Qtの色比較マスターガイド:QColor::operator!=()の代替メソッドと実践例
Qtプログラミングにおけるbool QColor::operator!=()
は、QColor
オブジェクト同士が等しくないかどうかを比較するための演算子オーバーロードです。
以下に詳しく説明します。
QColor
とは
QColor
は、Qtフレームワークにおいて色を表現するためのクラスです。RGB(赤、緑、青)、HSV(色相、彩度、明度)、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、キープレート)などのカラーモデルを使って色を定義できます。また、透明度(アルファチャンネル)も持つことができます。
operator!=()
の役割
operator!=()
は、C++の二項演算子「!=
」(not equal to)をQColor
クラスに対してオーバーロードしたものです。これにより、2つのQColor
オブジェクトを直接「!=
」で比較し、それらが同じ色であるかどうかをチェックすることができます。
動作の仕組み
bool QColor::operator!=(const QColor &color) const
は、以下のように動作します。
- 比較する2つの
QColor
オブジェクト(現在のオブジェクトと引数として渡されたcolor
)の各色成分(赤、緑、青、そしてアルファチャンネル)を比較します。 - もし、いずれかの色成分の値が異なっていれば、その2つの
QColor
オブジェクトは「等しくない」と判断され、true
を返します。 - もし、すべての色成分の値が完全に一致していれば、その2つの
QColor
オブジェクトは「等しい」と判断され、false
を返します。
つまり、operator!=()
はoperator==()
(等しいかどうかを比較する演算子)の逆のロジックを提供します。
#include <QColor>
#include <QDebug> // デバッグ出力用
int main() {
QColor red(255, 0, 0); // 赤色
QColor alsoRed(255, 0, 0); // 同じく赤色
QColor blue(0, 0, 255); // 青色
QColor transparentRed(255, 0, 0, 128); // 半透明の赤色 (アルファ値128)
// red と alsoRed の比較
if (red != alsoRed) {
qDebug() << "red と alsoRed は異なります (これは表示されません)";
} else {
qDebug() << "red と alsoRed は同じです"; // こちらが表示される
}
// red と blue の比較
if (red != blue) {
qDebug() << "red と blue は異なります"; // こちらが表示される
} else {
qDebug() << "red と blue は同じです (これは表示されません)";
}
// red と transparentRed の比較 (アルファ値が異なるため)
if (red != transparentRed) {
qDebug() << "red と transparentRed は異なります"; // こちらが表示される
} else {
qDebug() << "red と transparentRed は同じです (これは表示されません)";
}
return 0;
}
この例では、red
とalsoRed
は全く同じ色成分を持つため、!=
演算子はfalse
を返します。一方、red
とblue
、およびred
とtransparentRed
は色成分が異なるため、!=
演算子はtrue
を返します。
アルファ値の考慮漏れ (Most Common)
QColor::operator!=()
は、色のRGB成分だけでなく、アルファ (A) 成分も比較します。これは非常に一般的な落とし穴です。
- トラブルシューティング
- 比較している両方の
QColor
オブジェクトのアルファ値を確認してください。color.alpha()
メソッドで取得できます。 - アルファ値を無視して比較したい場合は、RGB成分のみを比較する関数を自作するか、それぞれの
QColor
をアルファ値を255にした新しいQColor
に変換してから比較することを検討してください。 - 例:
QColor color1(255, 0, 0); QColor color2(255, 0, 0, 100); // 半透明の赤 if (color1 != color2) { qDebug() << "色とアルファ値が異なるため、red と transparentRed は異なります"; } // アルファ値を無視して比較したい場合 if (color1.rgb() != color2.rgb()) { // QColor::rgb()はアルファ値を含まないQRgbを返す qDebug() << "RGB値が異なるため、red と transparentRed は異なります (これは表示されません)"; } else { qDebug() << "RGB値は同じですが、アルファ値が異なる可能性があります"; // こちらが表示される } // あるいは、両方を不透明にしてから比較 QColor opaqueColor1 = color1; opaqueColor1.setAlpha(255); QColor opaqueColor2 = color2; opaqueColor2.setAlpha(255); if (opaqueColor1 != opaqueColor2) { qDebug() << "不透明にしてもred と transparentRed は異なります (これは表示されません)"; } else { qDebug() << "不透明にするとred と transparentRed は同じです"; // こちらが表示される }
- 比較している両方の
- 原因
QColor
のコンストラクタによっては、アルファ値がデフォルトで255(完全不透明)になるものがあります。しかし、意図せずアルファ値が設定されたり、他の方法で色を生成した際にデフォルト値以外になっていたりすると、見た目が同じでも比較結果が異なります。 - エラーの状況
- 見た目には同じ色に見えるのに、
!=
がtrue
を返す。 - 例:
QColor(255, 0, 0)
(完全な赤、不透明) とQColor(255, 0, 0, 255)
(完全な赤、不透明) は同じだが、QColor(255, 0, 0, 128)
(半透明の赤) は異なる。
- 見た目には同じ色に見えるのに、
色空間の違い
QColor
はRGB、HSV、CMYKなどの複数の色空間をサポートしていますが、operator!=()
は内部的にRGBとアルファ値で比較を行います。
- トラブルシューティング
- 通常は
QColor
が適切に内部変換を行うため、これは稀なケースです。 - もし厳密な一致が必要で、異なる色空間から色を生成している場合は、比較する前に両方の色を明示的に同じ色空間(例えばRGB)に変換してから、それぞれのRGB成分を個別に比較するなどの対策が必要になる場合があります。
- 通常は
- 原因
- 異なる色空間で設定された色が、内部的なRGB変換でわずかな数値のズレ(浮動小数点数演算による丸め誤差など)を生じることがあります。
- エラーの状況
- HSVで同じ値を持つ2つの色が、RGBで比較すると
!=
がtrue
を返す場合がある。
- HSVで同じ値を持つ2つの色が、RGBで比較すると
無効な色 (Invalid Colors)
QColor
は無効な状態を持つことがあります。
- トラブルシューティング
- 色を比較する前に、
color.isValid()
メソッドで色が有効かどうかを確認することが推奨されます。 - 無効な色に対する
operator!=()
の挙動は未定義になる可能性があります。
- 色を比較する前に、
- 原因
- 色を初期化し忘れた、または存在しない色名を指定した。
- エラーの状況
QColor()
のデフォルトコンストラクタで作成された色(QColor()
)や、不正な名前文字列から作成された色(例:QColor("not_a_color")
)は無効な色となります。- 無効な色との比較は、予期しない結果を招く可能性があります。
文字列からの色名生成とX11カラーデータベース
QColor("red")
のように文字列から色を生成する場合、Qtは内部的に色名データベースを参照します。
- トラブルシューティング
QColor::isValid()
で、文字列から作成された色が有効かどうかを確認してください。- 一般的には、色名は
QColor("red")
のような直接的な文字列ではなく、Qt::red
のようなQt::GlobalColor
列挙型を使用する方が安全で推奨されます。 - 特定の環境でのみ再現する問題であれば、その環境の色名解決に関する設定を確認してください。
- 原因
- Qtが使用する色名データベースに、指定した色名が存在しない。
QColor::setAllowX11ColorNames(false)
が設定されている場合、X11の色名が認識されない。
- エラーの状況
- 特定の環境やQtのバージョンで、期待する色名が認識されない。
- X11カラーデータベースに依存する色名が、X11以外の環境で正しく解釈されないことがある。
浮動小数点精度 (Floating Point Precision)
QColor
は内部的に整数で色成分を保持しますが、setRgbF()
やgetRgbF()
のような浮動小数点数を使用する関数も提供しています。
- トラブルシューティング
- 色の比較は、可能な限り整数値(0-255)で行うのが最も安全です。
- どうしても浮動小数点数で比較する必要がある場合は、直接
!=
を使用するのではなく、許容誤差(epsilon)を設けて比較する関数を自作することを検討してください。bool areColorsApproximatelyEqual(const QColor& c1, const QColor& c2, int tolerance = 1) { return (qAbs(c1.red() - c2.red()) <= tolerance && qAbs(c1.green() - c2.green()) <= tolerance && qAbs(c1.blue() - c2.blue()) <= tolerance && qAbs(c1.alpha() - c2.alpha()) <= tolerance); } // 使用例 if (!areColorsApproximatelyEqual(colorA, colorB)) { qDebug() << "おおよそ異なる色です"; }
- 原因
- 浮動小数点数演算における丸め誤差により、厳密な一致が得られない場合があります。
- エラーの状況
- 浮動小数点数で設定した色と、整数で設定した色、または異なる浮動小数点値で設定した色が、期待通りに
!=
がfalse
にならない。
- 浮動小数点数で設定した色と、整数で設定した色、または異なる浮動小数点値で設定した色が、期待通りに
これらのコード例を実行するには、Qtプロジェクト(CMakeLists.txt
または.pro
ファイル)にQt::Gui
モジュールを含める必要があります。
CMakeの場合
find_package(Qt6 REQUIRED COMPONENTS Gui) # Qt6の場合
# find_package(Qt5 REQUIRED COMPONENTS Gui) # Qt5の場合
target_link_libraries(your_target_name PRIVATE Qt6::Gui) # Qt6の場合
# target_link_libraries(your_target_name PRIVATE Qt5::Gui) # Qt5の場合
qmakeの場合(.proファイル)
QT += gui
例1: 基本的な色の比較(アルファ値も含む)
この例では、QColor::operator!=()
がRGBとアルファ値の両方を考慮して比較することを示します。
#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>
#include <QColor>
int main(int argc, char *argv[]) {
QCoreApplication a(argc, argv);
qDebug() << "--- 例1: 基本的な色の比較(アルファ値も含む) ---";
QColor color1(255, 0, 0); // 完全な赤 (R=255, G=0, B=0, A=255)
QColor color2(255, 0, 0, 255); // 完全な赤 (R=255, G=0, B=0, A=255)
QColor color3(0, 0, 255); // 完全な青 (R=0, G=0, B=255, A=255)
QColor color4(255, 0, 0, 128); // 半透明の赤 (R=255, G=0, B=0, A=128)
// 完全に同じ色同士の比較
if (color1 != color2) {
qDebug() << "color1 と color2 は異なります (この行は表示されないはずです)";
} else {
qDebug() << "color1 と color2 は同じです";
}
// 異なるRGB値の色同士の比較
if (color1 != color3) {
qDebug() << "color1 と color3 は異なります";
} else {
qDebug() << "color1 と color3 は同じです (この行は表示されないはずです)";
}
// RGB値は同じだが、アルファ値が異なる色同士の比較
if (color1 != color4) {
qDebug() << "color1 と color4 は異なります (アルファ値が異なるため)";
} else {
qDebug() << "color1 と color4 は同じです (この行は表示されないはずです)";
}
return 0; // 例なのでアプリケーションはすぐに終了します
}
実行結果例
--- 例1: 基本的な色の比較(アルファ値も含む) ---
color1 と color2 は同じです
color1 と color3 は異なります
color1 と color4 は異なります (アルファ値が異なるため)
例2: アルファ値を無視して色を比較する方法
アルファ値の違いが問題となる場合、RGB値のみを比較する別の方法を使用できます。
#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>
#include <QColor>
int main(int argc, char *argv[]) {
QCoreApplication a(argc, argv);
qDebug() << "--- 例2: アルファ値を無視して色を比較する方法 ---";
QColor colorA(255, 0, 0, 255); // 完全不透明の赤
QColor colorB(255, 0, 0, 100); // 半透明の赤
qDebug() << "colorA (RGB=" << colorA.red() << "," << colorA.green() << "," << colorA.blue() << ", A=" << colorA.alpha() << ")";
qDebug() << "colorB (RGB=" << colorB.red() << "," << colorB.green() << "," << colorB.blue() << ", A=" << colorB.alpha() << ")";
// operator!=() を使うと、アルファ値が異なるため「異なる」と判定される
if (colorA != colorB) {
qDebug() << "operator!=() による比較: colorA と colorB は異なります";
} else {
qDebug() << "operator!=() による比較: colorA と colorB は同じです (この行は表示されないはずです)";
}
// RGB値のみを比較する (QRgb型を使用)
if (colorA.rgb() != colorB.rgb()) {
qDebug() << "rgb() による比較: colorA と colorB は異なります (この行は表示されないはずです)";
} else {
qDebug() << "rgb() による比較: colorA と colorB は同じです (アルファ値は無視される)";
}
// もう一つの方法: アルファ値を揃えてから比較
QColor tempColorA = colorA;
tempColorA.setAlpha(255); // colorAを不透明にする
QColor tempColorB = colorB;
tempColorB.setAlpha(255); // colorBを不透明にする
if (tempColorA != tempColorB) {
qDebug() << "アルファ値を揃えて比較: tempColorA と tempColorB は異なります (この行は表示されないはずです)";
} else {
qDebug() << "アルファ値を揃えて比較: tempColorA と tempColorB は同じです";
}
return 0;
}
実行結果例
--- 例2: アルファ値を無視して色を比較する方法 ---
colorA (RGB= 255 , 0 , 0 , A= 255 )
colorB (RGB= 255 , 0 , 0 , A= 100 )
operator!=() による比較: colorA と colorB は異なります
rgb() による比較: colorA と colorB は同じです (アルファ値は無視される)
アルファ値を揃えて比較: tempColorA と tempColorB は同じです
例3: 無効な色との比較とisValid()
の使用
無効なQColor
オブジェクトは、予期しない比較結果をもたらす可能性があります。isValid()
でチェックすることが重要です。
#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>
#include <QColor>
int main(int argc, char *argv[]) {
QCoreApplication a(argc, argv);
qDebug() << "--- 例3: 無効な色との比較と isValid() の使用 ---";
QColor validColor(100, 150, 200); // 有効な色
QColor invalidColor1; // デフォルトコンストラクタで作成された無効な色
QColor invalidColor2("not_a_valid_color_name"); // 無効な色名から作成された色
qDebug() << "validColor.isValid():" << validColor.isValid();
qDebug() << "invalidColor1.isValid():" << invalidColor1.isValid();
qDebug() << "invalidColor2.isValid():" << invalidColor2.isValid();
// 有効な色と無効な色の比較
if (validColor != invalidColor1) {
qDebug() << "validColor と invalidColor1 は異なります (有効性と無効性)";
} else {
qDebug() << "validColor と invalidColor1 は同じです (この行は表示されないはずです)";
}
// 無効な色同士の比較 (挙動は未定義になる可能性もあるため、isValid()でチェックが望ましい)
if (invalidColor1 != invalidColor2) {
qDebug() << "invalidColor1 と invalidColor2 は異なります (両方無効ですが、内部状態は異なるかもしれません)";
} else {
qDebug() << "invalidColor1 と invalidColor2 は同じです";
}
// 比較前にisValid()でチェックする推奨されるパターン
if (validColor.isValid() && invalidColor1.isValid() && validColor != invalidColor1) {
// このブロックには入らない (invalidColor1は無効なため)
qDebug() << "isValid()チェック後の比較: validColor と invalidColor1 は異なります";
} else if (!validColor.isValid() || !invalidColor1.isValid()) {
qDebug() << "比較する色が一つ以上無効です。比較の前に確認してください。";
}
return 0;
}
実行結果例
--- 例3: 無効な色との比較と isValid() の使用 ---
validColor.isValid(): true
invalidColor1.isValid(): false
invalidColor2.isValid(): false
validColor と invalidColor1 は異なります (有効性と無効性)
invalidColor1 と invalidColor2 は異なります (両方無効ですが、内部状態は異なるかもしれません)
比較する色が一つ以上無効です。比較の前に確認してください。
厳密な一致ではなく、わずかな誤差を許容する比較が必要な場合に役立ちます。
#include <QCoreApplication>
#include <QDebug>
#include <QColor>
#include <cmath> // std::abs 用
// 色のR, G, B, A成分を許容誤差内で比較するヘルパー関数
bool areColorsApproximatelyEqual(const QColor& c1, const QColor& c2, int tolerance = 1) {
if (!c1.isValid() || !c2.isValid()) {
// どちらか一方でも無効な場合は、等しくないと判断するか、別のエラーハンドリングを行う
return false;
}
return (std::abs(c1.red() - c2.red()) <= tolerance &&
std::abs(c1.green() - c2.green()) <= tolerance &&
std::abs(c1.blue() - c2.blue()) <= tolerance &&
std::abs(c1.alpha() - c2.alpha()) <= tolerance);
}
int main(int argc, char *argv[]) {
QCoreApplication a(argc, argv);
qDebug() << "--- 例4: 浮動小数点精度を考慮した近似比較 ---";
// わずかに異なるが、肉眼では区別しにくい色
QColor colorA(100, 150, 200, 255);
QColor colorB(101, 150, 200, 254); // 赤が1、アルファが1異なる
qDebug() << "colorA (RGB=" << colorA.red() << "," << colorA.green() << "," << colorA.blue() << ", A=" << colorA.alpha() << ")";
qDebug() << "colorB (RGB=" << colorB.red() << "," << colorB.green() << "," << colorB.blue() << ", A=" << colorB.alpha() << ")";
// operator!=() による厳密な比較
if (colorA != colorB) {
qDebug() << "operator!=() による比較: colorA と colorB は異なります (厳密には異なるため)";
} else {
qDebug() << "operator!=() による比較: colorA と colorB は同じです (この行は表示されないはずです)";
}
// 自作の近似比較関数を使用
if (!areColorsApproximatelyEqual(colorA, colorB, 1)) { // 許容誤差1
qDebug() << "近似比較 (許容誤差1): colorA と colorB は異なります (この行は表示されないはずです)";
} else {
qDebug() << "近似比較 (許容誤差1): colorA と colorB はおおよそ同じです";
}
QColor colorC(100, 150, 200, 255);
QColor colorD(105, 150, 200, 255); // 赤が5異なる
qDebug() << "\ncolorC (RGB=" << colorC.red() << "," << colorC.green() << "," << colorC.blue() << ", A=" << colorC.alpha() << ")";
qDebug() << "colorD (RGB=" << colorD.red() << "," << colorD.green() << "," << colorD.blue() << ", A=" << colorD.alpha() << ")";
if (!areColorsApproximatelyEqual(colorC, colorD, 3)) { // 許容誤差3
qDebug() << "近似比較 (許容誤差3): colorC と colorD はおおよそ異なります"; // 赤の差が3を超えるので異なる
} else {
qDebug() << "近似比較 (許容誤差3): colorC と colorD はおおよそ同じです (この行は表示されないはずです)";
}
return 0;
}
--- 例4: 浮動小数点精度を考慮した近似比較 ---
colorA (RGB= 100 , 150 , 200 , A= 255 )
colorB (RGB= 101 , 150 , 200 , A= 254 )
operator!=() による比較: colorA と colorB は異なります (厳密には異なるため)
近似比較 (許容誤差1): colorA と colorB はおおよそ同じです
colorC (RGB= 100 , 150 , 200 , A= 255 )
colorD (RGB= 105 , 150 , 200 , A= 255 )
近似比較 (許容誤差3): colorC と colorD はおおよそ異なります
QColor::operator==() の使用
operator!=()
の逆なので、最も直接的な代替手段です。両方の演算子は、RGB およびアルファ成分が完全に一致するかどうかを比較します。
- 使い方:
QColor colorA(255, 0, 0, 255); QColor colorB(255, 0, 0, 255); QColor colorC(255, 0, 0, 100); if (colorA == colorB) { qDebug() << "colorA と colorB は同じです (RGBとアルファ値が一致)"; } if (!(colorA == colorC)) { // colorA != colorC と同じ qDebug() << "colorA と colorC は異なります (アルファ値が異なる)"; }
- 目的: 2つの色が完全に同じであるかどうかをチェックする。
QRgb 型による RGB 値のみの比較
アルファ値を無視して、純粋な色(RGB)のみを比較したい場合によく使われます。QColor::rgb()
メソッドは、色をアルファ値を含まない QRgb
型(quint32
の typedef)に変換します。
- 使い方:
QColor colorRedOpaque(255, 0, 0, 255); // 不透明な赤 QColor colorRedTransparent(255, 0, 0, 100); // 半透明な赤 if (colorRedOpaque.rgb() != colorRedTransparent.rgb()) { qDebug() << "RGB値は異なります (この行は表示されないはずです)"; } else { qDebug() << "RGB値は同じです (アルファ値は無視される)"; }
- 目的: アルファ値を考慮せず、色のRGB成分のみを比較する。
各色成分を個別に比較
より詳細な制御が必要な場合や、特定の成分のみを比較したい場合に有効です。
- 使い方:
QColor color1(100, 120, 140, 255); QColor color2(100, 121, 140, 255); // 緑が1だけ異なる if (color1.red() != color2.red() || color1.green() != color2.green() || color1.blue() != color2.blue() || color1.alpha() != color2.alpha()) { qDebug() << "color1 と color2 は異なります (いずれかの成分が異なる)"; } // 例: 赤成分だけ比較 if (color1.red() == color2.red()) { qDebug() << "color1 と color2 の赤成分は同じです"; }
- 目的: 特定の色成分(例: 赤、緑、青、アルファ)のみを比較する。
許容誤差を伴う近似比較 (Custom Function)
浮動小数点数の丸め誤差や、肉眼では区別できない程度の微細な色の違いを許容したい場合に、カスタムの比較関数を作成します。
- 使い方:
#include <QColor> #include <QDebug> #include <cmath> // std::abs 用 bool areColorsApproximatelyDifferent(const QColor& c1, const QColor& c2, int tolerance = 1) { if (!c1.isValid() || !c2.isValid()) { // どちらか一方でも無効な場合は、異なるものとする return true; } return (std::abs(c1.red() - c2.red()) > tolerance || std::abs(c1.green() - c2.green()) > tolerance || std::abs(c1.blue() - c2.blue()) > tolerance || std::abs(c1.alpha() - c2.alpha()) > tolerance); } int main(int argc, char *argv[]) { QCoreApplication a(argc, argv); QColor colorX(50, 60, 70, 200); QColor colorY(51, 60, 70, 199); // 赤とアルファが1ずつ異なる if (areColorsApproximatelyDifferent(colorX, colorY, 1)) { qDebug() << "colorX と colorY はおおよそ異なります (許容誤差1)"; // 表示されない } else { qDebug() << "colorX と colorY はおおよそ同じです (許容誤差1)"; // こちらが表示される } QColor colorZ(55, 60, 70, 200); // 赤が5異なる if (areColorsApproximatelyDifferent(colorX, colorZ, 3)) { // 許容誤差3 qDebug() << "colorX と colorZ はおおよそ異なります (許容誤差3)"; // こちらが表示される } else { qDebug() << "colorX と colorZ はおおよそ同じです (許容誤差3)"; // 表示されない } return 0; }
- 目的: 厳密な一致ではなく、一定の誤差範囲内での色の類似性を判断する。
QColor::toHsv(), toCmyk() など、異なる色空間での比較
場合によっては、HSV(色相、彩度、明度)やCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、キープレート)のような異なる色空間で比較する方が意味のあることがあります。例えば、Hue(色相)のみを比較して、異なる明るさや彩度を持つ色が「同じ系統の色」であるかを判断したい場合などです。
- 使い方:
QColor colorA = QColor::fromHsv(120, 255, 255); // 緑 QColor colorB = QColor::fromHsv(120, 100, 200); // 同じ色相だが、彩度と明度が異なる緑 if (colorA.hue() != colorB.hue()) { qDebug() << "colorA と colorB の色相は異なります (この行は表示されないはずです)"; } else { qDebug() << "colorA と colorB の色相は同じです"; // こちらが表示される } // QColor::operator!=() で比較すると異なる if (colorA != colorB) { qDebug() << "しかし、QColor::operator!=() では colorA と colorB は異なります"; }
- 注意: 異なる色空間に変換すると、浮動小数点数の丸め誤差や、色空間の特性による予期せぬ挙動が生じる可能性があります。厳密な比較には向きません。
- 目的: 人間の知覚に近い比較や、特定の色特性(例: 色相)のみを比較する。
QColor
は QVariant
に格納できます。QVariant
の比較演算子も使用できますが、これは通常、QColor
の比較演算子を使用するよりも間接的であり、パフォーマンス上のメリットもありません。
- 使い方:
QVariant varColor1 = QColor(255, 0, 0); QVariant varColor2 = QColor(255, 0, 0); if (varColor1 != varColor2) { qDebug() << "QVariant で比較: varColor1 と varColor2 は異なります (この行は表示されないはずです)"; } else { qDebug() << "QVariant で比較: varColor1 と varColor2 は同じです"; }
- 目的:
QVariant
の中に格納されたQColor
を比較する場合など、特殊なシナリオ。
- 知覚的な比較: 異なる色空間(HSVなど)に変換して比較することを検討しますが、これはより複雑な問題になることがあります。
- 近似比較: カスタムの許容誤差関数を作成します。
- 部分的な色成分比較: 各成分 (
red()
,green()
,blue()
,alpha()
) を個別に比較します。 - アルファ値無視(RGBのみ):
color.rgb() != otherColor.rgb()
を使用します。 - 厳密な完全一致(RGB + アルファ):
QColor::operator!=()
またはQColor::operator==()
が最も適切です。