, 255);
qDebug() << "Spec after setHsv():" << color.spec(); // QColor::Hsv に変わる

トラブルシューティング:

特定の形式で色を保持したい場合は、その形式で色を設定するメソッド（例: setHsv()）を明示的に呼び出すか、あるいは色の値とその Spec をペアで保持する独自のデータ構造を使用することを検討します。
spec() の役割を正確に理解し、それが色の内部表現の「現在の形式」を示すものであることを認識します。

色の比較における spec() の考慮不足

問題: 異なる spec() を持つ QColor オブジェクトを比較すると、同じ色であるにもかかわらず != と判断されることがある。

原因: QColor の等値比較 (==) は、色のコンポーネント値（RGB、HSVなど）が同等であるかを評価しますが、spec() の値自体は直接比較の対象とならない場合があります。しかし、内部的な精度や表現の違いによって、わずかな誤差が生じることがあります。特に浮動小数点数の値を使用した場合に顕著です。

例:

QColor colorRgb(255, 0, 0); // 純粋な赤 (RGB)
QColor colorHsv = QColor::fromHsv(0, 255, 255); // 純粋な赤 (HSV)

qDebug() << "colorRgb spec:" << colorRgb.spec();   // QColor::Rgb
qDebug() << "colorHsv spec:" << colorHsv.spec();   // QColor::Hsv
qDebug() << "Are colors equal?" << (colorRgb == colorHsv); // 通常は true になるはず

トラブルシューティング:

QColor::isValid() を用いて、比較対象の色がそもそも有効な色であるかを確認します。
QColor は異なる色空間間での変換時にわずかな数値の丸め誤差が発生する可能性があります。完全に同じ色であると期待する場面で QColor::spec() の違いによって問題が生じる場合は、例えば QColor::toRgb() メソッドで一度RGBに変換してから比較するなど、比較する前に同じ色空間に統一することを検討します。

QColor::spec() は、QColor オブジェクトの色がどの形式で初期化されたか（または最後に設定されたか）を示す便利な情報を提供します。このメソッド自体がエラーを引き起こすことはほとんどありませんが、その戻り値の解釈や、QColor の色の設定・変換メカニズムに関する理解不足が、プログラマーの意図しない動作やバグにつながることがあります。

問題が発生した場合は、以下の点を確認してください。

色の比較を行う際に、色空間の変換による影響を考慮しているか。
QColor::spec() が色の変換履歴ではなく、現在の表現形式を示すことを理解しているか。
色を設定する際に渡される値が有効な範囲内にあるか、QColor::Invalid が返されていないか。
QColor のコンストラクタやセッターが、意図した QColor::Spec を設定しているか。

`QColor::Spec QColor::spec()` を使ったプログラミング例

例1: さまざまな色の指定方法と `spec()` の確認

この例では、QColor オブジェクトを異なる方法で初期化し、それぞれの spec() がどのような値を返すかを確認します。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv); // QApplicationはQtアプリケーションの基本的なセットアップに必要

    // 1. RGBで色を指定
    QColor colorRgb(255, 0, 0); // 赤
    qDebug() << "RGBで指定された色:";
    qDebug() << "  spec():" << colorRgb.spec(); // QColor::Rgb を返す

    // 2. HSVで色を指定
    // fromHsv 静的メソッドを使用
    QColor colorHsv = QColor::fromHsv(0, 255, 255); // 赤 (H=0, S=255, V=255)
    qDebug() << "\nHSVで指定された色:";
    qDebug() << "  spec():" << colorHsv.spec(); // QColor::Hsv を返す

    // 3. CMYKで色を指定 (Qt 5.0以降で利用可能)
    QColor colorCmyk = QColor::fromCmyk(0, 100, 100, 0); // マゼンタ
    qDebug() << "\nCMYKで指定された色:";
    qDebug() << "  spec():" << colorCmyk.spec(); // QColor::Cmyk を返す

    // 4. 名前で色を指定
    QColor colorNamed("blue"); // 青
    qDebug() << "\n名前で指定された色:";
    qDebug() << "  spec():" << colorNamed.spec(); // QColor::NamedColor を返す

    // 5. 無効な色（不正な値）
    QColor colorInvalid(999, 0, 0); // RGB値が範囲外
    qDebug() << "\n無効な色:";
    qDebug() << "  spec():" << colorInvalid.spec(); // QColor::Invalid を返す
    qDebug() << "  isValid():" << colorInvalid.isValid(); // false を返す

    // 6. デフォルトコンストラクタで作成された色
    QColor colorDefault; // 未初期化
    qDebug() << "\nデフォルトで作成された色:";
    qDebug() << "  spec():" << colorDefault.spec(); // QColor::Invalid を返す
    qDebug() << "  isValid():" << colorDefault.isValid(); // false を返す

    return 0;
}

実行結果の例

RGBで指定された色:
  spec(): QColor::Rgb

HSVで指定された色:
  spec(): QColor::Hsv

CMYKで指定された色:
  spec(): QColor::Cmyk

名前で指定された色:
  spec(): QColor::NamedColor

無効な色:
  spec(): QColor::Invalid
  isValid(): false

デフォルトで作成された色:
  spec(): QColor::Invalid
  isValid(): false

例2: `spec()` を使った条件分岐と色の変換

この例では、ユーザーがどのように色を指定したかに応じて異なる処理を行うシナリオをシミュレートします。また、spec() の値が色の設定方法によって変化することを示します。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

// 色情報を表示するヘルパー関数
void printColorInfo(const QString& label, const QColor& color) {
    qDebug() << "---" << label << "---";
    qDebug() << "  spec():" << color.spec();
    qDebug() << "  isValid():" << color.isValid();

    // spec() に応じて色成分を表示
    switch (color.spec()) {
        case QColor::Rgb: {
            int r, g, b, a;
            color.getRgb(&r, &g, &b, &a);
            qDebug() << "  RGB (R, G, B, A):" << r << g << b << a;
            break;
        }
        case QColor::Hsv: {
            int h, s, v, a;
            color.getHsv(&h, &s, &v, &a);
            qDebug() << "  HSV (H, S, V, A):" << h << s << v << a;
            break;
        }
        case QColor::Cmyk: {
            int c, m, y, k, a;
            color.getCmyk(&c, &m, &y, &k, &a);
            qDebug() << "  CMYK (C, M, Y, K, A):" << c << m << y << k << a;
            break;
        }
        case QColor::NamedColor:
            qDebug() << "  Named Color:" << color.name();
            break;
        case QColor::Invalid:
            qDebug() << "  (色が無効です)";
            break;
    }
    qDebug() << "--------------------";
}

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    // RGBで初期化
    QColor myColor(100, 150, 200);
    printColorInfo("初期化された色 (RGB)", myColor);

    // HSVに変換（QColor::setHsv()を使うとspec()が更新される）
    myColor.setHsv(200, 180, 200); // 濃い青紫
    printColorInfo("setHsv()で設定後の色", myColor);

    // 名前付き色に変換 (setNamedColor()を使うとspec()が更新される)
    myColor.setNamedColor("darkgreen");
    printColorInfo("setNamedColor()で設定後の色", myColor);

    // QColor::convertTo() を使った色の変換 (元のspec()は変わらない)
    QColor originalColor(255, 128, 0); // オレンジ
    printColorInfo("元の色 (RGB)", originalColor);

    QColor hsvConvertedColor = originalColor.convertTo(QColor::Hsv);
    printColorInfo("convertTo(Hsv)で変換された色", hsvConvertedColor);
    printColorInfo("convertTo()呼び出し後の元の色", originalColor); // spec()はQColor::Rgbのまま

    // 無効な色を試す
    QColor badColor(1000, 1000, 1000);
    printColorInfo("不正な値で初期化された色", badColor);

    return 0;
}

--- 初期化された色 (RGB) ---
  spec(): QColor::Rgb
  isValid(): true
  RGB (R, G, B, A): 100 150 200 255
--------------------
--- setHsv()で設定後の色 ---
  spec(): QColor::Hsv
  isValid(): true
  HSV (H, S, V, A): 200 180 200 255
--------------------
--- setNamedColor()で設定後の色 ---
  spec(): QColor::NamedColor
  isValid(): true
  Named Color: #006400 // darkgreenのRGB値
--------------------
--- 元の色 (RGB) ---
  spec(): QColor::Rgb
  isValid(): true
  RGB (R, G, B, A): 255 128 0 255
--------------------
--- convertTo(Hsv)で変換された色 ---
  spec(): QColor::Hsv
  isValid(): true
  HSV (H, S, V, A): 30 255 255 255 // オレンジのHSV値
--------------------
--- convertTo()呼び出し後の元の色 ---
  spec(): QColor::Rgb
  isValid(): true
  RGB (R, G, B, A): 255 128 0 255
--------------------
--- 不正な値で初期化された色 ---
  spec(): QColor::Invalid
  isValid(): false
  (色が無効です)
--------------------

無効な値で QColor を初期化したり、デフォルトコンストラクタで作成したりすると、spec() は QColor::Invalid を返します。これは isValid() メソッドと組み合わせて、色が有効であるかを確認するのに役立ちます。
getRgb(), getHsv() などの色成分を取得するメソッドや、convertTo() のような色空間を変換して新しい QColor オブジェクトを返すメソッドは、元のオブジェクトの spec() を変更しません。
QColor コンストラクタや setRgb(), setHsv(), setCmyk(), setNamedColor() などのメソッドは、呼び出されると内部的に spec() の値を更新します。
QColor::spec() は、QColor オブジェクトが最後にどのように初期化されたか、または色が設定されたかを示します。

QColor::spec() は色の「出所」を知るためのものですが、以下に示す代替方法は、色の「表現」や「操作」に焦点を当てています。

明示的な色の取得メソッドを使用する

QColor は、内部でRGB、HSV、CMYKなどの形式で色情報を保持しており、それぞれの形式に対応する取得メソッドを提供しています。spec() を使ってどの形式で色が設定されたかを確認する代わりに、直接目的のカラースペースの値を「取得する」ことができます。

名前付き色の取得:
- QString QColor::name(QColor::NameFormat format = HexRgb) const (色のHEXコードまたは名前文字列を取得)
CMYK値の取得:
- int QColor::cyan() const, int QColor::magenta() const, int QColor::yellow() const, int QColor::black() const
- void QColor::getCmyk(int *c, int *m, int *y, int *k, int *a = nullptr) const
HSV値の取得:
- int QColor::hsvHue() const, int QColor::hsvSaturation() const, int QColor::value() const
- void QColor::getHsv(int *h, int *s, int *v, int *a = nullptr) const
RGB値の取得:
- int QColor::red() const, int QColor::green() const, int QColor::blue() const
- void QColor::getRgb(int *r, int *g, int *b, int *a = nullptr) const
- QRgb QColor::rgb() const, QRgb QColor::rgba() const (アルファ値を含む)

なぜ代替になるか？ spec() は色の「設定方法」を示しますが、これらのメソッドは色が「現在どのようになっているか」を特定のカラースペースで取得します。例えば、RGBで設定された色でも getHsv() を呼び出してHSV値を取得できます。この場合、元の spec() の値は QColor::Rgb のままですが、目的のHSV値は得られます。

ユースケース:

特定のカラースペースの計算や操作が必要な場合。
ユーザーが色の表示形式を切り替える機能がある場合（例: RGBスライダーとHSVスライダー）。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor colorHsv = QColor::fromHsv(120, 255, 255); // 緑色をHSVで初期化
    qDebug() << "Original spec (HSV):" << colorHsv.spec(); // QColor::Hsv

    // HSVで設定された色でも、RGB値を取得できる
    int r, g, b, a;
    colorHsv.getRgb(&r, &g, &b, &a);
    qDebug() << "RGB values (from HSV color):" << r << g << b << a;

    // CMYK値も取得できる
    int c, m, y, k, alphaCmyk;
    colorHsv.getCmyk(&c, &m, &y, &k, &alphaCmyk);
    qDebug() << "CMYK values (from HSV color):" << c << m << y << k << alphaCmyk;

    // spec() の値はgetRgb()やgetCmyk()を呼び出しても変わらない
    qDebug() << "Spec after getting RGB/CMYK:" << colorHsv.spec(); // まだ QColor::Hsv

    QColor colorRgb(255, 0, 0); // 赤色をRGBで初期化
    qDebug() << "\nOriginal spec (RGB):" << colorRgb.spec(); // QColor::Rgb
    qDebug() << "Color name:" << colorRgb.name(); // #ff0000

    return 0;
}

QColor::convertTo(QColor::Spec colorSpec) const を使用する

このメソッドは、現在の QColor オブジェクトを指定された QColor::Spec に変換した新しい QColor オブジェクトを返します。元のオブジェクトの spec() は変更されません。

なぜ代替になるか？ spec() で現在の指定方法を確認し、その情報に基づいて変換するかどうかを判断する代わりに、直接目的の形式に変換して新しいオブジェクトを作成できます。これにより、特定のカラースペースでの操作を強制したい場合に便利です。

ユースケース:

ある色のリストをすべて特定のカラースペース（例: CMYK）に統一して保存したい場合。
色を選択するUIではRGB値しか表示しないが、内部的にはHSVで管理したい場合。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    QColor originalColor("purple"); // 名前付き色で初期化
    qDebug() << "Original Color Spec:" << originalColor.spec(); // QColor::NamedColor

    // RGB形式に変換した新しいQColorオブジェクトを作成
    QColor rgbColor = originalColor.convertTo(QColor::Rgb);
    qDebug() << "Converted RGB Color Spec:" << rgbColor.spec(); // QColor::Rgb
    qDebug() << "Converted RGB values:" << rgbColor.red() << rgbColor.green() << rgbColor.blue();

    // HSV形式に変換した新しいQColorオブジェクトを作成
    QColor hsvColor = originalColor.convertTo(QColor::Hsv);
    qDebug() << "Converted HSV Color Spec:" << hsvColor.spec(); // QColor::Hsv
    qDebug() << "Converted HSV values:" << hsvColor.hsvHue() << hsvColor.hsvSaturation() << hsvColor.value();

    // 元のオブジェクトのspec()は変わらない
    qDebug() << "Original Color Spec (after conversions):" << originalColor.spec(); // QColor::NamedColor

    return 0;
}

独自のデータ構造で色の指定方法を管理する

もし QColor::spec() が提供する情報（色がどの形式で「設定されたか」）が非常に重要で、かつ QColor のデフォルトの挙動（設定メソッドで spec() が上書きされる）が都合が悪い場合、QColor オブジェクトと、その指定方法を保持する独自の enum や文字列を組み合わせて管理することができます。

なぜ代替になるか？ QColor::spec() は最後に設定された形式を示すため、色の変換履歴を追跡しません。しかし、アプリケーションのロジックによっては、ユーザーが最初にどのような形式で色を指定したか（例: RGBスライダーを使ったのか、色名を入力したのか）を記憶しておく必要がある場合があります。この場合、QColor::spec() だけでは不十分です。

ユースケース:

色の保存形式がユーザーの初期入力方法に依存する場合。
カラーピッカーで、ユーザーがRGB、HSV、またはCMYKのどのタブで色を最後に調整したかを記憶し、次回開いたときにそのタブをデフォルトにしたい場合。

#include <QApplication>
#include <QColor>
#include <QDebug>
#include <QString>

// 独自のカラースペース指定方法の列挙型
enum MyColorInputSpec {
    InputRgb,
    InputHsv,
    InputCmyk,
    InputNamedColor,
    InputUnknown
};

// 色と入力スペックを保持する構造体
struct MyColorData {
    QColor color;
    MyColorInputSpec inputSpec;

    MyColorData(const QColor& c, MyColorInputSpec spec) : color(c), inputSpec(spec) {}

    // 色の情報を表示するヘルパーメソッド
    void printInfo() const {
        qDebug() << "--- Color Data ---";
        qDebug() << "  Current QColor::spec():" << color.spec(); // QColorの内部的なspec()
        qDebug() << "  MyInputSpec:";
        switch (inputSpec) {
            case InputRgb:        qDebug() << "    (RGB)"; break;
            case InputHsv:        qDebug() << "    (HSV)"; break;
            case InputCmyk:       qDebug() << "    (CMYK)"; break;
            case InputNamedColor: qDebug() << "    (Named Color)"; break;
            case InputUnknown:    qDebug() << "    (Unknown)"; break;
        }
        qDebug() << "  Color Name:" << color.name();
        qDebug() << "------------------";
    }
};

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication a(argc, argv);

    // ユーザーがRGBスライダーで色を指定したと仮定
    MyColorData data1(QColor(50, 100, 150), InputRgb);
    data1.printInfo();

    // ユーザーが色名で色を指定したと仮定
    MyColorData data2(QColor("magenta"), InputNamedColor);
    data2.printInfo();

    // 後でHSV値を設定し直す（MyColorDataのinputSpecは変わらない）
    data2.color.setHsv(300, 200, 250); // HSVで青紫を設定
    data2.printInfo(); // QColor::spec()はQColor::Hsvに変わるが、inputSpecはInputNamedColorのまま

    return 0;
}

QColor::spec() は、QColor オブジェクトが「どのカラースペースの値を最後に受け取ったか」という、ある意味で内部的な状態を示すものです。もし、その情報が直接必要でなく、単に色成分の値を取得したいだけなら、red(), hsvHue(), name() などの直接的な取得メソッドで十分です。

また、あるカラースペースから別のカラースペースへ色を変換したいだけであれば、convertTo() メソッドが簡潔な解決策となります。

Qt開発者必見！QColor::spec()のエラーと解決策、代替アプローチ

QColor::Spec QColor::spec() とは

QColor::Spec 列挙型

使用例

エラー: spec() が常に QColor::Rgb を返す

エラー: spec() が QColor::Invalid を返す

誤解: spec() が色の変換履歴を示すと誤解する

色の比較における spec() の考慮不足

QColor::Spec QColor::spec() を使ったプログラミング例

例1: さまざまな色の指定方法と spec() の確認

例2: spec() を使った条件分岐と色の変換

明示的な色の取得メソッドを使用する

QColor::convertTo(QColor::Spec colorSpec) const を使用する

独自のデータ構造で色の指定方法を管理する

`QColor::Spec QColor::spec()` とは

`QColor::Spec` 列挙型

`QColor::Spec QColor::spec()` を使ったプログラミング例

例1: さまざまな色の指定方法と `spec()` の確認

例2: `spec()` を使った条件分岐と色の変換